9.25リニア中央新幹線工事差止訴訟第22回口頭弁論で結審

判決は27年2月26日

 【静岡】9月25日、リニア中央新幹線の工事差し止めを求める第22回口頭弁論が静岡地裁(有冨正剛裁判長)で開かれ、この日で結審となった。判決は2027年2月26日(金)午後1時10分に言い渡される。

 口頭弁論では大井川河口(最下流部)の榛原郡吉田町川尻に在住する福田由紀子さんが意見陳述を行った。
 陳述の冒頭、最下流に生きる者の「生存の権利」と大井川がもたらす「環境の利益」がいかに深刻な危機に直面しているか、住民の生の声を伝えたくて陳述に立ったと述べ、「水は上から下へ流れる。最上流部で起きる水循環の破壊は、時を経て、最下流域の住民の蛇口に、生活に、そして命に直結し最下流に位置する川尻地区は、すべてのツケを回される命の終着駅」だと述べた。

水循環基本法の逸脱

 2014年に成立した「水循環基本法」を引用し、国の有識者会議が「上流の地下水と下流の地下水は地中で直接繋がっていないから影響はない」と主張する「地下水不連続論」がいかに水循環基本法の理念から逸脱しているかを指摘した。その第2条では水が「地表水又は地下水として…常に循環している」と定義している。
 第3条では、水は「国民共有の貴重な財産」と明記し、第4条では「健全な水循環の維持」を掲げ「将来にわたって維持されるよう行わなければならない」と定めている。
 JR東海が計画する巨大なトンネル掘削は、精緻な自然の循環システムに巨大な穴をあける行為に他ならない。南アルプスの巨大な「水がめ機能」が破壊され地下水位が300mも低下(JR東海による地下水位予測値低下量図)する水の量の減少にとどまらず、深刻なのは水の「質」の悪化だと指摘した。

水質悪化による
地域産業の破壊

 トンネル掘削により南アルプスの地中からヒ素やフッ素、セレンなどの有害物質を含む大量「要対策土」が掘り起こされている。JR東海は「雨水などによる流失対策は万全だ」と説明するが、既に工事が始まっている他県では、JR東海の管理ミスによる汚染や不祥事が相次いで発覚。「対策をするから安全だ」というJR東海の前提は他県においてすでに何度も破綻している。
 岐阜県御嵩町での国の環境基準を上回る有害物質(ヒ素・フッ素)の検出、山梨県早川町の発生土仮置き場の地下水からセレンが、同じく山梨県では有害物質を含む残土が環境保全計画を守らず地上に剥き出しのまま放置などだ。先人たちから受け継いだ豊かな暮らしがなぜ一企業の将来の保証もない事業のために脅かされなければならないのか。
 水質悪化は、生活の場を奪うだけでなく先人たちが築き上げてきた地域の主要産業(水産業・シラス加工業)を根底から壊滅させる「極めて凄惨な人権侵害」と指弾し、大井川の水の「量」と「質」が損なわれることは生活の土台そのものが崩壊すると述べた。

体裁のいい環境擁護でごまかし続け

 「人権デユーデリジェンス」という用語がある。企業が自社やサプライチェーンの活動による人権への悪影響を特定・予防・軽減・是正する一連のプロセスを指すことだが、日本政府は2020年に「ビジネスと人権」に関する国家行動計画(NAP)を策定、2025年12月にこれを改定したがリニア建設の現場において完全に空文化している。現在の日本には企業にNAPの遵守を義務付ける実効性のある措置がほとんどなく、企業の「自主性」という裁量に委ねられている。
 JR東海によるリニア建設では、地域住民の「環境への権利」および「水へのアクセスの権利」が脅かされているばかりか、開発プロセスにおいて、影響を受ける住民との間で「対話と関与」を確保するという大原則すら完全に無視されている。これは政府がNAPにおいて新しく掲げた「環境と人権」の保護および「政策の一貫性」のどれもが実際の現場では全く実現していないことを雄弁に物語っている。国際基準である「ビジネスと人権」の明白な違反だ。
 陳述の最後に、裁判官に対し科学的な不確実性が極めて高いにもかかわらず、十分な事前の調査を行わず、掘りながら考えるなどとし、体裁の良い環境用語で「量」と「質」の破壊を誤魔化し、国際的な人権基準をも無視し、さらに事業廃止後の超長期的な水管理の責任すら放棄しているJR東海の姿勢を容認しないよう訴えて陳述を終えた。

12月の総会と学習会へ

 裁判終了後、報告会がもたれ原告弁護団事務局長の西ヶ谷知成事務局長は、5年8カ月におよぶ訴訟を振り返った。「問題提起をしても議論の深まりに欠けた。被告JR東海は不誠実な対応を繰り返し、かみ合わない議論をやってきた。JR東海の説明のおかしさ、誤魔かしもしっかり追及できた」と述べ、判決では、「裁判所が正面から判断してくれることを期待する」と語った。
 7月7日、静岡県議会最終日に河川法上の工事容認表明、7月18日には県自然環境保全条例に基づく協定締結、8月7日にはリニア静岡工区本体工事(本坑や先進坑などのトンネル建設)を巡り、静岡県は河川法に基づく許可を出した。
 9月8日、静岡市は3か所のトンネル発生土置き場(ツバクロ、藤島、イタドリ)の設置に必要な盛土規制法に基づく法令手続きが完了したと発表した。これで静岡工区の着工へ向けた法令手続きが完了したことになる。ところが年内の着工を急ぎたいJR東海にとって台風や長雨によって工区付近の各所で土砂崩れが発生し大荒れの状態だ。
 「静岡県リニア工事差し止め訴訟の会」では結審を受けて12月に会の総会と学習会を予定している。かけはし8月10日号で記した①JR東海に今後の工程を明らかにさせる第5次公開質問状を発すること②着工に対しては井川畑薙ダム上部の沼平ゲートでのアピール行動が計画されている。
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裁判闘争に勝利しよう(9.25)

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