みつばちのはなし ④
たじま よしお
脱ネオニコの動きが
始まった
ネオニコチノイドを国が規制しないなら、せめて自分たちの地域や生協だけでも使用中止にしようとする動きが各地で始まっている。国の規制を待っていては、もう手遅れになる。
生協の中でもいち早く「脱ネオニコ」を宣言して取り組みを始めたのが、栃木県のよつば生協(よつば生活協同組合)である。契約農家と協力し、毒性が疑われているネオニコチノイド農薬を一切使用しないコメの販売体制を2013年に確立し、野菜や果物についても同じ取り組みを開始した。そして関西、四国に展開するコープ自然派事業連合、東北では、あいコープみやぎ(生活協同組あいコープみやぎ)、西日本ではグリンコープ連合会などである。
コープ自然派では、2010年よりネオニコチノイド系農薬排除を掲げ、商品案内(カタログ)には2017年より、農作物(野菜、果物、お米)のネオニコ系農薬の使用状況を、独自のマークによって表示している。その効果もあり、ネオニコ系農薬不使用(ネオニコフリー)に取り組む生産者が増え、ネオニコ不使用、削減に取り組んでいるというマークをつけた生産者がすでに91・6%(2020年度)に及んでいる。
一方、宮城県のあいコープみやぎの取り組みについても、その進捗状況は見逃せない。ネオニコ削減はまずお米から始め2011年には、津波で被災した七郷地区を除く宮城県内の産地がネオニコ不使用を達成した。また果物のネオニコ排除の取り組みに挑戦している。まず、あいコープ果樹栽培の産地「天童果実同志会」にネオニコ排除の提案をし、翌年から同会の園地を実験圃場にすることにより、果樹のネオニコフリーの可能性を模索し始めた。そして2014年には天童果実同志会の全会員の園地でネオニコ不使用にすることができた。さまざまな工夫をして対策に苦心しながらもこの取り組みを進めている。しかし、最近では温暖化が進み、気候による大きな影響が産地を襲っている。農薬を削減することでリスクを負う生産者を支えるため。2023年にオーナー制を復活させ、2024年には202人の組合員が応募したという。
また、グリンコープでは、グリホサート(除草剤、ラウンドアップなど)やネオニコチノイド農薬の排除の取り組みを行なっており、2010年以降可能な品目から排除を進め、2022年よりネオニコチノイドを使わないことを基準にしている。カタログ(GREEN13号)より「ネオニコ不使用」「ネオニコ削減中がわかるようになった。一部の作物において排除することが実現できていないが、それは、果物などの年一回の収穫物は、病害虫発生時に適切な防除をしないと収穫できず、生産者の収入がなくなる恐れがあるので、慎重に進めなくてはならないからだ。
希望の星はオーガニック給食の広がり
ネオニコチノイド農業による土壌や水系の汚染が進行し、私たちのからだまで汚染している。しかし、こうした暗澹たる状況の中での、本書の最後ぐらいは明るい話題で締めくくりたい。我が国にもささやかな希望が生まれてきた。それが全国で広がり始めた子どもたちの学校給食のオーガニック化である。この動きは、すでに20年前の2003年ごろから一部保育園などで開始されていたが、”せめて子供だけは安全なものを食べさせたい”という多くの国民の気持ちが実りつつある実例として、久々に喜ばしく心温まる動きである。
この運動は当初、千葉県のいすみ市の取り組みから始まった。いすみ市ではその前から、有機農業技術の先進的開拓者である故稲葉光国氏(栃木県の民間稲作研究所)の指導で、お米の無農薬栽培に挑戦していた。そして、まちぐるみで有機米を進める中で、地元産の有機米を学校給食で子供たちにまず食べてもらおうという提案が農家から出されていた。こうした農家の希望が市農政課を動かし、市長の強い賛同を得ることになったのだ。そしていすみ市は2012年、環境保全型農業によるまちづくりを宣言し、2016年には、全国で例を見ない学校給食全量を有機米にしようという目標を打ち出し、その取り組みが全国に広がり始め、無農薬の食材を学校給食に取り入れたいという市町村が少しずつ着実に増えてきた。
そうした動きが活発になり、2022年秋には東京で”オーガニック給食フォーラム”が開催されたが、その時には1000人を超す人が全国から駆けつけた。そして2023年には、全国の数多くの自治体、商業協同組合、農業団体、生活協同組合や流通、市民団体や個人からなる「全国オーガニック給食協議会」が設立される運びとなった。この新しい取り組みに、手をあげる市町村が瞬く間にふえ、2022(令和4)年には全国で193市町村が学校給食で有機食品を利用しており、その数は2021(令和3)年から56市町村増加したのだ。
そして農林水産省も2024(令和6)年には、12月8日の有機農業の日に、全国の自治体に対して、学校給食の有機農産物の利用について呼びかけを行うことになった。安全なものを子供に食べさせたい、この素朴であたりまえの国民の気持ちが、子供だけでなく全国民に広がり、有機農業が推進され、いつか、我が国の農業ムラの存在を根っこからつき崩す日が来ることを、心から望みたい。
2025年3月、石破首相は国会答弁で「学校給食に地産地消だけでなく、地元の有機食材を取り入れるべき」との提案に「政府としても努力していく」と答弁した。その内容には「だれがどのようにして作ったのかがわかるような有機農産物」という文言も入れられていたのだった。
本書は、大変重たい問題提起の一冊ですが、以上紹介したのは1章と6章のみですが、2章から5章にも大変有意義な記述が見られます。ぜひとも一読をお勧めしたいと思います。そして各市区町村の図書館にも各人から本書を備えていただくように要請するようお願いするものです。
さて、無農薬に関してですが、5年ほど前に南信州の郷里で同級生と農薬について話をしていた時、専業農家の彼に「俺一人が無農薬で頑張っても、近くの畑で農薬を散布されたら、おれんちの畑まで舞ってくるし、かなり遠くからも風に乗ってやってくるから意味が全然ないよ」と言われたのを思い出します。それと、今から59年前に東京都知事になった美濃部亮吉さんが、当時の東京築地市場を視察した折に「契約栽培」という言葉を独り言みたいにふと漏らしたことがありました。それにたいして築地の人々から冷たい視線が注がれたということがありました。美濃部さんの胸中には、多分全国的な規模の「契約栽培」の構想が浮かんでいたのだと思います。
やはりかなり広範囲の耕地で、一斉に取り組むことが求められると思います。それと作物の不作の年があっても、消費者も農家を守る体勢をととのえなくてはならないと思います。これはまさにエコロジー社会主義の一丁目一番地です。
2026年7月
Let”s Go!
たじま よしお
(おわり)
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