追い詰められた維新による大阪ダブル選挙

「大阪都構想」を最終的に葬り去ろう

 高市首相による突然の解散総選挙の動きが報じられた数日後の1月13日、大阪でももう一つのサプライズ選挙が突如として浮上してきた。吉村大阪府知事と横山大阪市長が揃って辞職し、いわゆる出直しダブル選挙を総選挙と同日におこなう意向を固めたとマスメディアが一斉に報じたのである。この不意打ちダブル選挙に対しては、維新内部でも批判が続出し、主要政党は候補者擁立を見送るという異例の事態が生まれている。大阪維新が出直しダブル選挙に打って出た背景、および「大阪都構想」を最終的に葬り去るために何が必要なのか、考えてみたい。

支持者の離反、相次ぐ不祥事に追い詰められていた維新

 昨年10月、日本維新の会は、高市新総裁率いる自民党との連立に踏み切った。維新が連立に前のめりになった背景には、昨年7月の参院選での不振とその後の相次ぐ国会議員の離脱や本拠地・大阪を含む地方選挙での不振、また相次ぐ不祥事という危機的状況があった。
 維新は参院選で、本拠地大阪においても、比例票を2022年と比べると3分の2の115万票まで減らした。全国的には、中道右派野党内での立ち位置が国民民主との間で完全に逆転したのである。そのため、参院選後には、大阪維新の一部から「大阪を副首都とする法案成立と引き換えに自公と連立を組むべき」との主張が出されたり、維新創設者の橋下徹が「連立入りした上で、副首都構想を実現してほしい」と発言したりと、本拠地大阪から連立容認論が発信されていた。
 維新の考えていた連立とは、自民総裁選で小泉元農水相が勝利することを前提として、そのもとで副首都構想を実現するというものだった。にもかかわらず、自民党総裁選で高市が新総裁となった後、国民民主が連立に消極的となった間隙をついて、何としても首相の座に就きたい高市との間でほぼ自らの政策要求を丸呑みさせる形で、一気に高市自民との連立に踏み切ったのである。しかし、閣外協力という中途半端な連立形態であり、自公のように小選挙区での候補者調整もおこなわないままだった。しかも、連立政権の一角を占めても支持率はほとんど持ち直さなかった。その中で、高市首相が通常国会冒頭解散・総選挙に踏み切ったのである。もちろん維新には何の相談もなかった。
 加えて、維新は昨年秋以降、身内への公金での受発注、地方議員の国保忌避疑惑(出直しダブル選挙正式表明と同じ日に6名の地方議員を除名、1名の離党届を受理)などの不祥事が続発し、「身を切る改革」の本質が暴露されてきた。その中では、求心力を確保するために、一枚看板の「大阪都構想」をめぐる出直しダブル選挙という切羽詰まった選択を強いられたというべきであろう。

ダブル選挙で吉村代表は何を狙ったのか

 周知のように「大阪都構想」をめぐる住民投票で、維新は2回とも敗北を余儀なくされた。2回目の敗北の後、吉村知事は「僕自身が大阪都構想に政治家として挑戦することはもうありません」と断言していた。そして、前回(2023年)の統一自治体選挙では、ついに「大阪都構想」実現を公約から外さざるを得なくなったのである。しかし、大阪維新にとって、「大阪都構想」は唯一求心力となる政策であり、結局のところ放棄できなかった。2025年9月、吉村知事は副首都構想の法案をまとめた後、「3回目の挑戦なら民主的なプロセスが必要。大阪の将来を考えたら都構想は絶対必要」と発言して、「大阪都構想」への強い執着を改めて見せつけた。
 実は、辞職→出直しダブル選挙→3回目の「大阪都構想」住民投票というシナリオは、昨年の早い時期からその可能性が噂されていた。しかし、その時点での話では、吉村が大阪市長に、横山が大阪府知事に転じるいわゆる「クロス選挙」となるのでは、と言われていた。しかし、今回は同じ役職に再度立候補する形になる。つまり、来年3月には再び大阪府知事選・大阪市長選がおこなわれることになり、その際に住民投票もあわせて実施することで、今度こそ過半数の賛成を得ようというのである。そのためには、吉村の言う「民主的プロセス」のタイムリミットが迫っていて(住民投票には法定協議会による「大阪都構想」の協定書(設計図)作成が完了していることが条件で、どんなに急いでも1年はかかるだろう)今回の解散総選挙は維新にとって、いわば「渡りに船」という側面があったかもしれない。
 吉村代表の狙いはそれだけではない。自民党との候補者調整がおこなわれないため、維新は大阪の小選挙区で自民候補者と全面的に対決することになる。その場合、知事選や大阪市長選は総選挙よりも早く選挙運動を始められる(知事選は5日、市長選は3日早く告示)ため、他党に先んじて選挙キャンペーンに入ることができる。それに加えて、ダブル選挙にすれば、吉村知事は知事選の候補者として大阪中を走り回り、衆院選の維新の候補者と一緒に選挙活動をおこなうことができ、選挙戦を有利に運ぶことが可能となるという計算があるのではないか。

維新内部からも批判続出

 吉村・横山によるトップダウンでのダブル選挙強行に対して、維新内部でも批判が巻き起こっている。その批判には2つの側面がある。一つは、大阪以外の維新メンバーからの批判であり、もう一つは本拠地大阪での批判である。
 京都を地盤とする前原誠司前代表は「災害時のバックアップ機能としての副首都と、都構想は別の話。大阪以外の人間には意味が分からないし、理屈が分かりにくい」「衆院選は政権選択の選挙で、自民党と維新の連立政権への支持を問うことがメイン。あまり複雑系にならない方がいい」と苦言を呈し、1月15日に開かれた維新の両院議員総会では「出直し選は何の意味もない」「トップの独断でそのままいくのは、政党としてあってはならない」といった批判が相次ぎ、馬場伸幸前代表が何回も採決を求めた結果、反対26人、賛成4人だったという(1月16日、朝日新聞)。つまり、このことで大阪維新とそれ以外の地域の維新との間の確執がさらに増す可能性が強い。
 他方、本拠地大阪においても、「大阪市議団は15日午後、緊急総会を開催。出席した幹部によると、『出直し選の大義が見えない』『なぜ今の時期なのか』といった意見が多数あがったという」(同上)。市議団は総会で、2023年の市議選で都構想を公約に掲げていないことを踏まえ、「今任期で、(都構想の)協定書にかかわる議論をする立場にはない」などとする決議書を全会一致で取りまとめた。都構想を議論する法定協議会の設置についても、来年春の統一地方選で公約として掲げてから議論すべきだと結論付けたという(1月16日、産経新聞)。もちろん維新の体質からして、一応反対の意思を表しておいて、決まったからには支持するということになるだろうとは予測できるが、このように大阪維新の内部で批判が表面化することは、維新にとって「終わりの始まり」となる可能性もある。

「大阪都構想」を最終的に葬り去ろう

 大阪維新によるこの暴挙に対して、各党は一斉に批判を展開し、自民・立憲・公明・共産は知事選・市長選ともに候補者の擁立を見送る方針を固めた。これと同様の構図を大阪の有権者はすでに経験済みである。2014年、当時の橋下大阪市長が、法定協議会での議論が進まないことに対して、市民の信を問うとして市長を辞職し市長選がおこなわれたが、主要政党は候補者を出さなかった。
 今回の場合、実際のところ、2人の辞職表明から1週間で反維新勢力が候補者を擁立することはほとんど不可能だった。にもかかわらず、吉村知事は、記者会見で、無投票当選でも民意を得たと言えるのかとの問いに対して「公約に掲げ、選挙に当選することが民主的なプロセスだ。都構想に挑戦したいというのはかねがね申し上げてきた。もし、反対であれば、立候補されると思う」として、無投票でも民意を得たことになるという考え方を示したという(1月16日、毎日新聞)。まさに傲慢というしかない。
 今回の出直しダブル選挙は、中長期的には維新が追い詰められていることの表現だが、短期的には「民意を得た」として3回目の住民投票へと突き進むことも考えられる。そのためには法定協議会を設置することへの維新大阪市議団の同意が必要だが、これまでの経緯から考えて、内部での批判を抱えつつ来年3月の統一自治体選挙と同日で住民投票を強行する可能性は強いだろう。維新内部の矛盾を拡大させて、住民投票それ自体を断念させるためには、民主主義と住民自治を掲げた草の根からの反対運動を再構築していく必要がある。その上で、住民投票が強行されることも見すえて、3回目の否決をめざした運動を準備していかなければならない。それが「大阪都構想」を最終的に葬り去るとともに、維新による大阪「支配」を終わらせる道である。
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