21世紀のファシズムとどう闘うのか?

ヨーロッパと南米の経験から ②

エンツォ・トラヴェルソとのインタビュー

極右が「民主主義的秩序の守護者」として台頭

 たとえばフランスのマリーヌ・ルペンは党名を変更し、父親と決別しただけでなく、第五共和制の制度と民主主義的価値へのコミットメントをはっきりと表明しました。イタリアも、もう一つの典型例です。ジョルジア・メローニは明らかにファシストのルーツを持つ政党を率いています。数年前まで彼女はその伝統を誇らしげに主張していました。しかし、彼女は政権に就いて以来、ファシズムについての一切の弁明をやめました。もちろん彼女は反ファシズムを宣言しているわけではないですが、自分たちの「民主主義的」な性格と現在の制度的枠組の擁護を常に主張しています。
 米国ではこのパラドックスが極限に達しました。2021年1月の連邦議会襲撃は民主主義の名の下に実行されました。この抗議行動の参加者たちは自分たちが「民主党に『奪われた』民主主義を守っている」と主張した。つまり、彼らは自らを真の民主主義者として表現したのです。
 これは根本的な転換です。新しい急進右翼の民主主義に対する関係は、歴史上のファシズムのそれとはまったく異なっています。あなたが的確に指摘しているように、今日では民主主義とファシズムの境界線は明確ではありません。21世紀のファシズムは民主主義の形式を廃止しようとはしておらず、むしろそれに内側から関与し、侵食し、変質させようとしています。この民主主義とファシズムの境界線の不明確化によって、旧来の、たとえばプーランツァスが使っていたような分析上のカテゴリーはやや陳腐化しています。これについては後で述べます。

革命的闘争で勝ち取った民主的権利と、守る価値のない形骸化した民主主義

 しかし、この変化を説明する上で、もう一つの歴史的な違いも考慮するべきでしょう。二つの世界大戦の間の戦間期には民主主義はごく直近の獲得物であり、サバルタン階級の歴史的勝利であり、ロシア十月革命と第1次世界大戦後の「19世紀の自由主義的秩序の崩壊」に続く革命の波の産物あるいは副産物でした。それは荒々しい危機の時代でしたが、同時に、民主主義の重要な前進が見られた時代でもありました。多くの国で男性の普通選挙権が定着し、いくつかの国では女性が選挙権を勝ち取り、公共の空間が変貌し、新しい大衆参加の形が出現しました。この背景の中で、ファシズムは明確に民主主義の敵として登場しました。1920年代のイタリア、1933年のドイツにおけるワイマール共和国の突然の崩壊、そしてスペインの内戦がそれです。スペインの内戦ではファシズムと民主主義が直接に戦いました。
 しかし、現在では状況はまったく異なっています。民主主義はもはや守るべき成果ではなく、空っぽの貝殻に見えるようになっています。西側世界の多くの国で民主主義は形骸化され、公共空間の商業空間化、機関や制度の空洞化、経済と政治の関係の構造的変容などの進行によって深く侵食されています。これは西欧だけでなくグローバルな規模でも進んでいます。もはや誰も民主主義が解放を約束するものだとは考えていません。米国ではイーロン・マスクがドナルド・トランプの選挙キャンペーンを支援し、彼に2億7000万ドルを与えました。このような状況で民主主義が平等・自由・公正を保証するものだとは誰も考えません。

どのような民主主義を守り、どのような民主主義を築くのかが真の問題

 しかし、米国の例を除けば、ファシズムが現実の脅威として語られることは常に稀です。米国でも「トランプのファシズム」について議論されるのは多くの場合、リベラルなエリートたちの間だけです。たとえば、ジョー・バイデンやカマラ・ハリスは選挙キャンペーンの中でトランプをファシストと呼び、ニューヨーク・タイムズ紙などのメディアでもこのテーマについて議論が交わされていますが、そこでもトランプは多くの場合、異物として扱われ、アメリカ民主主義や西欧民主主義のパラダイムの上に外から降ってきた奇妙な存在として描かれています。つまり彼は米国社会とその民主主義システムの中で生み出されたとは考えられていないのです。
 一方、庶民階級・労働者階級の大部分にとって、民主主義の擁護は自分たちの関心リストの下のほうにあるだけです。彼ら・彼女らにとって、トランプが民主主義への脅威であり、バイデンがその救済者だと考える理由があるでしょうか? トランプとバイデンの対立は彼ら・彼女らにとってどうでもよいことです。もちろん、そう考えてしまうのは少し軽率です。トランプが脅威であることは間違いありません。しかし問題はもっと深いところにあります。現存する民主主義と守るべき民主主義を同一視している限り民主主義を守ることはできません。私たちがどのような民主主義を守りたいのか、どのような民主主義を築きたいのかが本当の問題なのです。
 民主主義がそのような空洞化した制度でしかないのであれば、それを守るために大規模な反ファシズム運動を動員することは非常に難しいでしょう。特に、それを攻撃している人たちも自分たちこそが民主主義者であると主張し、しかもこの制度が機能していないのが問題だと(一定の根拠があって)主張している場合はなおさらです。何を守るのか?それが問題なのです。

トランプのMAGAは米国衰退の表現

Q あなたはこの新しい極右の特徴として、エリート層からの支持が高まっていることを指摘しています。トランプの場合、それが非常に顕著だと思われます。彼は現在、2016年当時よりもはるかに強力に共和党を掌握し、両院の支持を得ており、最高裁も彼の意向に沿っており、今や支配階級の多くの部分が彼に同調しているように思われます。トランプの二期目に国内および国際的に何が起こると予想できるでしょうか?

A 今、多くの人がそのように問いかけていますが、簡単な答はないでしょう。それも古典的ファシズムとの重要な違いの一つです。歴史上のファシズムには明確なプロジェクト、すなわち明確な政治体制、権力戦略、国内および国際秩序の概念がありました。たとえばイタリア・ファシズムは地中海を「われらが海」にすることを目指していました。ドイツ・ファシズムはヨーロッパ大陸を支配すること、とりわけ東ヨーロッパを帝国の下に軍事的に征服することを目指しました。スペインのフランコは「共産主義者を粉砕」し、全国的なカトリック独裁体制を確立することを目指しました。つまり目指すべき体制と世界について非常に一貫した考え方がありました。
 トランプの場合は何を目指しているのかがそれほど明確ではありません。彼のメッセージはしばしば矛盾しており、純粋なデマゴギーと本当の戦略的方向性として理解可能な主張とを区別するのは難しいです。たとえば、「火星で星条旗を栽培する」、「グリーンランドを併合するのはいいアイデアだ」、「カナダを米国の51番目の州にすべきだ」などと発言しています。本当のところ、これらの発言の裏には米国の南北アメリカに対する大陸的影響力を強化することを目的とした地政学的プロジェクトがあり、その枠組みの中で中国との関係を再定義し、他の地域からは相対的に手を引くという戦略があります。帝国的な相貌に覇権主義的な野心が表れていますが、これは、逆説的ですが、米国の弱体化の産物なのです。米国は、冷戦の終結とソ連の崩壊後に思い描いていたような世界支配の願望を放棄したのです。

古典的ファシストと急進的新自由主義者の矛盾した集合体

 そうは言っても、明確に定義されたプロジェクトが存在しないので、これらは推測にすぎません。25年ほど前、2001年9月11日の後にブッシュが進めた新保守主義右翼の戦略的な路線はもっと明確でした。ロバート・ケーガンを始めとするイデオローグ・戦略家たちはそれを厳密に定義していました。トランプの背後にはスティーブ・バノンのような古典的ファシストと、イーロン・マスクのような急進的新自由主義者という矛盾した集合体が存在します。アナリストたちは国際貿易に関するトランプ大統領の政策の一貫性について理解しようと苦闘しています。
 トランプが「米国を再び偉大にする」という古典的な言葉を口にする時でさえ、「偉大さ」の中身はよくわかりません。米国のグローバルな超大国としての役割の回復を指しているようですが、同時にたとえば中国との直接的な対決政策を打ち出すことは避けています。実際には彼はむしろ中国との合意を求めており、中国の同盟国で中国よりもはるかに弱いロシアに対しても同様の姿勢です。トランプは「超大国には征服する能力も必要だが、紛争を起こす能力も必要だ」と言っています。ウクライナに関する彼の立場はそこに位置づけられ、彼は「ページをめくる」ことを提案しています。中東でも、彼とイスラエルとの同盟関係は明らかですが、彼は必ずしも戦争を無期限に続けるつもりはないと思われます。彼の政治的な陣営から見れば、最終的な目標はおそらくガザとヨルダン川西岸地区の完全な植民地化でしょうが、トランプの戦略がその目標のためにガザでの大量虐殺を長引かせることにあるとは思えません。
 私たちは一連の傾向を見ていますが、そこに強い政策的な一貫性はありません。それはまた、現在の国際的な背景の中で起こっていることです。戦間期との類似点を見つけようとするなら、最も明確な類似点は国内政治ではなく世界情勢の中にあります。つまり、安定的な国際秩序の不在、そして衰退する大国と台頭する大国の拮抗です。このようなシナリオの中では米国でも他のどの国でも明確な路線を打ち出すのは困難です。だから私には現在のトランプが1933年のヒトラーのように明確で首尾一貫した考えを持っているとは思えないのです。1933年から1941年までの間、ナチスの政策はかなり単純な路線に従っていました。トランプの場合にはそのような一貫性も、長期的な戦略プロジェクトを展開する条件も見あたりません。
(つづく)

The KAKEHASHI

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