「燃える地球でいかに戦うか?」

おはなし:箱田徹さん(神戸大学大学院国際文化学研究科)

ATTAC Japan(首都圏)講演会

 【東京】アタック首都圏の総会、講演会が5月31日、文京シビックセンターで、行われた。

直接行動の意義

 「燃える地球でいかに闘うか?」と題する講演の冒頭、箱田徹さんはハンバッハ(ドイツ・ケルン近郊)の露天採掘鉱山での闘争を紹介した。脱原発闘争などで日本より進んでいるといわれるドイツにおいて取り組まれるこの反炭鉱、反化石燃料闘争は、大きく知られているわけではない。しかし、箱田さんがドイツの書店のビラで闘争の存在を知った2018年には動員1万人を数える占拠闘争であったという。すり鉢状に広がり続ける巨大な採掘場、全長100メートルを超えるものもあるという掘削機械の傍らを「エンデ・ゲレンデ」(もうここで終わり、の意)の人々が行進する様子、ツリーハウスで森の破壊を阻止する様子。近未来的な、地の果てとも形容できるハンバッハの雰囲気を通して、化石資本採掘を問う直接行動の意義が伝わってくる。

「パイプライン爆破法」の提起とは

 箱田さんは何度も気候崩壊に対する闘争は他の社会運動との結節点であることを指摘した。反資本主義、反植民地主義との結びつきでの中で、例えば性的少数者が現場で討論を主導し、運動をつくれているか、ということでもある。気候変動についての運動が、単一の環境保護運動の文脈で理解されるにとどまる日本の現状において、戦争、気候変動に歯止めをかけられない世界をどうとらえ、どのように地球的規模の破壊をとめていくのかが喫緊の課題であると、参加者はかみしめたのではないか。
 箱田さんは、自身が訳したアンドレア・マルムの2冊の著書、「パイプライン爆破法」(月曜社)、「パレスチナを破壊することは地球を破壊する事である」(青土社)の概略をかいつまんで紹介した。「パイプライン爆破法」は気候正義運動をはじめとする直接行動、特に化石燃料を運ぶパイプライン切断、あるいは南アフリカの反アパルトヘイト闘争など武装闘争、ガンジーの言動が非暴力にとどまるわけではないこと、などを例に引きながら「非暴力」の位置づけについて提起して、論争を呼んだといわれる。

パレスチナ連帯で問われていること

 非暴力ゆえに闘争を成功に導いたという「神話」が横行しすぎているのではないかという危惧から起こった提起である。「パレスチナを破壊することは、地球を破壊することである」では、ガザでの虐殺がイスラエル国家の犯罪だけに切り縮められるわけではなく、帝国主義国全体がどう化石燃料の安定供給を図ってきたのかという歴史的、世界的文脈で例証していることに瞑目させられる。
 歴史的には、「エジプト・トルコ戦争」に介入したイギリスが1840年、初めて蒸気を用いた戦艦で砲撃した際、当時のパレスチナ(アッコ)に破壊的な惨状がもたらされたことの意味をまず、問うている。続けて、イスラエルロビーに引きずられる米国支配層という構図の描き方、ハマスの武装に対する定義に対しても、それぞれ章を立てて論難をこころみ、自身への反論も併載するなど、刺激を受ける内容である。

三里塚闘争と連動する

 この2冊に共通する点として、進行中の巨大な不正義に対して「非暴力」にとどまっていていいのか、それは思考停止といえるのではないかという問いかけが横たわっている。「パイプライン爆破法」では特に、パイプラインだけでなくジェット機、SUV車など無駄に化石燃料を排出する財物の破壊ということを、私有財産保護絶対に対するアンチテーゼとして紹介している点が重要である。そして反サミット闘争などに見られるような、日程闘争に終始して消耗しがちな傾向にも関係するが、日常から逸脱しないことを旨とする私たちの意識(ビジネス・アズ・ユージュアル)へのアンチテーゼでもある。
 ある学習会参加者が漏らしていたように、日本でも(財物破壊を含む闘争は)三里塚をはじめとする様々な場所で当然にとられていた手段であるということに気づく人も多いだろう。箱田さんはこうした投げかけをおこなうマルムのことを煽情的とはとらえておらず、むしろ日本の非暴力をうたう運動より宥和的かつ他者を尊重する雰囲気の中で活発な闘争が取り組まれているという言い方をしていた。日本でよく言及される「ヨーロッパではここまでの闘争が出来ているのに、日本では何もできなくて」というような感覚に対して、箱田さんがはっきり違和感を表明していた様子も強く印象に残った。この2冊を手にとると、資本が支配を強めた歴史、空間をマルムが駆け巡っているさまを追いかけるようにして、闘争の豊かな歴史に触れることが出来るだろう。できることからはじめよう。  (海田)

講演する箱田徹さん(5.31)

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