6・25「沖縄は いま ふたたびの戦場(いくさば)を拒否する」
玉城デニー知事の再選を
本書の著者は、「まえがき」を次のように書き出している。
「現在のアメリカでは、複数の争点をめぐり、極めて深刻な対立が生じている。中絶は女性の基本的人権なのか、それとも許されざる殺人なのか。公立学校で教えるべきは進化論なのか、それとも神による創造なのか。警察による黒人射殺は構造的な人種差別の表れなのか、それとも犯罪に対する正当な法施行なのか。そして、より根本的な対立として、合衆国は人種や信仰の多様性を認める世俗国家なのか、それとも建国以来のキリスト教国なのか」。
これらの「複数の争点」の中で、学校教育で進化論を教えるのか、神による創造を教えるのかということが、争点になっていること自体、私には理解しがたいが、それ以上に、アメリカ人の40%が「終末論」を信じているということは、全く想像を絶する。福音派に限れば、その割合は60%になるという。
「福音」とは、イエス・キリストがもたらした「良い知らせ」を意味する。福音派は、神の言葉を綴った聖書を絶対視し、イエス再臨の地となるイスラエルの保護を自らの使命とみなす。その「終末論」によれば、「反キリスト」勢力との最終戦争(ハルマゲドン)の勝利によって、来るべき「終末」は、キリスト教徒とユダヤ民族の両方に訪れる。神が約束する「千年王国」は、エルサレムに王座を据える・・・。
1917年の「バルフォア宣言」、イギリスによるエルサレム占領、ユダヤ人のパレスチナへの「帰還」、そしてイスラエルの「建国」。米英による戦中・戦後の中東政策を福音派は歓迎した。「自分たちの眼前で神の予言が成就されていくその様は、原理主義者たちを終末論的な熱狂で鼓舞した」(P10)。
「それから半世紀、福音派は戦い続けてきた。人工妊娠中絶を行う医療施設の前でデモを行ない、同性愛者は地獄の業火で焼かれると拡声器で叫ぶ。裁判所にモーセの十戒を掲げるために活動し、伝統的な家族観を推進するためにセミナーを開催する。経済的な自由を支持するために連邦政府の規制に抗い、科学や歴史に神の視点を入れるために奔走する。福音派の立場を掲げる政治家の選挙活動を支援し、イスラエルを国際社会の批判に対して弁護する。白人の特権を擁護し、2016年以降は、トランプ陣営の重要な支持基盤となっている」(まえがきより)。
福音派の台頭の背景には、1960年代以降のアメリカ社会の根底的な変化がある。
「アメリカの伝統的な価値観を揺さぶったカウンターカルチャーの60年代が終わり、70年代の米国はくすぶっていた。ベトナム戦争は終わっていたが、ウォーターゲート事件のトラウマによる政治不信。止まらないインフレが経済を蝕む。都市の治安は悪化し、暴力が蔓延。道徳ではなく快楽が追い求められ、ドラッグが若者の未来を吸い取って行く。共産主義の脅威は変わらないのに、国威は斜陽にあるように見えた。困難な状況の中で、「再びアメリカを偉大に」という呼び声は、多くの米国人に希望を与えることができたのだろう。その希望を作り出し、そのレトリックをつむぎ、その運動を組織する中で、福音派という宗教政治集団が誕生したのだ。そして彼らの中心にいて、その主役を務めたのが、観客に夢と希望を与えたハリウッド黄金時代の俳優ロナルド・レーガンだったことは皮肉なのか神の摂理なのか」(P88)。
「再びアメリカを偉大に」は、レーガンのスローガンだった。レーガンを当選させ、その新自由主義政策を強力に支えたのは福音派だった。80年対以降、福音派は「宗教政治勢力」として、特に共和党の岩盤支持勢力となっていく。そうすることで、その宗教的信念は、政権の政策に反映していく。トランプは、この「宗教政治勢力」を巧みに利用した。
トランプは、妊娠中絶に反対し、最高裁判事に保守派を指名すると公約して福音派を取り込み、大統領選に勝利した。16年の選挙では80%の白人福音派から票を得て、激戦州である中西部での逆転勝利につなげた。
大統領に就任すると、エルサレムに米国大使館を移転し、連邦最高裁に3人の保守派判事を送り込んで、妊娠中絶を憲法上の権利と認める半世紀前の「ロー対ウェイド法」をひっくり返した。
トランプは、福音派で、統一教会に解散命令を出した日本政府を批判するポーラ・ホワイトを「信仰局」の局長に任命し、福音派ではないが、カトリック右派のバンスやルビオ、福音派のヘグセスを政権中枢に集めた。アメリカは「政教分離」はもはや建前に過ぎない。もちろん、トランプの取り巻きが特に信心深いわけではなく、彼らは宗教勢力を票田として利用し、宗教勢力は政治を自らの目的のために利用しているのだ。
「福音派の特徴は巨額の献金が動く経済力にある。・・・全米2000団体の収入は年間370億ドル(約5兆9000億円)に達するという」(日経3月30日)。
福音派の最右派ヘグセスは、中東での戦争を十字軍にアナロジーする。
「ヘグセス米国防長官はトランプ政権内で宗教言説を最も前面に出す。会見などで「全能の神の摂理」に繰り返し言及し、イランの体制を「邪悪」「野蛮」と断じ、省内の礼拝では「慈悲に値しない者への圧倒的な実力行使」を説いた。(中略)2020年の著書「アメリカン・クルセード(米国の十字軍)」では、「キリスト教徒は妥協なき米国主義の剣を手にイスラム主義を押し返さねばならない」と主張している」(朝日5月10日)。
もはや正気の沙汰とは思えないこのような言説が、公然と飛び交う。福音派との蜜月が作り出したトランプ政権の危険極まりない実体だ。
MAGA派の勢力と福音派を中心にした宗教右派の勢力は重なっている。いずれも、グローバル化と製造業の衰退がもたらした高賃金ブルーカラーの没落と地域の廃頽(ラストベルト)を背景に台頭した。余談だが、日本製鉄が買収したUSスチールの東部ペンシルベニア州にあるモンバレー製鉄所の「熱延設備」(鉄の塊に熱をかけて薄く延ばす設備)は、稼働から90年近くが経過した世界最古のものだという。なんという製造業の衰退!
福音派には白人中流階層の支持者が多かったが、この層も、グローバル化の恩恵に浴すことなく、リーマンショック以降は低所得の仕事に追いやられた。
危機が深刻化すれば急進化する。それは、白人プロテスタントの「キリスト教ナショナリズム」の長い歴史の延長線上にあって、さらに過激化する。
「公共宗教研究所とブルッキングス研究所が共同で行った23年の調査によると、福音派のキリスト教ナショナリズムに賛同する割合が、米国の他のどの宗教集団よりも5倍以上高いことがわかった。福音派の白人はその中でも突出しており、人種主義と移民排斥、さらには反ムスリムの傾向が顕著に現れているという。同様の傾向はトランプへの信頼度、主流派メディアへの懐疑、Qアノンの陰謀論を信用する度合いにも見られた」 「今日のキリスト教ナショナリズムは、社会的影響力の喪失への危機感と、既得権益を奪われつつある被害者意識に基づいている。この変化の背景には、白人キリスト教の人口比率が、アメリカ社会の半数を下回るという人口動態の変化がある。人口動態の変化に加えて、初の黒人大統領の誕生、同性婚の法制化、ブラックライブズマター運動の台頭、そしてグローバル化の深化や移民の増加といった社会的変化は、白人の優位性とアイデンティティーを脅かすものとして受け止められた。その結果、今日のキリスト教ナショナリズムは、恐れと怨恨に基づく反動として表出しているのだ」 (P250―251)。
本書は、アメリカの現代政治に深く関与する宗教右派と、その勢力を巧みに利用する政治家の姿を見事に描きだしている。本書を通読して、アメリカ社会の理解しがたい奥深さをひしひしと感じた。トランプ的傾向を強力に支持する勢力、とりわけその中東での戦争政策を支持する勢力は、トランプがいなくなっても、アメリカの政治を左右し社会に大きな影響を与え続けるだろう。
しかし一方で、ニューヨーク市長選挙でのマムダニの勝利のように、この社会は、宗教や人種的対立を乗り越える力も持っている。
アメリカ社会について、さらに深く学ぶ必要がある。理解を深めたとしても、進化論を受け入れないことへの違和感は、なお拭えないだろうが。(5月17日)
【東京】6月25日、日比谷図書館地下1階コンベンションセンターホールで、「沖縄は いま ふたたびの戦場(いくさば)を拒否する」と題して、沖縄出身の伊波洋一参議院議員と高良さちか参議院議員が問題提起そして、9月13日の沖縄知事選に向けて、玉城デニー知事が再選に向けた力強いビデオメッセージを寄こした。主催は沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック。
日米軍事強化反対、平和教育への文科省の介入を許すな
伊波参議院議員は、「2022年1月に日米が策定した『台湾有事』日米共同作戦では、日米が先島の島々を臨時の攻撃拠点にすることを合意したため、沖縄県先島の与那国町、竹富町、石垣市、多良間村、宮古島市の5市町村の全住民と滞在者の約12万人を九州・山口の各県に避難させる計画が内閣官房を中心に2022年度から始まっている。沖縄戦から80年を過ぎて、再び沖縄を戦場にする計画を許すわけにはいかない。南西諸島だけでなく日本列島全体を中国への盾にする計画だ」と批判し、中国との平和外交で友好関係を作っていくべきだと提起した。
次に、高良さちか参議院議員が「平和教育を憲法の視点で考える」とし、①文科省の平和教育への介入問題②現場の懸念③主権者教育と平和教育④平和教育について、話された。現場の声では、京都教職員組合の「文科省の判断が、『学校現場を委縮させ、平和教育・政治教育を後退させることになりかねない』『極めて恣意的であり撤回を求める』声明」などを紹介している。憲法二十六条では、「教育内容について(子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような介入はゆるされないが)決定する機能」を紹介し、文科省の今回の事件での介入を批判した。
玉城デニー知事の出馬のアピール
玉城知事は、「誰ひとり取り残さない沖縄へ!」と訴えている。
この沖縄を実現するためには、「一人でも多くの人が自分も参加者だという意識をもつこと、参加することが大切です。自分自身の成長のステップにもなり、『みんなは一人のために、一人はみんなのために』という心のつながりが広がります」。
新時代沖縄 なおひたむきに 希望の先へ。
「強くしなやかな自立型経済の構築、あらゆる世代への支援、恒久平和の願いと未来の平和への発信、沖縄らしい自然と歴史・伝統、文化の継承と発展へさらにひたむきに取り組みます」。
すべての人が夢や希望を チムグクルとユイマールの笑顔ある平和な社会へ
*注 チムグクルとユイマール。前者は「思いやりの心」を、後者は「助け合いの行動」を表しており、現代の沖縄社会や国際的な取り組みにも深く根付いている。(注 編集部)
知事選支援の訴え
沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックが知事選支援の訴えを行った。
来る秋の沖縄県知事選は、「新時代沖縄」を実現できるか、それとも基地負担と軍事化が固定化されるのかが問われる重要な局面です。
沖縄が置かれている問題は安保政策の枠に収まるものではありません。基地の過重な集中は構造的差別を再生産し、「本土の理解が得られないから辺野古が唯一」とする政策決定は植民地主義の延長ともいえる現実を生み出しています。実際に、基地建設は地方自治体と民意を踏みにじる形で進められてきました。さらに、辺野古新基地が完成したとしても、滑走路の制約から普天間基地の返還が実現しないことまで明らかになりました。
さらに、軍拡政策の進行も看過できません。「抑止力」の名のもとで基地機能の強化やミサイル配備が進み、地域の緊張が高められています。琉球弧が捨て石として位置づけられる政策は、住民の生活よりも軍事が優先されていることを示しています。
一方で「新時代沖縄」は、基地に抗することに加え、「アジアとの架け橋」として沖縄の可能性を切り開く構想でもあります。対話を通じて平和を築く実践に根ざしたビジョンです。
沖縄の人びとは「命どぅ宝」の思想のもと、繰り返し暴力的な政策に抗ってきました。その営みは日本社会に埋め込まれた差別構造を問い直すものであり、日本の皆さん一人ひとりに向けられた問いでもあります。……
私たちにできる支援は…
1 沖縄に居る、ご家族・友人・知人に電話やメールで声かけを!
2 選挙資金のカンパを!
*郵便振替 振込先口座は 00150―8―120796
加入者名 沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック
知事選挙カンパは課税控除対象です。
カンパは関東ブロックで集約してカンパ者名簿と共に選対に届けます。
3 公式アカウントをチェックし、情報を拡散しましょう!
後半は、垣花暁子(かきのはなあきこ)さんの唱三線が行われた。琉球の豊かな唱とカチャーシーで全員が躍り団結を固めた。玉城デニー知事の再選を必ず実現するために最大限の支援をしよう。(M)

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