7.25県によるリニア静岡工区工事着工容認に抗議

調査なしで工事許可はダメ!緊急集会

 【静岡】7月25日(土)「静岡県リニア工事差し止め訴訟の会」は緊急集会を開催した。
 本年3月末の地質構造・水資源、生物多様性の両専門部会での「対話終了」は4月29日に開催された大井川利水関係協議会と関係市町首長会議に報告・了承された。
 さらに、5月11日の中央新幹線環境保全連絡会議では、JR東海との対話完了がシナリオ通りに確認された。5月末、静岡市を皮切りに大井川流域10市町でJR東海主催の「流域の皆さまへの説明会」が行われ6月22日に終了した。静岡県も「JR東海に寄り添って」というほどの力の入れようだったが参加者はわずか1137人であった。
 この説明会をもって知事はリニア事業への県民の理解が深まったとして7月7日の県議会最終日に河川法上の工事容認を表明した。7月18日には県とJR東海は、静岡市長と流域10市町の首長、国交省事務次官立会いの下で着工の前提となる県自然環境保全条例に基づく協定を締結した。JR東海は準備が整い次第、起工式を行い年内中にも着工しようとしている。

工事差止めが認められる(勝訴)ための要件

 この集会は6月27日に開催される予定だったが台風のため延期を余儀なくされた。集会には約90人が参加した。2部形式で行われた集会は、第1部は、リニア新幹線差止訴訟弁護団事務局長の西ヶ谷知成弁護士から2020年10月30日提訴から今日に至る訴訟の経過や差し止め訴訟で判明したことについてプレゼンテーションを交えて報告された。
 西ヶ谷弁護士は工事差止めが認められる(勝訴)ための要件として⑴被保全権利が存在するか 大井川の水を利用する権利(生活用水、農業用水)、環境権、ボランティアの人格権(高山植物保護のための鹿の食害防止活動等)⑵工事による権利侵害の高度の蓋然性があるか(毎秒2トンの減水が生じるか)⑶受忍限度を超えるか(公益性との利益衡量)にわたって詳しく解説した。
 とりわけ⑵に掲げた工事による権利侵害の高度の蓋然性について詳細に述べた。JR東海が工事によって毎秒2tの減水を主張してきた点について大井川流域の7市(60万人)に水道水を供給する静岡県大井川広域水道企業団は、年間約3800万tの水を供給している。これは秒にすると毎秒1.2tにあたり、流域7市60万人の上水道使用量をはるかに上回る水量が失われる恐れがある。頻繁に取水制限が行われるなど、特に渇水期における大井川の水は不足がちである。JR東海が2020年8・25国交省有識者会議に提出した地下水位予測値低下量図によれば工事着手後3年後から地下水位が低下しはじめ5年後、8年後、20年後の図が示された。20年後には長さ10キロ、幅2キロの範囲での300m以上の地下水位の低下が見られ100m以上では驚くべき範囲で水位が低下し上流部の表層流や沢の消失、それに依拠する動植物の絶滅が危惧される。
 にもかかわらずJR東海は湧水低減策(①吹付けコンクリート ②防水シート ③覆工コンクリート ④薬液注入)を行うことで毎秒2tは減らないと主張。ところがこれらはことごとく功を奏さないことは明白だ。吹付けコンクリートは地盤工学会の「山岳トンネル工法の調査・設計から施工まで」によれば吹付け面に湧水があれば付着性が悪く、背面に水圧が作用し、コンクリートが洗い流されたり剝落が生じるので水抜きをしないとだめと記されている。②防水シート、③覆工コンクリートも、湧水処理をシート等で面的に行うと地山と吹付けコンクリートの付着が得られず、やはり水抜きのためにドレーン材(水抜き管)を使用して水を抜く。地山表面を覆っても裏面から排水しなければならないので湧水低減策とならない。④薬液注入(グラウト)ではプレグラウト(トンネル掘削前の薬液注入)とポストグラウト(掘削後の薬液注入)を併用して工事を行うと主張。
 JR東海作成「大井川水資源利用への影響の回避・低減に向けた取り組み」では高圧の大量湧水区間では、薬液を注入しようとしても水圧に押され、うまく地盤内に注入されず、トンネル内へ薬剤が流れ出てしまうことも考えられるため、必要により、追加のボーリングでトンネルのごく周辺の水圧を下げたうえで、薬液注入の施工を行うとしている。薬液で掘削面を固めてしまおうというのだがそのことすら高圧湧水を全部抜いてしまわなければ工事はできないのだ。

薬液注入 効果がない


 トンネル掘削後の薬液注入が効果がないことは岐阜県瑞浪市大湫地区の井戸や池の水位低下や渇水、鹿児島県北薩横断道路「北薩トンネル」で発生した大規模な路面の隆起、壁面の覆工コンクリートの崩落事故で明らかだ。
 JR東海が提示する湧水低減策が無効であり、大規模な環境破壊は不可避である。ところが国交省有識者会議では問題にされなかった。問題にしたら工事認可がままならないので無視してしまったのだ。
 トンネル工事で流失した水をポンプアップして全量戻しをするというが上流部の下辺にあたる椹島に戻すと椹島以北の上流部に水が戻らない。ポンプアップも永久に行われるか保証はない。

スーパー・メガリージョン構想?

 ⑶受忍限度を超えるか(公益性との利益衡量)については、リニア新幹線事業に公益性はあるかとしてJR東海の主張する①「三大都市圏を高速で結び、一つの巨大都市圏を作って経済・社会活動の活性化」②「南海トラフ地震に備えた東海道新幹線との二重系化」について述べた。
 ①はリニアが東京・大阪間を67分で結ぶことで三大都市圏が一体化され巨大経済圏が形成されるというスーパー・メガリージョン構想だ。大阪・名古屋間は既に48分で結ばれているが一つの都市圏を形成していないことは誰もが知っている。生産年齢人口が減少し、リモートワークやWEB会議が普及し、人の移動自体が不要となってきている現代において時代錯誤と言うしかない。
 ②の二重系化も後付けの理由だ。リニアルート自体が南海トラフ地震の想定震源域内だ。東海道新幹線や東海道本線の代替ルートとはならない。リニアには災害時に求められる物資輸送能力がない致命的欠陥があり、人員輸送に限っても他の鉄道の乗り入れもないから有効活用ができない。つまり利便性もなければ公益性もない。品川・名古屋間の工事費は11兆円を超えた。そもそも「利益は見込めない」とJR東海は言ってきた。受忍限度を上回る公益性はないことは明白だ。果たして裁判所の判断は? 次回口頭弁論は9月25日午後2時半から、仮に9月25日が結審となれば来年2月に判決が予想される。

リニア新幹線静岡工区をめぐる情勢

 第2部ではリニア新幹線静岡工区を取り巻く現在の情勢と今後の行動提起がなされた。 冒頭で記したように着工に向けて急速に事態が動き出した。県内の断層や県境の大断層(破砕帯)を調査することなしに工事許可が行われ、生物多様性専門部会の検討項目に係る沢の現地調査も行われず工事に向かってまっしぐらだ。8月にも工事車両が現場に入ることが予想される緊迫した情勢だ。わたしたちは「調査なしでの工事許可はダメ!」とあらゆる場所で訴える。読者諸氏も拡散をお願いたします。

    行動提起

 以下は当面する行動の提起である。
 ①JR東海に今後の工程を明らかにさせるために第5次公開質問状を発する。
 ②着工初日の行動として南アルプス静岡側登山口である井川畑薙ダム上部の沼平ゲートでのアピール行動を計画する。
 ③今後の工事についての学習会の開催
        (S)

「命の水を守れ」と訴える静岡県リニア工事差し止め訴訟の会(7.25)

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