8.1「台湾・沖縄とともに〜黒潮ネット」シンポジウム
「『帝国の狭間』を覇権争いの場にさせないために」
【東京】8月1日、東京・文京シビックセンターで、シンポジウム「『帝国の狭間』を覇権争いの場にさせないために」(「台湾・沖縄とともに〜黒潮ネット」本格立ち上げイベント)が、台湾・沖縄とともに〜黒潮ネット/自主講座「認識台湾」の主催で行われ、会場を一杯にする大盛況だった。
最初に、「黒潮に抱かれて~与那国島と台湾~」(琉球朝日放送制作・2026年3月27日放送・50分)が上映された。見てもらいたい(2027年3月28日まで)。
黒潮ネットの目標
司会の加藤直樹さんが黒潮ネットについて説明をした。
「駒込武さん(京都大学大学院教育学研究科教授)がやっている自主講座『認識台湾』がある。台湾有事が言われている中で、台湾をちゃんと知っていこうではないかと活動が始まった。『黒潮ネット~台湾・沖縄とともに』という名前になった。台湾のことを考える時に、沖縄ということを共に考えていくべきではないか」。
「台湾を守る、それが日本の利益でもあるとして軍事強化が進められている。『台湾問題は中国の国内問題だ。われわれには関係ないよ』、という意見があるが、それは違うのではないか。日本・アメリカと中国とが軍事的な対立を深めている中で、その重圧を今、掛けられているのが台湾と沖縄の人びとだ」。
「その時重要に考えているのが歴史だ。日本の侵略がある。まず最初に琉球王国であった沖縄を併合して、植民地にした。その次に台湾を中国から割譲させた。帝国日本は戦争に負けた」。
「沖縄・台湾に対してもそこに住んでいる人びとの自己決定権を否定しながらものを考えることはできないはずだ。アジアの平和をどう作れるか、考えていく」。
続いてディスカッションが行われた。
日本の方は、台湾を見ていないことが多い
張彩薇(ちょう・あやみ)さん(台湾出身、京都大学特任教員)
「2023年の夏に、与那国島に行った。印象に残ったのは自衛隊員がすごく多くて、軍服を着ていた。憲法九条も大事ですし、軍事化をやめることも大事だが、台湾の人から見ると、日本だけそうするのはずるいんじゃないかという気持ちはある。日本の方は中国との関係とかアメリカの関係の中でしか、台湾を見ていないことが多い。だからこそ平和構想が重要だ」。
石垣島で反基地運動を闘う
宮良麻奈美さん(「石垣市住民投票を求める会」メンバー)
「2018年から石垣島で、住民投票の会を立ち上げて、島への自衛隊駐屯地建設の賛否を問う住民投票をしようという活動を約6年間やってきた。一カ月の間に法定署名37%集めて、石垣市長に訴えたが、それは実施されずに南西シフトは完成して今、日米共同訓練とかが当たり前のようにやるようにもなった。当初は否定されていた攻撃能力を持つミサイルの配備などがどんどん進んでいて、いつの間にか台湾有事の最前線として軍事利用されていく。同時に国民保護計画という形で、12万人の先島諸島の住民を九州・山口県に避難させる話も出ている。どんどん戦争の準備・シミュレーションだけが進んでしまい、危機感を覚えている」。
「先住民の土地で、同意なく軍事活動をすることは国連の先住民の権利宣言でも本来認めてはならないことになっている。日本では沖縄・琉球を先住民と認めたくない。沖縄を常に軍事的な拠点としてキープして置きたいからだ。本当に台湾が望む平和と自由が得られるのか」。
首都圏で沖縄への自衛隊基地強化に反対
首都圏で10年以上、自衛隊の「南西シフト」に反対する活動を続けている石井信久さん(「島じまスタンディング」メンバー)
「2017年から与那国、石垣、宮古、沖縄島、奄美大島、馬毛島、九州島の7つ、琉球弧状に並んでスタンディング。そのプラカードは軍事化のことだけではなくて、島の自然や文化のイラストを書き込んでいった。」。
「日本の平和運動はどうしたら、琉球弧や台湾の人びとが自己決定権を奪われることなく、軍事緊張にさらされることなく、平和でいられるのかを第一のテーマでやっていくべきだ」。
台湾・沖縄の自己決定権について
司会の加藤さん。
「台湾の人たちは自己決定権を、日本に対する抵抗の中から、台湾人としてのネーションが形成されてきた。その中から独立運動が生まれてきて、単に大国によって取引されるものではなくて、自分たちの声を上げる存在として台頭してきている」。
張さん。
「台湾独立派が少数派ということは日本の人にとって、何でそう重要なの、と思う。それとくっついた形で、結局台湾の人も現状維持を選択しているのでしょ、という結論が出てくる。台湾の少数派・多数派は何なのか、いつも困る」。
「台湾は独立図っているから戦争になるんだという言説もあるが疑問だ。台湾をどうあるべきかと決めるのが日本だという潜在意識がある」。
加藤さん。
「台湾の民主化運動は台湾に住んでいる人々のための体制を作るという目的を持っていたので、その中には独立を掲げるものもあった。独立は台湾共和国なんなんなりに、自分たちの憲法を作って国を明確に宣言すべきだという立場だ」。
「台湾の人びとが自己決定することを、北京政府も東京政府も認めることができないことが問題だ」。
反基地運動と台湾問題
宮良さん。
「沖縄で開催されたシンポジウムがあり、登壇者が国民党寄りの方ばかりだった。台湾が独立と言わなければ、平和なんだ、沖縄も戦争にならない、だから台湾は余計なことをしないでくれ、という沖縄側の発言があって、それが問題になった。そうした意見が支持を得やすかったりしている。台湾に対する理解がまだ浅いところもある」。
「中国にも武力行使してほしくない、沖縄が平和であってほしいという、本心での訴えをスルーしてしまう。自覚的にならないといけないと思うのは、自分たちの耳障りのいいことを聞きたがるというのはどうしてもある」。
安良さん。
「都合によって、私たちのアイデンティティーは翻弄されてきた。歴史を振り返って、基地問題、自分とか、何なんだろうということに対峙しなければいけない」。
石井さん。
「宮古島の保良に弾薬庫が作られた。その時、島の人たちは毎日、何回も工事を止めるために、座り込みをしていた。その時言っていたのが、一分一秒でもいいから止めるんだ。その間に本土の方で問題意識が広がることを期待する。対応するものが私たちの東京での運動の中にあるかと言えば、見当たらない。島々に押し寄せている問題について、まったく対応できていない。私たちの意識を変えていかなければならない」。
東アジアの平和運動に向けて
シンポジウムの中で、駒込武さんが台湾と沖縄そして、日本の関係を歴史的に俯瞰する提起を行った(別掲)。
シンポジウムは、今後の東アジアの平和運動をどのように作り上げていくのかの重要なヒントを与えてくるものであった。今後の活動に期待したい。 (M)
駒込武さんの発言から
日本の支配と台湾・沖縄の抵抗の歴史
台湾と沖縄の歴史はからまりあっている。1875年、台湾出兵、これは何を意味したのか。宮古島は日本の領土であるということを清国にアピールするために行われた出兵だ。1879年琉球処分、琉球王国が滅ぼされた。その後、琉球王国を何とか復権させようとする動きがあった。その可能性を最終的に断念させたのが日清戦争による台湾占領だ。
そういうことを願って当時、清国に逃げた人は日清戦争後、沖縄で牢屋にぶち込まれた。日清戦争で下関講和条約、台湾割譲。その後、いかに激しい抵抗が台湾であったのか、各地で清国の軍隊はすぐに逃げたが、住民が日本軍に徹底して抵抗した。日本軍は最初簡単に接収できると思っていた。途中で戦争の体制に変えて、台湾側の死者は少なくとも1万人以上の人が殺された。
特に印象的なのは女性で兵士として戦って多くの死体が見つかっている。今のウクライナでもそうですが、戦場にされている側の人は女性を含めて、戦わなくてはいけない。そうした形で、台湾と沖縄は歴史が絡まり合っている。
台湾も沖縄も第二次大戦中にひどい目にあった。沖縄戦の惨禍は言うまでもない。台湾人が日本軍として軍人・軍属とされた人が20万人いる。主に東南アジアに派遣されて、東南アジアにたくさん華僑と呼ばれる人がいるので、むしろ台湾人が華僑虐殺の先兵として組み込まれていった。そうした台湾人の中にはBC級戦犯として、戦後絞首刑された人びともいる。
同じように日本軍兵士として処刑されても年金とか恩給とかでは、お前たちはもう外国人だと切り離されてきた。
1972年、沖縄の人びとの中には本土復帰をすれば、米軍基地がなくなるのではないか。
米軍基地がなくなりはしない。沖縄の人びとに深い絶望を与えた。1972年、日中国交正常化が行われた。台湾の人びとにとっては自分たちの意志とはかかわりなく、中華人民共和国の一部だとされた。
そうした歴史を考えると、台湾と沖縄の歴史は複雑に絡み合っている。琉球弧の人びとの生活、自然や文化を破壊してきた。それは台湾の人びとに対しても、植民地化なので同じだ。台湾の人は日本時代を懐かしがっているのではないか、そう見えることがあるが、台湾の人はそうした外来の支配者によって、押しつけられたものを自分たちのものとして、何とか生かしていかなければいけなかった。
例えば日本時代の建物なんかもリニューアルして使う。そうした形でやらざるえない状況に追い込んできた。
沖縄で開かれたシンポジウムで、ある沖縄のメディア関係者が台湾は沖縄に迷惑をかけるな、と言って、後で謝罪し、撤回はしている。迷惑をかけているのは、台湾ではなくてある種台湾の人びとに寄り添っているかのような言論をばらまいている日本政府であるはずだ。それが台湾の人によって迷惑を掛けられているように見えてしまう構図がある。
それも何とか克服しなければいけない。本当の原因はどこにあるのか。まず、日本政府を変えなくてはいけない。
1972年の沖縄本土復帰の時に、沖縄のジャーナリストの川満信一さんが「復帰反対、復帰しても日本資本主義の食い物にされるだけだ」という論をした。同時に「日中友好ブームの中で、台湾の民衆を置き去りにしていないか」という論を書いた人だ。その川満さんが台湾が大国の駒として扱われてきた、その苦しみがこの沖縄では痛いほど分かると言った。私たちのこの議論の出発点であり、現状は難しいけれども、ちょっと長いスパンで見れば、そうした川満さんの言葉が今なお有効ではないか。(発言要旨、文責編集部)
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