メガプロジェクトの国家的動員にどう対抗するか(下)

ペク・ジョンソン

 第二に、資本間の競争である。資本主義において、個別企業の投資決定は自由な選択ではない。競合他社がAIに巨額の投資を行う中、投資を停止する企業は、市場で敗北し、排除されるリスクを負わなければならない。AIが実際に利益をもたらすかどうかが検証されていなくても、資本は競争に生き残るために投資せざるを得ないのだ。巨大IT企業、いわゆる「ハイパースケーラー」たちが、データセンターやAI半導体の確保に莫大な資源を注ぎ込む理由がここにある。
 第三に、帝国主義列強間の闘争が激化していることだ。ウクライナ戦争や中東戦争は、AIが現代戦の核心技術として定着したことを明らかにした。今や米国と中国にとって、半導体とAIは単なるもう一つの産業ではなく、国家安全保障に直結する戦略資産である。軍事AI企業パランティアの共同創業者アレックス・カープは、技術企業と軍隊の結合を露骨に促した。「シリコンバレーのエンジニアリングエリートには、国家防衛に参加する義務がある。」19世紀に鉄道が植民地争奪戦や迅速な軍事力展開の重要な手段であったように、今日、AIは戦争の中核技術である。つまり、AI投資競争はすなわち帝国主義諸国による軍費競争なのである。
 
いかなる資本も、過剰蓄積の結果を免れることはできない
 
 最近の韓国資本主義の好況も、やはりこうした競争の産物である。半導体好況、造船業好況、防衛産業好況はすべて、帝国主義諸国の軍備増強と直結している。政府が発表した3大メガプロジェクトは、帝国主義列強が凌ぎを削る覇権争いの渦中へ自ら飛び込むという宣言にほかならない。国家は資本の利潤蓄積を物心両面で支援し、資本は超過利潤を収め、労働者は長時間労働や労働権の後退、環境破壊の代償を背負わされる。
 ところで、AI・半導体産業は実際にそれほど莫大な利潤をもたらすのだろうか。もちろん、AIが驚異的な技術である可能性はある。また、一定期間、莫大な利潤をもたらすこともあるだろう。そうしてAI産業から生まれる超過利潤を期待して飛び込むが、まさにその期待が過剰蓄積を生む。19世紀の鉄道産業がそうだった。鉄道は時間と空間の概念を変え、当時の資本主義の発展を牽引した革新的な技術だったが、過剰蓄積の結果は1847年と1873年の恐慌へとつながった。恐慌の後、生き残ったのは少数の巨大資本であり、破産と失業の代償は労働者や民衆に転嫁された。20世紀初頭の電気産業、自動車産業も同様だった。AI・半導体産業も例外ではない。
 すでに私たちは、AI産業の過剰蓄積の重要な兆候を目の当たりにしている。その一つが、いわゆる「循環取引」だ。NVIDIA、マイクロソフト、OpenAI、オラクルなどのビッグテック企業は、互いに投資し、取引を行っている。売上高は産業内部を循環し、互いの利益を膨らませている。こうした構造は、実需を置き去りにした投資主導型の産業形成を招き、過剰蓄積による破局的なリスクを膨らませていく。
 ある推計によると、AI産業のハイパースケーラーたちの資本支出(capex)は毎年70%ずつ急増しているが、運営キャッシュフローは23%しか増加していない。このすう勢が変わらなければ、AI企業の負債は雪だるま式に膨らむ可能性がある。最近、韓国と米国の両方で見られる株式市場の激しい変動性は、ビッグテックによるAIインフラ投資がすでに「過剰」である可能性に対する金融市場の鋭い疑念を反映している。こうした憂慮にもかかわらず、AI資本は暴走している。こうした矛盾のなかで、AIが生み出す利潤は一体誰のものなのか、という議論も急速に高まっている。
 
基幹産業の所有と統制をめぐる階級闘争を拡大しよう
 
 半導体産業の超過利潤から得られる超過税収を用いて国民配当金を支給しようという、大統領室政策室長の金容範氏の提案は、「反市場的」だという激しい攻勢の中で事実上頓挫した。しかし、米国の風景はまったく異なる。
 バーニー・サンダース氏は2026年6月、「米国AI国家基金法」を提案し、AI大手企業が保有株式の50%を一度限りの税金として納付させ、これを国家基金に帰属させるよう提言した。国家基金は議決権を持つ株主として企業の取締役会に参加し、AI企業が創出した利益は全国民に配当するか、医療・教育・住宅などの公共サービスに活用する。法案によると、国富基金を運用する「民主的なAIのための独立委員会」は、大統領の指名と上院の承認を経て構成される。この委員会は、国富基金の保有株式にかかる議決権を行使し、公共の利益を損ねる決定を阻止するとともに、福祉・安全・公正性・持続可能性に配慮した経営を求め、基金の適切な運用を担う。
 興味深いのは、AI産業のトップたちもこうした流れに賛同しているという点だ。ChatGPTを開発したOpenAIのサム・アルトマン氏は、米国政府がOpenAIの株式の一部を保持する案を提案し、Claude AIを開発したAnthropicもまた、企業の株式を活用して、新生児や労働市場への新規参入者、AIによって職を失った労働者のために資本口座を設けることを提案した。トランプ政権の主要人物たちは、こうした提案をいわゆる「トランプ口座(Trump Accounts)」の財源とする案も検討していると伝えられている。(トランプ口座とは、2025年から2028年の間に生まれたすべての米国市民に対し、政府が1000ドルを出資して長期投資口座を開設する制度である)。
 労働強度を高め、労働力を代替し、帝国主義諸国の軍事技術として利用されるAI産業そのものはそのままに、AIが生み出す富の一部を分配しようという主張の限界は明らかだ。しかし、AI産業で生み出される利益を共有すべきだという主張が拡大する状況は偶然ではない。蔓延する不平等が資本主義そのものの正当性を揺るがす可能性もあるという危機意識が高まっているのだ。自由主義経済誌『エコノミスト』は次のように分析している。
 「すでに多くの若者が、初めての住宅を購入する際に親からの支援金に依存している。しかし、その支援の規模は、ほとんどの場合、親の資産に左右される。これは、一生懸命働けば成功できるという信念を弱める。そして、こうした信念がなければ、自由市場に対する大衆の支持も弱まるしかない。実際、今日では危ぶまれるほど多くの若者が、資本主義よりも社会主義に対して強い好感を抱いていると回答している。
 この実験は、AIの普及がもたらす激変に備える上でも特に有用だ。AIが経済に及ぼす影響を最も急進的に展望するシナリオでは、資本保持者は莫大な利益を得る一方で、労働者は極めて困難な状況に置かれることになる。そのような状況であれば、技術に対する直接的かつ目に見える公共の持分(public stake)が、暴走する不平等や政治的不安を防ぐために必要となるかもしれない」。
 なかでもサンダースの提案は、AI企業の所有権の半分を国家に帰属させ、「民主的AIのための独立委員会」を通じて経営への議決権を行使するというものである。これは、従来の再分配政策を一歩推し進めた画期的な構想と言える。しかし、このような統制はあくまで国家が株主としての権利を行使する過程であり、労働者や民衆が生産や投資、技術開発の方向性に対する統制力を行使する過程ではない。もちろん、これはサンダースの主張や急進的な制度改革だけで解決できるものではなく、結局は階級闘争にかかっている。1970年代のスウェーデンの賃労働者基金もまた、企業の所有を段階的に社会化しようとする野心的な構想だったが、資本による激しい反撃と社会民主党政府の後退により、法案は大幅に縮小され、結局廃止された。賃労働者基金の歴史的経緯が示すように、産業や生産の民主的統制とは、突き詰めれば階級闘争を通じて形成される「社会的権力」の成否にかかっている。
 資本の利潤のための国家的動員体制に立ち向かい、私たちは「産業を誰が所有し、誰のために運営するのか」「誰がその発展方向を決定するのか」という問いを投げかけなければならない。メガプロジェクトによって形骸化しつつある労働権の防衛はもちろん、莫大な公的資源が投入される基幹産業を民主的に統制する権利を要求しなければならない。投資規模が拡大し、その失敗のツケが労働者や民衆に転嫁されるリスクが高まるほど、産業への民主的統制は一層切実な要求となる。これらすべての闘争の出発点は、民主労総をはじめとする労働組合運動が、メガプロジェクトを「労働権の解体と莫大な公共資源の独占をもたらす反労働・反生態的な蓄積戦略」と喝破し、断固として反対の意を示すことにある。労働時間規制の緩和をはじめとするメガ特区の反労働政策に立ち向かう闘争はもちろん、地域住民や気候正義運動との共同戦線へ進もう。まさに今こそ、基幹産業の民主的統制に向けた闘争を開始しよう。
7月24日
【おわり】
(「社会主義に向けた前進」より)

朝鮮半島通信

▲朝鮮は8月20日、同国内陸部から、複数発の弾道ミサイルを、北東方向に向けて発射した。
▲ソウル中央地裁は8月21日、政治資金法違反及び賄賂受領などの疑いで起訴された共に民主党のノ・ウンレ前議員に対し、原審と同様の無罪を言い渡した。
▲朝鮮労働党中央委員会政治局は8月25日、第9期第4回政治局拡大会議を招集し、金正恩総書記が出席した。

The KAKEHASHI

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社