若年男性の保守・極右化のすう勢と民主党の限界(上)

イ・ヨンドク

 「戒厳令」という異例の事態を踏まえれば、民主党の選挙結果は、表面上こそ勝利に見えても、実質的には敗北であったと言わざるを得ない。国民の力が激戦地と呼んでいたソウルと大邱で勝利した。自治体の長の選挙において、国民の力はソウル7カ所、京畿道12カ所、仁川3カ所で勝利した。圧倒的な勝利を予想していた秋美愛の得票率は55%に過ぎなかった。議会議員の再・補欠選挙でも、韓東勲、兪義東が当選した。
 選挙前まで瀕死の状態に追い込まれていた国民の力は、復活の翼を再び手に入れた。労働者の権利と利益を実現するために闘う代替政党が存在しない状況下で、国民の力は李在明政権と民主党に対する不満と怒りを吸収し、反射的利益を享受した。
 全体的に見て、民主党は「内乱勢力への審判」というスローガンを繰り返し利用するばかりで、労働者や民衆の生活問題を解決する代案やビジョンを全く示せなかった。半導体の超好況に伴う株式ブームがなければ、民主党はさらに深刻な惨敗を味わっていただろう。
 地方選挙の最終投票率は61%だった。依然として有権者10人のうち4人は、投票する必要性を感じなかったか、投票する時間が確保できなかった。メディアの視野には入っていないが、票には反映されない既存の資本家政治に対する不満と怒りも、確かに存在する。

 複合的な要因
 
 多くの人の予想を覆した呉世勲のソウル市長当選は意味深長だ。20~30代の男性における保守化・極右化の現象が、改めて鮮明に現れたからである。
 地上波放送3社の共同出口調査によると、呉世勲は20代以下の有権者のうち56・8%、30代では59・7%の支持を得た。20代男性からは75・3%の支持を受け、30代でも男女ともに優勢を示し、青年層全般で強い支持を獲得した。
 もちろん、呉世勲の当選要因は複合的だ。江南3区で集中票を獲得し、「漢江ベルト」と呼ばれる龍山・銅雀・永登浦・広津・江東でも善戦したが、これは規制緩和、迅速な再建築・再開発を熱望し、不動産・開発問題に敏感な有権者の心理を刺激したためだ。呉世勲は、2031年までに住宅31万戸の供給(うち27万戸が漢江ベルトに集中)や、「新都市計画」シーズン2などの不動産公約を強調した。
 若者層の不満も巧みに取り込まれた。李在明政権は過去1年間、融資規制や実居住強制政策を展開したが、これが賃貸物件の大幅な減少と価格上昇を招いた。住宅価格が天井知らずに高騰する一方で、賃貸物件を見つけることさえ困難になり、若者たちの不安や不条理感は募る一方だった。
 鄭愿伍も住宅31万戸の供給を掲げたが、規制緩和と大規模な民間再開発・建築の活性化を訴える呉世勲の主張の方が、より現実的で明確に見えた。鄭愿伍は若者・新婚夫婦向け住宅や公共賃貸住宅などを強調したが、若者が実感する供給量には到底及ばない物件数、高い競争率、無償ではなく有償であるという点まで考慮すれば、賃貸住宅の拡大は住居不安を解消する代案にはなり得なかった。
 江南3区のマンション所有者をはじめ、高価な住宅や土地を所有する多くの人々は、財産税・総合不動産税の増加や保有税引き上げの動きに対しても強い不満を抱いていた。呉世勲は、李在明政権の不動産政策に対する様々な不満に積極的に切り込んだ。
 もちろん、現在の不平等な構造をそのままにしておきながら供給だけを拡大したところで、労働者や貧しい民衆の住居問題を解決することはできない。市場原理を強調し、供給拡大の基調を掲げた李明博政権や朴槿恵政権の時代も、文在寅政権時の水準には及ばなかったものの、住宅価格は上昇を続け、投機勢力や多住宅所有者が利益を貪った。
 すでに韓国の住宅普及率は102%を超えている。それにもかかわらず、無住宅世帯は全世帯の約43%に達する。39歳以下の若年層における無住宅世帯の割合は73.2%だ。一方、2戸以上の住宅を所有する多住宅所有者は約230万人である。「1世帯1住宅」を超える住宅所有を実際に禁止し、超過分を没収して貧しい無住宅の労働者・民衆に供給するという急進的な措置なしには、もつれた糸のように複雑に絡み合った不動産問題を解きほぐし、投機勢力の激しい抵抗を抑え込むことは、到底できない。
 分譲原価の全面公開による建設会社の利潤統制をはじめ、融資期限の延長、融資金利の廃止、差し押さえ禁止といった措置が必要だ。このように資本主義体制が生み出した損失の労働者への転嫁を阻む、急進的な政策を実行しなければ、貧しい労働者たちは住宅の入手すらままならない。たとえ手に入れられたとしても、一生借金の重圧に押しつぶされながら生きるほかないのだ。しかし、資本の利益を守り、彼ら自身が持てる階級である民主党と国民の力の政治家たちは、このような急進的な措置に手を出すことさえできない。
 呉世勲の当選には、対立候補である鄭愿伍の資質不足も少なからず影響した。とりわけ、彼の酒乱騒動や討論回避、討論会での的外れな回答などは、有権者の失望を買う格好となった。鄭願伍には、国民の力に反対する労働者・民衆の力を結集する気勢も能力も全くなかった。民主党代表の鄭清来による「お兄ちゃん、やってみて」という発言や、民主党の陽川区長候補である禹賢燦の「一度のキスくらいいいじゃないか」という発言は、民主党のジェンダー感性と人権意識を露骨に露呈した。
 国民の力が、民主党による労働者・民衆の生存権の抹殺によって反射的利益を享受したのは、今回が初めてではない。2021年のソウル市長補欠選挙で呉世勲が当選した際、民主党の朴映宣は、たった一つの自治区でも呉世勲に勝てなかった。わずか1年前の総選挙では、龍山と江南3区を除くすべての選挙区で民主党が国民の力に勝利していたにもかかわらずだ。新型コロナウイルスの余波で労働者や貧しい民衆の生活が苦しくなった上、住宅価格まで暴騰し、政府に対する怒りが沸き起こり、他に選択肢がない状況下で呉世勲が当選した。
 したがって、今回の選挙における若年層の呉世勲支持の要因を、単に保守化・極右化だけで解釈するのは、あまりにも単純かつ過度な解釈だ。ましてや、世代は単一でも均質でもない。階級、地域、ジェンダーによって人々の見解は異なり、それらは状況に応じて複雑に合従連衡する。
 こうした背景を踏まえても、現在の20代・30代の男性における保守化や右傾化の潮流は、無視できないものとなっている。西部地裁の暴動事態でも端的に表れたが、呉世勲に対する圧倒的支持を生み出し、国民の力代表のチャン・ドンヒョクを最後まで持ちこたえさせた力としても現れた。投票用紙不足の事態は、こうしたすう勢に拍車をかけた。

 各自生存の生活

 現在20代・30代を迎えている1990年代生まれの世代は、幼少期にIMF通貨危機の余波を受け、さらに2008年の世界金融危機(リーマン・ショック)による社会の激変を多感な時期に目の当たりにして育った。この世代は、熾烈な生存競争を強いられ、自殺率の上昇や不動産価格の暴騰といった、社会の歪みが深刻化する時代を生き抜いてきた。数多くの若者が、社会的な生存そのものを目標に、苦しい生活を送り続けてきたし、今もそうしている。
 「88万ウォン世代」、「ヘル朝鮮」、「N放世代」、「この人生は終わり」といった言葉が象徴する若者の不幸と苦痛が社会的争点となってから、かなりの時間が経過した。今やこうした言葉も、人々に新鮮な驚きや危機感を与えることはない。それほどまでに彼らの苦痛は長期化し、常態化してしまっているのだ。
 ところが、経済構造が急速に変化するにつれ、さらに大きな恐怖が迫ってきた。デジタル経済と人工知能は、既存の雇用を減らしたり、その性質を変貌させたりしている。気候危機に伴う炭素産業の変化もまた、産業構造と労働市場の再編を伴っている。安定的な雇用は減り続けており、将来に対する不安は増大している。心では社会の変化を激しく求めながらも、当面は、目の前の現実を個人で生き抜くこと以外にサバイバルの方法は残されていない。
6月8日
(「社会主義に向けた前進」より)
【次号へつづく】

朝鮮半島通信

▲金正恩は7月3日、咸鏡南道楽園郡の地方発展政策対象の建設を視察した。
▲北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席するため、トルコのアンカラを訪問している李在明大統領は7月8日(現地時間)、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談した。
▲朝鮮労働党中央軍事委員会第9期第1回拡大会議が7月9日に行われ、金正恩総書記が会議に出席した。
▲韓国最高裁は7月9日、非常戒厳宣言を巡る捜査を妨害したとして、特殊公務執行妨害などの罪に問われた尹錫悦前大統領について、被告側・特別検察官側双方の上告を棄却し、4月に懲役7年を言い渡した二審判決が確定した。

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