夫の負傷も助けられぬ街、蔚山で同性婚訴訟

ペ・イェジュ

 造船所に勤めるイ・ヒョンジュン(仮名)労働者と、公務員労働者のオ・スンジェは夫婦である。蔚山南区庁に婚姻届を提出したが、不受理処分を受けた。同性であるという理由からだ。1987年の労働者大闘争以降、民主労組は職場や社会における労働者への差別に立ち向かい、少しずつ平等の世界へと歩みを進めてきた。しかし、まだ変えられていないことが大半だ。その一つが、人口20人に1人の割合で存在する性的少数者が、他の夫婦と同じように愛し合い、生活共同体として生きる人生が差別されているという問題だ。
 造船所労働者のイ・ヒョンジュン氏と公務員労働者のオ・スンジェ氏がこれに不服として婚姻平等訴訟を提起する記者会見が、4月8日、蔚山家庭裁判所前で行われた。「労働者の都市・蔚山、愛も平等に」というタイトルで、レインボー行動や民主労総など計23単位が共同主催として立ち上がった。参加者たちは、嶺南圏3カ所で同性カップルの婚姻を認めるよう要求した。
 
夫が仕事中に怪我をしても、助けることができないという事実
 
 OECD加盟国の3分の2が同性婚を認めている。韓国では、もっぱら性別の二分法に基づき、住民登録番号「1」番の男性と「2」番の女性の婚姻のみが認められている。このような差別をなくすため、韓国では2024年10月、初めて同性カップル11組が、憲法が保障する婚姻の権利を性的少数者にも保障するよう求める同性婚法制化に乗り出した。2025年2月には、ソウル北部地方裁判所による同性婚不承認の違憲法律審判提請申請の却下を受け、憲法訴願審判も提起した。今や保守的とされる蔚山、釜山、大邱でも、性的少数者の同性カップルたちが立ち上がったのだ。
 蔚山の婚姻平等訴訟の原告である公務員労働者のオ・スンジェ氏は、堂々とマイクを握った。「保守的な雰囲気の中で冷遇や嫌悪に遭うのではないかと心配だった。しかし、私が出会った蔚山の人々は、私たち夫婦をありのままに尊重し、受け入れてくれた。公職社会の特性上、カミングアウトして結婚の事実を知らせることは容易ではなかったが、同僚を信じ、その信頼は裏切られなかった。ある同僚は進んで婚姻届の証人を引き受けてくれ、上司からは祝賀書簡と応援をもらった。世の中は私たち夫婦をありのままに受け入れる準備ができているという事実を悟った。夫が働く造船所では頻繁に労働災害が発生する。私と出会う前、夫も労働災害を経験したことがある。仕事中に怪我をするような事態は、何としても避けなければならない。いざという時に法的な配偶者として認められず、助ける手立てすら奪われているという現実は、あまりにも残酷で、胸が締め付けられる思いだ。私たちはすでに夫婦であり、お互いの配偶者だ。この当然の事実を確認してほしい。」
 不平等な婚姻が、どうして些細な差別と言えるだろうか。健康保険の被扶養者資格は、ようやく一つの山を越えたに過ぎない。しかし、家族手当、慶弔休暇、税制優遇、各種制度や支援政策、入院や手術、妊娠・出産、養子縁組、育児、そして葬儀や相続手順に至るまで、婚姻から除外される不平等は、性的少数者夫婦の生きる権利を脅かし、その日常に直接的な打撃を与え続けている。夫が造船所での労災に遭った際、配偶者としての法的権利すら認められず、側にいることすら叶わない。同性カップルが直面するこの現実は、過酷な差別という他ない。
 
婚姻平等訴訟と民主労総
 
 蔚山で開かれた婚姻平等訴訟の記者会見に、民主労総は役員と常勤者、公共運輸労組の教育公務職労働者程度しか参加しなかった。大部分は社会団体の活動家たちだった。大邱や釜山の写真を見ても、記者会見の写真に労働組合のベストがほとんど見当たらない。嶺南圏の婚姻平等訴訟の原告の大部分が労働者であるにもかかわらずだ。
 性的少数者は、テレビやYouTubeに登場する芸能人としてだけ生きているわけではない。労働者として、高齢者として、青年として、隣人として、同じように生きている。性自認と性的志向は、生まれつきの顔立ちが異なるように多様である。しかし、男性はこうでなければならず、女性はこうでなければならない、男女が結婚して正常な家族を築かなければならないという家父長的なイデオロギーは、労働者・民衆に大きな観念を植え付けてきた。家父長的な資本主義が、より搾取しやすい労働力と労働力の再生産のために性差別を構造化し、性的少数者への嫌悪、排撃、差別を強化してきたからである。
 同性婚の合法化は、ありのままの愛情に基づく生活共同体としての夫婦を認めるよう求める要求であり、家父長制資本主義社会の家族制度に変化をもたらすことでもある。労働者が初めて労働者国家を築いた1917年、帝政ロシアの法律を廃止し、同性愛が非犯罪化された。その後、1922年に同性愛を合法化した。1923年から1930年にかけて、同性愛者であったゲオルギー・チチェリンが人民外務委員として活動したこともある。当時、モスクワ社会衛生研究所の所長は『ロシアの性革命』と題した報告書を世に送り出した。その中で所長は、「同性愛は自然な現象である」とし、「法的・社会的な尊重がなされるべきだ」と、時代を先取る先駆的な主張を展開した。しかし、1930年代にスターリンの手によって革命の息の根が止められると、性的少数者の権利もまた窒息させられていった。スターリン体制下のソ連は、1934年に同性愛を再び法で禁じ、売春を犯罪化することで、かつての解放的な精神を抑圧したのである。
 社会主義革命が敗北した条件下においても、資本主義が強制する差別と抑圧に立ち向かう闘争は止むことなく続いた。1960年代後半、人種差別反対、フェミニズム運動、反戦運動と共に登場した1969年のストーンウォールの闘争をはじめ、性的少数者の権利に向けた闘争が絶え間なく続いた。こうした闘争の結果、同性婚の合法化が2001年にオランダで再び始まった。同性婚の合法化はヨーロッパ、北米、南米へと広がり、アジアでは2019年の台湾、2024年のタイを含め、現在39カ国で同性婚が保障されている。
 韓国における性的少数者に対する嫌悪や偏見は、過去30年間の人権運動や性的少数者運動の影響により減少している。40~47%が同性婚の合法化に賛成しているという。民主労組運動も社会的差別や抑圧、搾取に立ち向かい、不十分ながらも性的少数者運動と労働運動を結びつけている。民主労総内の性的少数者組合員会、性的少数者を包摂した団体協約、労働組合の機関としての性的少数者委員会なども存在する。しかし、学校、職場、社会における様々な差別の中でも、婚姻に対する差別さえまだ打ち破れていない。
  
婚姻の平等も差別禁止法も、差別に立ち向かう労働者の闘争
 
 同性カップルにも結婚祝金や休暇を適用する団体協約は、果たしてどれほどあるだろうか。ほとんどの職場において、当事者は未だに制度の枠外に置かれたままである。その理由は、単に法律がないからだろうか。いや、そうではない。民主労組は、法律ができる前から現場の労働大衆の力で闘争し、団体協約を作り、法律を作るための闘争をしてきた。性的少数者の労働者が直面する差別に対し、組合として議論を深め、教育を徹底し、経営側と対峙してきたか。その歴史を振り返れば、実態は皆無に等しいと言わざるを得ない。
 労働組合も社会で教えられた通りに動くことに慣れてしまっている。見知らぬものへの距離感、違いへの警戒、無意識の差別、染み付いた嫌悪。これに加え、「考えたことがなかった」として、性的少数者が経験する差別の問題を後回しにし、二次的な問題として片付けてきた限界が重なり、少数者の権利を軽視してきたのは事実だ。民主労組が資本家階級との熾烈な闘いの中で血肉化した教訓は、「散れば死ぬ、団結こそが唯一の武器である」という鉄の原則だ。それは、敵によるあらゆる分断策動を打ち砕くための、揺るぎない指針にほかならない。性的少数者、女性、移民、障害者など、社会的少数者である労働者・民衆と団結するとき、労働者階級はより大きな力で資本に立ち向かい、世の中を変えることができる。
 これ以上先延ばしにはできない。李在明政権は、広場の第一の要求である包括的差別禁止法の制定について、口にも出さない。その一方で、資本に向けた規制緩和や税金のばらまきなど、前政府と何ら変わらない労働政策を推し進めている。最近では有期雇用法などと言いながら、非正規雇用の拡大を図ろうとしている。政府の空虚な言葉と資本の貪欲、憎悪政治に対しては、協議ではなく闘争が必要だ。単なる声明書政治に終始するのではなく、実質的な闘争を通じて道を切り拓こう。すべての労働者を包摂する労働基本権、そしてすべての社会的少数者の尊厳を守る人権保障のために、今こそ真の団結を果たそう。
 今こそ、嶺南圏での婚姻平等訴訟の声を現場へ届けよう。まずは我々自身を見つめ直し、認識の変革から踏み出すのだ。民主労組は性的少数者にとって真に安全な砦と言えるか。当事者が学校や職場で受ける差別に、我々はどれほど真正面から立ち向かってきたか。婚姻平等を単なる理念に留めず、団体協約を勝ち取る現場闘争へと昇華させよう。人種、国籍、雇用形態、障害、性自認、そして性的指向。あらゆる差別を根絶するために、包括的差別禁止法の制定を掲げ、社会と現場を繋ぐ先頭に立とう。搾取と差別のない世界は、他でもない、我々の手で築き上げるのだ。
4月18日
(「社会主義に向けた前進」より)

朝鮮半島通信

▲金正恩総書記は5月11日、複数の軍需工業企業所を現地で指導した。
▲2024年12月に非常戒厳を巡り内乱首謀罪に問われた尹錫悦前大統領の控訴審初公判が5月14日、ソウル高裁で開かれた。

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