参院選比例得票数から読み解く日本政治情勢(その1)

左派の再生をどのようにすすめていくのか
極右・保守中道の二極分化と進行する左派の周縁化

大森敏三

 第27回参議院議員通常選挙が7月20日投開票でおこなわれ、自公与党が過半数割れの敗北を喫した。そして、衆参両院で自公が少数与党となる中で、一部マスコミが石破首相の8月中退陣を報じるまでになっている。さらに、自民党の右に位置する極右政党(参政党・保守党など)の得票数がほぼ自民党と匹敵する程度にまで急増した一方で、議会内左派政党の後退や伸び悩みという状況が顕著となった。この小論は、参院選比例区の得票数を一つの切り口にして、日本政治情勢の分析を試みようとするものである。とりわけ、左派が弱体な中での極右・保守中道の二極化が進んでいることについて、国際的な政治状況という観点からも分析してみたい。

投票率が上昇した中での自公過半数割れ

 今回の参院選の投票率は58・51%であり、直近12回の参院選では2番目の高さだった(一番高かったのは1998年の58・84%)。最も注目すべきなのは昨年総選挙との比較である。昨年総選挙では、戦後3番目に低い投票率の中で、自公与党が過半数割れとなり、通常国会では維新・国民・立憲など、政策課題ごとに異なる相手との政策協議を強いられる結果となった。今回の参院選は、その総選挙から4・66%高い投票率で、再び自公与党が過半数割れとなったのである。この4・66%という数字は、有権者数に直すと468万人強となる。これらの有権者が比例区ではどの政党に投票したのかを測るデータは見当たらないが、推測可能な部分はあるのであとで見ていきたい。

比例区ではどの政党がどれだけの得票を得たのか

 掲載した表は、直近5回の国政選挙における主要政党の比例得票数を一覧にしたものである。今回の参院選では、この表には入っていない政党(政治団体)も比例区に立候補していた。それらの政党の得票数(概数)は、NHK党68万、再生の道52万、日本誠真会33万、無所属連合29万、日本改革党6万である。
 昨年総選挙、あるいは3年前の参院選との比較では、次の点が顕著な傾向としてみられる。
*極右ポピュリスト政党ともいうべき参政党が、総選挙から550万票以上という爆発的な得票増を記録した。もう一方の極右政党である保守党も大幅に上積みしている(ただし、昨年総選挙では、比例ブロックの東北・北陸信越・中国・四国・九州では立候補していなかったため、総選挙の数字は控えめなものであることに注意)。
*与党である自民党・公明党の減少。自民党は前回参院選から540万票、惨敗した総選挙からでも180万票近く減らしている。
*中道右派政党と言える国民民主・維新・立憲民主の中では、国民民主がほぼ一人勝ち状態だが、一時の勢いはなく、総選挙と比較すれば150万票程度の上積みにとどまった。立憲民主は、一人区で自民党の自滅もあって当選者を重ねたが、比例区では前回・前々回の参院選とほぼ横並びである。維新は完全に失速し、地盤である大阪を中心とした近畿圏でも大きく得票を減らしている。
*議会内左派政党は、共産党が組織の弱体化・高齢化を反映して、ついに300万票を割り込んだ。れいわも総選挙とほぼ同じ得票数にとどまり、社民が総選挙での100万票以下からやや盛り返して何とか政党要件の2%を超えることができた。
*チームみらいが新たに当選者を出し、政党要件も得たが、その政治性格は未知数というほかない。

衆院に続く自公与党の過半数割れ


 自公与党は、昨年の総選挙に続く敗北で、ついに衆参両院で過半数割れとなり、完全に少数与党に転落した。その結果、石破首相が責任を取って8月中に退陣すると一部マスコミで報じられるところにまで追い込まれた。自民党の一部では、「この際、野党に政権を引き渡し、野党の失敗を待って政権に返り咲く」という「下野論」も公然と主張されているという。
 自民は、総選挙や参院選の比例区で従来は1800万票前後を得ていたが、昨年の総選挙では1458万票と激減した。得票率で言えば、政権復帰後で初めて3割を下回り、旧民主党へ政権交代した2009年衆院選と同水準(それでも、比例代表では1800万票以上を獲得していた)にまで落ち込んだ。そして、今回の参院選では、その歴史的敗北からさらに170万票以上減らし、現行制度のもとでの最低を記録するに至ったのである。
 あわせて1人区でも、自民党は14勝18敗となり、四国の全選挙区、福島を除く東北の5選挙区で敗北するなど大きく議席を減らした。この要因は、参政党が全選挙区で候補者を立て、自民党支持層のうち右派的な部分が参政党に流れ込んだ結果であり、部分的には1人区での共産党の候補者取り下げ、立憲との候補者調整も影響したと思われる。

自公の敗北は不可逆的なものとなるのか

 この傾向が果たして不可逆的なものとなるのか、つまり自民党を軸とした政治体制からの大きな転換となるのか、この点については自民党内部の力関係も大きく関係してくる。昨年の総選挙において、旧安倍派の立候補者50人のうち28人が落選したことで、総裁選第1回投票で首位となった高市早苗を支えてきた党内右派の影響力はすでに大きく削がれていた。それに加えて、今回の参院選比例区でも自民党保守系候補が相次いで落選した。その中には、佐藤正久幹事長代理、山東昭子元参院議長、赤池誠章(保守系グループ「保守団結の会」代表世話人)、杉田水脈元衆院議員、和田政宗参院内閣委員長、長尾敬元衆院議員らが含まれている。こうした事態を受けて、産経新聞は自民党の中道保守化に拍車がかかる可能性を「(自民党)左傾化の心配」と書いたほどである。
 日本会議も同様の危機感を抱いているようだ。共同通信によれば、日本会議は「自民党の参院選大敗を巡り『リベラル化した自民に、保守層がノーを突きつけた結果だ』と指摘、体制を一新して保守政党に回帰するよう求める見解を発表した」という。つまり、「新興政党が議席を伸ばした背景には、自民の変質が大きく関わっている」「憲法改正、男系の皇統護持、夫婦別姓阻止など国柄に関わる重大案件ですら支持層に明確な姿勢を示すことができなかった」「国益軽視の外交や外国人政策で多くの国民の不満を招いてきた」として、「保守政党としてふさわしい国家政策と行動を示すよう促した」のである。
 しかし、その一方で、自公といつでも連立に入れる勢力が大きく議席を伸ばしたのも事実であり、石破首相が退陣し、新たな総裁が選出されても政権を維持しようとする限り、極右・参政党か、あるいは国民民主・維新、さらには立憲民主との間で政策協議や連立を探るしかない。その意味では、極右と中道右派との間で自民党が引き裂かれる可能性があり、産経新聞の「心配」も根拠なしとは言えないだろう。公明党の深刻な組織力低下と合わせて、自公という枠組みで過半数の議席を獲得するという可能性は低くなっていると言わざるをえない。
 石破首相が退陣することによって、自民党内で右派が復権し、参政党などとの右派連立政権が樹立される可能性があるという危機感を抱く人々が首相官邸前で「#石破辞めるな」デモをおこなっている。しかし、筆者の私見では、むしろ参政党などの極右政党の台頭によって、自民・公明・国民民主・維新、そして立憲民主といった保守中道政党全体が「右」へと引っ張られる危険性の方が高いと思われる。その意味でも、極右の台頭といかに闘うのか、が左派の大きな課題になっている。

参政党の「躍進」は何を意味しているのか

 筆者は、参院選公示日に参政党の活動家と遭遇するという体験をした。掲示板にさる政党のポスターを貼りに回っているとき、とある掲示板の前で参政党のポスター張りに悪戦苦闘している男性がいた。一緒にポスターを貼りながら聞いてみると「生まれて初めて選挙のポスター張りをした」とのことで、しかも結構都会から離れた郡部なのに、地元に住んでいる人だった。そのあと、どこの掲示板に行っても、公明党とともに参政党のポスターがすでに貼られていた。ということは、数人で分担して貼りに回っているということで、こんな都会から離れた場所でも参政党が選挙ボランティアを組織していることに驚いたのだ。このように、参政党は単なる「風」頼みではなく、地方支部(党員7万超)・地方議員(150人)を核にした選挙戦を展開しており、各地域でポスター張りなどをボランティアでおこなう積極的支持者のネットワークを作り上げていたのである。
 参政党の主張は、神谷代表らの天皇主義的・家父長主義的思想を核にしつつ、排外主義や移民規制と「反グローバリゼーション」、「オーガニック」、「消費税減税」といった左派の主張の一部を取り込んだ考え方とを混然と合体させたものである。これは、ヨーロッパの極右が反グローバリゼーション運動の成果を簒奪して、反EU・自国民ファーストを主張し、それを外国人嫌悪・排外主義と結びつけたのときわめて類似している。
 そのように考えると、今回の選挙で、自民党の右に位置する極右政党(参政党・保守党以外にも、参政党の元共同代表だった吉野敏明の「日本誠真会」と立花孝志の「NHK党」を合わせると100万票を超す)が自民党とほぼ匹敵する得票数を得たことは、日本の政治構造がヨーロッパ・南北アメリカ各国の政治構造と似通ってきたことを意味している。つまり、日本の政治状況がようやくこれらの国々に「追いついてきた」とも言える。
 それでは、このように激増した参政党の支持者は、どこから生まれてきたのだろうか。朝日新聞と三浦麻子阪大教授のネット意識調査によると、4~5月に国民民主支持者だった人の2割はその後、投票先を参政に変えていたという。一方、参政に投票するとしていた人は、数カ月で5・3倍になったが、増えた分の半数は国民民主からの流入だった。それに加えて、いわゆる無党派層で今まで政治に関心がなかった層が、参政党の支持者となり、その一部は党の活動に参加している実態がある。また、総選挙と比べて投票率が上がった分の投票先の多くが参政党だった可能性もある。重ねて言うが、昨年総選挙で萌芽的に見られた、極右政党が政治の中で一つの極を形成するという構造が日本においても本格的に開始されたということである。

止まらない左派政党の周縁化


 国政選挙の比例得票数の分析では、いつもは続いて中道右派・中道左派政党の分析に進んでいたのだが、今回は先に左派政党について考えてみたい。
 ヨーロッパや南北アメリカでは、極右の台頭と並んで左派勢力が踏みとどまって、一定の政治的・社会的位置を占めて極右と対峙している。いわば「極右・中道保守(いわゆる「極中道」)・左派の三極構造が現出している。こうした政治構造に日本が追いついてきたとは言え、決定的に異なるのは日本では左派が(とりわけ若い層に)可視化されておらず、政治構造の中で周縁化・孤立させられているという点である。
 共産党は今年1月の中央委員会総会決定で、「しんぶん赤旗」の発行危機(日刊紙は年間十数億円の赤字、日曜版の読者数も減少が続いている)打開のため、10億円募金と読者100万人回復を呼びかけてきた。共産党によれば、6月17日までに6億2千万円超の募金が集まったという。しかし、この「しんぶん赤旗」の発行危機に象徴される党員・活動家・支持者の高齢化と減少は、共産党の組織活動の大きな減退を招いている。前述した筆者の地元では、共産党のポスターが張り出され始めたのは公示日の午後になってからで、これまでと比べて随分遅くなっていた。こういうところにも、共産党の活動力の低下が示されている。その結果が比例区での300万票割り込みだった。
 社民党は、公示日直前にタレントのラサール石井候補を擁立した。社民党を中心とした「共同テーブル」発揮人の佐高信が「負ければタレントとしては全てを失うラサール石井さんが立候補を決断してくれた。そのおかげで国政政党でいることができた」(「毎日新聞」7月24日夕刊)と述べたように、まさにラサール石井「効果」(個人への得票として20万票以上)によって政党要件の得票率2%を辛うじて上回ることができたのである。彼自身はインタビューで「れいわとは今もとても仲が良いし、考え方も一緒。今回は社民党がオファーをしてくれたというだけ」と述べ、「何回も福島さんとお会いするなかで政党がピンチだと知り、少しでもお力を貸せるならと思い、出馬を決めた」(「デイリー新潮」7月16日)と語っている。
 しかし、「社民党をなくさないで」という訴えでは、かつて社会党を支持していた年齢層にしか響かないことも事実である。その意味で、大椿ゆうこ候補が自らの2年3ヶ月にわたる議員活動をふまえて、労働者の、とりわけ非正規労働者の代表としてともに戦おうと訴え、戦闘的な労働組合運動や市民運動の活動家・元活動家、とりわけ女性活動家らが選挙活動を中心的に担ったのは特筆に値する。これは共産党や社民党などの議会内左派が、とりわけ若い層の多くから「保守的な政党」「既得権を守る政党」と受け取られている現状を打破する一つの試みだったと言えよう。
 また、社民党は、辺野古新基地反対闘争を先頭で戦ってきた山城博治候補を擁立した。このことが持つ意味は決して小さくはない。しかし、選挙結果では、社民党は沖縄で(山城候補への2万6千票を含む)6万票余りを獲得したが(得票率では10%に迫り、全国最高だった)、3年前の参院選から上積みすることはできなかった。

参院選におけるれいわ新選組の立ち位置をどう考えるか

 れいわ新選組(以下。れいわ)は、参院選比例区で388万票近くを得て、昨年総選挙に続いて共産党・社民党の得票数を上回った。しかし、総選挙と比較すると7万5千票ほどの増加にとどまり、投票率が伸びたことを考慮するとほぼ横ばいという結果だった。
 昨年総選挙の分析記事で、筆者は「ヨーロッパで見られる左派ポピュリスト政党との類似性はあるのか、という点も考察すべき課題」であると書いたが、この点を少し見ていこう。
 ヨーロッパにおいては、極右ポピュリスト政党(フランス「国民連合(RN)」、「ドイツのための選択肢(AfD)」、「イタリアの同胞(FDI)」などがその典型)が大きく台頭し、イタリアをはじめとするいくつかの国では政権を担い、さらに多くの国で連立政権に参加、ないしは閣外協力の位置にいる。ヨーロッパ極右政党が、反グローバリゼーションをはじめとした左派の政策を取り入れながら、その一方で反移民の姿勢を明確にし、その二つを結びつけた主張を展開してきたことはすでに述べた通りである。
 そして、最近になって、いわゆる左派ポピュリスト政党もヨーロッパで一定の位置を占めるようになってきている。その典型が、ドイツ左翼党から分裂した「ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)」であろう。BSWは、反グローバリゼーションと移民規制を掲げ、いくつかの州議会選挙で5%の壁を突破し、議席を獲得した(今年3月の総選挙では議席を獲得できず)。「BSWは(中略)左翼党の政策メニューの多くを引き継ぎつつ、移民規制の強化を訴える点で異なる。
 移民規制の強化を求めるが、AfDに投票しない左派層の支持を集めている。両党は、反体制、EU懐疑的、反移民、親ロシア、ウクライナ支援に消極的な点で共通点を持つ」(田中理「旧東ドイツの州議会選挙で反体制派が躍進~移民問題がドイツを揺らす」)。このように、ドイツでは極右政党と左派ポピュリスト政党の主張と支持基盤に重複性が見られる。
 総選挙分析でも書いたように(異論を抱く人もいるだろうが)、筆者自身は、れいわは基本的には「左派ポピュリスト政党」であると考えている。そして、昨年の総選挙分析では、れいわが「政治や社会を変えたいと考えているが、共産党などに信頼を感じない人々の受け皿となっている可能性」を指摘し、「れいわの躍進に見られる政治的雰囲気の変化は歓迎すべきこと」と書いた。この点は今回の参院選を経ても変わっていない。
 しかし、ここで注目したいのは、今回の参院選において、れいわの候補者の圧倒的多数が移民に対して抑制的な姿勢をとっていたことである。
 毎日新聞が実施した全候補者アンケートの結果(「毎日新聞」7月12日朝刊)によれば、「外国人労働者の受け入れ」についての質問に「抑制的に対応」と答えた候補者は、「日本人ファースト」を掲げ、事実上「移民排斥」を訴える参政党が98%と最も多かったのは当然として、それに次いで多かったのがれいわの83%だった。れいわは選挙公約に「『移民政策』に反対」と明記し、山本太郎代表も街頭演説でその点を訴えていた。
 もちろん「移民政策」にかぎかっこをつけているように、現在の政府が進める「安上がりの労働力」としての「移民政策」に反対という意味であり、山本代表は「既に入ってきている方々、日本国内にお住まいになられてる方々の基本的人権は守られるべき」と語ってはいた(ドイツのBSWもその点は主張していた)。にもかかわらず、主張の力点が「移民労働者という形で安い労働力を入れること」で「日本の労働環境が壊されている」という点にあったことは否定できない。
 それでは、日本において、れいわと参政党との間にはドイツと同じような関係性は見られるのだろうか? 選挙戦での主張については上述の通りだが、選挙結果や政党支持者の移り変わりを分析した論評を見る限りでは、れいわの支持者と参政党の支持者の重なりを指摘する分析が多かった。実際にさまざまな選挙活動に参加した人によれば、れいわと参政党でどちらに入れるか悩んでいるという有権者がいるとの話もあった。
 本来なら「れいわ」に向かうはずの支持が参政党に流れた可能性を指摘する論評もあった。つまり、日本でも左右のポピュリスト政党の間で、主張や支持者の感覚の上である程度の重複性が感じられたということになる。これはあくまで筆者個人の考え方・把握であり、当然だが異論はあると思う。ぜひ「かけはし」紙上で討論ができたらと考えている。       (続く)

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