高市政権成立後2カ月のバランスシート
自民・維新連立政権の右派的性格と左派の課題
高市の「台湾有事」答弁を撤回させ 生活防衛・軍拡反対の大衆的運動の構築を
大森敏三
高市自民党総裁が維新の閣外協力を得て首相に就任し、高市政権が成立して約2カ月が経過した。この間に、軍事費のGDP比2%への増額前倒し、持論である「積極財政」を体現したかのような大規模補正予算案の策定など、それまでの石破政権とは明らかに方向性の異なる政策を打ち出してきた。安倍政権の路線を継承した、中道右派政権から保守派政権への回帰と言えよう。また、外交面では、トランプ大統領や習近平主席との首脳会談、G20会議への参加などで外交デビューを果たす一方で、COP30首脳会議には参加しないなど気候危機には無関心であることも示した。そして、11月7日の国会答弁での台湾有事発言である。ここでは、こうした一連の高市政権の動きを整理しながら、政権の政治的性格と国際的な枠組みにおける位置を分析し、この政権と対峙する左派の課題と任務について明らかにしたい。
高市首相の「台湾有事」答弁が意味するもの
まず、高市政権の政治的性格と、その一方での高市政権の置かれている立場をある意味では最も端的に示すものと言える「台湾有事」発言について見ていこう。11月7日の衆院予算委員会で、立憲民主党の岡田克也議員から「台湾有事」について繰り返し質問された際、高市首相は「いろいろなケースが考えられる」とした上で、「戦艦を使って、武力の行使もともなうものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだ」と答弁した。この高市発言は、2014年7月に安倍政権が集団的自衛権容認へと転じた際、閣議決定したいわゆる「新三要件」の第1項目(「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」)から大きく逸脱し、集団的自衛権そのものの解釈を変更するものだった。であるがゆえに、この発言に対し、中国の薛剣・駐大阪総領事は8日にXで、高市首相の国会発言に関する報道記事を引用した上で、「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない」とコメントするなど、中国政府の強い反発を招いたのだった。このコメントに対し、日本政府は抗議したが、ネット上では「総領事を国外追放せよ」などと右翼的言動が盛り上がる事態となった。自民党内右派の小林鷹之政調会長も「ペルソナ・ノン・グラータを含む毅然とした対応を日本政府にとることを党として求めたい」と党の会合で発言し、さらに右翼世論を煽り立てた。
その一方で、11月10日の衆院予算委員会において、高市首相は「7日の答弁を撤回しない」考えを示しながらも、「政府の従来の見解を変更するものではない」と釈明した上で、「反省点としましては、特定のケースを想定したことにつきまして、この場で明言することは慎もうと思っております」と表明し、発言を事実上修正して、一転して事態の沈静化を図ろうとした。さらに、12月16日の参院予算委員会でも「従来の政府の立場を超えて答弁したように受け止められたことを反省点としてとらえる」と答弁したが、発言の撤回には応じていない。
しかし、中国政府からは、「(日本側が)危険を冒してでも、台湾海峡の情勢に武力で介入しようとするなら、中国軍の鉄壁の守りの前に粉砕され、痛烈な代償を払うことになる」(中国国防省・蒋斌報道官)、「中国人の最後の一線に挑戦しようと妄想する者は、誰でも必ず中国側の正面からの痛撃を受け、14億の中国人が血肉で築き上げた鉄の長城の前で頭を打ち割られ血まみれになる」(中国外務省・林剣報道官)などといった発言や、中国から日本への渡航自粛や「留学を慎重に」との要請、水産物の事実上の輸入停止措置、文化交流やイベントなどの中止といった対抗措置が矢継ぎ早に打ち出された。中国政府はあくまで「発言の撤回」を求めており、一部ではレアアースの輸出手続きが滞り始めているとの報道もある。
高市「台湾有事」発言に対しては、日本共産党の小池書記局長が、首相の答弁は「緊張を激化させる挑発的な言辞だ」「今からでも遅くない。撤回を求める」と非難しているのは当然としても、保守派言論を代表する産経新聞も「政府全体で周到に用意して答弁に臨んだ形跡は見当たらない」、「国会論戦の売り言葉に買い言葉で本音を漏らしてしまったという実態だ」、「首相答弁の内容自体は誤りではない」が「高市首相の答弁に危うさがあることは否定できない」と高市首相に注文をつけている。
このように、「台湾有事」答弁のあと、ただちに火消しに努めざるを得ない(「従来の政府見解と同じ」と強弁せざるをえない)のは、日本のブルジョワ多数派が軍拡政策は承認しつつも、中国との関係悪化を当面は望んでいない、さらにはアメリカのトランプ大統領も米中間のディール成立のために今のところ日中関係の悪化を望んでいない(日米首脳電話会談でトランプが高市に自重を求めたとの報道もある)ためであろう。日本ブルジョワ多数派が「政治的安定」を何よりも求めている中では、冒険的な政策の余地はあらかじめ封じられている。しかし、「台湾有事」発言の撤回は、政権の唯一の基盤とも言える保守派世論の支持を失い、現在の高支持率を維持できなくなることとなり、政権の瓦解につながる恐れがあるために、現実的に不可能であるというジレンマを抱えている。
高市発言自体は、安倍政権による集団的自衛権の行使容認、安保法制の制定から、安保3文書の改定、南西諸島への自衛隊配備やミサイル基地建設、軍事費の拡大などに至る、一連の軍拡路線の延長線上にあるものだ。しかも、高市の従来からの主張に沿ったものでもある。その意味では、発言自体に意外性はなかった。しかし、従来の政権指導者は、本音では同じようなことを考えていたとしても(安倍元首相は退任後に、同様の発言をしている)、外交上の配慮もあって決して公式の場では出さなかった(出せなかった)ことも事実である。その点は、前述の産経新聞からも批判されている。
ここで一つ、注意を喚起しておきたいのは、この高市発言、およびそれに対する中国の反応に共通しているのは台湾人民の闘いや自己決定権を全く考慮せず、無視していることである。台湾をめぐる状況について歴史的にふりかえると、近代、とりわけ日本帝国主義の植民地支配以降の150年あまりにわたって、植民地支配の形態やそれに対する抵抗の歴史、さらに日本の敗戦以降の戦後処理、米ソ冷戦期、冷戦終結後の中国の新たな覇権国家としての台頭、一方での台湾における反独裁・民主化と経済発展という経過の中で、台湾は、中国共産党支配下の中国本土とは異なるアイデンティティー、制度と生活・文化を形成し、国際社会においても国家的承認に関わりなく一定の自立性・独立性を有する政治・経済的実体となっている。すなわち、台湾人民の自己決定権には歴史的根拠があり、そのことを抜きに東アジアの緊張緩和や平和を語ることはできない。
東アジアに緊張の激化をもたらし、当事国のさらなる軍拡競争を助長する高市「台湾有事」発言は撤回されなければならず、東アジア民衆の共同の要求として発言撤回を求めなければならない。日本においても、この共同の要求に合流していく運動の形成が求められている。高市発言はある意味では「戦争宣言」であり、その結果、犠牲になるのは東アジアの民衆、沖縄・南西諸島の住民、戦争に動員される若い人々だからである。
過渡的な政権としての高市自民・維新連立政権
高市政権は、『週刊かけはし』第2886号(11月10日発行)「当面する政治情勢をどのようにとらえるか」で指摘したように、日本の政治、とりわけ議会政治の場において、左派が決定的に弱体であり、社会運動や大衆運動も大きな影響力を持たない中、左派が保守中道勢力にとって脅威とは感じられないという状況下で、保守中道勢力内の政治再編の結果として成立したものである。自民・公明というかつての与党連合が衆院に続いて参院でも過半数割れを起こし、自民の右に位置する極右政党が躍進し、自民支持保守層の一部が極右支持へと転じたことへの自民党内での危機感、中道右派勢力内での国民民主と維新との力関係の変化、立憲民主が政治的イニシアチブを取れない状況などが組み合わさったことで、高市早苗が自民党総裁に選ばれ、首相に指名される流れが作られたのである。しかし、同論文でも指摘したように、高市政権の基盤は盤石なものではなく、その政策の選択肢もそれほどフリーハンドではない。
確かに、衆院では維新を離党(除名)された3名の議員が自民会派に加わったことで、辛うじて過半数に達し、参院でも維新から参政党への協力要請などを通じて過半数確保を目指してはいるが、かつての自公連立政権の時のような安定政権から程遠い状況にある。いずれにしても、高市政権はあくまで過渡的な政権であり、その意味では保守中道勢力内での政治再編は、一部では極右政党も巻き込みながら、一定期間続くと考えなければならない。問題は、そうした政治再編プロセスにおいて、左派が全く蚊帳の外に置かれていることである。
支配階級による世界的な再軍事化の動きと日本政府の軍拡路線
安倍政権に端を発し、岸田・石破両政権でさらに進められた日本の軍備拡大は、東アジアにおける軍備拡大競争の一環であるとともに、ロシアのウクライナ侵攻とトランプ政権の再登場を契機とする世界的な再軍事化の流れにも位置付けられるものである。トランプ大統領はヨーロッパや東アジアの同盟諸国にGDP比5%にまで軍事費を増やすことを求め、こうした地域における自らの軍事的プレゼンスを減らし、西半球中心の軍事戦略を指向している。すでにヨーロッパ諸国は大幅な軍事費増大や徴兵制への移行などにより、再軍事化をさらに推進している。東アジアにおいては、アメリカと中国との地政学的対抗関係の中で、中国の軍備拡大に対応して、米軍の再配置、韓国・台湾・日本の軍拡が進行している。12月5日に公表された「アメリカ国家安全保障戦略」では、「(台湾防衛について)米軍が単独でこれを担うことはできず、また担うべきでもない。同盟国は集団防衛のため、支出を増やすだけでなく、より重要なのは行動を起こすことで、その規模を大幅に拡大しなければならない」「アメリカの外交努力は、第一列島線の同盟国・パートナーに対し、米軍の港湾その他の施設へのアクセス拡大、自国防衛費の増額、そして最も重要なのは侵略抑止能力への投資を強く促すことに焦点を当てるべきである」として、高市政権に対してさらなる軍事費の大幅な増額と軍拡、沖縄・南西諸島への日本自衛隊の配備強化を迫っているのである。
そうした国際的枠組みを踏まえても、高市政権による軍拡の加速化は、従来の自公政権を大きく上回るものである。たとえば、自民・維新の連立合意においては、「戦略3文書を前倒しで改定」「反撃能力を持つ長射程ミサイルなどの整備および陸上展開先の着実な進展」「長射程のミサイルを搭載し長距離・長期間の移動や潜航を可能とする次世代の動力を活用したVLS搭載潜水艦[つまり原子力潜水艦]の保有」「防衛産業にかかる国営工廠および国有施設民間操業」などが並んでいる。連立を組む維新内部には、「防衛装備移転三原則」における「5類型への限定」撤廃にとどまらず、「三原則」そのものの見直しを唱え、「紛争当事国」への武器輸出を認めようとする動きもある(毎日新聞)。
また、高市政権は表向きには否定しているが、「非核三原則」のうち「持ち込ませず」について、見直し議論が自民党内で再浮上し、「安保3文書」改定作業で議論される可能性があると報じられた。高市首相は国会答弁でも「非核三原則」堅持を明言しなかったが、これは従来からの自らの主張でもある。
そして、軍拡を支える国民統合のあり方として、権威主義的な弾圧体制や外に敵を作る排外主義を基底にすえている。その具体的な表現が「国旗損壊罪」の制定、スパイ防止法、外国人規制の強化などとして打ち出されているのである。
「積極財政」路線による労働者民衆への犠牲の押し付け
世界的・歴史的に見て、資本主義体制が社会全体を包摂する能力を喪失するという新たな危機の中で、資本主義は労働者民衆に対する攻撃を経済的・社会的に強める以外に選択肢を失っている。そのことによって、世界的にブルジョワ政権に対する不信感が広がっているが、それに対するオルタナティブが大衆的に可視化されていない中では、極右が台頭してきている。この状況は遅ればせながら日本においても現実のものとなってきた。そうした状況に対して、高市は強力な国家、ナショナリズムと並んで「責任ある積極財政」を打ち出している。しかも、経済成長戦略の中にはっきりと軍需産業を組み込んでいる。いわゆる「防衛装備移転三原則」における「5類型[救難・輸送・警戒・監視・掃海]への限定」を撤廃し、武器輸出を全面的に解禁しようとしているのはまさにそのためである。
金子勝氏は、それを「軍事ケインズ主義」だとして、「本来有効需要の創出は公共事業だったが、軍事費に充てて、当面の雇用、景気につなげる考え方」であり、「軍事ケインズ主義の怖いところは歯止めを失うことだ。米国はすでに軍産複合体は米経済にビルトイン、戦後世界で最も戦争をする国となっている」と指摘している(サンデー毎日)。
「責任ある積極財政」と「軍事ケインズ主義」を二本柱とする高市の経済政策は、それ自体に矛盾を内包している。「積極財政」を支える国債の大量発行は、金融に対する信認を失わせ、株安・債券安・円安というトリプル安を招く恐れがある。実際に、11月18日の東京金融市場は、債券、株、円がそろって売られる「トリプル安」となった。「長期金利の指標となる新発10年物国債の流通利回りは一時1・755%まで上昇(債券価格は下落)。2008年6月以来、約17年半ぶりの高水準を記録した。円相場も1ドル=155円台前半に下落。日経平均株価の下げ幅は1600円を超え、5万円の大台を割り込んだ」(時事通信)。長期金利は12月9日現在で1・95%に達している。円安の結果としてインフレが継続し、食料品をはじめとした物価がどんどん押し上げられている(25年10月の消費者物価指数は実に3・0%の上昇!)。その対策を打とうとして、また国債発行に依存するという負のスパイラルに陥る可能性がある。円安で利益を得るのは、輸出向け大企業だけであり、円安によるインフレで労働者の実質賃金は下がり続け(実質賃金のマイナス幅は9月が1・4%、10月は0・7%で、10カ月連続の低下)、年金生活者や非正規雇用労働者などの生活をますます厳しい状況へと追い込んでいる。
国債発行に依存し、経済成長や軍事費増にもシフトした大規模補正予算
高市首相は、11月21日の記者会見で、21兆円規模の補正予算案を発表した。その中で、高市は「日本がいまおこなうべきことは、行き過ぎた緊縮財政により国力を衰退させることではなく、積極財政により国力を強くすることでございます。IMF(国際通貨基金)が指摘しているように、成長を損なうような拙速な財政再建は、かえって財政の持続可能性を損なうということを踏まえる必要がございます。成長なくして財政の持続可能性は維持できません」と言い切った。しかし、師と仰ぐ安倍元首相の「アベノミクス」が日本経済を全く成長させられなかったことへの反省は全く見られなかった。
とは言っても、現在の高支持率を維持するためにも、物価高対策を何かしら打ち出さなければならず、補正予算の第一の柱を「生活の安全保障・物価高への対応」に置いた。その内容は、家計向け物価高対策として、「電気・ガス代支援に5296億円」(1~3月で7000円程度の負担軽減)、「重点支援地方交付税の拡充に2兆円、うち1人3000円相当を別枠で『食料品高騰に対する特別加算』枠として4000億円」(「お米券」の配布など)、「物価高対応子育て応援手当として3677億円」(高校生以下の子ども1人あたり2万円支給)などとなっている。しかし、鈴木農水相が一押しする「お米券」については、そもそも500円券で440円しか買えない、配布のための経費が膨大にかかるなどの理由で、大阪・交野市を皮切りに多くの自治体が「お米券の配布はしない」と宣言している有様である。また、減税措置としてのガソリン暫定税率(25・1円)の廃止についても、三菱総合研究所によれば「ガソリン税の暫定税率廃止によるガソリン支出の減少効果は、円安がさらに5円進むとインフレによる支出増の方が大きくなる」(毎日新聞)とのことで、実際の効果は期待できないという。
このように、生活不安に対して一時凌ぎ的で実効性に乏しい政策を打ち出す一方で、第2の柱である「危機管理投資・成長投資による強い経済の実現」に6兆4330億円を計上しており、さらに加えて第3の柱として「防衛力と外交力の強化」に1兆6560億円を充てているのである。これによって、防衛力整備計画対象の経費5021億円など、防衛費の対GDP比2%水準を前倒しで達成させようとしている。
こうした支出の財源として、国債発行額は昨年度の補正予算6・6兆円を上回る11・7兆円となり、当初予算と補正予算を合わせた補正後の国債発行額は40・3兆円になるという。ある意味、インフレの継続によって、税収増と政府債務残高の減少を引き起こすという経済政策である。その一方では、生活保護費削減の継続、介護保険料の上昇と利用料の引き上げ、健康保険料の値上げ、後期高齢者の医療費窓口負担増、医療費の値上げなど、制度の破綻を労働者民衆からの収奪でカバーしようとする施策が目白押しとなっている。また、軍事費増に充てるため、所得税などの増税に踏み切ろうとしているのである。
労働者を過労死へと追い込む労働時間の規制緩和政策
高市政権の政策のもう一つの柱は、労働政策の構造的な転換である。高市首相は、10月20日に厚生労働相に労働時間の規制緩和を指示し、これを成長戦略の柱として掲げている。労働者の要求によって不十分ながら実現した(しかし、依然として過労死レベルの)労働時間規制(時間外労働の上限は原則として月に45時間、年間360時間だが、特別の事情があれば月に100時間未満、2~6カ月の平均で80時間以内まで許容)をさらに緩和させ、労働者に長時間労働を強いようとしているのである。高市の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」という発言が新語・流行語大賞に選ばれ、過労自殺の遺族らは危機感を募らせ、抗議の記者会見を開くまでになっている。こうした新たな労働時間の規制緩和を絶対に許してはならない。
高市政権の生活破壊、軍拡に抗して、労働者民衆の大衆的運動の構築と左派の再生をかちとろう
資本主義システムが社会全体を包摂する能力を失う中で、ブルジョア政権はますます権威主義的な傾向を強め、労働者民衆に対する攻撃を強めている。このことは、既存の支配体制に対する不信を増大させ、極右の台頭をも招いたが、その一方で、世界的に労働者民衆、とりわけ若い世代を中心にした反撃が昂揚している。ここ数年、それはアジア各国において典型的に噴出し、バングラデシュ、スリランカ、ネパールでは政権を転覆させ、インドネシア、フィリピンでは大衆的な抗議行動が拡大した。韓国ではクーデータを未遂に終わらせ、政権交代へと導いた。ミャンマーでも軍事独裁政権に対する闘争が継続している。そうした闘いを資本主義システムとの決別へと導くイニシアチブが依然として存在していないという弱点はあるものの、確かに反撃は始まっている。
日本においては、こうした国々と比べると、大規模な大衆行動やストライキ、若い世代を中心とする街頭での抗議行動などが登場できているとは言えない。しかし、確実にその予兆は現れ始めている。さまざまなところで、少しずつブルジョア政権の政策に対する異議申し立てや反撃が始まっている。もっと言えば、若い世代が国民民主党や参政党への支持を表明し、選挙結果を動かしたことをも過小評価すべきではない。こうした政党が一時的に支持を集めていることは、まさに左派が周縁化され、明確なオルタナティブを提起できていないことの反映である。しかも、そうしたオルタナティブは、労働者民衆に届くような(つまり、「刺さる」ような)スローガン、主張として可視化していなければ何の意味も持たないだろう。具体的な闘争スローガンは、まさに運動の経験を踏まえて、運動主体の共同の努力の中で作り出されるものだが、そこにこそ左派が挑戦しなければならない課題がある。
そのためには、高市政権の生活破壊、軍拡に対する不満や異議申し立て、要求を運動化して、それを一つの大きな流れにしていくことが重要である。その際には、運動化していくための主体の構築(たとえば、労働組合の復権、大衆的な運動ネットワークの構築など)もあわせて追求していく必要がある。そのために力を発揮することが、左派の再生へとつながる回路の一つとなるだろう。
(2025年12月17日)
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