自民・維新連立による高市政権の成立

当面する日本政治情勢をどのようにとらえるか

 10月21日、臨時国会において、高市早苗自民党総裁が首相に指名され、自民・維新両党の連立による高市政権が成立した。これによって、7月参議院選挙での自民党の大敗を受けた石破前首相の辞任表明から、自民党総裁選における高市新総裁の誕生を経て、1ヶ月半にわたって続いた「政界再編」の動きは一旦収束する形となった。この小論では、このようにして成立した高市政権の政治的性格と、当面する日本政治情勢の枠組みについて、国際的な政治状況の中に位置付けながら分析し、あわせて左派の課題と任務について明らかにしていきたい。(大森敏三)

7月参院選での自公与党過半数割れとその後の政治再編

 10月21日、臨時国会において、高市早苗自民党総裁が首相に指名され、自民・維新両党の連立による高市政権が成立した。これによって、7月参議院選挙での自民党の大敗を受けた石破前首相の辞任表明から、自民党総裁選における高市新総裁の誕生を経て、1ヶ月半にわたって続いた「政界再編」の動きは一旦収束する形となった。この小論では、このようにして成立した高市政権の政治的性格と、当面する日本政治情勢の枠組みについて、国際的な政治状況の中に位置付けながら分析し、あわせて左派の課題と任務について明らかにしていきたい。(大森敏三)
 7月におこなわれた参院選では、自民・公明与党が大敗し、衆参両院で少数与党に転落した。その責任をとる形で石破首相は就任後一年を経ずに、辞任に追い込まれた。また他方では、極右ポピュリスト政党の参政党が大きな支持を集め、昨年衆院選の結果と合わせると、日本政治情勢の中で自民党の右に位置する政党が議会内で初めて一つの極を形成することになった。このことは石破首相の退陣にともなう自民党総裁選挙に大きな影響を与えた。小泉進次郎が総裁選挙を制して、石破政権の政策を継承するだろうという大方の予想に反して、自民党右派を代表する政治家で、安倍政治の継承を公言する高市早苗が総裁の座につくことになった。その後、高市との連立政権を嫌った公明党の連立離脱、立憲民主党による首班指名選挙での野党統一候補擁立の動きと挫折、維新の閣外協力による自民・維新連立の合意、首班指名選挙での高市首相選出と、21世紀に入って初めての大きな政治再編の動きが続いた。
 しかし、この政治再編の流れにおいて、議会内左派、あるいは(立憲民主党内の)中道左派勢力をも含めた左派リベラルと言われる部分は全く蚊帳の外に置かれたままだった。立憲指導部がさらに中道右派にすり寄る形で打ち上げた首班指名選挙での玉木国民民主代表への野党候補一本化は、当の玉木代表に一蹴され、逆に「原発容認」と「安保法制容認」を突きつけられるだけに終わった。
 参院選以降の政治再編の動きは、一方では極右ポピュリズムからの圧力を受けつつ、他方では左からの脅威が(揺さぶりすら)全くないという状況下で、保守中道政治勢力の政治再編が進んだというところに大きな特徴がある。

世界的な政治的枠組みをどのように考えるか


 われわれが今回の政治再編について分析する上で、この間の連立政権をめぐるさまざまな動きを考察することは確かに必要ではあるが、一番重要な問題は、政治情勢全体の枠組みを、とりわけ国際的な視野や視点からどのように把握するかであり、その上で左派の置かれている現状を踏まえて、われわれを含めた左派の課題と任務を明らかにすることだと考える。
 今年2月に開催された第四インターナショナル第18回大会にむけて、日本支部が大会に提出した意見書では、日本政治情勢について次のように指摘した。

 一般的に言って、資本主義体制が社会全体を包摂する能力を喪失する中で、社会の二極化が進行し、極右が台頭している。ブルジョアの一部は強権主義的支配の方向へと転じ、政治的には極右を支持するようになっている。ヨーロッパやアメリカを中心として、政治的な三極対立の方向、つまり極右vs中道保守(極中道)vs左派の構造へと収斂していくという共通の構造があり、その中で保守中道がますます右へと引き寄せられていっている(極中道)。これは東アジアにおいても、ヨーロッパほど顕著ではないにしても、共通した政治構造が出現しつつある。
 日本では、昨年秋の総選挙で、与党連合が過半数割れする一方で、自民党の右に位置する二つの極右政党(日本保守党・参政党)が、第二次世界大戦以降で初めて、議会において、一定の議席を有することになった。その一方で、与党連合と中道右派諸政党との連携関係が進展し、左派を排除した形でのいわゆる「大連立」の可能性も報じられている。
 与党である自由民主党の内部には、中道右派的傾向と極右的傾向が併存しており、現在の指導部は中道右派的な部分で占められ、少数与党であるために中道右派野党との連携を強めている。2025年7月の参議院選挙の結果次第では、「大連立」の可能性も否定できない。このように、日本においても、極右vs保守中道(「極中道」)vs左派という三極構造の兆しが見られるが、残念ながら日本では左派が決定的に弱体である。

 ここで分析されているように、国際的に見れば、ヨーロッパで典型的に見られるように、極右・保守中道・左派の三極構造の中で、極右の台頭を前にして、従来の保守勢力だけでなく、中道改良主義勢力までもが右へと引きずられている。それは現在の資本主義システムの危機の深さの反映でもある。こうした枠組みの中で、世界的な軍備再拡大、権威主義的政権の登場、排外主義的風潮の拡散という流れが顕著となっている。
 その典型的な例としては、イギリス(イングランド)において、極右「リフォームUK」が地方選挙などで台頭し、世論調査で第1位に躍り出る中で、保守党の党首が2024年11月、党内右派で「欧州人権条約からの離脱や気候変動法の廃止を公約に掲げ、中道保守路線への決別をきっぱりと打ち出した」ベーデノックに交代したことが挙げられる。この事態に対して、イギリスのリベラル紙『ガーディアン』は穏健保守勢力としての保守党の消滅を危惧する記事を掲載したという。日本で一時期、「石破やめるな」デモがリベラル層を中心として繰り広げられたこととの類似性を感じさせられる。
 日本の政治情勢もヨーロッパでの動きに一周遅れで追いつこうとしていると見るべきだろう。ただ日本においては、ヨーロッパや南北アメリカなどとは違って、左派が決定的に弱体で、政治情勢に影響力を持たず、大衆運動・社会運動も大きな力を持ち得ていない状況が続いている。このように左派の側からの圧力や脅威を考える必要がない中で、保守中道勢力内部での政治再編が進行したのがこの間の事態だったと考えられる。

新自由主義的グローバリズムの危機は「政策選択の幅を狭めている」


 その意味では、本紙2883号(10月20日付)に掲載された愛敬浩二・早稲田大学教授による指摘(10・5止めよう改憲!おおさかネットワーク講演会での講演要旨による)は、上記の政治状況をうまく説明している。

 グローバル格差社会では政策選択の幅が減少する。市民が民主過程に参加する機会は増えているが、民意が国政に反映されていないという不満が高まっている。先進工業国においては、どんな政党が政権につこうが、国の政策には富者の利益になるよう、一定の圧力が継続的にかけられる。企業の方が知識面で政府より優位であるとの考えが、議論の余地ないイデオロギーと化している。
 政策の幅が小さいからこそ、文化戦争に頼る。大規模な不平等が固定化し、プロパガンダが政策に取って代わり、必然性の政治から永遠の政治に移行する。必然の政治は経済発展で民主化をもたらすが、永遠の政治では政府の役割は将来の幸福を約束することではなく、現在の社会を脅威から守ること。永遠の政治家は、危機をでっち上げ、その結果生じる感情を操作する。現在のような複雑な社会では、社会の将来ビジョンを示せず、文化戦争に傾く。典型はトランプ政治だ。
 また、本紙に連載されたエンツォ・トラヴェルソとのインタビュー記事も、現在の極右の台頭、権威主義政権の登場の持つ意味を的確に分析している。『ポピュリズムとファシズム: 21世紀の全体主義のゆくえ』(湯川順夫訳、作品社)の著者であるトラヴェルソは、現在の極右を「ポスト・ファシズム」と位置付け、かつてのファシズムとの違いを次のように述べている。

 今日の新興右翼には(略)ユートピアの未来も、文明の発展のためのプロジェクトもありません。(略)彼らの衝動は前向きではなく後向きです。彼らが擁護する価値観、つまり主権、家族、国家は、彼らを結びつける赤い糸のようなものを成しています。(略)[トランプの]この伝統への回帰は環境保護主義への敵意、気候変動に関するグローバルな課題の拒絶、国際的な協定よりも国内生産を優先する姿勢にも表れています。「米国を再び偉大に」は未来へのある種の想像力を喚起するスローガンですが、それは退行的な想像力です。これは新しい提案というより過去の理想化です。

 政治的な面で違いを打ち出せず、未来へのビジョンも持たない極右(や保守中道勢力)は、差し当たっては身近な敵を排斥すること(「文化戦争」)で、不安や閉塞感の解消を目指し、政治的安定をはかろうとする。これが、保守中道勢力が極右の側へと引きずられていく一つの根拠となっている。

高市の自民党総裁選出と公明党の連立離脱は何を意味するか


 私は7月参院選の分析記事(『週刊かけはし』2874号・8月11日付)において、次のように書いた。

 仮に石破首相が辞任に追い込まれ、自民党内右派が総裁選に勝利することがあれば、政策協議や閣外協力、あるいは連立の対象として考えられるのは参政党ということになる。しかし、衆院での参政党の議席は3議席であり、このままでは少数与党となり、早期に総選挙をおこなって、衆院で参政党の議席を大幅に増やす必要が生じてくるが(参政党・神谷代表は「(次の総選挙では)25〜30ぐらいが現実的な数字」と語っている)、同時に自民党がさらに議席を減らすリスクと隣り合わせの選択となる。したがって、自民党にとって当面取りうる選択肢は限定的であり、国民民主・維新、立憲民主まで含めた事実上の保守中道「連合」による政策協議、閣外協力、さらには連立政権の拡大が最も現実的であるため、それを推進できる総裁を選ぶ(あるいは石破首相を続投させる)ことになるのではないか。

 この予測は、自民党総裁選での高市早苗の選出と公明党の連立離脱で、政治再編の見通しという点では大きく外れることになった。その要因は、参政党の躍進に見られる極右ポピュリズムの台頭が自民党に与える影響(そして間接的には公明党に及ぼす波及効果)を過小評価していたことにあったと思う。参政党躍進によって、安倍政権を支えた「岩盤保守層」が自民から流出したことへの危機感は、われわれの想像以上に自民党内で強かったのだろう。
 一方で、高市の後ろ盾となっている麻生元首相は、自民・公明・国民民主の連立政権を成立させ、早期に解散総選挙に持ち込み、自民と国民民主で過半数を確保し、公明を連立政権から追い出すという構想を抱いていたと報じられている(10/11付、北海道新聞オンライン)。
 公明はこうした麻生の狙いを察知して、事前に連立解消に踏み切ったのかもしれない。
高市率いる自民党との連立継続は、創価学会・公明党にとって党の解体につながりかねない事態との危機感があったとも言われる。

保守中道勢力の再編と自民・維新連立政権の成立

 それでは、7月参院選以降、10月21日の高市連立政権成立までの保守中道勢力の再編プロセスについても振り返っておこう。もちろんこの再編プロセスはこれで終わったわけではなく、現在も進行中であることに留意する必要がある。
 まず高市自民党総裁との連立を嫌った公明党が26年間にわたって続いてきた連立政権から離脱した。公明党は、当初は自民党との一定の協力関係も模索したようだが、自民・維新政権の成立にともなって、中道野党としての立ち位置を鮮明にしている。ここにきて立憲民主との選挙協力の可能性にも言及し始めている。
 国民民主は、改憲、靖国参拝の容認や積極財政路線など、高市とイデオロギー的・政策的親和性が最も強く、高市首相のもとでの自民・公明・国民民主の連立政権を指向していたと思われる。しかし、公明の連立離脱=自公連立の解消という事態の中で、自民党との単独連立には踏みきれなかった。「公明党が抜け、われわれが政権に加わっても過半数に届かないので、あまり意味のない議論になってきている」(玉木代表)。しかも、連合は支持政党の国民民主と立憲民主が与野党に分かれることを容認しない姿勢を鮮明にしていた。他方では、立憲民主の安住国会対策委員長が仕掛けた「玉木代表を首班指名での野党統一候補とする」構想にも基本政策の違いを理由に応じることはなかった。その結果、維新に「出し抜かれる」こととなり、「もっと早く言ってくれればよかったのに」と泣き言を言うこととなったのである。首班指名後の世論調査でも、国民民主は大きく支持率を下げ、比較的若い層からの支持を高市政権に奪われている。
 維新は小泉が自民党総裁になることを前提に、そのもとで副首都構想を実現するという願望を抱いて、自民・公明・維新による連立政権参加に積極的だった。しかし、自民党総裁選挙の結果を受け、国民民主が連立に消極的となった間隙をついて、一気に高市自民との連立に踏み切った。そして、何としても首相の座に就きたい高市との間でほぼ自らの政策要求を丸呑みさせる形での連立合意にこぎつけた。しかし、多くの政策について自民党から留保条件がつけられ、しかも「閣外協力」という連立形態を選んだことで(大阪など近畿圏での自民との選挙協力の困難さもその一因と言われる)、いつでも逃げられる中途半端で不安定な「連立」となった。
 そうまでして連立に前のめりになった背景には、相次ぐ国会議員の離脱や本拠地・大阪を含む地方選挙での不振という危機的状況があった。9月8日に離党表明し、新会派「改革の会」を結成した3名の衆院議員(その後、「有志の会」の4名の無所属議員と共同会派を結成したが、首班指名選挙への対応をめぐって分裂し、再び「改革の会」となり、高市に投票した)に続き、比例近畿ブロック選出の林佑美衆院議員も離党届を提出した(首班指名選挙では高市に投票)。さらに広島4区選出の空本誠喜衆院議員も離党含みで次回選挙は無所属で立候補する意向(地域政党「広島の太陽」を結成)を示すなどが続き、これに歯止めをかける必要があったのである。あわせて、9月に大阪で実施された5つの自治体議員選挙において、いずれも前回より大きく得票数を減らし、摂津市で3名落選、阪南市でも1名落選と深刻な党勢衰退に見舞われていた。
 立憲民主は、臨時国会での首班指名選挙において、野党(中道)統一候補を呼びかけたが、玉木が「原発政策」「安全保障政策」での立憲の政策転換を要求したため、挫折を余儀なくされた。現状は、公明党と連携した中道野党としての立ち位置をとっているが、党内リベラルの枝野元代表が、従来の主張を変更し、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法制について「違憲の部分はない。だから変えなくていい」と述べるなど、野田代表のもとで進んだ中道右派的スタンスへの転換をさらに加速しようとする中、党内左派の孤立が進行している。

高市自民・維新連立政権の性格をどう見るか


 このように中道保守政治勢力の再編の結果生まれた高市自民・維新連立政権だが、その政治的性格について、われわれはどのように考えるべきだろうか。まず安保・防衛政策では、岸田・石破両政権が筋道をつけてきた軍備拡大路線にさらに弾みをつけていくことは間違いない。
 自民と維新が20日に交わした連立合意は、連立が自公から自維となったことによる変化が顕著に見える。冒頭で「自立する国家」の推進を掲げ、防衛費のさらなる増額や原子力潜水艦を念頭にした潜水艦保有の推進などタカ派色の強い政策に一気にかじを切った。他にも「国家」を強調する政策が多く、日の丸を傷つける行為を処罰する「国章損壊罪」を2026年通常国会で制定する方針や、外国勢力によるスパイ行為を取り締まる「スパイ防止関連法制」の検討開始を明記した。
 いずれも自民保守派が長く求めていたが、公明党との連立政権では推進が難しかった政策の数々だ。中でも象徴的なのは武器輸出の目的を「救難」など5類型に制限するルールの撤廃。自民保守派は殺傷武器の輸出の全面解禁に向けて類型撤廃を強く求めたが、公明が慎重姿勢を崩さず、かろうじて残っていたルールだった。」(10/22付、北海道新聞オンライン)
 また、連立合意文書で新設が決まった外国人「共生」担当相に、かつて排外主義的言動が問題となっていた小野田紀美参院議員が起用された。連立文書では「外国人比率が高くなった場合の社会との摩擦の観点からの在留外国人に関する量的マネジメントを含め、外国人の受け入れに関する数値目標や基本方針を明記した『人口戦略』を26年度中に策定する」とされた。高市首相は施政方針演説で「排外主義とは一線を画します」としつつも、「一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に対し」「政府として毅然と対応」すると述べ、外国人規制へと進むことを明確にした。
 経済政策においては、安倍の政策を継承し、「アベノミクス」ならぬ「サナエノミクス」の展開を目論んでいる。それは、1%の富裕層の利益を徹底して追求するものだが、それでも表向きには「最優先で取り組むこと」として「物価高への対応」をあげざるを得ないように、実行可能な政策の選択肢はそれほどフリーハンドにはいかないだろう。それは、日本ブルジョア支配層が何よりも政治的安定を求めているからである。その意味では、「閣外協力」という不安定で脆弱な自民・維新連立政権はあくまでも過渡的なもので、さらに本格的な政治再編は必至となるだろう。それは立憲民主をさらに「右」へと引きずる中での「大連立」をも視野に入れたものとなる可能性がある。日本ブルジョア支配層は今後の社会のあり方について明確な展望を持ち合わせているわけではないため、数の上での安定を保守中道勢力に求めていくだろうが、そのことがさらに極右ポピュリズムが伸長する余地を生み出すことになる。ここでも、左派の周縁化・孤立化が進み、新たなオルタナティブの提示と可視化ができていないことが決定的な問題となっている。

現在の政治状況に対して左派はどのように立ち向かうのか


 10月26日に投開票された宮城県知事選では、参政党が政策協定を結んで全面支援した和田政宗候補が現職の村井嘉浩候補に1万5千票強の差にまで肉薄する大接戦を演じた。しかも仙台市内だけをとると、3万6千票あまり和田候補がリードしていた。和田候補は、参政党との「政策覚書」では、「水道の民営化見直し・再公営化の推進」「移民推進政策への反対」「土葬の不許可方針」「大規模メガソーラー・風力発電計画の抑制・停止」などを掲げていた。
 これは、左派の反グローバリゼーションやエコロジー的な政策を巧みに取り込む(しかも「水道事業を外資に売った」というナショナリズムと結びつけて)とともに、それを排外主義的な政策と組み合わせたものだった。まさにヨーロッパの極右が採用してきたスタンスと同じである。こうした新興極右勢力の台頭に対する闘いにおいては、排外主義批判を展開するだけではなく、極右を伸長させている既存システムへの不信感・閉塞感を左の立場から打ち破れるような政策やスローガンを提示し、具体的に運動化していく必要がある。しかも、左派の存在がとりわけ若い層には可視化されていない、その存在自体が認知されていないという現状の中で、そのことに挑戦しなければならないのである。
 政治情勢が流動化し、しばらくの間政治再編が進むという状況のもとでは、さまざまな大衆運動や社会運動が自ら要求を政治に反映させていくためのスペースができ、その結果、大衆運動や社会運動が活性化していく可能性がある。また、議会内左派勢力がきわめて弱体な中では、大衆運動や社会運動の重要性が増していくだろう。しかし、そうした運動の成果を極右勢力に刈り取られてしまう可能性もまた存在している。
 今日、バングラデシュ、インドネシア、ネパール、モロッコなど世界各国で大衆運動や反乱の先頭にはいわゆるZ世代の若者が立っている。Z世代が主導する反乱には、2019年の香港の反乱で顕著に見られたように、明確な組織や指導部を持たないという特徴が見られる。しかし、それは左派の側の責任でもある。
 日本では、Z世代をはじめとした若い層は自公政権の時期しか経験してこなかったことで、「政治が変わる」という実感を持てなかったが、その状況は明らかに変わりつつある。それを最初に敏感にとらえて「政治を変えられる」と訴え、一定の支持を得たのが山本太郎代表率いる「れいわ新選組」だったと言えよう。
 昨年の総選挙、今年の参院選挙では、国民民主や参政党にそうした層の支持が集まった。しかし、それは固定的なものではなく、ヨーロッパやアメリカ、アジアなどで見られるようなZ世代の政治舞台への登場に、日本のZ世代も5年遅れ、10年遅れで追いついていくと考えるべきだろう。これは左派にとっても大きなチャンスであり、それにイデオロギー的・政策的・組織的に準備することがわれわれを含む左派にとっての課題なのである。

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