参院選比例得票数から読み解く日本政治情勢(その2)

左派の再生が緊急の課題
保守中道(「極中道」)勢力と今後の日本政治情勢

大森敏三

 前号では、参院選における参政党など極右政党の「躍進」と、その一方での左派の後退・周縁化の進行について分析した。そして、昨年総選挙で萌芽的にみられた「極右・保守中道(「極中道」)・左派」の三極政治構造が日本でも本格的に登場し始めていることを指摘した。しかし、それはヨーロッパやアメリカ・ラテンアメリカとは異なり、左派が決定的に弱体で周縁化させられている状況とともにあって、可視化されている構造としては「極右・保守中道」の二極分化として表現されている。今号では、そうした政治構造における自民党以外の保守中道勢力の動向を見ていくとともに、今後の日本政治情勢の展望、そしてわれわれ自身にとって緊急の課題となっている左派再生にむけてどのように取り組むのかを考えたい。

国民民主党の「躍進」が示すものは何か

 昨年総選挙の比例で617万票を獲得し、維新を上回って比例第3位となった国民民主は、今回の参院選でさらに得票数を上積みして762万票を得て、立憲民主を上回り、自民党に次ぐ比例第2位にまでなった。しかし、前号でも指摘したように、4〜5月頃の勢いからすれば、やや失速した感は否めない。その原因には、候補者選定をめぐるトラブルがあったと言われている。たとえば、維新を離党した足立やすし元衆院議員(創価学会の学生活動家であったが、政治的には公明党とは相容れなかったと本人が語っている)を当初は大阪選挙区で擁立しようとしたが、彼の労働組合敵視の姿勢に対して、連合内の国民民主支持単産からでさえ強い反発を受けて、結局は比例区で立候補したこと、立憲民主から離党した山尾志桜里元衆院議員・須藤元気元参院議員の比例区での立候補に対する反発がSNS上などで広がり、山尾志桜里元衆院議員が公認から外されたことなどである。こうしたいわば国民民主の「自滅」とともに、一時的に膨張した支持者のうちかなりの部分が参政党支持へと転じたことは前号で見た通りである。
 特徴的な点としては、中道右派政党としての国民民主と維新とを合わせた得票数が、3年前の参院選、昨年総選挙、そして今回の参院選と1100万票から1200万票へと徐々に増えてはいるものの、その中での維新と国民民主の立ち位置が完全に入れ替わったということがある。2022年参院選では、維新8:国民民主3だった割合が3年後には維新4:国民民主7となったのである。この両党の間で、相当数の支持者の入れ替わりがあったことは想像に難くない。
 どちらにしても中道右派政党が極右・自民党とほぼ同じ規模の得票をする勢力として、ここ数回の国政選挙で「定着」してきたことは間違いない。このことは立憲民主をますます「右」へと引き寄せる「磁力」となっている。実際のところ、通常国会において、維新や国民民主が与党との政策協議を相次いで成立させた後、立憲民主は年金制度をめぐって自公と政策合意を急いだのだった。国民民主の「躍進」が持つ意味は、何よりも立憲民主をますます「右」へと引き寄せ、事実上の保守中道「連合」への道を切り開いたことにあると言わなければならない。

連合組織内候補への得票減が意味するもの


 国民民主から立候補した連合の組織内候補は、UAゼンセン、電力総連、自動車総連、電機連合といった産別出身候補が全員当選した。電機連合出身の候補者の当選は9年ぶりだった。一方、立憲民主から立候補した連合内の産別出身候補は、自治労、情報労連、日教組、JP労組、JAM・基幹労連が当選したものの、私鉄総連は落選した。しかし、前回参院選での得票数との比較では、情報労連がわずかに増えたものの、それ以外の産別出身候補は軒並み票を減らしている。その減り方は、国民民主の4産別で約17万票(約20%)、立憲民主の5産別(前回立候補のなかった私鉄総連を除く)で約10万票(約15%)となっていた。ここでも、資本と癒着した労使協調労組やかつて強力だった官公労組合において、労働組合としての組織力や求心力が衰えていることを見てとることができる。
 共産党の影響下にある全労連も、組織力の低下は否めず、それはさまざまな集会への動員に顕著に現れている。建前として「政党支持の自由」を掲げ、実際には全労連の労組活動家が共産党の選挙運動を担ってきたのだが、それも現在ではほぼ労組出身の年金生活者によって担われている。全労協は、今回の参院選では大阪全労協に結集している教育合同出身の大椿ゆうこ社民党副党首を積極的に支援し、大阪全労協やおおさかユニオンネットワークはその選挙活動を主体的に担っていた。その結果、大椿候補は6年前の4倍近い得票を獲得したが、残念ながら当選にまでは至らなかった。

極右の排外主義的政策に引きずられた中道右派


 参政党が「日本人ファースト」をキャッチコピーとして、排外主義的な外国人排斥の主張を公然と掲げ、その主張に対する共感が一部で広がり、「外国人政策」が選挙の争点となったことを受けて、各政党は一斉に「外国人政策」を前面に打ち出すようになった。その中でも、とりわけ国民民主は「外国人に対して『融和的』とは言えない政策が目立っていた」(安藤海南男「週プレNEWS」7/31)。この記事では、ある政治記者の話を「国民民主は、外国人による短期転売への課税強化など、都市部での住宅価格高騰を念頭に置いた政策を打ち出していました。ほかにも選挙戦では、外国運転免許の切り替え制度の見直しや、外国人の短期滞在者による健康保険の不正利用が問題視されている健康保険制度、訪日外国人に対する課税強化につながる観光税や消費税免税制度の見直しなども訴えていました」と紹介している。
 維新は、大阪選挙区での候補者予備選(実施されたのは大阪だけ!)で、排外主義的言辞が目立った梅村みずほ参議院議員を事実上切り捨てた(梅村はその後、参政党から比例区で立候補し当選)にもかかわらず、選挙公約では「外国人比率の上昇抑制などを含めた人口戦略の策定に加え、司令塔機能を設置するなど外国人政策を一元管理する」「違法行為に対応するため、出入国在留管理庁の体制を強化し、警察や自治体との連携を図る」(「NHKオンライン」7゜/9)を掲げた。ここにも参政党の影響が見てとれる。
 このように中道派が極右の主張に引きずられて、「移民規制」「外国人排除」の方向に傾くのは、すでにヨーロッパ各国で広範に見られてきた現象である。ヨーロッパの旧来の改良主義的社会民主主義政党もその例外ではなかった。その意味では、立憲民主は辛うじて踏みとどまっているように思える。

地元・大阪でも後退を続ける維新


 日本維新の会は、2021年総選挙、2022年参院選では、比例区で800万票前後を獲得し、今回の国民民主を上回る得票を得ていた。しかし、昨年総選挙で510万票と激減し、この参院選では440万票弱とさらに票を減らした。本拠地であり、府政・市政を首長・議会ともに牛耳ってきた大阪においても、比例区での得票は約115万票で、昨年総選挙で比例票を2022年参院選の171万票から115万票へと減らしたところから挽回することはできなかった。しかも、大阪選挙区で当選した2人の候補者の合計得票数は約120万票で、前回参院選の146万票から大幅に減らす結果となった。
 私見では、維新は橋下・松井時代のポピュリスト的政党から「普通の」中道右派政党へと変化してきた。しかし、課題であった「全国政党」化は、東京都議選での敗北にも見られるように未だ果たしてはいないし、所属地方議員の不祥事や離党が相次いでいる。その中で、政策の親和性が強い国民民主との競り合いに近畿圏以外では勝つことができなかったと言える。近畿圏でも、やや大阪維新とは色合いの異なる前原共同代表が影響力を保持する京都で議席を獲得したものの、兵庫で議席を落とすなど、勢いを失ったままである。大阪維新の一部からは、「大阪を副首都とする法案成立と引き換えに自公と連立を組むべきとの主張も出てきているという。維新創設者の橋下徹・元大阪市長は21日のテレビ番組で『連立入りした上で、副首都構想を実現してほしい』と発言した。維新副代表の横山英幸大阪市長も25日、『大きな願いがかなうなら、あらゆる選択肢を取るべきという意見は出てしかるべきだ』と橋下氏に続くなど、本拠地の大阪から連立容認論が発信されている」(「読売新聞オンライン」7/26)。こうした主張は、いわば維新を大阪中心の地域政党へと先祖返りさせようとするものであり、維新内部での対立をさらに激化させることになるだろう。

保守中道連立政権の可能性と立憲民主

 立憲民主は、野田代表の就任とともに、中道右派的な方向へと大きく舵を切った。あるいは党内の趨勢がリベラルから保守中道へと変化したことの結果が野田代表の実現だったとも言える。しかし、立憲民主は、比例区では国民民主や参政党にも抜かれ、得票数で第4党となった。1人区で一定の当選者を出したことで辛うじて改選前の議席を維持したものの、党内では「敗北だった」という危機感が強いと報じられている。小沢一郎元代表は「(参院選は)野党第1党たる立憲民主党の敗北である。立憲の存在が、非常に危うい状況に陥っている。次の総選挙は参政党と国民民主党は全小選挙区に候補者を立ててくる可能性が十分ある。立憲は、相当選挙に強い人でも勝利を得るのは非常に難しくなる。極端に言えば、全滅しかねない」(「朝日新聞オンライン」7/31)と危機感をあらわにしている。しかし、参院選での「敗北」の総括によって、立憲民主がもう一度中道左派へと軌道修正することは恐らくないだろう。というのは、こうした党内の危機感は、参政党や国民民主が「躍進」したこととセットになっているがゆえに、立憲民主をさらに「右」へと引き寄せるベクトルになると思われるからである。立憲民主が中道左派へと再びスイングすることは、大きな民衆的運動の広がりや動員の拡大といった政治的・社会的なインパクトの結果抜きには考えられない。
 石破首相のもとで自民党が中道右派路線へ傾斜したことで、自民・公明から国民民主・維新、そして立憲民主までを包み込んだ事実上の保守中道「連合」が成立する基盤はすでに整ってきている。それが連立政権にまで至るかどうか、どのような連立政権の組合せになるかは、自民党内の力関係、つまり石破首相が続投する(できる)のか、退陣するとすれば誰が後任の総裁になるのか、にも左右される。
 仮に石破首相が辞任に追い込まれ、自民党内右派が総裁選に勝利することがあれば、政策協議や閣外協力、あるいは連立の対象として考えられるのは参政党ということになる。しかし、衆院での参政党の議席は3議席であり、このままでは少数与党となり、早期に総選挙をおこなって、衆院で参政党の議席を大幅に増やす必要が生じてくるが(参政党・神谷代表は「(次の総選挙では)25〜30ぐらいが現実的な数字」と語っている)、同時に自民党がさらに議席を減らすリスクと隣り合わせの選択となる。
 したがって、自民党にとって当面取りうる選択肢は限定的であり、国民民主・維新、立憲民主まで含めた事実上の保守中道「連合」による政策協議、閣外協力、さらには連立政権の拡大が最も現実的であるため、それを推進できる総裁を選ぶ(あるいは石破首相を続投させる)ことになるのではないか。

左派の再生をどのように構想していくのか

 参院選によって一気に「流動化」してきた政治情勢の中で、議会内左派勢力を含めた左派全体の周縁化と孤立はますます深刻なものとなっている。
 今回の参院選でのれいわ・共産・社民の比例票は約800万票で、投票率が上がったにもかかわらず、昨年総選挙よりも微減となった。しかも、その支持層は顕著に高齢者世代に偏っている。とりわけ若い層にとって左派の存在自体が可視化されていない。また、かつてとは異なり、左派は、青年層が政治に関心を持ち、政治に参加する回路としても機能できていない。われわれが左派の再生というとき、まずこの現実を直視するところから始める必要がある。
 その上で、左派再生に向けて何が必要か、左派の主張がどうして若い層に届かないのか、われわれは何から始めるべきなのか、などについて、われわれ自身の中での議論だけではなく、できるだけ広範に意見交換と経験交流、討論を積み重ねていく必要がある。
 昨年総選挙の比例票分析で明らかにしたように「無定形ではあるが政治や社会を変えたいという人々をも結集させる」ために、「これまでの枠組みを超えた形で視野を広く持ちながら考える必要」があるからである。
 同時に、左派再生のための闘いは、軍拡と改憲との闘い、つまり地域から軍拡反対、改憲阻止、沖縄・南西諸島の軍事要塞化反対、現地の闘いと連帯していく運動を担い続けること、若い世代の貧困、非正規雇用、失業など生活レベルの経済的要求を取り込み、運動化していくこと、世界的な極右・ファシストとの闘いと連動して、日本において極右排外主義と闘っていくことと切り離すことはできない。
 そして、差し迫る破滅的な気候破局に対して、そのオルタナティブとしてのエコ社会主義プロジェクトを東アジア・日本においてどのように具体化させていくのか、つまりエコ社会主義実現に向けた具体的で過渡的な要求を作り上げていく作業をさまざまな人々との共同の営みとして作り上げていくことが必要である。
 そのための一つの切り口が第四インターナショナル第18回世界大会で採択された「エコ社会主義革命宣言」である。この「宣言」をできるだけ簡明な形で、わかりやすく拡散していくことは、われわれによる左派再生への貢献の一つである。こうしたプロセスを通じて、左派再生への糸口を手繰り寄せていこう。
      (おわり)

7.19国会議員会館前行動で発言する大椿ゆう子社民党副党首

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