非常戒厳宣布以降の政局の性格と労働者階級の課題について(6)

ヤン・ジュンソク

 極右勢力に対する闘争が民主党のブルジョア議会権力を中心に展開されれば、つまり、労働者階級のゼネストや民衆抗争が十分にかつ強力に展開されなければ、極右勢力、そして国民の力の政治的な力は温存されるだろう。また、現在の勢力関係が今後も大きく変わることがないならば、その後、さらに絶望的な展開を招く可能性がある。民主党が再び執権した場合、民主党政権の下での労働者・民衆の生活は本質的に変わらない。そして、労働者・民衆の大きな失望は避けられないだろう。なんとか生き残った極右勢力はその過程において、自らの戦列を整備し、勢力を拡大し、より強力な勢力として復活することが可能だ。特に、世界経済と韓国経済がますます深刻な状況に陥っているという点で、この状況はさらに深刻化する可能性がある。
 これまで韓国の極右勢力の成長は、過去の軍事ファシズムに郷愁を感じる60代以上の世代がもたらしてきた。いまの韓国においては、世界的な様相と同様に、労働者・民衆の経済的貧困化によって逆説的に強力な社会的基盤が極右勢力に提供され、全世代に渡る勢力を構築する可能性がある。極右勢力と資本家階級間の関係も変わる可能性がある。これまでの韓国における極右勢力の成長は、資本家階級全体の支持を得られない中で行われた。尹錫悦の12月3日親衛隊クーデターが失敗したもう一つの理由もそこにあった。しかし、今後、経済危機が深刻化すれば、資本家階級全体が極右勢力の政権に解決策を求めようとする可能性もある。
 もし極右勢力が再結集することになれば、それ自体が労働者・民衆に対する極端な社会経済的攻撃を意味することになる。また、極右勢力によるファシズムの復活への画策へとつながる可能性も排除できない。私たちが今回確認したように、軍事ファシズムの歴史と残骸は、極右勢力の政権による迅速なファシズムへの進化につながる可能性がある。
 しかし、仮にこのシナリオが実現したとしても、直ちに最悪の状況へとつながるわけではない。たとえ民主党が再び執権する状況が来ても、労働者階級の独立性と闘争力を着実に発展させていくかによって、その後の事態の展開が全く異なる可能性があるからだ。文在寅の民主党政権に対する労働者・民衆の失望と幻滅が尹錫悦の国民の力政権の登場に帰結したのは、労働者運動・労働者政治の萎縮と民主党への従属が原因だった。もし民主党政権の下で労働者階級が独立性と闘争力を強固に発展させていけば、民主党政権に対する失望と幻滅は、その後の労働者運動・労働者政治が飛躍する足がかりになったはずだ。その展望は今後も変わらない。
 私たちは、第一のシナリオ(尹錫悦罷免・退陣と内乱罪の拘束・処罰及び国民の力の解体・没落のすべてを実現)を現実化するために最大限努力するべきだ。労働者階級の威力的なゼネストを中心に爆発的な民衆抗争を主導するために最大限努力することは、たとえ闘争が目標どおりに行われずに第三のシナリオ(尹錫悦罷免と内乱罪の拘束・処罰は実現されるが、国民の力の解体・没落は実現されない)に帰結したとしても、今後への最善の準備になるだろう。

5.労働者階級の闘争方向樹立のために

 2016年の朴槿恵退陣闘争では、10月24日に崔順実のタブレットPCの内容が暴露されてから46日後に弾劾訴追が可決された。当時の大衆集会においては、民主党の力に依拠しない「大衆闘争の力による退陣」を追求する路線がしばらく優勢だった。しかし、11月30日、民主労総労働組合のゼネストが見事に失敗すると、民主党主導の弾劾推進へと急展開した。そして12月9日、民主党は主導的に弾劾訴追を成功させた。
 ところが、今回は12月3日親衛隊クーデター未遂から11日後に弾劾訴追が可決された。2016年とは異なり、最初から「大衆闘争の力による退陣」ではなく、「ブルジョア制度による弾劾」に道が開かれたのだ。なぜだろうか。第一に、2016年の経験による学習効果が作用したからだ。第二に、再び民主労総が「大衆闘争の力による退陣」を主導的に貫徹するほどの強力なゼネストを組織できなかったからだ。実際、12月3日親衛隊クーデター前の民主労総の状態は、2016年の崔順実タブレットPC暴露以前よりもさらに悪かった。第三に、民主党が最初からすべての妥協を拒否し、弾劾を掲げたからだ。第四に、第2の戒厳令宣布に対する恐怖のため、尹錫悦の職務を一日でも早く中断させなければならないという大衆の共感が非常に強かったからだ。
 たとえ「大衆闘争の力による退陣」の道を歩むことができず、「ブルジョア制度による弾劾」の道を歩んできたとしても、尹錫悦の12月3日非常戒厳令宣言以降、労働者・民衆の闘争は非常に重要な役割を果たしてきた。非常戒厳宣布から2時間33分で国会が非常戒厳解除要求決議を成功させることができた決定的な力は、非常戒厳宣布の知らせを聞いてすぐに国会前に駆けつけた数千人の労働者・民衆、そして全国各地の数百万、数千万の労働者・民衆の力だった。12月7日以降も継続している大衆集会は、尹錫悦の弾劾訴追の可決へと導いた決定的な力であり、尹錫悦の罷免と内乱罪の拘束・処罰及び国民の力解体に向け前進するための最も重要な力として機能している。
 これまでの闘争における民主労総の役割には矛盾があった。民主労総は今回、一定の役割を果たしてきたが、その潜在的な力に比べれば非常に限られたレベルにとどまった。民主労総は12月4日午前3時、「尹錫悦大統領退陣まで無期限ゼネスト」を宣言した。しかし、実際には5日、6日、11日の3回にわたり、金属労組などを中心に5万から10万人程度が参加する限定的なゼネストにとどまった。民主労総は大衆集会において主導的な役割を担っており、相当数の組合員が集会に参加している。民主労総が集会の場で警察のバリケードを押し退けて道を開いた姿は、広範な未組織の大衆に強い印象を残した。しかし、民主労総は自らの真の潜在力を引き出すことができなかった。民主労総がさらに強力なゼネストを組織すれば大衆集会は今後、爆発的な民衆抗争へと発展していくだろう。しかし、まだ民主労総内の各単位はもちろん、現場活動家の間でもこれに関する議論が活性化されていない。
 大衆集会では、20・30代女性の主導性が顕著に浮上した。2008年や2016年の大衆集会でも似たような面があったが、今回は過去よりもはるかに20・30代女性の存在が目立った。特に、21~22日、南泰嶺で警察に阻止された全奉準闘争団において、20・30代の女性らの主導下により戦闘的な連帯が組織され、28時間で勝利を勝ち取ったのは印象的な出来事である。その感動は、長期闘争事業場の労働者と移動権闘争の障害者に対する自発的な連帯へと繋がっている。差別と抑圧に直面して自ら連帯を組織し、運動の主役となった20・30代女性たちが現在、前衛的な役割を果たしている。
 現在の情勢において最も重要なのは、民主労総が尹錫悦大統領の罷免・退陣と内乱罪の拘束・処罰および国民の力の解体という核心的な要求とともに、労働者・民衆の多様な要求を掲げ、威力的なゼネストを組織することだ。ゼネストによって爆発的な民衆抗争を主導し、情勢を導いていくことだ。これを現実化するために、民主労総の威力的なゼネストを労働者が促し、先導する活動を下から直ちに組織していかなければならない。左派政治組織、戦闘的・変革的な現場活動家、闘争事業場の労働者がまず主体として立ち上がり、その切実な必要性を広範な組合員に訴え、説得していかなければならない。同時に、民主労総に対して全面的な議論を提起し、断固たる決意を引き出さなければならない。官僚的に後退した労働者運動の現状を見ると、当面は目に見える成果を得ることができないかもしれない。しかし、逆に現在のダイナミックな情勢においては、予想外の方法で飛躍が起こる可能性もある。結果がどうであれ、まさにいま、私たちは最善を尽くすべきだ。
 極右勢力を壊滅させることができなければ、労働者・民衆の経済的貧困化によって逆説的に、極右勢力に幅広い社会的基盤が提供され、今後の極右勢力の勢力強化につながる可能性が高い。そして、この絶望的な世界的様相が、韓国でも本格化していくだろう。私たちが危惧するのは20・30代男性の政治状況である。20・30代男性は概ね20・30代女性に比べてかなり保守的であると評価されている。今後、20・30代男性の間で失業・非正規雇用による経済的苦痛が深刻化し、女性・少数者嫌悪の傾向が強化されれば、その多くが極右勢力の強力な社会的基盤に取り込まれる可能性がある。もしそうなれば、極右勢力の破壊力は何倍にも発展していく。また、すでに60代以上が極右勢力の重要な基盤となっている状況において、韓国の高齢者貧困率が経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最悪という状況にも注目すべきである。当面の情勢だけでなく、今後の過程でこのような危険に立ち向かう闘争を積極的に組織しなければならない。(了)
 12月27日

(「社会主義に向けた前進」より)

朝鮮半島通信

▲韓国の尹錫悦大統領の弾劾の妥当性を判断する憲法裁判所の裁判の5回目の弁論が2月4日に開かれた。
▲ソウル西部地検は2月5日、文在寅前大統領の娘ムン・ダヘ氏を道路交通法違反・公衆衛生管理法違反の罪で起訴した。
▲金正恩総書記は2月6日、平壌市江東郡の病院と教育文化施設の着工式に出席した。

The KAKEHASHI

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社