非常戒厳宣布以降の政局の性格と労働者階級の課題について(5)

ヤン・ジュンソク

 もしも現在の民主党の意図がこのまま貫徹されれば、極右勢力に対する闘いは決定的に弱体化する。ブルジョア民主主義自体の圧殺を夢見る極右勢力を制圧する力は、議会の過半数議席からは生まれない。労働者階級がゼネストという固有の手段を動員し、民衆抗争の先頭に立つときにのみ、極右勢力を完全に制圧することが可能だ。

4) 労働者階級の目標と方法

 現在の情勢において、労働者階級の核心目標は、尹錫悦の解任・退陣と内乱罪の拘束・処罰を徹底的に貫徹することだ。また、極右勢力の結集体となり、恥ずかしげもなく尹錫悦のファシズム復活の試みを擁護し、内乱を助長する党・国民の力を解体するか、それに潰滅的な打撃を与えることだ。これにより、軍事ファシズムの復活を画策するクーデターが韓国社会において二度と試みられないように、極右勢力を根絶しなければならない。また、韓国社会の政治情勢を大きく左に移動させることで、労働者・民衆の権利を広く獲得し、労働者の運動と政治を飛躍的に前進させる道を開かなければならない。
 同時に、労働者階級は、12月3日親衛隊クーデター制圧後、広く開かれた状況の中で、労働者・民衆の広範な要求を共に勝ち取っていかなければならない。労働者・民衆は12月3日非常戒厳令以前にも本質的に、基本権を奪われた生活を強いられてきた。非正規雇用による過剰な搾取と労働基本権の否定の下において、女性や性的少数者に対する抑圧・差別、気候危機の加速と環境破壊、帝国主義陣営間の覇権対立や戦争危機などのさまざまな状況が生じてきた。そしてそれらの状況は、労働者・民衆の生活に深刻な被害を与えてきた。すでに韓国社会においては、世界でも有数の高い自殺率、そして最も低い出生率を記録している。この状況は、現在の尹錫悦政権だけでなく過去の民主党政権においても大差はなかった。尹錫悦の親衛隊クーデターを粉砕したまさにその力で、いま、労働者・民衆の広範な権利獲得のための巨大な闘争に前進していかなければならない。
 労働者階級はこの事態に直面し、急進的な民主主義的要求を共に勝ち取っていくべきだ。死文化されていた非常戒厳令は、現実に軍事ファシズムの復活を画策する手段として使用された。その再発を防ぐためには、戒厳令制度自体を廃止しなければならない。大統領弾劾賛成率が75%に達する一方で、少数派の憲法裁判官に弾劾審判を委ねるのはあまりにも不合理だ。国民投票による大統領罷免制を導入すべきだ。有権者の意思とは異なり、85人の国会議員が弾劾に反対したが、次の選挙までそれらの者たちに制裁を加える手段がない。国会議員に対する常時の解職請求制度を可能にすべきだ。国会を封鎖せよという明らかな違法命令を前にして軍と警察は、躊躇しながらもその命令を履行した。軍・警察に対する違法な命令に関する拒否義務を明示しなければならない。尹錫悦は官僚的国家機構である検察組織を支配することによって大統領に上り詰めた。そして、検察権を自らのためだけに自由に行使した。検察の地域分権化を通じた相互監視と指揮部に対する解散・解職請求制度を導入すべきだ。
 現在の情勢において労働者階級は、強力なゼネストという固有の手段を動員することによって爆発的な民衆抗争の先頭に立たなければならない。なぜならゼネストのみが、粘り強く抵抗をしている尹錫悦や国民の力をはじめとする極右勢力を実質的に制圧できる方法だからだ。現在の情勢において極右勢力と対峙する闘争を実質的に主導することによってのみ、労働者階級が尹錫悦弾劾と内乱罪処罰に賛成する70~75%の広範な大衆の中でヘゲモニーを獲得し、労働者・民衆の要求を貫徹する力と労働者運動の力強い前進を獲得することが可能だ。
 私たちはいま、2016~2017年のキャンドル抗争の経験を振り返る必要がある。2015~2016年の朴槿恵政権による労働改悪に立ち向かった民主労総の闘争は、2016~2017年のキャンドル抗争への道を開いたが、民衆抗争を主導するようなゼネストの組織化に失敗した。そして弾劾を成功させた民主党に、その主導権を渡してしまった。弾劾訴追後、憲法裁判所の結果が出るまでの3カ月間、労働者・民衆の要求が広く提起されたが、大衆的な力を獲得することができなかった。それはキャンドル抗争の勝利者となった民主党の政治が、大きな枠組みで大衆の意識をコントロールし、制限したからだ。
 現在の状況も、当時と大きな違いはない。戦線の核心課題、すなわち極右勢力の抵抗を鎮圧し、尹錫悦の解任・退陣と内乱罪の拘束・処罰を貫徹し、国民の力を解体・没落させる闘争を遂行してこそ、労働者階級が決定的な役割を果たすことができる。そして、労働者・民衆の多様な要求の提起、難局を乗り越えていく力の拡大が実現可能である。逆に、労働者階級が再び核心課題において中心的な役割を果たすことができない場合、つまり、再び民主党のブルジョア議会権力が決定的な解決者として機能する場合、民主党の政治の枠を超えた労働者・民衆の要求に対して何ら大衆的な反響はないだろう。私たちは、労働者・民衆の要求を噴出させるためのあらゆる努力をしていかなければならない。核心課題に対する労働者階級の決定的な役割なしに、大きな政治的変革をもたらすことはできない。
5) 予想される3つのシナリオ

 新たな階級闘争は今後どのように展開されるのか。それは大きく次の3つのシナリオが想定される。
 第一に、尹錫悦罷免・退陣と内乱罪の拘束・処罰及び国民の力の解体・没落がすべて実現されるシナリオだ。一言で言えば、それは極右勢力を潰滅させることであり、現在の情勢において労働者階級が最善を尽くして追求すべき闘争目標だ。このような成果は、民主党のブルジョア議会権力を中心にしては決して得られない。ただそれは、労働者階級が強力なゼネストで爆発的な民衆抗争を主導し、決定的な役割を果たすことによってのみ獲得が可能だ。もしこのシナリオが現実化すれば、労働者・民衆の多様な要求と急進的な民主主義要求を貫徹可能な巨大な力が形成されるだろう。そして、労働者運動と労働者政治がまさに画期的な前進を開始するだろう。民主党の再びの執権ではなく、労働者政府の樹立と労働者の世界の建設という労働者階級の展望さえも、現実に大衆の中で有意義な代替案として浮上し始めるだろう。
 第二に、国民の力の解体・没落は言うまでもなく、尹錫悦の解任と内乱罪の処罰さえも失敗するシナリオだ。尹錫悦の復帰、内閣制改憲、あるいはその他の同様の状況においても結論は同じだ。極右勢力の目標の実現は、労働者階級としては想像もしたくない最悪のシナリオだ。もちろん、世論の70%が12月3日親衛隊クーデターに対して強い怒りを持っており、それに抗議する集会が続いている現在の状況では、その可能性は非常に低い。しかし、極右勢力が潰滅の危機を前にして、必死の抵抗と反撃に乗り出していることを忘れてはならない。この最悪のシナリオを完全に阻止するためには、労働者・民衆の闘争を持続的に発展させ、世論を越えて実質的に極右勢力を制圧していかなければならない。
 第三に、尹錫悦罷免と内乱罪の拘束・処罰は実現されるが、国民の力の解体・没落は実現されないというシナリオだ。尹錫悦の断罪は、ファシズム復活の試みに警鐘を鳴らすだろう。一方で極右勢力は、国民の力の政治的な力を防衛することによって、今後の反撃を可能にするための勢力を確保することになるだろう。現在の韓国における政治勢力の関係が大きく変わらなければ、そのシナリオが現実となる可能性が非常に高くなる。
 12月27日

(「社会主義に向けた前進」より)
【次号へつづく】

朝鮮半島通信

▲朝鮮のミサイル総局は1月25日、戦略巡航ミサイルの発射実験を実施した。金正恩総書記が同実験を参観した。
▲韓国の検察は1月26日、昨年12月の非常戒厳をめぐり、尹錫悦大統領を内乱の首謀の罪で起訴した。
▲朝鮮労働党中央委員会第8期第30回書記局拡大会議が1月27日、党中央委員会本部で開かれ、金正恩総書記が会議に参加した。
▲釜山の金海国際空港で1月28日、エアプサンの旅客機が炎上し、乗客・乗員全員が脱出した。
▲朝鮮のメディアは1月29日、金正恩総書記が核物質の生産基地と核兵器研究所を視察したと報道した。

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