非常戒厳宣布以降の政局の性格と労働者階級の課題について(4)
ヤン・ジュンソク
私たちは、資本主義の極度の危機がファシズムと戦争を呼ぶ時代、そして労働者・民衆が生存のために革命で立ち上がらざるを得ない時代を生きている。尹錫悦の12月3日親衛隊クーデターは、そのような事実を明白に示している。
4.新しい階級闘争地形の性格と展望
1) 極右勢力に立ち向かう戦線
尹錫悦の12月3日親衛隊クーデターによって、韓国の階級闘争の状況が一変した。それは、極右勢力がブルジョア民主主義を抹殺し、労働者・民衆の権利を全面的に剥奪する軍事ファシズムの復活を画策したからだ。新たな情勢のもとで労働者階級は、極右勢力に対抗するために、必然的に民主党をはじめとするブルジョア民主主義勢力の側に立って闘うしかなくなった。現在の情勢は、1917年8月末、ロシアでコルニーロフの反乱が起きたとき、労働者階級がブルジョア臨時政府の一方の側に立って闘わざるを得なかったものと似ている。また、1980年代の軍事政権に対して労働者・民衆とブルジョア保守野党が一方の側に立って闘った状況が再現されたともいえる。
従来の階級闘争の情勢はこれとは異なっていた。労働者・民衆は、新自由主義右派(国民の力)と新自由主義中道右派(民主党)という二つの資本家勢力の両方に対して闘争を行った。両者の間に違いがないわけではないが、労働者・民衆の立場では決定的な違いはなかった。既存の階級闘争の状況において、労働者階級の独立性を強固に保持しながら、両資本家勢力に対して労働者・民衆の闘争を発展させていった。
このような既存の階級闘争における状況は、1987年の限定的な民主化とともに形成された。特に1990年代後半を過ぎ、軍事政権の残留勢力が共和主義保守派に変身し、ブルジョア政治秩序が新自由主義右派対新自由主義中道右派の対決構図に再編され、情勢が固定化された。過去30年間続いてきた既存の階級闘争の状況が、12月3日親衛隊クーデターとともに新しく変わったのだ。
新たな局面においても、労働者階級の独立性と闘争力を堅実に発展させていくことが最も重要である。極右勢力だけでなく、民主党などブルジョア民主主義勢力に対する闘争も当然継続されなければならない。ただ、新たな特徴は、極右勢力に対する闘争が核心的な課題であることである。極右勢力との闘いにおいて、労働者階級が民主党を上回り主導権を握れば握るほど、広範な大衆の中でヘゲモニーを獲得することが可能である。そして民主党に対抗する労働者・民衆の闘争をより成功裏に発展させることができる。
1917年8月末、ロシアでボルシェビキが率いるソビエトは、コルニーロフの反乱軍を無力化する上で決定的な役割を果たした。ここでの成果は、ソビエトに結集した労働者・民衆の自信を最大化させ、結局2ヵ月後にブルジョア臨時政府を軽く制圧し、ソビエトが社会主義共和国を建設する10月革命に帰結した。同じ原理がいま、極右勢力に立ち向かう戦線でも機能している。
2) 極右勢力の目標と方法
尹錫悦の12月3日親衛隊クーデターは、結果的に労働者階級に新たな戦線の道をもたらした。クーデターは、すぐに虚しい失敗に終わり、極右勢力を極めて不利な立場に追いやった。しかし、政治・社会的に相当な基盤を有する極右勢力は、根強い抵抗と反撃に乗り出している。
尹錫悦をはじめとする極右勢力は当初、韓東勲との妥協を通じて弾劾訴追を回避し、体制を整えるための時間を稼ごうとした。しかし、韓東勲が「3~4ヶ月以内の早期退陣」という降伏を要求すると、当初予想した妥協を破棄し、正面対決の道に転換した。尹錫悦は12月12日談話で「最後まで戦う」と宣言し、12月14日に弾劾訴追が可決された際、国民の力の議員85人が反対票を投じた。尹錫悦弾劾に反対、あるいは12月3日非常戒厳令は内乱ではないという世論が20~25%を占めた。全光焄らは街頭において、極右総決起を組織するための必死の扇動に乗り出した。
弾劾訴追可決後も尹錫悦と極右勢力は粘り強く抵抗し、勢力の逆転の機会を狙っている。尹錫悦は憲法裁判所の弾劾審判を最大限遅らせる作戦を展開しながら、内乱罪に関する捜査を一切拒否した。国民の力は憲法裁判官の追加選任手続きをボイコットし、親尹系一色で指導部を再整備した。大統領権限代行であった韓悳洙は、憲法裁判官の追加任命と内乱常設特検候補の推薦を拒否し、弾劾審判と内乱罪の捜査を露骨に妨害した。
現在の情勢において、国民の力をはじめとする極右勢力の核心目標は、いかなる手段を使っても尹錫悦の解任と内乱罪の処罰を阻止することだ。その論理は「12月3日非常戒厳令は大統領の統治行為であり、内乱ではない」に要約される。軍事ファシズムの復活を試みた12月3日非常戒厳令を本質的に擁護しながら、厳格な断罪を無力化しようとしている。尹錫悦の罷免と内乱罪の処罰が確定した場合、自分たちにもたらされる災いを恐れるためでもある。また軍事ファシズム復活の試みを正当化し、その後も再試行する道を開こうとする極右的な意図がその背後にある。
3) 民主党の目標と方法
現在の情勢における民主党の核心目標は、民主党政権の再びの執権だ。民主党は、12月3日親衛隊クーデターが成功した場合にブルジョア民主主義の抹殺、そして個人的な追求が行われる可能性を恐れた。そして民主党は、尹錫悦の解任と内乱罪の処罰を行うのに必死になっている。しかし、これは民主主義の全面的な発展、そして労働者・民衆の広範な権利獲得のための手段ではない。それは、自分たちの権力闘争のための手段に過ぎない。仮に民主党が政権を取った場合、新自由主義政策の執行者として労働者・民衆を激しく攻撃するであろうことは想像に難くない。当然のことながら労働者・民衆は、民主党政権の再びの執権を決して受け入れることはできない。
事実、尹錫悦の国民の力政権をつくり出したのは、他でもない文在寅の民主党政権だった。文在寅政権は、2016~2017年のロウソク抗争で表れた労働者・民衆の熱望とは反対の道を歩んだ。文在寅政権は、資本家らと歩調を合わせながら最低賃金を押し下げ、住宅価格の暴騰を幇助し、特権階級の腐敗をもたらした。尹錫悦政権の激しい建設労組弾圧を最初に始めたのは、そもそも文在寅政権だった。尹錫悦政権は、もっぱら文在寅政権に対する労働者・民衆の広範な失望と幻滅を基にして執権したにすぎない。
李明博・朴槿恵政権を登場させたのも、金大中・盧武鉉政権だった。1998年から10年間、金大中・盧武鉉政権が繰り広げた新自由主義攻勢は、労働者の大量解雇の衝撃とともに非正規雇用の急激な拡散をもたらした。そして権力のうまみを知った民主党は、本格的な反動的支配勢力の一部となった。労働者・民衆に広く行き渡った民主党政権の10年に対する失望と幻滅が、李明博・朴槿恵政権の連続執権を可能にした。
あまりにも緊迫した現在の情勢において、再びの執権に血眼になっている民主党の本質は、尹錫悦弾劾訴追可決直後に大統領権限代行韓悳洙に国政安定協議体を提案し、与党としての役割を果たそうとした場面でも明らかになった。それは口先の「安定」なるものを掲げれば、次の大統領選挙において中道層の票を獲得できるだろうという愚かな計算の結果だった。しかし、これは尹錫悦・韓悳洙と国民の力に体制を整える時間だけを提供する重大な間違いであった。
民主党は、国会において有する170議席(56・7%)の議会権力を中心に問題を解決しようとしている。そして、議会権力の行使を正当化する補助手段としてのみ、また、自分たちが設定した政治的限界の範囲内でのみ大衆の勢力が機能することを望んでいる。
12月27日
(「社会主義に向けた前進」より)
【次号へつづく】
朝鮮半島通信
▲韓国の高官犯罪捜査庁は1月19日、内乱首謀容疑で尹錫悦大統領を逮捕した。
▲韓国の尹錫悦大統領は1月21日、憲法裁判所で開かれた自身の弾劾裁判に初めて出廷した。
▲朝鮮の最高人民会議が1月22〜23日に開かれた。金正恩総書記の同会議への出席は報道されなかった。
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