9.19沖縄の米軍性暴力事件の責任を問う

何よりもまず被害者保護徹底を

政府の事件隠ぺいを許さない

諸悪の根源米軍基地全面撤去

 【東京】9月13日、基地・軍隊はいらない4・29集会実行委員会は、「沖縄で相次ぐ米兵による性犯罪事件 隠蔽した日本政府の責任を問う政府交渉・院内集会」(参議院議員会館講堂)を行った。協力:沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック/ふぇみん婦人民主クラブ/アジア女性資料センター/アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)。
 集会は、以下の「呼びかけ」で開催され、230人が参加した。
 「2023年12月24日、16歳未満の少女が米軍嘉手納基地所属の米空軍兵長ブレノン・ワシントンから性暴力を振るわれる事件が起きた。犯人は、24年3月11日に沖縄県警が那覇地検にわいせつ誘拐、不同意性交の容疑で書類送検し、3月27日に起訴された。
 だが、この事件が明るみに出たのは、事件発生から半年後の6月25日だ。しかも外務省は、この事件について起訴前に把握していながら、沖縄県や地元自治体に通報せず事件の隠蔽を強行した。この事件以外でも米兵による性犯罪が起きており、基地があるがゆえに繰り返されてきたといえる。日本政府は事件が起きるたびにその場しのぎの対策や制度でごまかしてきた。
 長年にわたって沖縄の女性たちを性暴力犯罪にさらしてきた責任は、沖縄に米軍基地を押しつけ続けている日本政府にある。
 12月の事件について日本側は犯人引き渡しを求めず、加害者は現在保釈されて米軍の保護下に置かれている。7月の初公判では反省するどころか無罪を主張して被害者の尊厳を二重に踏みにじった。8月23日の第2回公判では、被害者が証人尋問のために加害者と同じ空間に立たされることになってしまった。
 被害者の徹底した保護を強く求めると同時に、加害者への処罰と、被害者への補償と謝罪が早急になされることを訴えます。私たちは、米兵による凶悪犯罪を隠蔽した日本政府の責任を追及し、諸悪の根源である米軍基地の全面撤去を求めていきます」。

省庁交渉で回答をことごとく拒否

 省庁交渉では、外務省、防衛省、法務省、警察庁が出席し、伊波洋一参議院議員、高里鈴代さん(「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」)、明有希子さん(語り部/宜野湾市)などが追及した。
 主催者は、事前に政府側に45項目の質問を送り、9月11日付で、文書で回答してきた。とりわけ各省庁の人権軽視、米軍防衛の姿勢が明かな回答を紹介する。
 質問「外務、防衛、警察、検察などの省庁が『被害者のプライバシー保護』を強調していたにもかかわらず、証人尋問でなぜ、最大限の被害者保護の措置が執られなかったのですか」。
 回答(法務省、最高裁)「お尋ねは、公判係属中の個別事件、裁判官の判断事項に関わる事柄ですので、お答えを差し控えさせていただきます」。
 質問「上川外相が12月事件の報告を受けたあとに6月23日の慰霊の日に玉城デニー知事と会っており、沖縄県に通報することができたはずですが、事件の通報をしませんでした。なぜ事件についての報告がなかったのですか」。
 回答(外務省)「今回の事案は捜査当局における判断も踏まえ、外務省から防衛省に対してその時点で情報を提供することはしませんでした。その結果、捜査当局による対外公表までに沖縄県に対する情報共有がなされなかったものです」。
 質問「『被害者のプライバシー』が、今後も情報隠ぺいの口実にされない保障がないと考えます。性暴力被害者のプライバシーに配慮しつつ、情報を自治体・市民にきちんと共有し、再発防止に向けた対策をとっていくための方策についてはどのように考えますか? 性暴力にとりくむ地元専門家や関係団体とこの点で協議を行って検討していく予定はありますか?」
 回答(外務省、警察庁、防衛省)「……在日米軍に係る事件・事故が地域社会に及ぼす影響を最小のものとするという日米間の通報手続きの趣旨・目的を引き続き確保することを前提としつつ、刑事事件に関しては、社会状況の変化も踏まえた対応が必要となると考えます。……一層適切な通報制度の運用の在り方を検討していく必要があることから、引き続き関係省庁及び米側と協力しつつ議論を行ってまいります」。
 質問「『新しい運用』では、『運用に際しては、被害者のプライバシー保護などに留意する必要性を強調』とありますが、97年通報手続きでも『被害者のプライバシー保護』は当然の前提であったのではないですか」
 回答(外務省)「……関係者の名誉・プライバシーへの影響、将来のものも含めた捜査・公判への影響の有無・程度も考慮し、慎重な対応が求められるものと承知しています。外務省においても、そうした理解の下、対応してきています」。
 質問「『情報の不適切な取り扱いがあった場合』地元自治体への『情報伝達をとりやめざるを得ない』とされていますが、『不適切な取り扱い』とは、どのようなケースを想定していますか」。
 回答(法務省、外務省)「『不適切な取り扱い』には、非公表を前提として共有された情報を公表することはもとより、事案の特定につながり得るような情報開示等が含まれ得るものと考えられますが、どのような行為が『不適切な取り扱い』に当たるかを一概に申し上げることは困難です」。
 このように各省庁の回答は、「個別事件に関することであるためお答えを差し控えます」、「被害者のプライバシー保護が重要となる性犯罪で、捜査当局から非公表の事案であると共有を受けた」「1997年の取り決めの趣旨・目的は達成された」などと繰り返した。

各省庁追及の院内集会

 各省庁回答に対して主催者は、「アメリカの声は聞くが、沖縄県民の声は聞かないということだ」「(被害者の)プライバシーと言っているだけで、こちらの質問の内容や質問に込めた怒り、なぜ質問したのかというところが伝わっていない」「外務省が米軍と非常に頻繁に情報を共有している、と言っていた。密接な連絡体制をとっているということだが、沖縄の声が届いていない。人権意識の欠如が発言から見えてきた」と強調した。
 伊波議員は、以下のように批判した。
 「97年の日米合意『在日米軍に係る事件・事故発生時における通報手続き』は、通報対象事件や通報経路を定めており、その目的は沖縄県及び関係市町村といった地域社会に正確かつ直ちに情報提供し、事件・事故が地域社会に及ぼす影響を最小限のものとすることです。日本政府・外務省による、「97年通報手続」に反する情報隠ぺいは、辺野古代執行や県議選への影響、岸田訪米や現政権による日米軍事一体化への政治的配慮などによるものではないかと考えられます」。
 「12月事件の隠蔽は、結果的に、5月の米兵性暴力事件の再発を招いてしまいました。さらには、急性期における事件被害者と沖縄県や支援団体とのつながりを遮断し、例えば先日の刑事裁判でも、ビデオリンクやカウンセラーの同席なども認められず、被害者支援が大きく後退しているのではないかと危惧しています」。
 「『新しい運用』は、『起訴または不起訴処分後の通報』といいますが、「97年通報手続」のタイトルにあるように『発生時における通報』より時期的に遅くなり、急性期における自治体や支援団体の介入を妨げるものです。また、95年の少女暴行事件を受けて合意された『97年通報手続』でもプライバシー保護は大前提であり、『新しい運用』は、今回の外務省主導の情報隠蔽を後づけで正当化するものであり、『97年通報手続』の改悪であって、まったくみとめられません」。
 「安倍、菅、岸田政権下で、集団的自衛権行使容認、南西諸島の軍事要塞化、敵基地攻撃能力保有や軍拡増税なども含め『戦争できる国づくり』がすすめられてきました。『安全保障』の名のもとに社会全体が軍事優先に変えられることを許すわけにはいきません」。

沖縄に押しつけている米軍基地問題を考えて

 明有希子さんは、普天間基地のある宜野湾市で生まれ育った経験を語りながら、「今回の事件と紙一重のすれすれがいくつも積み重ねられてきました。娘の通う保育園に米軍ヘリの部品が落下したとき子どもを育てる身として何ができるかを考えています。みなさんに、沖縄に押しつけている米軍基地の問題を考えてもらいたい。沖縄ががんばるんじゃなくて、本土のみなさんががんばるんだと思います」と発言。

高里さんが基地と性暴力の関連を指摘

 高里鈴代さんは次のようにポイントを浮き彫りにし批判した。
 ①性被害者をバッシングする社会を批判
 ②1995年の事件の時、加害者の米兵3人は「日本の女性は訴えないから大丈夫だと思った」と供述しているように基地と性暴力の関連性を解き明かした。
 ③国内の約7割の米軍基地が、国土の0・6%の沖縄に集中している。性犯罪が起きる大きな原因はそこにあります。それなのに未だに日本社会では被害に遭った人が自分を責めている。どうして加害者が責められないのでしょうか。
 ④各省庁は「(事件を公表しないのは)被害者のプライバシーを守るため」と繰り返し回答した。これは加害者を守り、被害者を守らない日本社会の問題の現れだ。
 院内集会終了後、首相官邸前で抗議行動(230人参加)を行った。全体で「米兵による性暴力事件を許さない!日本政府は沖縄の声を聞け!米軍基地の全面撤去!」などのシュプレヒコールを響かせた。       (Y)

高里鈴与さんが沖縄における米軍兵士の性暴力を厳しく批判(9.13 首相官邸前)

各省庁で沖縄の米軍による性暴力の隠ぺいを追及する伊波洋一参院議員(9.16 院内集会)

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