10.10日米地位協定の不条理を問う!
相次ぐ米兵犯罪手がかりに
戦争させない1000人委員会
【東京】10月10日、戦争をさせない1000人委員会は、連合会館で「日米地位協定の不条理を問う! 相次ぐ米兵犯罪を手がかりに」という集会を行った。
集会は、染裕之さん(1000人委員会)の主催者あいさつから始まった。
飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)は、「日米地位協定とは何か」というテーマで問題提起した。
「2023年12月には16歳未満の女性が米兵に誘拐、性的乱暴をされた。2024年5月も米兵犯罪が起きた。しかし今回も自公政権は、米兵犯罪をなくす政治をしていない。岸田政権は、米兵性犯罪事件を『隠ぺい』すらした。その理由として、岸田政権は『プライバシー保護』などを理由に挙げている。だが『プライバシー保護』は氏名などを曖昧にする。そもそも『プライバシー保護』などは口実であり、むしろ2024年4月のバイデン大統領との会談、6月の沖縄県議会選挙、6月23日の慰霊の日などを政府に都合よくすすめるため、事件を隠ぺいしたと批判されている。刑事手続きで米軍関係者を有利に扱う『日米地位協定』の改定、『裁判権放棄密約』廃棄など米兵犯罪をなくすための政治は必須だ」と強調した。
さらにキャサリン・ジェーン・フィッシャーさんレイプ事件との関連で、「日米地位協定締結(1952年2月)後、『日本にとって著しく重要と考えられる事件以外について第一次裁判権を行使するつもりがない』という裁判権放棄密約が明らかとなった。1953年10月7日付で法務省は刑事局長名で検事長や全国の検事正に対し、米兵関連の犯罪を起訴猶予にするようにとの通達を出していた。以降、米兵の不起訴率が高まっていった。この件も含めて日米地位協定の改正を実現しなければならない」と発言した。
アイアムジェーンプロジェクト
キャサリン・ジェーン・フィッシャーさんは、米兵犯罪被害者の経験から日米地位協定の問題点を具体的に浮き彫りにした(別掲)。
とりわけレイプ事件後、睡眠障害など心的外傷後ストレス障害(PTSD)で生活が困難な状況に追い込まれた。友人、家族、オーストラリア大使館のスタッフに支えられたことを報告。ジェーンさんの国連人権理事会(2019年7月2日)での発言(別掲)がビデオで紹介後、あらためて日米地位協定改定を訴えた。
さらに「アイアムジェーンプロジェクト」(①性暴力や家庭内暴力に関する地域社会への啓発活動 ②特に女性や子どもを含むすべての被害者への重要な支援 ③国内外の政府や国際連合での代表業務や国内外でのシンポジウムでの活動 ④性暴力や暴力を防ぐための革新的な戦略やプログラムの推進)への協力を呼びかけた。
清水雅彦さん(日本体育大学教授・憲法学)は、「刑事裁判権の帰属区分以外の日米地位協定の問題」について①基地使用 ②航空機事故等への対応 ③「思いやり予算」 ④自民党改憲案(2012年)を批判。
そのうえで「米軍による横田空域・管制権を認め、事故時の日本の警察等排除・制限的な裁判権を容認してきた自民党に『主権と独立を守る』『領空を保全する』と主張する資格なし。日米地位協定の遵守・改正が必要、そもそも日米安保条約の存在も問うべきだ。自公政権ではそれができないなら、それができる政党による政権交代が必要」と述べた。
最後に田中直樹さん(戦争をさせない1000人委員会)が行動提起した。 (Y)
キャサリン・ジェーン・フィッシャー闘いの記録
(リーフレット「無理しないで自分を大切に 無理さん如胴大切〈ぐとぅどぅーてーしち〉にしみそーり」から)
◦2002年
4月6日、神奈川県横須賀市で、当時米海軍航空母艦キティホークの乗組員だったブローク・T・ディーンズから暴行を受ける。
同日神奈川県警で取り調べを受け、12時間拘束される。事件直後、米憲兵隊が加害者を拘束。
7月、横浜地検が加害者を不起訴にする。米軍の軍法会議もこの件を扱わないと決定。
8月、加害者に損害賠償を求める民事訴訟を東京地裁に提訴。
◦2004年
11月、民事訴訟で全面勝訴。東京地裁は加害者に300万円の賠償命令を下す。加害者は審理中の2002年に除隊し帰国、所在不明のための賠償金は支払われず。
◦2005年
1月25日、本人の意思を無視した神奈川県警の捜査によって精神的苦痛と人権を踏みにじられたとして、東京地裁に神奈川県を被告とする国家賠償請求の裁判を提訴。
◦2007年
12月4日、東京地裁は神奈川県警の捜査の違法性を認めない判決を下し、原告の訴えを棄却。控訴した。
◦2008年
2月10日、沖縄県北谷町で米兵による女子中学生暴行事件発生、衝撃を受ける。
3月23日、「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する沖縄県民大会」(北谷町)に参加しスピーチ。「初めてレイプの被害者が沈黙を破った」。
5月19日、防衛省が「救済措置として」300万円の見舞金をフィッシャーさんに支払う(山内徳信参議院議員・服部良一秘書(当時)の尽力による)
6月、加害者の知人女性によりメールが届き、加害者の所在について情報を得る。
7月25日、日本外国特派員協会で会見し、「加害者の所在がわかった」と明らかにする。
12月10日、神奈川県警国賠訴訟控訴審棄却、最高裁に上告。
◦2009年
5月、著書『自由の扉 今日から思いっきり生きていこう』(御茶ノ水書房刊)出版。
7月16日、神奈川県警国賠訴訟、最高裁が上告棄却。
◦2012年
5月、米ウィスコンシン州ミルウォーキー郡裁判所に2004年11月東京地裁判決の履行を求めて提訴。
9月6日、裁判所は裁判の開始を決定。
10月18日、第一回口頭弁論。
◦2013年
10月15日、米ウィスコンシン州ミルウォーキー郡裁判所が原告勝訴判決を下す。
◦2014年
6月、オーストラリアの出版社Vivid Publishingから著書 「I am Catherine Jane」を出版
◦2015年
5月、「I am Catherine Jane」の日本語訳『涙のあとは乾く』講談社より発行。
◦2016年
10月、NGО「ヒューマンライツ・ナウ」より、アジアン・アクティビスタとして表彰される。オーストラリア・オブ・ザ・イヤーにノミネート。
◦2018年
エール大学ゲストスピーカー。個展も開催。
◦2019年、22年
国連人権理事会でスピーチ。自分自身や沖縄の人々の身に起きた性犯罪を挙げ「国連がこれらの人権侵害を調査するよう求める。米軍の免責を断ち切る必要がある」と述べた。
◦2020年、22年
ノーベル平和賞にノミネート。
◦2024年
4月、沖縄と東京で個展「癒しのアートの力」を開催。
8月10日、沖縄県民大集会で米兵による性犯罪根絶を訴える。
ジェーンさんの国連人権理事会(2019年7月2日)での発言
「米軍の兵士たちは、日本国内で過去70年以上、多くの犯罪を犯してきました。日本の防衛省のデータによると、米軍による事件や事故は1952年~2017年の間に21万件起きています。
これは単なる数字なのでしょうか? 私もそのうちの一人です。私はレイプされたのです。
日本の警察は私を13時間も拘束しました。水も食べ物も出さず、私をまるで犯罪者のように扱いました。犯人を自分でも探し出せと言われました。レイプされた時の様子を再現させられ、写真も撮られました。
私は2002年にレイプされ、自分から声をあげた日本で最初の女性です。そのため公安に尾行され、殺すと脅されました。
東京での裁判に勝ちましたが、犯人は日本から逃げてしまい、私は10年以上かけて彼を自分の力で探し出しました。どんな女性も、正義のため大変な苦労をして戦う理由はあり得ません。私はアメリカで犯人を訴え、裁判に勝ちました。
アメリカの裁判所は日本裁判を支持したのです。賠償を得られる資格を得られたのですが、私は1ドルしか要求しなかった。私にとって正義とは、お金をもらうことではありません。
レイプを根絶したいというのが私の願いなのです。
私は18年間、強姦犯が日本から逃げることを可能にした日米地位協定を変えようとしています。沖縄では、2016年に女性が殺害されてスーツケースに押し込まれる事件が起きました。過去にはたった6歳の女の子がレイプされ、体をパラパラに切断されました。女性が路上で暴力を振るわれて殺されました。現代の日本で起きていることです。
すべての被害者のために私は声をあげます。国連がこれらの人権侵害を調査するように求めます。米軍が犯罪責任をまぬがれるようなことは、もう終わりにしなければなりません。私の声、私たちの声を聞いて頂いて議長、ありがとうございます」。

ジェーンさんは、米軍と日本政府を厳しく批判(10.10)
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