ウクライナの今を知る5・17講演会

ウクライナ支援を強化しよう
ウクライナ連帯ネットワーク

 【東京】5月17日、東京・神保町区民館で「ウクライナの今を知る5・17講演会」がウクライナ連帯ネットワークの主催で開かれた。講師は谷川ひとみさん。谷川さんは2011年以降ロシア南部の北コーカサス地方を訪れ、歴史を専門に研究。2015年以降、ウクライナを訪問し、2025~26年に長期滞在。

 司会者の中村さんがあいさつ。
 「ロシアのウクライナ侵略から4年が過ぎた。ウクライナの人たちの粘り強い抵抗に刺激されて、日本でウクライナ連帯を行ってきた。ウクライナ侵略に対して世界各地から反対批判の声があがっていた。トランプはイラン戦争を優先して、ウクライナ支援にはまったく関心がない。ウクライナの人々は4年間、劣勢の中で、非常に粘り強く、戦い続けている。兵士だけではなく市民が自ら生活をかけて様々な抵抗をやってきている」。
 「私たちにどういったことが求められているのか、考える場としたい」。
 講演の後、連帯ネットワークの原隆さんがウクライナ侵略戦争の米欧対ロシアの二項対抗論によって、侵略者ロシアの肩を持つ一部「反戦派」を批判やロシアのサハリン2原油の日本の輸入反対の意見を述べた。質疑応答では、ロシア語やロシア文化をどう見ているのか、女性兵士の現状、ヨーロッパ労働運動におけるウクライナ支援について、の質問が出された。
 最近のロシアはキーウなど全国の電気・水道などインフラ設備を集中的に攻撃し、市民の生活を破壊している。しかし、ウクライナはドローン攻撃を強化し反撃している。
 ロシア兵50万人死亡説も流れる中、東部戦線での前進思うようにいっていないようだ。ロシアのウクライナ全土への苛烈な攻撃はやんでいない。ウクライナ戦争に関心を持ち続け、支援を持続しよう。             (M)

谷川ひとみさんの講演から


 2026年初頭から2月末まで、ウクライナに行っていた。主な訪問先はキーウ、ハリキュウ州、ドネツク州、ザポリージャなどだった。

全面侵攻以来最悪の冬

 全面侵攻後、2024年の初頭にウクライナに行き、その時もチェチェン独立派の方が集会をするというので招待された。それ以後4回ぐらいウクライナに滞在している。ロシア語は理解し、ウクライナ語はがんばって理解しようとしている。滞在中は可能な限り、現地の方と同じような環境で過ごすことをポリシーとしている。
 取材先はキーウなど、南部はあまり行ったことがない。東部を中心に取材を続けている。今年の冬は全面侵攻以後最悪の冬と言われていた。停電しやすい地域としにくい地域がある。暖房は基本なかった。電気もあんまりない。水が出ない時もあった。
 今年はインフラへの集中攻撃、狙ってやっている。だからこれは耐えなければいけない、と言っていた。電気がないせいでインターネットがない生活は困った。地元の方もネットがないことがすごく困っていた。
 現地の方はインターネットが必要な場合はカフェとかに行っていた。シャヘイドとかミサイルを妨害するために、撃ち落とすだけでなくて、妨害電波とかを出して、街に落ちないようにする。GPSを狂わす電波がたくさん出ている。それが人間が持っている電話にも影響を与えてしまう。
 去年の暮れくらいから、シャヘイドの新型が出ていて、速度が速く飛ぶので、撃ち落とせないみたいで、低空で飛んでくる。それを妨害するために、妨害電波を低く出している。そのせいで、電話に対する影響も前よりも広くなっているように感じる。
 Googleマップを見たら自分はチリにいることになっていた。電話の時間もチリ時間になってしまう。時間も分からなくなってしまった。GPSがないので道に迷っている人が多かった。市民の生活や兵士の移動にとって影響が出ていた。
 ホットスポット。充電とか暖房が効いていて、市民の憩いの場所になっている。充電に関しては、モバイルバッテリーを持っている。10時間とか、一日中停電してしまうとそれが一日だったらよいが、2時間ぐらい電気がきて、また停電するといくら持っていても足りなくなる。それでみんな無料で電気を提供してくれる設備がある所に行ったりしていた。
 家庭ではキャンプ用の充電器を備えていた。10万円ぐらいで売っている。ガソリンスタンドで発電機を置いている所がある キーウの広場は右岸だ。地下鉄が警報が鳴ってもオープンだ。左岸の場合は地下鉄が警報がなると止まってしまう。地上を走っているので、走らなくなってしまう。そうすると車でしか移動ができない。橋が混んでしまう。出勤とかに影響がある。右岸の方が行政施設など重要な施設が多い。そっちの方が狙われる可能性が高い。
 軍事施設の近くには住みたくないというのは当たり前。軍事施設の近くは停電しにくいというメリットもある。みんな頭を悩ましている。
 今年はなにしろ停電がひどい。特に逃げることもない。人々は慣れていくから、しょうがないみたいな印象だ。ひどいひどいと口にするよりは、やっていくしかない。

前線兵士の状況


 前線兵士の状況を報告したい。情勢が悪いというのはあるが、長期化する戦争と兵士の生活。兵士も兵士でその環境に慣れていく。兵士と民間人に生活とか考え方に、差が出てきている。時間感覚の違いが、すごくある。前線地域はドローンの進化とか、戦争がどんどん変わっていくので、それに適応して生活していかなければいけない。
 兵士は住んでいる場所がばれたら、そこが狙われるので、定期的に移動する。相手の設備とか、いなくなってしまったところを借りて、基地にしたりするが、必ずしも彼らが望む条件の所を、見つけられるわけではない。時間感覚の違いが市民と兵士の差になっている。

 コーヒーが民間人の生活に根付いている。物価に対してもコーヒーは抑えられている。
どうしても待ち時間が発生してしまって、そういう時にカフェに帰ってコーヒーを飲んで休む。待つしかない時間がたくさんある。
 コーヒーに求めるものが兵士と民間人ではずいぶん違っていて、そこにアイデンティティさえ見出している。それが面白いと思った。
 兵士の疲労は今に始まったことではないが、時間を追うごとに疲労があるなと感じた。いろんな人がいるし、事務的な仕事もあるし、作戦を行う仕事もある。プログラミングとかの仕事もある。みんな疲れているというのはすごく感じた。
 自分がいる前線自体がずっとどこも平等に危ないわけではない。今ここのポイントですごく戦争が激しいということもあり、そんなに厳しくない場合もある。
 家族がどれくらい支えられるかが前線の兵士の士気とかにすごくかかわっていることが分かった。家族の方も気持ちは支えたいと思っているけど、心配で逆に連絡取りたくないという人もいる。密に連絡を取った方が兵士の気持ちは軽くなると感じた。

東部前線地帯の民間人の生活

 クラマトーストによく行っていた。ドネツク州の中心地。ウクライナのコントロール下にあるがだいぶ危なくなっている。去年の11月に、鉄道がいかなくなってしまった。公共交通機関がマヒしていて、自家用車がない人はどのように避難していいか分からない。バスも行くがいつ出るのか、時刻表通り動いているわけではないので分からない。
 逃げたくても逃げれない。どこに逃げたらいいか分からない。情勢の変化がすごく早い。2キロくらい迫ると民間人はいなくなる。私がクラマトーストに行ったとき、攻撃があると一番危ないのは窓だ。窓はダメだとなって、木の板に代える。ガラスほどには危なくない。

ドローンについて


 ドローンの進化がウクライナ戦争の特徴だ。取材していく中ですごく印象的だったのが、ドローンが普及の段階をすぎて、進化している。三カ月後どのようなドローンが使われているか分からない。試作品が試行錯誤されている。大きめのものを作ってみたり、プロペラを二重にしてみたり、長距離を飛ぶときに飛行機型を使うことが多かった。最近では近距離でも使う。本格的投入には半年ぐらいの試行錯誤がある。シャヘイドを打ち落とすために作られた。

キルゾーンの拡大

 キルゾーンの拡大。一年前はこの言葉を聞いたことがなかった。いつでもドローンが飛んでくる場所。居住困難地域だなとも認識している。
 ドローンは数百ドルで作られてしまう。大量に投入されている。ウクライナの前線では前線という言葉が、古いんだなというふうに感じた。
 ゾーンは空間。線ではない。ドローンは空を飛ぶもの。地雷みたいに地面に置いてあり、時限爆発するものもある。振動を感じて爆発するもの、自分の目線でも飛んでくる。旋回もする、スリーディーで飛ぶ。線の戦いでなく、空間の戦いになっている。
 フロントラインからどれくらい離れているかと聞くと、兵士の人も対応に困る。ドローンがどれくらいで飛んでくるか、長距離で飛ぶドローンもあるし、短距離で飛ぶドローンもある。前線が動いていないという印象があるだろうが、キルゾーンの拡大によって、今はいつでも、どこでもドローンが飛んできてもおかしくない空間が20キロぐらい。おそくら今年中には50キロぐらいになるだろう。
 実際の現場はドローンの進化によって、居住困難地域がすごく広がっている。
 ウクライナのコントロール地域が少なくなっているので、非常に悪いなというのが私の印象だ。
 兵士の人に聞いても、今が一番怖い、ドローンが怖い、と言っていた。対抗手段がない。弾道ミサイルとかはある程度撃ち落とす手段は確立されている。ドローンを撃ち落とす専門のものがまだない。
 これが現場で試行錯誤を繰り返している。これも3カ月ごとに変わる原因の一つだ。数百ドルで作れてしまうものに、高価な武器使えない。
 そういう場合に、ネットとか散弾銃、すごくアナログなもので対応するしかない。いかにコストを下げるかというのが、現場でも上層部でも大きな問題になっている。
 シャヘイドを墜とすのに、パトリオットみたいな大きいものを使えないので、今までは大きなマシンガンで撃ち落としていたのが、考えた結果、小型のドローンが生まれた。

地面ドローンの普及


 地面ドローンの取材もした。小さな戦車みたいなキャタピラもついている。地面を走るドローンと空を飛ぶドローンを組み合わせて非常に有効な戦いが出来ている。
 戦況はウクライナ側によいというニュースが出ている。これから地面を走るドローンが普及していくだろう。空飛ぶドローンの弱点は天気が悪いと使えないことだ。風が吹いたり雨が降ったりすると使えない。地面ドローンは、空から狙われて壊されることが弱点だ。地面ドローンの場合は逆に天気が悪いと運用しやすい。雪の上でも泥の上でも走れる。救助にも使う。マシンガンを乗せて、攻撃にも使える。
 これが今百万円以上する。国内生産ができない。大量生産できれば戦況が変わっていくだろう。

軍事品以外の支援

 ドローンの対抗手段がないので、小さいドローンは当たった瞬間に爆発する。ネットの網に当たれば爆発してくれる。ネットが有効な手段だ。移動があまりにも危険なので、幹線道路をネットで覆ってしまうとなっている。
 あまりにも大量のネットが必要だ。友人が調べたら百キロくらいトンネルが続いていた。専用のネットを作っているわけではないので、かき集めている。漁業が盛んな北欧諸国が、中古の魚網を寄付してトンネルの敷設を手伝っている。管理がたいへんだ。風が吹いたり、古くなると破れる。破れているところからドローンが入ってくる。ドローンの怖さを分かるとネットがあると安心する。
(発言要旨、文責編集部)
 

谷川ひとみさん

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