書籍紹介:鎌田慧セレクション 現代の記録 成田闘争と国鉄民営化 国策に抗った人々
鎌田慧 著 皓星社 2026年3月 定価3000円(+税)
「成田拡張、強制収用を検討」と4月1日朝日新聞が1面トップで報道した。空港拡張用地の取得が進まず、成田国際空港株式会社は土地収用法の手続きを申請する方針だ。過去の話ではなく、現在進行中の話。
この方針に対してルポライター鎌田慧さんは、「またやるのか」、「民主主義国家ではありえないこと」と直ちに批判した(東京新聞4月7日、本音のコラム「国家的事業と住民」)。
強制収用で土地を奪い開港の準備は整ったと政府が宣伝していた1976年、作家や学者、評論家、ジャーナリストで結成された三里塚『廃港』要求宣言の会は、空港の抱える問題、欠陥を指摘し空港反対闘争を支え拡げた。その事務局長が鎌田慧さん。
本書は鎌田さんの重要作品を自選した鎌田慧セレクション全12巻の10巻目で今年3月に発行され、成田空港建設と国鉄分割民営化のルポを収録している。国策を掲げた政府の攻撃、それに抵抗し続けた農民と労働者の人々の記録だ。
成田闘争についてはいまでは入手できない3冊から収録。「三里塚 廃港への論理」(1977)、「三里塚東峰十字路」(1985)、「抵抗する自由」(2007)。いずれも重要な局面での長文のルポ。
福田内閣による年内開港が発せられた77年に発表された「成田空港建設十二年の暗黒」は、成田空港が違法の積み重ね、それを機動隊の暴力で覆い隠して作り出されたことを明らかにする。
第二次強制執行(1971)の当日朝、警備応援の機動隊が壊滅し警官3名が死亡した東峰十字路事件。3か月後、証拠もないまま村の青年たちの逮捕がはじまる。別件逮捕と長期拘留で大量に生産された自白調書。ひとつひとつ検証することで、捏造が浮きぼりになる。86年判決で、全被告の「傷害致死罪」は証拠不十分で無罪となる。警官殺害は冤罪だったのだ。
2002年「暫定滑走路」供用で東峰地区は滑走路と誘導路に囲まれた。そこに暮らし自宅上空40メートルをジェット機が通過する島村昭治さんは「国って、おれらにとってなんなのか」と問う。国の政策にノーと言ったものは、こんな目にあわされている」と重い声で語る。空港を強引に作るエリート官僚こそが盗人的なのだ。
2度にわたって政府に泡を吹かせた管制塔占拠と27年後の損害賠償を跳ね返した1億円カンパ運動に関する記録も採録。
あとがきでは、「更なる機能強化」と称する第三滑走路新設のために、敷地と建物を奪われようとする横堀農業研修センター(旧三里塚闘争連帯労農合宿所)裁判にも触れ、民事裁判で被告とされた柳川秀夫さんの「腹8分目という考え方があれば、力で相手を押し負かそうとすることは無くなる」と地球環境破壊につながる空港拡張を批判する言葉も紹介している。
鎌田さんはコラムでマスコミの姿勢も批判する。「滑走路の用地の取得難航」「急増する訪日外国人 急ぐ機能強化」と必要性を強調する空港側の視点であり、交渉中の人への脅しだ。行政、企業、マスコミの一体化した関係こそが空港建設の不正であると。
空港会社は今年7月に強制収用手続きを始める。国家的事業の名のもとに再び強権が住民に襲いかかろうとする今こそ、本書の役割は大きい。成田空港建設が不法違法を積み重ね、ゴリ押ししてきたことを理解できる貴重な一冊である。
(TK)
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