寄稿 ミャンマー軍政を「新政府」と呼ばないでください!

日本政府・メディアのみなさんにお願いします。

 ミャンマー軍によるクーデターから5年と4ヶ月が経った6月1日、ミャンマーの民主化を支援するNGОの6団体が「官製でっち上げ選挙による新大統領を認めるな」と官邸への申し入れをした。ミャンマー連帯の大衆運動が広がらない中、数は少ないが、これまでも外務省や官邸前行動を実施してきた。政府への要請文の抄録は以下の通り。

 ミャンマー軍政は昨年から「民政移管」の手続きを進め、政権与党であった国民民主連盟(NLD)を解党、野党をすべて排除し、12月から1月にかけて選挙を実施した。結果は、当然にも親軍政党である連邦団結発展党(USDP)の「圧勝」となった。
 4月、新議員による連邦議会で、ミンアウンフライン前軍総司令官が、「新大統領」になった。2人の「副大統領」の一方はEUの制裁対象者であり、軍の巨大な経済利権ネットワークにおいて重要な役割を果たしてきた人物。もう一人は過激派仏教ナショナリズム団体である「民族・宗教保護協会(通称マバタ)」の支持者である。
 30の大臣の椅子に対し、17人は軍の出身、9人はUSDPの所属である。つまり大臣の86%を彼らが占有した。かつ、その内の10人は制裁対象者でもある。このように、新体制は「新政権」の看板を掛け替えただけである。
 軍による残虐行為は今も続いている。クーデター以降この3月までに、11335回の空爆等を行った。これにより5478人の死亡と9298人の負傷が確認され、160の医療施設、474の教育施設、720の宗教関係施設が破壊された。今も独立系メディアは空爆のニュースを毎日のように伝えている。
 政治囚支援協会の調べでは、8000人以上が殺され、更に未確認の死亡者は約4800人いる。これには、昨年3月の地震などの被害者は含まれていない。
 「新体制」発足後、クーデターで拘束されたウィンミン大統領が解放された。また、アウンサンスーチー国家顧問を刑務所から住居への軟禁としたと発表したが、子息のキム・アリス氏は、母親が生きている証拠さえないという。1万4千人以上の政治囚は未だ解放されていない。
 日本政府は、この「新体制」を認めてはいないものの、明確に否定もしていない。4月3日の内閣官房長官記者会見では、ミャンマー情勢改善に向けた働きかけを強化すると述べた。その方向性は歓迎されるが、一方で、「他国の内政のことでコメントは差し控える」とも発言。外務省は4月の国会で、「政権を認めるかどうか、引き続き情勢を見極めながら適切に対応していく」と答弁。今後の検討によっては、「新政権」を認める可能性を残している。
 私たちは、この体制を正当な政府として承認しないことやASEAN諸国との協力を求める。また、日本政府はクーデター以降も、政府開発援助(ОDA)による約7396億円の円借款事業を継続中である。公的資金を主な原資とする一部の官民ファンドや公的機関が、軍のビジネスに関係する事業に出資や融資をしている。これには大いに懸念を持っている。
 メディアの皆さんへのお願い。この見せかけの「民政移管」後、ミャンマー軍の体制を「新政権」と称したり、ミンアウンフライン前軍総司令官を「新大統領」とする報道が日本で増えている。これには深く憂慮する。たとえミャンマー軍を批判報道しても、軍の体制を「政権」、前軍最高司令官を「大統領」と表してしまうと、言葉に引っ張られて、時間と共になし崩しにそれらが正当化されてしまうと危惧するからである。 (W)

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