9.25狭山事件の再審を求める東京集会
狭山東京実行委員会
【東京】9月25日、東京・墨田区の曳舟文化センターで「狭山事件の再審を求める東京集会」が開かれ、170人が参加した。主催は「狭山東京実行員会」。
1963年5月1日。埼玉県狭山市で下校途中の女子高校生が行方不明になり、3日後に遺体で発見された。被害者宅には脅迫状が届けられ、犯人は身代金を要求。受け渡し場所には刑事らが張り込んでいたが、みすみす犯人を取り逃がした。
大失態の連続だった
その一カ月前。東京台東区で「吉展ちゃん誘拐事件」が発生し、警察は犯人に指定された場所で身代金を奪われたうえ取り逃がした。現場の警官は、立ち去る犯人に職務質問すらかけなかった。誘拐された男児は取調べ時の自供によって、南千住・円通寺の境内で白骨化して発見された。容疑者逮捕まで2年を費やした。警察の二度目の大失態は世論の激しい非難を浴びた。狭山事件は国会でも追及され、捜査陣は窮地に立たされていた。
女子高校生の遺体発見で警察庁長官が辞任し、追い詰められた警察が目をつけたのが、近くの被差別部落に住む石川一雄さんだった。犯人逮捕への焦りと部落差別が生み出した、警察・検察・裁判所による冤罪事件に、石川さんと支援者らは62年にわたって無実を訴えて闘ってきた。高齢の石川さんは無念にも今年3月に他界し、妻である早智子さんが今年4月、第4次再審請求を開始した。
例年と異なる会場で
午後6時30分、司会の朱文昌さん(都高教)が開会のあいさつをした。「本集会は毎回、浅草の会場で開いてきたが今回は曳舟。それでも多くのみなさんが集まってくれた」。中條貴仁(実行委議長)さんが主催者あいさつをした。
「本来は今年4月に三者協議が行われるはずだったが、石川さんが亡くなったことで第3次再審請求は終わった。早智子さんも78歳、長い時間がかけられない。再審をスピードアップさせていく」。東京実事務局長の桐田達也さんが「集会基調」を読みあげ、会場の拍手で採択された。
一雄さんの妻の早智子さんが以下のビデオメッセージを寄せた。「今の裁判長(家令和典)は来年3月に定年になる。10月には三者協議がある。60年以上闘ってきた。再審開始を切に願っている。第4次再審請求を4月4日に提起した。最後まで闘い抜く。みなさんのご支援を心からお願いします」。
中央狭山闘争本部の安田聡さんが「第4次再審請求の現状と運動の課題」と題する講演をした。安田さんはスライドを上映しながらゆっくりとした口調で、聴衆にわかりやすく事件と裁判のポイントを解説した。(要旨別掲)
高裁前は交流の場だ
会場参加者からの質問では、「文字が書けない人」への差別意識について問われた。
安田さんは「寺尾判決は、被告は24歳にもなったのだから、脅迫状程度の文章は書けるだろうと予断を持った。よくある偏見だ。部落差別の実態を知らないエリートの言葉だ。石川さんは24歳でもまともに文章が書けなかった」と厳しく糾弾した。
支援団体からのアピールが始まった。まず都連女性部が横断幕を掲げて前方に集まり、小野崎佳代さんが主に東京高裁前での情宣について語った。
「コロナ禍で石川さんたちができなかったことを私たちが始めて5年。すでに22回になった。石川さんは裁判の光が見えた矢先に亡くなった。悔しい。無念の思いでいっぱいだ」。「私は18歳の時に狭山事件を知った。東京に出てきて、自分が部落出身であることを隠していた。でも石川さんはじめ闘う仲間に出会え、堂々と生きることができた。そういう人たちが多くいる」。「権力による部落を利用した犯罪だ。ヘイトスピーチ、ヘイトクライムが横行する今の状況と地続きだ。怒りが新たになった」。「高裁での情宣は、各地で闘う仲間たちの団結と交流の場でもある。早智子さんを支えて、最後の勝利まで闘いましょう」。
情宣への反応の良さ
狭山青年共闘の仲間は、上野駅などで行なわれている情宣の報告をした。「事前に学習会をしてから宣伝活動をする。最近は狭山事件を知っているという人が増えている。私たちに声をかけてきて、それがわかる」。
東京清掃労組・人権交流会の仲間は、「1995年の差別メモ書き事件がきっかけとなり活動が始まった。定例会、フィールドワーク、芝浦と場の見学と交流会などを続けている」。
集会決議案を、同宗連の長谷瑞信さんが読みあげて提起した。集会のまとめとして、都連執行委員長の飯塚康浩さんが発言した。「権力犯罪を許さず、石川さんの無念を晴らす。署名活動で再審闘争に勝利し、裁判に一定のめどをつけていく」。参加者は「団結がんばろう」でこぶしを振り上げ、この日の集会を締めくくった。
第4次再審闘争勝利のために、来る10月31日午後1時から、芝公園23号地(東京都港区)で集会とデモ行進が計画されている。「新100万人署名」はこの集会に先立つ10月10日に、落合恵子さん、鎌田慧さんらによって裁判所に提出される予定だ。 (桐丘進)
筆者余禄
NHKの人気番組「新プロジェクトX」が9月、2回にわたり「袴田事件」を取りあげた。スタジオには袴田巌さんの姉・ひで子さんはじめ、支援者、法医学者、元裁判官らが出演。主に「5点の衣類」の実証実験について時間を割いた。
この番組の演出の性格上なのか。終始和やかな雰囲気のなか、ひで子さんは明るく振舞い、検察や裁判所の責任を追及しない旨の態度も示した。私は出演した関係者が、収録の中で警察や検察・裁判所をどう糾弾するか、注視していた。
半世紀以上に及ぶ艱難辛苦の冤罪との闘いを、たかだか2時間枠にまとめられるはずがなく、視聴者に国家犯罪の根深さや悪質さが伝わったかどうか疑問が残る。オンエア中の映像には、石川一雄さんや早智子さんも登場した。
昨年9月の検察の上訴放棄による巌さんの無罪確定は、その前後の報道によって広く市民に知られ、世論に共有されることになった。狭山闘争は「次は石川さんだ」として意気をあげたが、この日の番組では狭山事件に対する言及はなかった。しかし、冤罪を晴らすための長く大きな闘いとその勝利は、確実に社会の空気を動かしてい
る。冤罪を生み出す日本の刑事裁判の温床に、メスが入ろうとしている。
袴田さんサイドは10月9日、国と静岡県に対して、約6億800万円の損害賠償を求める訴えを、静岡地裁に起こしたと発表した。この訴訟とは別に、再審無罪判決の際の畝本直美・検事総長談話が、「袴田さんを犯人視。名誉を毀損するものだ」と国に損害賠償を求める訴訟を9月に起こしている。
安田聡さんの講演要旨
「第4次再審請求の現状と運動の課題」
事件発生時、当時の国家公安委員長は「5月8日までに犯人を捕まえよ」と号令をかけた。同時に被差別部落に対する見込み捜査が始まり、事件から10日後にスコップが発見された。スコップは部落出身者が多く働く地域の養豚場のものとされ、かつて働いていた石川さんが狙い撃ちにされた。5月23日に石川さんが逮捕されると、マスコミはこぞって「凶悪な犯人像」を演出して報道した。現在の東京新聞ですら当時は石川さんを犯人扱いしていた。
違法な勾留と弁護士接見の妨害で自白を迫り、裁判からわずか半年後の64年3月11日、浦和地裁は死刑判決を言い渡した。奇しくも今年の同じ日に石川さんは亡くなった。
74年の確定判決(東京高裁・無期懲役)では「7つの客観的証拠、万年筆発見の秘密の暴露、自白」の3つを有罪の根拠とした。石川さんの死亡により第3次再審請求は終了したが、翌4月の第4次再審請求でも第3次と同じ証拠278点を提出した。
石川さんが逮捕直前に警察に取られた「上申書」、取調べで書かされた文章や文字では、促音や拗音が正しく使われておらず、識字能力が著しく劣っていたことを如実に示している。教育機会を奪われてきた結果だが、裁判所は、意図的に当て字を駆使している脅迫状も石川さんのものと決めつけた。
裁判官は、読み書きができない人々を想像できない。貧困や差別によりろくに教育を受けられず、文字が書けなくて肩身の狭い思いをした人々の存在に、思いを巡らせることができないのだ。
2016年に「新証拠」として出された万年筆を使って書かれた、被害者の兄の文字からは「クロム元素」が検出されなかった。しかし被害者本人が事件当日に書いた習字からは検出された。弁護団は過去に被害者の使ったインキ「ジェットブルー」(パイロット社)が、希少な限定生産であることを突きとめた。鴨居の万年筆が偽物だったことを証明したのだ。

「狭山事件の再審を実現しよう」と170人が参加(9.25)

小野崎佳代さん
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