「8・6ヒロシマ平和へのつどい2025」(下)
反核運動とパレスチナ連帯運動は本質的に交差し相互に支えている
核エネルギー利用を止める
【広島】報告記事(下)は、湯浅一郎さん、田浪亜央江さんの提起を掲載する。湯浅さんは、核エネルギー利用を止めるための科学的アブローチを展開。田浪さんは、イスラエルによるジェノサイドを批判し、反核とパレスチナ連帯運動の方向性を提起。さらに8・6行動の報告記事を掲載した。
湯浅一郎さん(ピースデポ前代表)の提起から
「核エネルギー利用の本質的困難性─質量欠損の利用を続けてはならない─」
「原発、核融合発電」の問題性
「20世紀半ば、ほぼ同時に核分裂と核融合が相次いで発見された。1938年末の核分裂の発見(ハーン)、1939年の恒星のエネルギー源は核融合。これらはともに原子核の世界の反応の後、「質量欠損」が起こり、それがエネルギーに変わる現象が立証された。この背景にあるのが1905年の特殊相対性理論(アインシュタイン)の提唱であり、これにより、「質量とエネルギーは等価」である、「E=MC²」という関係があるとされた。
「原発、核融合発電」の問題性を簡単に述べたい。
80年たつ今、改めて「核エネルギー利用とは何か」という認識を共有して、これからの時代に向けて、どうしていくべきなのかを話したい。1938年末、ドイツのハーンがウラン235に高速の中性子をぶつけて重い新たな元素をつくろうと実験をしていたところ、むしろ原子番号56のバリウムなど軽い元素が見つかった。意味が分からず同僚のマイトナーに相談したところ、「原子核が2つに分裂した結果」との解釈を与えた。
この時、質量がわずかに減る質量欠損が起きていた。翌年、連鎖反応があることがわかり、そのエネルギーを利用すれば、これまでにない爆弾ができるとの思惑が世界に広がった。パンドラの箱を開けたと言える。1939年にはべーテが、「恒星(太陽)のエネルギー源は核融合であることを発表。太陽の内部は、超高温(1600万度)かつ高圧(2400億気圧)の下で、水素原子(陽子1個)4つが融合して、ヘリウム原子(陽子2個と中性子2個)になる反応が起きている。この時、質量が約0・7%小さくなる、つまり質量欠損が起きている。減った質量分だけエネルギーになる。太陽からは、360度に渡って、水素やヘリウムの原子核や電子が分離したプラズマ状態で、外に飛び出している。これを太陽風という。
宇宙空間には、おびただしい放射線が飛びかっていて、当然、地球のまわりにもきている。さいわい地球には、マントルが作る磁場があり、さらに大気、海洋など多重のバリアーを形成することで、太陽風(陽子、電子、電磁波の帯)がそのまま地表に届くことを阻止し、生命体の保持を保障している。銀河系の中のオアシスとなっている。物質は原子でできており、原子は原子核とそれを取り巻く電子からできている。原子核は陽子と中性子から構成。両者は「核子」と呼ばれる。核子の間には「核力」と呼ばれる強力な引力が働いている。原子の直径は1億分の1㎝という極微小なスケールの世界。原子核スケールのある反応で質量が減ると、その欠損分がエネルギーに変換される。
1939年という年は、ドイツがポーランド侵攻をして、第2次世界大戦が始まった年である。核分裂を発見したのはドイツの研究者であり、ナチスが超爆弾を開発したら大変
なことになる。そこで米国は、1942年、「マンハッタン計画」をつくり、ナチスに負けないようにするべく原爆製造に動いた。そして、1945年、高濃縮ウランとプルトニウムの核分裂を利用した原爆製造に成功し、戦争末期に使用した。7・16アラモゴード(米国)、 8・6広島、 8・9長崎である。7年後の1952年 米国が世界初の水爆実験を行う。地上で、超高温、高圧の状態を生み出すために原爆を使い、その環境下で核融合を起こす。現存する約1万2000発の核兵器の多くは水爆だ。ちなみに地球の年齢45・5億年がわかったのは、
1956年だ(パターソン)。ビキニ環礁での水爆実験(1954年3月1日)。広島原爆の
約1000倍の破壊力。「死の灰」の半分は太平洋に。第5福竜丸事件など多くの日本のマグロ漁船が被災した。世界規模の反核運動のきっかけとなった。
原発の宿命は、動かすことで必ず「核分裂生成物「死の灰」を生み出してしまう。原子炉には①核分裂生成物(「死の灰」)、②プルトニウムが溜まっていく。行きどころのない物質を日々、せっせと作り出していくことが、循環型社会の形成と真っ向から矛盾する、これだけでダメだ。核融合を使った発電は、1950年頃からソ連、米国で始まっていて、75年たつ今でも、まだ見通しは立っていない。国際実験炉としてITERイーターがある。
米ロEU中日印韓の共同開発で、2007年着工。2019年にはプラズマ運転を予定していたが、その後、2025年に延期、さらにここにきて2034年プラズマ運転を予定へと、順次延期されている。100年たって、ようやく実験炉の目標が具体化できるかどうか?すらわからない。
ましてや商業用発電ということになれば、一定の経済性が問われる。「保守点検の難しさ」
から頓挫していく。振り返れば、原発は、「21世紀には、全部が高速増殖炉になるとされていたが、冷却材が金属Naで、結局、どこも撤退している。なのに、原発だけは、AIで電力が必要とか言って、世界規模で増やそうとしている。核融合も高速増殖炉と同じ運命ではないか?
1868年、瀬戸内海の船旅でフェルデイナンド・フォン・リヒトホーフェン(地理学者)が、瀬戸内海の風景を絶賛した後、「この状態が今後も長く続かんことを私は祈る。その最大の敵は、文明と以前知らなかった欲望の出現とである」と文明への懸念を表明した。
「原子の世界の質量欠損を利用する核エネルギー利用」は、「以前知らなかった欲望」そのものだが、これは、20世紀末、人類が目指そうとした循環型社会の形成に逆行し、生物多様性の低下を食い止めることとも矛盾している。核エネルギー利用というこの愚かな行為を一刻も早く止めなければならない。
田浪亜央江さん(広島市立大学教員中東地域研究)の提起から
「ジェノサイドを周縁化するイスラエル・パワーを食い止める」
「そもそものジェノサイド概念の起源を説明する。ラファエル・レムキン(1900─1959、ユダヤ系ポーランド人)が1915年のオスマン帝国によるアルメニア人虐殺を知り、人種や宗教による殺人(集団破壊)の国際的な犯罪化の必要を認識。その後、ヒトラーの思想に集団破壊の思想を見い出し、1944年の著作で「Genocide(集団的人間破壊)」の語をはじめて使用。
ナチスの犯罪を裁いたニュルンベルク裁判所で「ジェノサイド」概念が用いられたものの、同裁判で裁かれたナチスの犯罪は戦争犯罪、および戦争犯罪との関連が立証された限りでの「人道に対する罪」のみ。1948年12月9日、 集団殺害罪の防止および処罰に関する国際条約(ジェノサイド条約)が成立。集団の「即時的破壊」と、その生活の「本質的基盤の破壊」の違い。後者の場合、最終段階における絶滅的な殺戮はそこに至るまでの集団の社会的、経済的、政治的、文化的破壊と切り離せない。帝国的、植民地的な性格との関わり(ホロコーストも“単なる”反ユダヤ計画ではなく、汎ヨーロッパ帝国の創造に向けたドイツによる東方植民地化計画のなかで、最も極端な集大成として現れた)。ガザのジェノサイドは 10・7から始まったのではなく、少なくとも封鎖が始まった2007年頃に遡るべき。
中東のイスラエル化。アパルトヘイト国家がそのまま存続を続けるためには、単なる関係正常化というより「中東のイスラエル化」が必要。中東諸国との関係正常化と言われるもの、つまり、エジプト(1979)、ヨルダン(1994)、UAE(2020・8・13)バーレーン、スーダン、モロッコとの関係は、パレスチナの孤立化であり、ガザ封鎖・アパルトヘイト・民族浄化強化の二正面作戦である。
10・7後の対イスラエル強硬派諸国との軍事作戦を一続きのものと捉えるべきである。すなわち、対ヒズブッラー[ヒズボラ]戦争、対イラン戦争、対シリア戦争という一連の戦争。
ジェノサイドの周縁化。6月のイスラエル ・イラン交戦中(12日間)でガザでは870人が殺害された(ガザ保健省)。国際ニュースは一気に「戦局」報道となり、核への注目がジェノサイドの周縁化に利用されたといえる。言語化し尽くせないジェノサイドの規模・内実。2025・7・30時点で少なくとも6万785人が死亡(ガザ保健省)。ガザ保健省から独立した現地調査では、同省の死者数よりも40%多いペースで死者が見積もられる。つまり現時点で8万5000人、ガザ人口の4%。
医学誌「ランセット」は、記録された死者の一人に対し、4人の間接死を想定すべきと書いてある。全住民を襲う飢餓の中で、今後短期間に多数の死者、生涯にわたる障害や精神への影響の可能性。
米国による 「ガザ人道基金(GHF)」(生体認証を行う)の援助に向かう人々のうち1300人が殺傷されている。
数字で捉えきれない絶望。私が最も頻繁に連絡をとっている28歳の若者のことを話したい。
かつてあれほど健康で、人生を愛していた自分の健康が失なわれ、痩せ細っていく絶望感、ガザ住民が集団的に破壊されて行くのをつぶさに目にするなか、イスラエルがイランの核施設を「攻撃するだけで」簡単にそこから目を逸らすことが出来てしまう。その実証実験になっている。
ハニーヤの暗殺に見るイスラエルのインテリジェンス能力や核施設の破壊を見て、さすがにイスラエルを放置してきたことが人類的危機を招いているという認識は広がっている。国際法、BDS、意識変革、日常の行動の変化を促すあらゆることを行う。インティファーダのグローバル化が必要だ。
「80年前に広島で起きたことが、今ガザで起きている」と言われるが、これだけでは不十分と考える。
出来事のみを焦点化してしまい、プロセスとしてのジェノサイドが見えなくならないか。
イスラエルが曖昧政策のまま核弾頭を保有し、人種差別を作り出し利用しながらそれを維持していることをふまえ、反核運動とパレスチナ連帯運動が本質的に絡み合い、交差し、相互に支え合っていることを強調すべきと考える。核の植民地主義を終わらせることが必要だ。
日本がジェノサイド条約に未加盟だという問題。法の未整備(ジェノサイド扇動を犯罪化する法律がない)のためだとされるが、ヘイトスピーチ解消法(2016)や自治体の差別禁止条例制定だけではなく、ジェノサイド扇動罪制定に向けた議論が必要では。
「市民による平和宣言2025」
次に、韓国からの連帯メッセージとしてチョ・ウォノさん(壁を扉に!平和統一市民会議、広島原爆80年朝鮮人犠牲者追悼団)が発言した(通訳は加藤正姫さん)。
沖縄からのメッセージとして、具志堅隆松さん(ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会共同代表、沖縄戦遺骨収集ボランティアガマフヤー)の文章が代読された。
福島からのメッセージとして、武藤類子さん(福島原発告訴団団長)の文章が代読された。
最後に、「市民による平和宣言2025」が提案され、採択され(日本語、ハングル、中国語、英語)、翌日8月6日の行動提起を新田秀樹さん(ピースリンク広島世話人、ピースサイクル全国ネット)が行った。 (久野成章)

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