9.6伊達判決66周年シンポジウム

伊達判決を生かし、戦争しない国・恒久平和を目指す社会の実現に向けて

 【東京】9月6日、伊達判決を生かす会と明治大学「リベラルアーツ研究所」の共催で「伊達判決を生かし、戦争しない国・恒久平和を目指す社会の実現に向けて~伊達判決66周年シンポジウム~」が明治大学和泉キャンパス和泉図書館ホールで行われた。

砂川事件とは何か

 1957年7月、米軍立川飛行場拡張のために農地の強制収容が予定されていた東京都北多摩郡砂川町(現・立川市)で反対するデモ隊が、一時的に基地内に数メートル立ち入った。権力は、この闘いに対して安保条約に基づく刑事特別法2条(施設・区域を侵す罪)に違反だとして、労働者・学生23人を不当逮捕し、そのうち7人を起訴した。
 一審の東京地裁(伊達秋雄裁判長)は、 1959年3月30日、「駐留米軍は日本国の指揮権の有無にかかわらず、憲法9条が禁じる戦力にあたり、憲法違反。被告らは全員無罪」と言い渡した。この判決は、従来の政府見解を否定する画期的な判断であった。
 ところが「伊達判決」が安保条約改定(1960年)交渉の障害になると考え、日米両政府は動き出した。マッカーサー駐日米大使は岸政権の藤山愛一郎外相と密会し、最高裁への「跳躍上告」を促し、岸政権は受け入れた。田中最高裁長官は「少なくとも数カ月で判決が出る」などと漏洩した。
 田中最高裁長官が裁判長の最高裁は、1959年12月16日、「米軍の駐留を違憲とした東京地裁の判決は、司法審査権の範囲を逸脱し誤まっている。それを前提に刑特法を違憲無効としたものも誤まりであり、破棄、指し戻しとする」と不当判決を出した。差し戻し審では有罪判決が出て確定した。
 このように最高裁判決は、「米軍駐留は合憲」であり、安保条約を「司法審査権の範囲外」と判断した。この判決によって米軍の特権、基地被害に抗議する裁判において不当判決が立て続けに出ている。
 さらに安倍政権は、2015年、「砂川裁判最高裁判決は個別的、集団的を区別しないで、日本国に固有の自衛権を認めている」などとでっち上げ、集団的自衛権の行使を容認する安保法制を成立させた。日米安保体制下、米軍と自衛隊の共同軍事行動を正当化し、戦争にむけた軍事大国に向けて加速させている。

裁判闘争の取り組み

 開会あいさつが坂田和子さん(伊達判決を生かす会共同代表)から行われ、生かす会の取り組み経過、伊達判決の歴史的意義、反戦の取り組み方向性を訴えた。
 続いて丸川哲史さん(明治大学「リベラルアーツ」)、米田隆介さん(明大土曜会代表)、高原太一さん(成城大学グローカル研究センター研究員)が連帯あいさつを行った。
 西尾綾子さん(伊達判決を生かす会事務局長)は、活動報告を行い、「戦争しない国・恒久平和を目指す」決意を述べた。

砂川事件裁判国家賠償請求訴訟

 砂川事件裁判国家賠償請求訴訟の経過報告を細川潔弁護士、吉永満夫弁護士が行った。国家賠償請求訴訟の経過と最高裁上告は、こうだ。
 原告らは東京地裁に砂川事件上告審は憲法第37条1項に違反する無効な裁判手続による裁判であったとして、裁判手続自体を打ち切る「免訴」の判決をすべきであったという再審請求を行った(2014年6月)。東京地裁は再審請求を棄却(2016年3月)、東京高裁も刑事訴訟法上、このような理由による免訴を求める規定が存在しないとして控訴を棄却(2017年11月15日)した。最高裁は原告らの特別抗告を棄却した(2018年7月18日)。
 原告らは、田中耕太郎裁判長(当時)により、憲法第37条1項が刑事被告人に保障している「公平な裁判所」の裁判を受ける権利を侵害されたとして、、国を被告として「国家賠償等請求訴訟」を提起した(2019年3月)。
 東京地裁は、「具体的な評議内容、予想される判決内容まで伝えた事実は認められず、公平な裁判でないとは言えない」として請求を棄却した(2024年1月)。
 東京高裁は、「不適切だったが、公平性に影響するとまではいえない」として棄却(2025年1月)。
 最高裁に上告(2025年2月)。①請求内容は、(不法行為)慰謝料、謝罪広告、(不当利得)納付罰金の返還。②主な争点は、「田中裁判長の行為についての違法性及び故意過失の有無」、「消滅時効の完成の有無」、「除斥期間経過の有無(権利の消滅時効)」、「除斥期間を適用することが正義公平の理念に反するか」。
 原告を代表して坂田和子さん(伊達判決を生かす会共同代表)、土屋源太郎さん(同)は、これまでの裁判闘争の意義、成果を振り返りながら「伊達判決の歴史的な成果を確認しつつ、新たな世代にどう伝えていくか鋭く問われている。最高裁闘争も含めて油断せずアピールしていくスクラムを強化していきたい」と発言。

「伊達判決」を現代に生かす

 後半は、吉田敏浩さん(ジャーナリスト)の講演、テーマは「伊達判決を現代に生かし、戦争しない国を確かなものに」。
 講演は、以下の項目について提起した。
 ①砂川事件裁判、「米軍駐留は違憲」とした画期的・歴史的な「伊達判決」 ②アメリカ政府による密かな干渉、米国大使と最高裁長官の密談と砂川最高裁判決 ③安倍政権が集団的自衛権の行使容認の正当化に砂川最高裁判決を曲解して利用 ④「伊達判決」が見抜いていた米軍駐留と在日米軍基地がもたらす戦争のリスク ⑤「安保3文書」にもとづく大軍拡で「戦争をする国」へ……などについて提起した。
 そのうえで吉田さんは今後の反戦運動の方向性について次のように強調した。
 「『伊達判決』は、米軍の在日米軍基地からの日本国外への出動により『日本が直接関係のない武力紛争の渦中に巻き込まれ、戦争の惨禍が日本に及ぶおそれ』を問題視、懸念してきた。まさに台湾有事に際し米軍による在日米軍基地からの軍事介入・出撃が日本を対中国戦争に引きずり込むケースに当てはまる。日本政府の対米追従路線のため、これまで『事前協議』が実施された前例はないが、台湾有事をめぐる米中戦争に日本が巻き込まれたら、日本は壊滅的な被害をこうむるに違いないので、政府はこの『事前協議制度』を通じて、米軍による基地の使用、出撃を拒否すべきである」。
 「日米両政府筋や自民党政治家やマスメディアによって台湾有事が煽られているが、冷静に考えてみれば、中国は台湾に対する武力行使は、台湾が独立をしようとした場合に限ることをくりかえし表明している。つまり台湾が独立しようとしないかぎり、台湾有事が起きる可能性は極めて低い。台湾での各種世論調査でも、現状維持を望む意見が大多数を占めている。ただ偶発的な軍事衝突から戦争の火がつくおそれはある。
 だから日本がやるべきなのは、アメリカに追随して対中国軍事同盟の強化に走り、『台湾有事は日本有事』と煽って、日本を戦場としかねないリスクを高めるのではなく、軍事衝突が起きないように、米中間の間に立って、対話と信頼醸成と緊張緩和をうながす仲介者の役割を果たすことだ」。
 「中国との間には『平和共存、紛争の平和的解決、武力の行使や威嚇の禁止』を謳う日中平和友好条約があり、本来、戦争する理由はまったくない。
 米軍優位の不平等な日米安保・地位協定体制の構造と、戦争につながる集団的自衛権の行使容認など日米軍事同盟強化への、根本的な異議申し立てという重要な使命を『伊達判決を生かす会』の活動と砂川国賠訴訟の闘いは担っている。それはまた『伊達判決』の根底にある『政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意』した主権在民の日本国憲法の原点を踏まえて、『政府の行為によって再び戦争の惨禍』が起きないように主権者として声を上げることにもつながっている。
 戦争をしない国を確かなものにするために、けっして再び戦争の加害者にも被害者にもならないという『伊達判決』の原点をあらためて見つめなおしたい」。
 シンポジウムの閉会あいさつを土屋源太郎さんが行い、参加者全体で今後の闘いについて確認した。
(Y)

坂田和子さん(伊達判決を生かす会共同代表)の発言(9.6)

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