福島を忘れないことは将来の世代の平和と安全、命と暮らしを守ることだ

長谷川公一さん(盛岡大学学長/原子力資料情報室理事)

反原発裁判の闘い

 福島原発事故に関する訴訟で、原告被災者を支援する立場から法廷で証言を行った学長は一人だけだ。東電福島原発事故を被災者を忘れないぞ。脱原発の決意を新たにすることだ。福島原発事故はなぜ起きたのか。人災だ。東電と日本政府が引き起こした犯罪だ。
 日本が戦前戦中と朝鮮半島や台湾、中国大陸を植民地化し、現地の人びとを苦しめてきたこと、太平洋戦争を引き起こし、3月10日の東京大空襲、沖縄戦、広島・長崎への原爆投下を招き、多くの国民に犠牲を強いたこと、水俣病などの公害事件、2011年3月11日の東日本大震災を迎え、福島原発事故が起きたことだ。
 昨年、9月19日に仙台高等裁判所で開かれた「ふるさとを返せ、津島訴訟」控訴審で、証言した。福島原発事故の引き金になったのは大きな津波、シビアアクシデント対策がしっかりしていれば、過酷事故には至らなかった。2006年3月と8年5月、2回にわたって、保安院の幹部職員ら13人が、アメリカの原子力規制委員会に招かれ、2001年9月11日の同時多発テロを契機として、当時104基あったアメリカのすべての原発で実施されるようになった新しいシビアアクシデント対策について詳しい説明を受けて帰国した。
 しかし、彼らは結局ほうかむりをし、学んだことを内部に留め、電力会社にも一切伝えることをせず、対策を先送りしたまま、2011年3月11日を迎えてしまったのだ。
 最高裁は2022年6月17日の判決で、国の責任を否定しているが、原子力安全保安院は意図的に作為的にシビアアクシデント対策を怠ってきた。証言でも述べたが、津波対策という第一の砦が破られても、シビアアクシデント対策という第二の砦がしっかりしていれば、福島第一原発という城は守られ、福島県の地域は人々の生活と安全は守りえたはずだ。シビアアクシデント対策が不備であったからこそ、福島原発事故は大惨事になったのだ。最も基本的な事実を日本の裁判所は、しっかり受け止めなければならない。
 現在、トランプ政権
は国際法を無視して、国連も無視し、国際世論を無視し、暴走を続けている。トランプ政権が行っているのは、地球の破壊だ。第二次世界大戦後に、曲がりなりにも作り上げてきた国際秩序の破壊だ。侵略戦争そのものだ。ウクライナ侵攻以降、急速に増大しつつある無人機による爆撃が意味するのは原子力発電所にとっての新たな脅威だ。ドローンが原子力発電所を直撃するという新たな恐怖の時代の到来だ。

原発は無防備

 日本のすべての原発はこれらの攻撃に対して、無防備だ。政治家やマスメディアや日本の有力者たちは忘れたふりをするのが、させるのが得意なだけだ。東日本大震災で被災した沿岸部の昔の庄屋の蔵からは貴重な歴史的文書がたくさん出てきている。
 日本社会はたくさんの記憶と記録を伝えてきた。これが日本の文化の真実だ。忘れたふりをするようになったのは、たかだか戦後の80年間のことだ。2022年6月17日の最高裁判決以降、岸田内閣、石破内閣、現在の高市内閣と原発推進政策が年々露骨に進められるようになってきた。
 原子力規制委員会も事実上、骨抜き化が進んでいる。日本列島のどこかで、再び原発事故が起きるリスクは少なくない。政府は2040年、2050年に向けて原発を維持するために、原発の新規建設をなんとか進めようと新たな優遇制度を始めようとしている。巨額になった原発の新設のコストを電気代に上乗せして、国民に負担させようとする政策だ。

東京都小笠原村への核ゴミ最終処分場反対

 政府はまた、難航している最終処分場の新たな候補地として、東京都小笠原村の南鳥島を発表した。住民のいない無人島だ、本州から1800kmも離れている。すでに始まっている福島原発事故による汚染水、アルプス処理水の福島県沖、太平洋への海洋投棄は30年以上も続く。政府や電力会社は10万年にわたって太平洋を新たに汚染するリスクを平然と犯そうとしている。福島原発事故から15年、福島を忘れないことは、福島の被災者の命と暮らしだけではなく、日本社会全体の東アジアのさらには地球の将来世代の平和と安全、命と暮らしを守ることだ。(発言要旨、文責編集部)

長谷川公一さん(3.7)

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