止めよう改憲!おおさかネットワーク講演会

2027年通常国会に向けた
関連法案の制定策動を止めよう

異論封殺のスパイ防止法反対

 【大阪】止めよう改憲!おおさかネットワーク主催で、「共謀罪に反対する市民連絡会・関西」が共催する学習講演会が10月3日、大阪PLP会館で開かれ、永嶋靖久弁護士が講演した。以下に要旨を掲載する。

テスト形式で
危険性を提示

 永嶋さんは、冒頭3つの問題を提示。
 問題1:外国の干渉行為の刑事罰が新設されても、絶対に逮捕されない行為。
 問題2:外国代理人登録等義務が新設され、義務に違反したとき、メンバーが逮捕される可能性のある団体。
 問題3:安保目的の情報収集制度が新設され、犯罪捜査と無関係で裁判所の令状が要らない場合。
 正しいのは次のどれか。それぞれの問ごとに、6つ~7つの選択肢を示した(選択肢表記は省略)。

自民党提言と
有識者会議

 木原官房長官は8月18日のインタビューで「真面目に生活している国民への監視が強まるという懸念は全く当たらない」と発言した。これについては、次の歴史的教訓がある。
 1928年の治安維持法改悪時の政府委員も「左翼運動の全すべてを弾圧することになりはせぬかとおっしゃるけれど、そうはならない」と発言したが、結果はまったく違っていた。
 政府は9月28日、インテリジェンス機能の強化に関する有識者会議を開いた。高市首相が重視するスパイ防止関連法や情報収集・分析の指針「国家情報戦略」策定に向け月1回程度開催されるという。
 首相はあいさつの中で、外国による不当な干渉防止、対外情報機能の充実に触れた。今後、有識者会議では、外国干渉法の在り方、外国代理人登録制度の設計、どのような干渉を刑罰の対象にするか、などをまとめて、来年の通常国会で法案成立をめざすという。このほか、対外情報庁新設や外情報収集法も検討されるようだ。
 現在の国会の状況を見ると、自民党インテリジェンス戦略本部がまとめた提言を有識者会議の論議をもとに法案化し国会に提出すると、それでほぼ決まってしまいかねない。だから国会に出される前に上程を止めねばならない。それもまた大変困難な課題であることは間違いない。自民党の提言の柱は①外国干渉防止法 ②脅威を把握するための情報の収集 ③情報の発信となっている。

外国干渉防止法の制定

 これに関して具体的には、諸外国の先例、特に英FIRS(外国影響力登録制度)を参考にした外国代理人登録等義務の新設と、外国干渉行為への刑事罰の新設だ。
 外国の干渉とは何か。防衛白書26年版によると、「自国の価値観や政治プロセスに悪影響を及ぼす一連の行為」とされる。外国や外国の影響を受けた集団による世論への影響工作、選挙など民主的プロセスの混乱、我が国を対象とした悪意あるナラティブ、偽情報、プロパガンダなど。
 メディアに現れた外国の干渉の例としては、「処理水放出に反対する不審アカウント、今も潜む世論工作の脅威」(26年4月毎日)、「認知戦取材班、制脳権狙う中国、政治や社会の不安定化狙って」(26年7月共同)、「不満・分断あおる認知戦、SNS上で物語拡散」(26年9月朝日)といった具合だ。
 政府が問題とする行為は、外国勢力がやったかどうかではなく、政府にとって不利益とみなされる行為が、外国からの干渉と判断される。この認知戦は、今やAIによってとても巧妙になっている。

「外国代理人」概念の歴史

 外国代理人という言葉は、1930年代ソ連では粛正すべき敵を指す言葉として使われた。1938年米国では、ナチのプロパガンダへの対策として外国代理人登録法(FARA)がつくられた。2012年ロシアでは、外国エイジェント法がつくられ、NPOのうち、外国、外国人や国際組織などから資金・財産を受け取り、政府の意思決定に影響を及ぼす政治活動に参加するものを外国代理人と指定し、会計検査が義務づけられた。
 アムネスティによると、1000以上のNGOが家宅捜索を受け、有名な人権団体が罰金を科せられ、閉鎖になったという。そして、ロシアのコピーが世界に広がった。
 2016年イスラエルのNGO透明化法がつくられ、37のNGOについてパレスチナ人スタッフに関する詳細情報を提出しない限り活動禁止措置がとられた。国境なき医師団、ノルウエー難民評議会などが活動停止に。ハンガリーではできてすぐの2018年廃止されたが、2020年インドでは外国寄付規制法ができ、2026年現在、21933の団体が登録剥奪され、数千の病院、学校、社会開発プロジェクトが資金をたたれた。正義と平和のための市民、弁護士集団、ピープルズ・ウオッチなど国内有力団体、アムネスティ・インターナショナル・インドやグリンピース・インドの活動にも影響が及んでいる。
 この動きは権威主義的でない諸国(西側)へも広がっている。
 2018年オーストラリア外国影響力透明化制度法、2023年英国国家安全保障法、2024年カナダ外国干渉対処法、2024年フランス外国干渉防止法、2025年ハンガリー反NGO法、2025年欧州議会「第三国を代表する利害関係の透明化に関する指令」。
 この中で、抑制的なのは欧州議会・委員会のみで、その他の諸国では、干渉行為の刑事罰、外国代理人登録義務が共通している。
 ロシア型ではなく英米型なら問題はないとは言えない。ヒューマンライツ・ウオッチによれば、政治における資金の影響を追跡することは、民主主義の促進という正当な目的がある。だからこそ、特定の集団を差別しないよう細心の注意を払うことが求められる。

特別重刑化の論理

 これまでも違法で犯罪だった行為(殺人・窃盗等)を、これからは外国勢力のために行った場合は特別に刑を重くする。そして、
これまで合法で犯罪にはならなかった行為を、これからは犯罪として処罰する。
 たとえば、英国では外国勢力のために政治過程に影響を与える目的での虚偽行為(ウソをつく)が該当する。ニュージーランドでも外国勢力のための不適切な行為となっている。しかし、フランスには、刑事罰の規定がない。カナダでもその刑事罰の新設には批判がある。それは、表現の自由や結社の自由に重大な影響を与える可能性があるからとされているようだ。

英米独の大規模な情報収集
 
 英国の捜査権限法では、治安機関は犯罪への関与が疑われているか否かに拘わらず、あらゆる人物の監視ができる。情報収集は、一度にドサッと膨大な数の人々を対象に実施できる。私たちの生活の大部分はコミュニケーションやオンライン上での活動を通して営まれているから、プライバシーは一切守られなくなる。
 米国の外国情報監視法でも同様で、通信者双方が米国民以外である必要はない。FISA702条にもとずくFRBの照会件数は、2021年だけで2964643件、その後減少して25年は7413件だった。そして下院は今年6月、702条の短期延長案を否決した。
 独では、連邦情報庁法により不特定多数を対象に通信情報を収集している。26年8月情報機関法改革案を閣議決定した。市民権擁護協会によると、政府の法律草案の大部分は違憲である。
 仏では、通信のアルゴリズム監視を拡大し、対テロに限定して恒久化し、24年に外国干渉防止法、26年に軍事計画法を改正し防衛予算をGDP比3・5%、防衛関連産業等に戦略物資の備蓄を義務づけた。

「敵国予備軍」というレッテル貼りで管理処罰

 日本は欧州の先例に倣ってこれからつくるのだが、外国代理人の活動を依頼する主体が海外か国内かを問わず、議会や政府へのロビングを行う代理人に登録を求める。
 自民党提言では、これは代理活動の透明性を確保するもので、外国政府や外国情報機関とのつながりに着目するものではないとはいうが、干渉行為への刑事罰を新設する。彼らはなぜ外国との繋がりを問題にするのか。それは、〈外国代理人=敵予備軍〉として管理し、〈「外国」干渉=「日本」への敵対〉として処罰するとしているからだ(現在の刑法は市民社会の中の権利・利益の侵害を処罰する)。外国干渉防止法は、〈外国=敵〉を社会に打ち込む。
 高市政権の国論2分政治の下で、日本政府の信頼失墜の試み・我が国を対象とする悪意あるナラティブ・同盟離反を企図したプロパガンダはすべて処罰の対象とする法案が提出されようとしている。異論を封殺するというやり方だ。  (T・T)

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