10.16津島原発訴訟仙台高裁不当判決

支援署名20万筆を超えるも、国を免罪

被害住民本位の復興・再生を

 【宮城】「国の責任認めず」「原状回復を認めず」「東電の賠償責任を断罪」「基本解決要求実現に資する判決」という4本の旗が仙台高裁前に掲げられた。 
 津島原発訴訟の控訴審判決で、仙台高裁(石垣陽介裁判長)は、10月16日、国の責任を否定し、東京電力のみに賠償を命じる「逆転判決」を言い渡した。原状回復請求についても棄却した。

国の不作為による加害行為

 原告の津島住民は、福島第一原発事故で現在も津島に帰還出来ず多大な精神的苦痛を被っているとして、国と東電に慰謝料と津島地区の除染(原状回復)を求めていた。
 一審判決(2021年7月30日福島地裁郡山支部)では、国と東電の賠償責任を認められたが、除染請求は却下されていて、原告、被告双方が控訴していた。
 2022年6月17日の最高裁判決が、国の責任を否定したため、原告住民らは、①国の作為による加害行為の有無(国による福島第一原発を「設置」、福島第一原発の設置許可処分等)②国の不作為による加害行為の有無(米国「B.5.b」によるシビアアクシデント対策の不行使、水密化対策の不行使、設置許可取消権限の不行使)について新たに主張して争ってきた。

国の責任を否定する仙台高裁判決

 仙台高裁は「国の作為による加害行為の有無」については、国が福島第一原発を「設置」したと評価することはできない、福島第一原発の設置許可処分に違法性はない、電源喪失対策やシビアアクシデント対策除外及び決定に違法性はないとした。 さらに「国の不作為による加害行為の有無」ついても、「不行使にいずれも違法性はない」と一審で認められた「国の責任」を否定し原告側の主張は退けられた。
 米国「B.5.b」によるシビアアクシデント対策の不行使(国の不作為による加害行為)については「事故を回避することが出来た高度の蓋然性があるとはいえない」。「当時の状況に照らせば『B.5.b』に準じた対策を講じなかったからといって違法とはならない」。水密化についても「それを講じたとして事故を回避できたとは認め難い」と否定した。
 東電の責任については一審判決同様、損害賠償責任を認めるも、除染請求については「地区全体の放射線量を低下させる手段や技術が特定されておらず、具体的作為(除染)の内容を限定することができないから特定性に欠ける(除染方法が特定していない)ので不適法であること」、確認請求については「国、東電は、放射性物質がついている土を支配領域に収めているとは言えない(自分たちの物ではない)から除染義務はない」としている。
 まさに国の責任を免罪する6・17最高裁判決を踏襲する判決である。

裁判長の付言

 石垣陽介裁判長は判決要旨を読み上げた後「津島住民には、何の落ち度もないのにふるさとに帰れない。ふるさと取り戻したい思いはわかる。国及び浪江町は、津島住民の思いを丁寧に汲み取り、津島の除染と復興に取り組むよう切に望む」と「付言」を述べた。
 判決後、開催された報告集会は、200人を超える原告団、支援者が集まり立ち見も出る中で開催された。裁判長の述べた「付言」について議論になった。
 今野原告団長は「原状回復が認められなかった。国策として進めてきて、国は責任を認めず司法はそれを断罪しない。悔しい。提訴から11年、原告100人以上が亡くなった。裁判は手段だ。他にも方法はある。『四者協議会』を通して原状回復を求めていく」と声を詰まらせながら述べた。
 「付言」について、樋口英明元裁判長は「判決文に書いていなければ、独り言でしかない」とコメントした。
一方、弁護団は「この裁判は、ふるさとを取り戻すための裁判であり、裁判は公開でありその中で『付言』として語ったことは意味がある」と話した。「原告の思いはわかるが、付言は、6・17最高裁判決を超えられない裁判長の言い訳であり、自己正当化する発言である」という意見もあった。

「特別重要施設」とは

 『B.5.b』によるシビアアクシデント対策について、昨年の口頭弁論で証人尋問に立った長谷川公一さん(盛岡大学学長)は、「裁判所は『B.5.b』に対して冷淡な判断であったが、『B.5.b』は、生きている。現在の特別重要施設(テロ対策施設)が現在の『B.5.b』だ」と話していた。(それを聞いて特重のない原発は即止めるべきだと思った)
 弁護団からは「胸が痛い、抑えようのない怒りだ。訴訟原点は、ふるさとを返してほしいということだ。法の正義と公平さをもって法的責任を求めていく。原告はおカネはいらない、原状回復だと言っている。原状回復請求が否定されたが四者協議を通して実現しよう」と報告と決意が述べられた。

方針は原告総会で

 判決の評価について、原告団、弁護団はコメントを出し、「原告団の基本解決要求の実現に資するものであることが基本であること」「判決は、東電の責任は認めたものの、国の責任を認めず、原状回復請求を認容しなかったが、それでもなお、基本解決要求の実現に資する判決であると受け止める」として「付言」も含めたこの判決を最大限活用して、なんとしてもふるさと津島をとりもどすために全力を尽くす決意である」と表明した。今後の方針(上告も含めて)は、10月18日の原告団総会で決定するとしている。
 報告集会のまとめとして、「10・16仙台高裁判決報告集会アッピール」が読み上げられ、「国、東電は、高裁判決と原告団の『基本解決要求』を真摯に受け止め浪江町と津島住民代表組織による『四者協議会』設置を決断すること、その実現を目指す運動を進めていくことを確認した。

150人で市内デモ 
 判決に先立ち、仙台市内の公園で原告団と宮城県内や全国から参加した支援者が150人を超え、判決前集会を開催。今野原告団長の挨拶後、「ふるさと津島を返せ!」「汚したらきれいにして返せ!」「仙台高裁は、津島住民に寄り添い、公正な判決を出せ!」と仙台市内をデモ行進してアピールし、仙台高裁に向かった。仙台高裁には、61席の傍聴数に200人を超える人が並んだ。
 また、控訴以降続けてきた津島訴訟支援署名は、10月15日に20万3335筆を数え仙台高裁に届けた。
 判決内容は後退したが、原告団、津島住民に寄り添い「四者協議会」を実現に向けて取組んでいこう!

解決に資する判決

原告団・弁護団は、以下のようなコメントを出した。
 ①本日の判決に対する評価は、判決の主文だけでなく判決理由をも含め、原告団の基本解決要求の実現に資するものであるかどうかが基本となる。
 原発事故によって汚染された地域の除染と復興再生は、被害住民の意向を無視して進められてはならない。被害住民の意向を反映した除染・復興再生をするためには、国・東電・自治体に被害住民を加えた4者による継続的協議(4者協議)が不可欠である。4者協議を基軸とした基本解決要求の実現に資する判決となることを原告団は切望してきた。
 ②本日の判決は東電の賠償責任を認めたものの、国の責任を認めず、原状回復請求を容認しなかった。
 ③しかし、それでもなお、基本解決要求の実現に資する判決であるとわたしたちは受けとめている。というのも、裁判長は、法廷において、判決を読み上げたのちに、次のように「付言」を述べたからである。「国及び浪江町は、津島住民の思いを丁寧に汲み取り、津島の除染と復興に取り組むよう切に望む」。わたしたちは、この判決を最大限活用してなんとしてもふるさと津島をとりもどすために全力を尽くす決意である。
 ④判決文の詳細な検討が未了であるので、本コメントはあくまでも主として判決要旨を前提としたものである。今後、判決文を読み込んだうえで、下記のとおりあらためて記者会見をおこなって、原告団・弁護団声明をふくめて確定的な評価をご説明することとしたい。
        (H)

判決前の集会とデモ(10.16仙台高裁)

判決後の報告集会(10.16)

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