国際情勢、日本政治・経済情勢について
高市政権の軍拡・改憲に反対し
エコ社会主義に向けて共に闘おう
大森敏三
はじめに
この一年間で国内外の情勢はきわめて急速な激変を遂げてきた。それは現在も進行中である。アメリカが昨年12月に『国家安全保障戦略』を公表したあと、今年に入ってベネズエラ侵攻と大統領夫妻拉致およびその後の親米政権の樹立、アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃、イラン・アメリカ双方によるホルムズ海峡の封鎖、イスラエルによるガザでのジェノサイドとレバノンへの攻撃、そして中東における戦争の長期化と拡大へと続いてきた。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻とトランプの「アメリカ・ファースト」政策を契機としたヨーロッパをはじめとする世界全域での軍拡・軍国主義化の進行、アメリカ・中国の二大超大国での政治的危機の深化など、その激変を示す例は枚挙にいとまがないほどである。そして、気候危機の深刻化は相次ぐ戦争によってさらに加速している。ヨーロッパでは史上最悪の熱波によって数千人が死亡し、巨大な山火事が頻発する事態となっている。また、資本主義システムの危機の中で、ブルジョワ政権の権威主義化と新ファシズムへと向かう動きが世界的に進行している。それに対応した形で、日本では高市政権が成立し、総選挙での圧勝を受けて、日本帝国主義の生き残りを賭けた「真の戦略的転換」が開始されている。
われわれの予測を超えて加速度的に進行する情勢の激変は、グローバル資本主義の多重的な危機の反映であり、きわめて不確実で不安定な時代への突入を意味している。その中で、情勢の全体像を把握することはきわめて困難な課題ではあるが、エコロジー社会主義を目指すわれわれにとって、少なくとも情勢をグローバルな視点で理解しようとすることが不可欠である。この論考はそのための考え方を整理し、討論の素材を提供しようとするものであり、読者の皆さんも含めて積極的な議論を期待したい。なお、この小論はJRCL25期第3回中央委員会の議案に加筆修正したものだが、文責は筆者にある。
世界情勢のアウトライン 帝国主義間対立と権威主義・新ファシストの台頭
『週刊かけはし』に連載されたアシュリー・スミス「新たな危機の時代における断層線―帝国主義的対立、権威主義、そして抵抗」は、世界情勢のアウトライン、とりわけアメリカ・イスラエルのイラン攻撃以降の国際情勢について、以下のように整理している。
*現在は、危機、帝国主義間の対立、権威主義的ナショナリズム、下からの突発的で爆発的な抵抗によって特徴づけられるグローバル資本主義の新たな時代であり、気候変動、大量移民、パンデミックなどの多重的なシステム危機に加え、世界的な経済不況と帝国主義間対立の再燃という多重的な危機に直面している。
*経済不況を乗り切るために、支配階級は緊縮財政政策、社会福祉支出削減、賃金切り下げ、補助金削減などの自国労働者への攻撃とあわせて、他国に対して保護主義や近隣窮乏化政策をとっている。世界的な景気低迷は、帝国主義間の対立、とりわけアメリカと中国との間の対立を激化させている。
*トランプ政権は、グローバル資本主義を管理することをやめ、同盟国と対立国の両方に対してアメリカの国益を追求する略奪的支配へと転じた。その結果、世界は弱肉強食の軍拡競争に陥った。
*イラン戦争は、自由貿易グローバリゼーションという帝国主義的秩序を決定的に終わらせた。
*トランプをはじめとした右派の選挙での成功は、資本主義の多重的危機と、既存政党がそうした危機を克服できなかったことの産物である。既存政党の失敗は左右への政治的分極化を引き起こしたが、新たな右派が権威主義的ナショナリズムという形で主要な受益者になっている。しかし、政権についた右派も資本主義のシステム危機に対処することができない結果、政治的不安定が世界中で常態化している。
また、ピエール・ルッセ「アジアにおけるイランの衝撃波」(『週刊かけはし』サイトの「インターナショナルビュー」にアップ中)は、イラン戦争がもたらした国際的転換点について、次のように述べている。
*アメリカによる対イラン戦争は真の国際的転換点になりつつある。イラン戦争がもたらした影響は、特にアジアにおいて顕著であり、今後予想される多くの激変の始まりとなるだろう。
*米中二国による寡占支配の今後を決めるのは、アメリカと中国の両国における深刻な政権危機と気候・エコロジー危機であり、こうした状況は、不確実性をさらに増大させている。
*イラン戦争は、ムスリムを中心としたアジア各国からの中東の移民労働者にも大きな影響をもたらし、アジアにおける貧困と生活の不安定さを加速させている。
*中東の戦争は気候危機とエコロジー危機、つまり地球規模での危機を悪化させており、とりわけアジアにおける影響は深刻である。
そして、ルッセはこの情勢が日本にもたらす影響について、「トランプの気まぐれな行動と同盟国の利益を軽視する姿勢によって、日本の高市首相は、日本が軍事大国としての地位を確立するために、武器輸出の全面的解禁に象徴される真の戦略的転換を開始した」と指摘した。
今日の世界情勢を理解する上で、この二つの論考は大きな示唆を与えてくれる。その上で、とりわけアメリカ・イスラエルとイランとの戦争がもたらす世界の地政学的変化について、さらに考えてみたい。
アメリカ・イラン「停戦合意」の空洞化と世界の地政学的変化
2月28日にアメリカとイスラエルがイランを攻撃して始まった戦争は、イランによるイスラエルや湾岸諸国への反撃、アメリカ・イスラエルのさらなるイラン攻撃、イスラエルによるレバノン侵攻、イランによるホルムズ海峡の封鎖、アメリカによるイラン船舶の航行禁止へとエスカレートしていったが、6月19日に結ばれたイスラマバード覚書によって一応の停戦が成立した。しかし、その後の事態が示すように、この停戦合意は事実上機能せず、アメリカによる停戦違反の攻撃にイランが反撃するなど、空洞化された状態が続いている。
そもそもトランプ、イラン双方に停戦合意を急ぐ必要性はあったが、トランプの方がより切迫して停戦とホルムズ海峡の解放を切望していた。中間選挙を控えて、不人気で、世界経済に打撃を与えている戦争をこれ以上続けられなかったのである。その意味では、イランの「粘り勝ち」ともいえる停戦覚書の内容になっていた。つまり、「覚書には、海峡再開の見返りとして、アメリカはイランの港湾封鎖を解除し、イランが石油輸出から何十億ドルもの収入を得られるように制裁を解除し、海外で凍結保有していたイラン資産の凍結を解除することでさらに数十億ドルをイランに返す手続きを開始すると書かれている。しかも、これがまず先にあって、その後から、イランの核開発に関する合意を目指す厳しい本格交渉を開始するというのだ。つまり、アメリカとイスラエルがイランを攻撃し始める前日、2月27日の状態に戻るための代償を、まずは払うということだ。2月27日には、物資を運ぶ船舶はホルムズ海峡を通航していたし、アメリカとイランの交渉担当者は核合意について話し合っていた」(BBCニュース)からである。
トランプにとっては、ベネズエラでの成功体験の再現ができず、自らの覇権帝国主義としての再確立を狙った賭けに敗れた格好となった。このことは、アメリカと中国(そして部分的にはロシア)との関係に大きな影響を与えるだろう。その一端はすでに5月米中首脳会談で表面化した(後述)。
イスラエルのネタニヤフ政権は、イランの体制転覆のためにイラン指導部の中枢を攻撃初日に殺害し、トランプをイラン攻撃に巻き込むことに成功したが、体制転覆という当初の目的を達成できないまま、停戦合意交渉からも排除される形でイラン攻撃をやめざるを得なかった。レバノンでの攻撃を続行することで停戦合意に揺さぶりをかけてきたが、イラン政権はホルムズ海峡の再封鎖でトランプに圧力をかけ、トランプとネタニヤフの関係悪化が進む結果となった。しかし、ネタニヤフ政権は10月に総選挙を控えており、極右勢力の圧力も受けて、ガザやレバノンに対する攻撃を止めようとはしていない。
イラン政権にとっては、至上命題だった神権政治体制の維持はできたものの、アメリカによる攻撃の再開など戦争状態は依然として続いており、国内経済の再建という大きな課題にも直面している。イラン民衆の新たな民主主義闘争は、この戦争の中でアメリカや旧王制に対する幻想が打ち砕かれた地点から再開されるだろうが、どの程度の回復期間を必要とするかは不明である。
このように、中東という単なる産油地域にとどまらない、新たなグローバル・センターが打撃を受けたことにより、世界の地政学的な変化は必須となったが、その程度や今後についてはそれなりの時間を経てからでないと見定められないだろう。
5・6月に相次いだ首脳会談のバランスシートと東アジア情勢
5月から6月にかけて、中国の習近平主席がアメリカ・トランプ大統領、ロシア・プーチン大統領、北朝鮮・金正恩総書記との一連の首脳会談をおこなった。この首脳会談の結果にはイラン・中東での事態を受けた帝国主義間の力関係の変化が反映されており、東アジア情勢にとっても大きな意味を持っている。
まず5月14日と15日におこなわれた米中首脳会談は、アメリカと中国との帝国主義間対立の基本的な問題について基本的に棚上げして、「戦略的安定」という名の一時的休戦が結ばれた形となった。トランプにとっては、「アメリカ・ファースト」実現と半年後の中間選挙に向けて、実利的な取引の成果をアメリカ国民に示す必要があったが、当初の狙いとは裏腹に、イラン戦争の解決のために中国の助けを乞うためのものとなり、台湾問題での譲歩を迫られた。習近平は非常に具体的な要求として、アメリカが「アメリカは台湾の独立を支持しない」という公式見解を「台湾の独立に反対する」に改め、台湾への武器供与を停止するよう求めた。その一方で、習近平にとっては、経済不振の長期化とそれを打開する手立てが乏しい中で、アメリカとの帝国主義的対立を一時的にではあっても緩和し、時間稼ぎをしたいという思惑もあった。その意味では、事前の予測を覆すディールはなかった。しかし、いずれにしても中長期的にはアメリカと中国との帝国主義間対立は続くことになるだろう。
続いておこなわれた中露首脳会談においては、はっきりと中国の優位性が示された。ロシアによるウクライナ侵攻以降、ロシアと中国との関係は、ロシアの中国への依存へと大きく変化したからである。経済的側面で見れば、中国にとってロシアは「失っても代わりがいる相手」であり、ロシアにとって中国は「かけがえのない相手」となった(第三国を経由した取引を含めた対中国貿易はロシア貿易の約40〜45%に達する)。中露首脳会談は両国のパートナーシップを強調したが、ロシアにとっての具体的成果はほとんどなかった。
6月の中朝首脳会談では、習近平が金正恩に配慮を見せた格好となった。その背景には、北朝鮮経済がウクライナ戦争特需で潤っていることがある。いくつかの訪問レポートによれば、少なくとも平壌周辺においては経済が活況を呈しているという。北朝鮮はウクライナ戦争に兵力と弾薬を提供し、見返りとしてロシアから食料や石油など緊急に必要な物資を得るとともに、ロシアへの武器販売で100億ドル(約1兆6000億円)以上を稼いだと推定されている(韓国・国家安保戦略研究院による)。このようなロシアとの関係強化を背景にして、中国に対する交渉力が強化されたためか、習近平はこれまでと違って「朝鮮半島の非核化」を会談で言及しなかった。つまり、北朝鮮を核保有国として事実上承認したのだ。中国共産党政権は、伝統的に北朝鮮をアメリカに対する緩衝国としてとらえてきた。その意味では、歴史的に見て、韓国(そして日本・沖縄)の米軍基地の存在が北朝鮮国家の存立基盤になってきたと言える。また、北朝鮮は、朝鮮半島における「二つの国家」という考え方を反映させる憲法改正をおこない、「朝鮮民主主義人民共和国領域は、北に中華人民共和国とロシア連邦、南に大韓民国と接している領土とそれに基づいて設定された領海と領空を含む」と定義する領土条項を新設した。しかし、金正恩が3月の最高人民会議で言及していた韓国を「敵対国」とする表現は憲法には盛り込まれなかった。
日本の「軍国主義化」と高市政権による「戦略的転換の開始」
総選挙で圧勝した高市首相が推進しようとする政策課題としては、「積極財政を前面に掲げた経済対策」「防衛3文書の改定による防衛力の増強」「国家情報局の創設・スパイ防止法の策定」「場合によっては非核三原則の見直し」「外国人管理政策の強化」「旧姓の通称使用の合法化」「皇室典範の見直しや憲法改正に向けた地ならし」などが挙げられていた。それに加えて「国論二分政策への挑戦」の手始めとしての「武器輸出5類型」の撤廃=「殺傷兵器を含む武器輸出の全面解禁」は、東アジアにおける軍事同盟関係を強化し、軍需産業を経済成長の牽引役にしようとするものだった。
沖縄・南西諸島においては、自衛隊基地建設やミサイル部隊・電子戦部隊などの配備が急ピッチで進められ、日本本土においてもミサイル弾薬庫建設、長射程ミサイルやトマホークの配備、港湾や空港の軍事使用による輸送力強化など南西諸島と一体となった後方支援拠点の整備が進行している。日米軍の連携強化と共同対処能力の強化を目的とした日米合同軍事演習「レゾリュート・ドラゴン」は、2026年度には完全に沖縄・九州が演習対象地域となり、離島防衛を一つの焦点とした訓練が実施された。
また、フィリピンにおける米比合同軍事演習に自衛隊が相次いで参加している。「バリタカン26」(4月20日〜5月8日)には、フィリピン、アメリカ、オーストラリア、日本、カナダ、フランス、ニュージーランドから1万7千人以上の兵士が参加したが、自衛隊からは約1400名の兵員に加え、護衛艦「いせ」「いかづち」、輸送艦「しもきた」、輸送機、救難飛行艇などが参加した。また、6月15日から7月1日まで行われた「カマンダグ26」には、米比海兵隊と並んで、陸上自衛隊から第1空挺団、中央特殊武器防護隊、対特殊武器衛生隊、化学学校などが参加し、降下訓練なども実施された。この演習の目的は「自衛隊の領域横断作戦に係る統合運用能力の維持・向上を図るとともに、力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境の創出に寄与すること」とされ、フィリピンへの武器輸出の本格化とともに極東アジアだけでなく、東アジア全域における軍事同盟体制の強化が目論まれている。こうした一連の政策や自衛隊の動きは、前述のルッセ論文で指摘された「真の戦略的転換の開始」として把握しておく必要がある。
高市政権の政治性格をめぐって 「権威主義的」政権への志向
私たちは、高市政権の政治的性格を、世界的な権威主義的政権の台頭を踏まえ、「ソフトな外見を装った『選挙で選ばれた権威主義的政権』になる可能性」として考えてきた。トップダウンの官邸主導での議会軽視、「国旗損壊罪」の新設、外国人に対する管理体制の強化、国家情報局新設やスパイ防止法の制定準備などは、政権の権威主義化を示すいくつかの指標ではあるが、「権威主義的政権」の可能性についてはさらに今後の動きを注視する必要があるだろう。
高市政権の政治基盤を支えているのは、高い支持率および反対派としての中道勢力の混乱と後退、議会内左派の周縁化といった外部的要因である。中道勢力について言えば、参院や地方議会での中道改革連合への立憲・公明の合流が遅々として進まない一方で、旧立憲系の総選挙落選者を中心に離党者が相次いでおり、中道改革連合を軸とする中道勢力再編の目処が立たない状況にある。また、議会内左派も社民党が衆院での議席を失い、ある意味で党存続が問われる状況であるのに加え、れいわ新選組も山本代表の辞任、大石共同代表の離党などで党内危機が進行している。
高い内閣支持率に支えられてきた高市首相だが、7月におこなわれた世論調査では軒並み支持率の大幅低下に見舞われ、毎日新聞の調査ではついに不支持が支持を上回る結果となった。とりわけ若い世代や女性の間での支持率低下が報じられている。また、高市内閣への支持率の低下については、①高市首相への人気、期待感、「強い日本」というナショナリズムがもたらす高揚感がピークを過ぎ、国会の迷走や日々の生活の困窮という現実に人々の関心が戻ってきたこと、②一時的に高まっていた高市首相への期待は、必ずしも彼女の右翼的姿勢や高圧的な姿勢への支持というわけではなかったこと、③保守派の中でもリベラル保守と復古・ナショナリストへの分裂が明確になっていることも注目しておくべきだろう。西側「主要国」の中で、暴走するトランプに唯一追随する高市政権に対してはブルジョワ主流派の中でも危機感が強まっており、そのことは最近の新聞各紙の論調に反映されている。とりわけブルジョワ主流派の意向を代弁する日経や読売が、高市首相の国会運営について厳しく批判していることに注目すべきである。
高市政権の経済政策とAIバブルの今後
高市首相は、経済政策では経済拡大路線と積極財政に固執し、経済成長の柱としてAIと軍需産業を想定している。原料不足や物価高対策には消極的で、エネルギー節約ではなくガソリン・電気・ガス料金への補助金支出で補正予算を組んだ。
「このシステムの中心地は、アメリカからヨーロッパや日本に至るまで、緩やかな成長率にとどまるか、あるいは停滞している。アメリカに関しては、ハイテク企業によるAIデータセンターへの巨額投資と、それにともなう株式市場のバブルだけが経済成長を支えてきた」(前述のスミス論文)。日本でも同様の経済現象が起きている。日経平均株価が一時7万円を突破したのは、AI・半導体銘柄への大量の資金流入によるもので、AI・半導体銘柄への集中度がアメリカを上回っている分バブルの程度が高い。「特定分野への集中の度合いは米市場よりも強く、株高の恩恵が日本の隅々に広がっているわけではない」(日経新聞)ため、一部の富裕層にますます富を集中させる構造となっている。
AIバブルがいつまでも続くわけではなく、さらなる技術革新によって、巨大なAIデータセンターそのものが不要になる事態が起これば、あるいはそれに対する莫大な投資が利益を生まないことがはっきりすれば、一挙にバブルは崩壊する。実際に中国の新興企業が開発した高性能生成AIが発表されたとたん、アメリカでも日本でもAI・半導体銘柄の株価が大きく下がる事態が生じた。一時は時価総額がトヨタ自動車を超えていた半導体大手のキクオシアの株式は一気に半値以下にまで急落した。日経平均株価も、6月25日の史上最高値7万2366円34銭から1カ月余りで1万円を超える下落を記録した。実体経済全体と著しく乖離するAI株価バブルに依存した経済政策は破綻せざるを得ないのである。
進行するインフレによる貧困と格差、生活苦の拡大
アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃とそれに続くホルムズ海峡封鎖によって、中東からの原油輸送がほぼ途絶する中、政府は備蓄原油の放出で原油不足と価格高騰に対応してきた。それでも石油関連製品の値上がりや末端での不足は続いている。かりにホルムズ海峡の封鎖が解除され、中東原油の輸入が再開されるようになったとしても、中東での石油施設の復旧に時間がかかると思われ、トランプが豪語するのとは違って、原油価格が戦争以前の水準に戻るとは考えられない。そうすると、日本は割高となった原油輸入が急増することになって、貿易赤字とさらなる円安、そしてさらなる物価上昇(インフレ)の可能性が生まれることになろう。日銀が6月16日、政策金利を1・0%程度に引き上げると決めたのは、「中東情勢の影響による経済の悪化リスクよりも、原油高に伴う物価上昇(インフレ)リスクの高まりを重視し、利上げによるインフレ抑制が必要と判断した」(毎日新聞)からと言われている。
しかし、円安の進行は止まらず、1ドル=160円の大台を突破した。これに対して、日米金融当局は協調為替介入をおこない、一時的には10円近い円高となったが、これが持続可能とは到底考えられない。世界的な物価高と円安を要因とする物価上昇は、上場企業の2026年4〜6月期連結純利益が前年同期比68%増加するなど、巨大独占企業に膨大な利益をもたらす一方で、労働者民衆、とりわけ脆弱な層の人々(女性、高齢者、若年層など)の生活苦や貧困化を加速させている。高市政権の財政拡大による経済成長路線は、この物価上昇をさらに促す役割を果たしている。
高市政権の物価高対策の「目玉」である「食料品の消費税を2年間ゼロ」は、現実には「食料品の消費税を2027年4月に2年間限定で1%に引き下げる」こととなり、8月5日に閣議決定された。しかし、ブルジョワ主流派の意向を代弁する日経新聞は、閣議決定後の8月6日付社説で「衆院選公約に拘泥して副作用やリスクが大きい減税を強行するのは、将来に禍根を残す愚策でしかない」とまで酷評している。この日経社説では、反対する理由として「年5兆円に上る代替財源の確保を年末に先送りし、先に減税方針を決定するのはあまりに無責任」「肝心の物価高対策の効果も限定的」「綱渡りの財政運営が一段の円安や金利上昇を招き、国民生活をかえって脅かす可能性もある」などを挙げている。日経ですら、この政策が進行している貧困と生活苦への対策にならないことを指摘しているのである。
私たちは生活防衛のために、消費税の廃止、その財源として大企業や富裕層への課税強化、賃金の抜本的な引き上げ、とりわけ最低賃金の全国一律大幅引き上げを主張してきた。しかし、政府は最低賃金の全国平均時給を1500円に引き上げる目標の達成時期について、大幅に先送りして、非正規労働者の賃金抑制策を続けようとしているのである。
高市政権の軍拡・改憲路線に対する反対運動と労働者民衆の生活防衛の闘いを結びつけ、エコ社会主義へと向かう運動のうねりを作り出そう
高市政権の軍拡・改憲に向けた動きに対して、2015年安保法制反対行動以来となる大きな反対行動が展開されてきた。総選挙後に開始された若い世代や女性を中心にした国会前での「せんそうさせない緊急アクション」が回を重ねるごとに参加者を増やし、全国へと拡散していったのをはじめ、毎月19日の「NO WAR! 憲法変えるな!国会正門前大行動」(「戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会」「9条改憲NO! 全国市民アクション」共催)も全国での同日行動も含めて多くの参加者を結集してきた。こうした運動のうねりを持続させ、発展させていくために、地域での草の根的な行動を積み重ねていくことが必要であり、そのために力を尽くさなければならない。とりわけ、急速な軍事基地化が進む沖縄・南西諸島における基地反対運動、および全国での自衛隊基地強化反対の運動と連帯した闘いが不可欠となっている。
それとともに、高市政権の大資本・富裕層の利益を優先する政策に反対し、広範な労働者民衆の生活を守る運動を、労働組合運動の復権をかけた闘いとして作り上げていく必要がある。この闘いにおいては、全国一律最低賃金の実現と最低賃金の抜本的な引き上げ、賃金の物価スライド制、労働基準法をはじめとした労働法制のさらなる改悪阻止などを掲げて、労働者自らが自らを組織化していくプロセスが決定的に重要である。
こうした反戦平和のための闘い、労働者民衆の生活防衛の闘い、そして深刻化する気候危機に対して気候正義(クライメート・ジャスティス)を求める闘いは、資本主義システムの多重的な危機に対応して展開されているが、その危機が一つに収斂しつつあるという情勢のもとでは、私たちの運動や闘いもまた相互に結びつき、一つの大きな流れとなっていく必要がある。まさに情勢がそのことを求めているのである。

NO WAR!憲法かえるな!7.19国会正門前大行動
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