資本主義のエコロジー的・社会的破壊時代における革命的マルクス主義宣言
資本主義的成長との決別、エコ社会主義オルタナティブのために⑦
4 資本主義的成長に対するエコ社会主義オルタナティブの基本的方向
⒅ 自主管理によるエコ社会主義的な計画作成
エコ社会主義への移行には計画作成が必要である。特に、エネルギーシステムの転換(原子力や化石燃料からの撤退、省エネルギー、再生可能エネルギーの開発)には計画が必要である。よく言われることとは逆で、計画作成は民主主義や自主管理と矛盾するものではない。いわゆる「現存社会主義」諸国の悲惨な実例は、自主管理が、民主主義を蔑ろにして上から押し付けられた権威主義的・官僚主義的な計画作成とは相容れないことを示しているにすぎない。民主的なエコ社会主義的計画作成とは何を意味しているのだろうか? 具体的に言うと、社会全体が生産の優先順位、および教育・健康・文化に投資すべき資源の水準を民主的に自由に選択できるということである。民主的なエコ社会主義的計画作成とは、それ自体「専制的」なのではなく、地方レベルから国家レベル、地球レベルまでのあらゆるレベルにおける社会全体が自由に意思決定を行使することなのである。それは、資本主義構造や官僚主義構造の中で疎外され、物象化されている「経済法則」や「逃れられない檻」から自らを解放するために必要な行動である。労働時間短縮と結びついた民主的計画作成がおこなわれれば、マルクスが「自由の王国」と呼んだものに向けて人類がかなり進歩したことになるだろう。つまり、自由時間の増加は、実際のところ、労働者が経済・社会について民主的に議論し、それを自主管理することに参加するための条件なのである。民主的なエコ社会主義的計画作成は、重要な経済的選択に関するものであり、地域のレストラン・食料品店・パン屋・小規模店舗・手工芸業界に関するものではない。同様に、エコ社会主義的計画作成は、生産単位における労働者の自己管理と矛盾するものではないことを強調することが重要である。それゆえ、自主管理はあらゆるレベル――地区・地域・国内・大陸・地球レベル――での計画の民主的統制を意味する。なぜなら、気候変動などのエコロジー問題は地球規模のものであり、そのレベルでしか対処できないからである。民主的なエコ社会主義的計画作成は、しばしば「中央集権的計画作成」と述べられるものとは正反対である。なぜなら、決定は「中央」によって下されるのではなく、権限移譲の原則、つまり、必要な場合には、公的な行動の責任は問題そのものを解決できる最小の主体に割り当てられなければならないという原則にしたがって、関係住民によって民主的に決められるからである。
5 不均等かつ複合的な発展という状況におけるグローバルな脱成長
一国での解決策は存在しない。公正なエコ社会主義的オルタナティブは一国から始めることはできるが、その完全な実行には世界レベルでの資本主義の廃絶が必要である。したがって、被搾取者や被抑圧者は、今後、グローバルな成果を目指す一貫した反資本主義・反帝国主義・反レイシズム・国際主義の戦略を必要としている。この戦略は、さまざまな異なる状況の中で展開される闘いをつなぐものでなければならない。このことが意味するのは、資本主義的成長と決別するエコ社会主義綱領の主要路線は、一般的には関連性を持っているが、異なる国において異なって適用されるということである。そうした要求の中には、帝国主義支配下における資本主義の不均等かつ複合的な発展の中での位置づけに従って、ある国では他の国よりも重要であるような要求がある。
何世紀にもわたる奴隷的・植民地的略奪のあと、いわゆる「発展途上国」の人々は新たな途方もない不正の犠牲者となっている。温室効果ガス排出に対する彼らの責任は小さく、最貧国ではほとんどゼロに等しいが、200年にわたる帝国主義的資本主義の成長によって引き起こされた気候変動の結果、彼らはますます激しく襲ってくる大災害の最前線に立たされている。
アフリカ・ラテンアメリカ・南アジア・東南アジア・太平洋地域には、すでに地球温暖化の影響によって生活条件が、そしてその存在そのものが、残酷な影響を受けている35億人の女性・男性・子どもたちの大多数が暮らしている。その緊急性はまさにここにあり、急速に高まりつつある。気温が上昇すればするほど、社会は地球温暖化の影響から身を守ることができなくなる。干ばつ・洪水・台風・命にかかわる熱波・生態系へのダメージは、短期的にも中期的にも、何百万という人類の生存・労働能力・基本的権利をますます脅かすようになっている。
地球上で多数を占める被支配国の人々は、尊厳ある生活条件にアクセスする基本的権利を有している。帝国主義国政府、国際機関、周縁国自身の政府は、資本主義的成長によって、「南」諸国の人々が先進資本主義国の生活水準に「追いつく」ことができると主張している。必要なのは、社会をグローバル市場のニーズに「適合させる」ための「良い統治」だけということだ。格差が(国家間で、そしてますます国内でも)拡大し続けている一方で、1・5℃と矛盾しないようにするための「炭素予算」(カーボン・バジェット)が急速に消滅しつつあるという事実が示すように、これは袋小路である。
現実には、帝国主義的な開発モデルによって、被支配国は、原材料と低コストの労働力の供給者、輸出用の動植物製品の生産者、廃棄物の貯蔵場所――とりわけ資本家が利益のために利用する二酸化炭素の吸収源――として、エコロジー危機の主な被害者として、新植民地主義による従属的地位に置かれたままである。さらに、先進国が、国境警備隊の役割を果たしてもらうために被支配国に金を支払うというスキャンダラスな政策もある。現地の腐敗した「エリート」たちは、大きな責任を負っている。彼らは、オルタナティブな社会的価値観にもとづくオルタナティブな開発を推進するのではなく、帝国主義に奉仕するようになった。
「南」が「北」に追いつくという言説は幻想であり、資本主義的・帝国主義的搾取の継続を隠すための煙幕でしかない。それは格差を拡大するのである。エコロジー的災厄が増加していることで、この言説は客観的に見ても信頼性を失いつつある。
BRICSという多極的世界は、帝国主義に代わるものではない。そのことは、この戦略地政学的同盟の二大リーダーであるロシアと中国の政治が示している通りである。両国の独裁的な指導者は、「古典的」西欧帝国主義が帝国主義的かつ抑圧的に実行していることに反対しているのではない。同様に、彼らは、権利と西欧社会が現実にやっていることとの不一致に反対しているのではなく、(労働者、女性、LGBTQ+などの)権利そのものに反対しているのである。プーチンは、力と強制によって植民地帝国を再建しようとしている。彼は、膨大な化石燃料埋蔵量を利用しながら、化石燃料の採掘を可能な限り長引かせるために、石油君主国や他の独裁国家、エネルギー産業や犯罪産業の有力者と同盟を結ぼうとしている。中国共産党は、「南」の国々が「新シルクロード」[一帯一路]に加わることによって、支配から逃れ、発展できると主張しているが、そのグローバル資本主義の覇権プロジェクトは、エコロジー破壊と収奪による蓄積の主な推進要因のひとつである。
今は「追いつく」時代ではなく、地球上でシェアする時代である。気候変動の犠牲者になっているのは、圧倒的多数の「北」や被支配国の労働者・女性・若者・少数民族である。気候政策についての科学的分析によれば、1%の富裕層は2030年までにさらに多くの二酸化炭素を排出し、50%の貧困層の排出量は少し増えるが、1・5℃に適合する個人排出量のレベルにほぼとどまり、40%の中間層が排出削減の大部分を支えることになる(それと比例して、富裕国の低所得層に課される努力が最も大きくなる)。これが、正義と平等を求める国際的な闘いの基礎である。まだ利用可能な残りわずかな炭素予算(カーボン・バジェット)は、歴史的な責任と能力に応じて、国家間だけでなく社会階級間でも共有されなければならないし、共有することができる。鉱物資源および生物多様性という富は、すべての人々の真のニーズに従って、慎重に収穫されなければならない。
帝国主義諸国の資本家は、エコロジー危機の断トツの原因であり、その結果について支払いをしなければならない。そのツケを、歴史的責任は同じではないが、「石油君主国」、ロシア、中国などの国々も支払わなければならない。ヨーロッパ、北米、オーストラリア、日本といった「北」の先進工業国は、無駄な生産物や有害な生産物を急速に減らすという点で、最大の努力を払わなければならない。そうした国々はまた、被支配国にオルタナティブな技術へのアクセスを提供し、エコロジー的移行や損失と損害(ロス&ダメージ)の真の賠償のための資金を提供する責任がある。特許を廃止することによって、「南」諸国民衆が化石エネルギーをさらに使用することなく、真のニーズを満たすことができる技術に自由にアクセスできるようにしなければならない。
1%の富裕層のニーズに応えるために費やされる1ドルは、世界人口の最貧困層50%の社会的ニーズを満たすために投資される1ドルよりも、30倍もの二酸化炭素排出量を生み出している。数多くの科学的研究によれば、被支配国やいわゆる「先進国」の両方において、庶民階級の基本的なニーズを満たしたとしても、カーボン・フットプリントはわずかなものにしかならないことがわかっている。1%の富裕層――「北」と「南」の両方で!――のカーボン・フットプリントの抜本的削減、およびすべての人々の充足によって、それを大体は補償できるだろう。
被支配国の民衆は、自らのニーズを満たすために、帝国主義的・生産主義的モデルとは根本的に対立する開発モデルを必要とする。それは、大衆向けの公共サービス(保健・教育・住宅・交通・下水・電気・飲料水)を優先するモデルであり、世界市場向けの商品生産のモデルではない。つまり、反資本主義・反帝国主義のモデルであり、金融・鉱業・エネルギー・アグリビジネスといった部門の独占企業を収奪し、民主的管理の下で社会化するモデルなのである。
より貧しい国々では、人々のニーズを満たす必要性から、一定期間、物質生産とエネルギー消費の増加が必要となる。オルタナティブな開発モデルやその他の国際的交換の枠組みの中で、グローバルなエコ社会主義的脱成長と生態系バランスの尊重に対するこれらの国々の貢献は、以下のようなものである。
*帝国主義諸国に公正な賠償を負わせること
*寄生的エリート層の甚だしい消費をやめさせること
*新自由主義資本主義政策に触発された環境破壊的な巨大プロジェクトと闘うこと。たとえば、巨大パイプライン、暴力的な採鉱プロジェクト、新空港、海底油田、大規模水力発電ダム、富裕層の利益のために自然遺産や文化遺産を専有する巨大観光インフラなど。
*工業化されたアグリビジネスに代わるエコロジー的な農地改革
*品種改良業者、パーム油農園主、アグリビジネス全般、鉱業による生物群系の破壊、「森林補償」(REDD・REDD+プロジェクト)、漁業資源を工業的漁業の多国籍企業に提供する「漁業協定」などを拒否すること
被支配国の民衆階級は、自らの闘いを通じて、全世界の被搾取者を人権と地球の限界の両方に適合する唯一の道であるこの道筋に引きつけるために、決定的な方法で貢献することができる。(つづく)
THE YOUTH FRONT(青年戦線)
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