国際情勢に関する決議➀
第4インターナショナル国際委員会
この決議は、今年2月に開かれた第4インターナショナル国際委員会において、来年開催予定の第18回世界大会における討論のために採択された国際情勢に関する決議である。世界大会に向けた議論の中で、各国支部などでの討論が反映され、さらに内容が豊富化されて、世界大会の議案として提案されることになるだろう。
はじめに
ハマスによる10月7日の攻撃の後、イスラエル・シオニスト国家とアメリカ帝国主義によるパレスチナ人民に対する爆発的で血なまぐさい戦争攻撃は、脆弱で不安定な世界情勢を暴力的にひっくり返し、多元的な危機へと叩きこんだ。この新たな事実に加え、ウクライナに対するロシアの戦争が続いており、極右の台頭―アルゼンチンにおけるミレイの勝利やアメリカにおけるトランプの新たな勝利の展望―が続くとともに、アメリカ・中国間の台湾の将来をめぐる緊張が激化し、さらに地球温暖化が2030年に向けてすでに災厄を引きおこしているという科学者の知見がある。まとめると、2023年10月に始まった情勢の概要は反証されてはいないが、最近数カ月で悲劇的な形で確認された。
中東全体に対する帝国主義の攻撃
パレスチナにおける戦争は歴史の新たな1頁を開いた。現在の戦争は、すでに新たなナクバ[1948年のイスラエル建国によって、75万人ものパレスチナ人が強制追放された出来事を指す]を引き起こしながら、ここ数ヶ月で爆撃、破壊、女性・子どもたちの死、人道支援の閉鎖、その地域で猛威を振るう飢餓によって、ジェノサイド的な性格を帯びてきた。
2024年2月、ガザの240万人のパレスチナ人のうち、100万人がガザ回廊の北部から南部へと追放された。4ヶ月間の死者3万人以上のうち、40%が女性と子どもである。食料や支援もなく、ラファへの爆撃が予想される中で、イスラエルはその地域の住民を包囲しながら、自らの目的がガザ回廊の植民地奪回であることを隠そうとはしていない。同時に、16カ所のパレスチナ人コミュニティがヨルダン川西岸地区から強制的に撤去された。それはパレスチナ人、近隣のアラブ人・ムスリム民衆への攻撃と脅威であり、すでに地域戦争になっている。
これは「イスラエルとハマス」の戦争ではない。また、イスラエル国家の建国を押し付けられる以前からパレスチナに居住していた人々に対する、植民地入植国家による75年にわたる戦争、アパルトヘイト、「民族浄化」の単なる継続でもない。
アメリカがこれほど直接介入したのは、2003年のイラク攻撃以来初めてである。アメリカによるイスラエルへの武器と数百万ドルの支援は、歴史的な民間人虐殺を生み出す上で決定的である。
したがって、ヨルダン川西岸での暴力的な弾圧と新たな入植地の推進、パレスチナ人の消滅や大規模な国外脱出、シリア南西部への軍事侵攻、ヒズボラに人的損害を出させるためのレバノン南部とベイルートへの爆撃、紅海の入口でアメリカ海軍と商船の策動を妨害しようとするイエメンのフーシ派への爆撃など、それは多方面に及ぶ植民地主義的・帝国主義的な攻撃である。シリアの親アサド派、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派は、サウジアラビアが支配する政府に対して敵対している。イランの神権的で抑圧的な政権と関係を持つ勢力は、パレスチナ人の利益のために行動していると主張しながら、実際には自分たちの利益を拡大しようとしている。この紛争はすでに域外に影響を及ぼしており、パキスタンまで拡大している。
今回の大虐殺は、ネタニヤフ政権のネオ・ファシズム的性格によって助長されている。ネタニヤフ首相は、司法の横暴に反対する数ヶ月間の民衆の抗議によって大きく弱体化したが、反シオニスト左派の極端な弱点を利用して、ハマスによる攻撃の機会をとらえ、中東における西側の憲兵国家としての歴史的要請を果たすために、国内情勢のコントロールを取り戻そうとしている。ネタニヤフは今日、世界の極右勢力の前衛であり、極右の伝統的な反ユダヤ主義という軸は、世界的なイスラム嫌悪という軸によって相対化されている。
イスラエルとアメリカによる攻撃は、亀裂と大きな矛盾に直面している。それは、西側大国の共犯的な沈黙や偽善的な抗議、中国の遅れた抗議、プーチン率いるロシアの綱渡り的な抗議とともに展開している。アラブ世界の大半の政府については、10月7日以前には支配的であった、イスラエルとの関係を「正常化」しパレスチナの大義を不可視化するという論理が、大衆的圧力のもとでのガザ空爆に対する批判声明を滑稽なものにしている。
イスラエルがおこなっていることは、自衛ではなく、近年の歴史の中で最も恥ずべき虐殺のひとつであり、ハーグ法廷で南アフリカが大量虐殺として非難したのも当然である。現在進行中の悲劇は、世界中で政治的・イデオロギー的動揺を引き起こしている。同盟国がアメリカとイスラエルの両方を擁護することはますます難しくなっている。ガザでの殺戮は、グローバル・ノースの大学生や周辺地域の若者に特に大きな影響を及ぼしている。労働者階級居住地域出身の人種差別を受けてきた若者たちは、イスラム嫌悪が台頭したことの犠牲者であり、パレスチナの大義と自らを同一視している。しかし、この大義を支持する行動はたちまち反ユダヤ主義の烙印を押されてしまう。欧米の若いユダヤ系人道主義者は、その多くが非シオニスト、あるいは反シオニストであり、10月7日が作り出した親イスラエルの感情とは反対の方向に動いている。われわれは、これらすべてのセクターとともに行動し、対話する必要がある。
極右の台頭が新自由主義的ないわゆる「民主主義国」に挑戦している
われわれは今、世界中で新たな極右勢力の台頭を目の当たりにしている。そして、それはまだ絶頂期にまでは至っていない。イタリアでは極右が政権を握り、オランダとスウェーデンでは連立政権の一翼を担い、ドイツでは力をつけつつあり、フランスでは政権を獲得する可能性がある。トルコでは権威主義者のエルドアンが政権を維持している。
中東欧では、ウクライナへの公然たる侵攻以来、プーチン率いるロシア連邦のファシズム的性格が深まっているのに加え、ハンガリーでは2010年以来、極右政党フィデスが政権を握っている。同様に、ポーランド極右の体現者であるPiSも、2023年10月の選挙で紙一重の差で過半数を失い、親西欧連立政権が生まれたが、それまで8年間政権の座にあった。同じ頃、ブルガリアでは、前回の立法選挙で第1党となったポピュリスト保守党(スメル-SD)が極右政党(SNS)と協力関係を結んで、政権についた。
ラテンアメリカでは、ボルソナロによる災厄とペルーにおける2年前のディナ・ボルアルテによるクーデターのあと、極右はアルゼンチンでカサ・ロサダを勝利させたが、彼は最も戦闘的かつ組織的な労働者運動・大衆運動の一つに対する徹底的な戦争をおこなうと宣言している。極右はアメリカと世界を脅かし、トランプがホワイトハウスに返り咲く可能性も生まれている。
極右はアジアでも現実的な脅威を作り出している。独裁者フェルディナンド・マルコスの息子であるボンボン・マルコスがフィリピンを統治し、反ムスリムを掲げるナレンドラ・モディが2014年以降インドを支配している。彼のインド人民党(BJP)政権は市民的自由、労働権、環境権を制限するとともに、カシミール地域の憲法に保障された自治権を剥奪した。インドネシアでは、極右のプラボウォ・スビアントが大統領に当選した。
2008年以降、そして2016年のブレグジットとトランプの勝利以降、「刷新された」とされる極右の運動や政党は選挙での勝利とともに強化・拡大してきた。極右は、(超)新自由主義的、規範において保守的、民族主義的、外国人排斥、レイシスト、女性嫌悪、LGBTQIA+の権利の敵、トランス嫌悪であって、宗教原理主義に非常に鼓吹され、支持されているにもかかわらず、反体制的であると自称している。極右は気候変動に関する科学否定論を広めている。
この極右勢力の前進は、数十年にわたる(新自由主義的)民主主義国とその社会制度の危機の結果であり、その原因は格差の増大と、これらの政権が国民や労働者の願望に満足な回答を提供できなかったことにある。
新たな極右勢力の深い根源は、深刻化する危機に直面した困窮した社会部門の絶望であり、新自由主義によって押し付けられた社会構造の崩壊であり、社会自由主義や「進歩主義」によって代表される「オルタナティブ」の失敗と結びついたものである。その結果、政権を一時閉鎖し、大衆運動を鉄拳で統制し、資本主義の蓄積率を回復するために、残忍な調整と収奪を課すことができる政治的・イデオロギー的解決策としてこの新しいバージョンのファシズムを支持するブルジョアジーのグループが世界中で生まれ、拡大している。この分裂の最も顕著な例は、アメリカにおける(共和党を席巻している)トランプ主義と民主党の二極化である。
このように概観すると、第四インターナショナルにとっての根本的任務として、こうした極右勢力、権威主義、ネオファシズムとの徹底的な闘争が課されている。
ウクライナ人民は自らの民族自決権を防衛している
2022年にプーチン軍がウクライナに侵攻したことで、世界の地政学的再構築が加速された。プーチン体制はその攻撃性によってロシア帝政から受け継いだ支配関係を再生産している。その中にはスターリニズムからの借用や世界中の極右イデオロギーとの一体化が見られる。
その戦争はこうした残虐行為を長期にわたって押し付けている。ロシアはウクライナ全域で民間人居住地域への砲撃やウクライナのインフラ施設(鉄道、道路、学校、病院、工場、倉庫、港湾など)への攻撃を続けている。占領地域では、集団的なレイプや虐殺、マリアポリの破壊、(ロシアに「守られている」はずの)市民を死傷させる攻撃がおこなわれてきた。それとともに、ロシアのパスポートが抑圧的に押し付けられ、ウクライナ文化の破壊や子どもたちの国外移送などが続いている。何百万人ものウクライナ人が自宅を離れたり、ウクライナ国外に逃れたりせざるを得なくなり、自らの家族や社会的ネットワークを引き裂かれ、さまざまな国々で難民となっている。
2022年2月の侵攻に対する(プーチンも西側諸国も予期していなかった)民衆の武装抵抗や市民的抵抗によって、プーチンはウクライナを「非ナチス化」し、ドンバスのロシア語を話す住民を保護するはずだった軍事攻撃の目的を不透明な形で調整せざるを得なくなった。前線は、甚大な人的損害の後、(2024年初めに)安定したが、ロシア軍はロシア領と宣言されたすべての地域の支配を安定させることはできなかった。
ロシアとベラルーシでは、公式には「特別軍事作戦」である「戦争」についてあえて語ったり、少しでも反対を表明したりする者は、犯罪者として扱われている。2023年9月に約30万人が部分的に動員されたことで、何十万人もの若者たちが(多くの場合、難民としての身分を持たないで)ロシアにいる家族への脅威を抱えながらも逃げ出すことになった。ロシアの国境地帯に住む何千人もの市民がプーチンの戦争の犠牲者となり、ウクライナのドローンによる攻撃や砲撃で死傷している。
ロシアの侵略によって、NATOは当分の間、ロシアに隣接する東欧諸国の恐怖に基づいて強化・拡大することができた。だからこそ、この侵略とロシア帝国の論理を敗北させることが、すべての軍事ブロック―NATO・CSTO・AUKUS―の解体を求めるヨーロッパ全土の民衆運動を成功させる決定的な要因となるのである。
(つづく)
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