国際情勢に関する決議②

第4インターナショナル国際委員会

 前例のない国際化

 われわれは、人類が直面する主要な問題がかつてないほど国際化していることを経験している。資本主義の危機は、2008年の暴落とその直後の不況、さらには新型コロナウイルスのパンデミック以来、新たな質を獲得してきた。資本主義の危機は明らかに多元化している。環境危機(ここ数年、ますます極端な気候現象を引き起こしており、なかでも最近の猛暑は際立っている)、経済停滞が持続している局面、アメリカと中国との間での国家間システムをめぐる覇権争いの激化、権威主義とネオファシズムの前進、諸国人民と労働者の抵抗行動、世界における戦争の多発には集中化がみられる。
 われわれは資本主義の歴史において新たな局面を迎えている。それは1980年代末に新自由主義的グローバリゼーションが確立して以来、われわれが生きてきた時代とは質的に異なる時代であり、特に階級闘争と国家間の闘争の観点からは、33年前のソ連および東欧の官僚制崩壊によって開かれた時代と比較して、より対立を引き起こす時代である。
 この情勢と20世紀初頭における危機の集中(それは結果として二度にわたる血なまぐさい世界戦争を含む「破局の時代」(1914~46)を招いた)との間には主な相違点が二つある。
 この多元的危機の最も直接的な脅威は、2世紀にわたる略奪的資本主義の蓄積が引き起こしたエコロジー危機である。結局のところ、化石燃料を基礎とする資本主義の結果でないとすれば、エコロジー危機とは何なのだろうか? 深刻化する気候・環境危機は、人類と地球上の生命に大きな打撃を与えている。地球の平均気温の上昇率は、最近十年間で以前の上昇率の2倍になっている。生物多様性は失われ、汚染、パンデミックが発生し、これらすべてが決定的な行動をとらねばならない期限を短くしている。
 化石燃料を燃やし、肉や超加工食品の消費を増やすことを基礎とするグローバル化した企業経済は、気候危機を急速に悪化させている。気候が人類の地球上での未来を縮めるだろう。極地と氷河の溶解によって、海水面上昇と水危機が加速している。アグリビジネス、鉱業、炭化水素採掘は、地球の気候システムと生物多様性の維持に不可欠な熱帯林を(もちろん抵抗はあるが)破壊している。気候危機の影響は、インフラ、農業システム、生活様式を破壊し、巨大な規模での人間の移住を生み出しながら、激しく顕在化し続けるだろう。このような事態は必然的に社会的対立を増加させるだろう。

 経済的・社会的危機

 われわれはいまだに2008年の大金融危機の影響下で生きている。それは、新たな大恐慌をもたらし、その後には長期にわたる不況が続いた。その長期不況は1873―90年の不況、特に1929―33年の不況と酷似している。われわれは、新自由主義的グローバリゼーションの危機を経験しているのである。その理由は第一に、このような資本主義の機能様式がかつて持っていたような1980年代末から1990年代にかけてのような成長率、利潤率、蓄積率を保証する能力を持っていないことである。理由の第二は、戦争やナショナリズムの台頭によって地政学的な二極化が進み、超国際化されたバリューチェーンが揺らいでいるからである(例えば、ヨーロッパとロシアのエネルギーチェーンやグローバルなチップ生産など。後者は通信や人工知能における中国の主導権を阻止しようとするアメリカの怒りの標的になっている)。すでに揺らいでいるグローバル生産チェーンを再構築しようする傾向もある。しかし、こうした困難によっては、新自由主義帝国主義政府とその手先が、賃金・社会予算に対する調整や悪質な攻撃、そして農業の商品化を続けることを阻むことはできない。
 2008年以降のわずかな成長にもかかわらず、新自由主義経済は、資本集中の継続、金融化、公的・私的負債、デジタル化―一般的には多国籍大企業、特にはビッグ・テックにますます大きな力をもたらす―へと無鉄砲に突っ走ることによって、自らの危機を回避しようとしている。成長の停滞や鈍化、インフレ(ロシアのウクライナ侵攻によって悪化している)、昔ながらの新自由主義的政策の実施は、国家間や国内での社会・地域・人種・ジェンダーにおける格差を悪化させるだけである。
 危機からの保護(あるいは利益の維持)を際限なく求めることによって、金融投機が助長され、銀行だけでなく、ゼネラル・モーターズ、フォード、ゼネラル・エレクトリックなどの大企業や大不動産会社にも影響を与えた2008年の倒産の波がシステムを恒久的に脅かしている。労働者大衆の生活水準を揺るがす不況という性格に加えて、金利上昇は国債や民間債務を増大させ、新たな地域的な債務不履行危機だけでなく、世界的な債務不履行危機さえも引き起こす条件を作り出す。

大衆的な革命的オルタナティブの不在

 逆に闘争や抵抗運動がないということではない。今世紀になって、少なくとも三度の民主主義闘争や反新自由主義闘争(世紀当初、2011年、2019―20年)や刷新された女性運動、アメリカで起きた反レイシスト運動、世界中での気候正義を求める一連の闘争があった。しかしながら、こうした大闘争は客観的には新自由主義的資本主義やその政府に直面しただけでなく、労働世界の構造的再組織化のジレンマにも直面していた。つまり、産業労働者階級は欧米では社会的比重を大きく失うとともに、被抑圧セクター、青年、新たな少数派不安定労働者がまだ安定的なやり方では組織されておらず、一般的には労働組合運動と一体化するのに困難を抱えている。
 ますます急速な変化の只中で、被搾取階級と被抑圧セクターが(いわゆる生産の再編成の結果として)再構成されることによって、前時代の要素の一つが残存し、悪化している。それは、大衆の目から見て信頼できる資本主義に対するオルタナティブが不在なことであり、経済・社会革命を主導する反資本主義勢力や一連の勢力が存在していないことである。したがって、システムにとってきわめて危機的な瞬間はまた、社会運動と左翼の政治的・イデオロギー的分断が大きく進んでいる瞬間でもある。これは、地理的・技術的・構造的な再構成と新自由主義的な超個人主義の影響を受けた、被抑圧者・被搾取者の良心の退化と関連している。これに加えて、シリザやポデモスのような「左派」政権の否定的な結果や社会主義左派の途方もない分断が、闘争をより困難にするとともに、意識昂揚や政治組織における左翼の影響力が弱まるという構図を生み出している。

多くの危機がお互いをいかに強め合っているのか

 資本主義の危機を多元的なものとして特徴づけるということは、それが危機の単純な総和ではなく、弁証法的に連結された組み合わせであり、それぞれの領域が他の領域に影響を与え、他の領域から影響を受けるということを意味する。(パレスチナにおける衝突が爆発する前の)ウクライナでの戦争と経済停滞との結びつきによって、地球上で最も貧しい人々の危機的な食糧事情が悪化し、10年前と比べて2億5千万人以上がより飢餓的状態になっている。戦争、気候変動、食糧危機、抑圧的体制の広がりによって移住を余儀なくされる人々の流れは、メディアでは南北間の移住が特に取り上げられているが、南の国々の間でとりわけ増加している。
 少なくとも2016年以降、環境・経済分野における見通しが悲惨なものとなっていることが、さまざまな国のブルジョア分派の一部が新自由主義的原理を実行する最善の方法として、形式的な民主主義国家というプロジェクトから離れるよう突き動かす上で重要な役割を果たしたことは間違いない。ブルジョアジーのますます重要なセクターで自由民主主義国家の中で権威主義的な選択肢を採用することが増えており、その結果、右翼原理主義運動や極右政権が強化されている。
 超個人主義的な新自由主義的社会性の拡大は、右派によるSNSの利用、そしておそらくはAIの利用ともあいまって、非政治化、階級分断、保守主義をさらに助長する。デジタル技術はまた、世界の主要な食糧生産者としての中小農民の従属化・顧客化を深化させ、さらにはこれらの農民の大規模な減少を助長する。他方、新自由主義は、福祉国家の残骸を激しく攻撃し続け、産業労働者やサービス労働者、とりわけ介護労働や社会的再生産労働に超搾取を押し付けることによって、女性、とりわけ女性労働者を(ひどい)生き延び方をするか、それとも戦うのかというジレンマに陥れている。
 新自由主義は、女性を(「北」では)正規の労働力として、(グローバル・サウスでは)構造化されずによりインフォーマルな形態のまま維持し、「外で働く」人々やサービスを提供する人々の賃金や所得をさらに減少させる一方で、働く女性全体に、子どもや高齢者、病人、さまざまな人々のケアという仕事を負わせている。つまり、以前は福祉国家が担っていたが、とりわけ先進資本主義国では冷酷にも削減されてきた仕事である社会的再生産のネットワークが危機に瀕しており、それは大都市よりも新植民地諸国においてより危機的である。新自由主義社会は、介護の仕事を家庭化(家族に戻す)し、人種化(非白人、黒人、先住民女性、移民に引き継ぐ)しているが、社会的再生産全体には責任を負っていない。
 全体としての地理経済学的観点から見ると、今日の新自由主義的資本主義とその国家間システムは、デジタル機器とアルゴリズムを新たな生産力として導入するとともに、デジタルプラットフォームの出現、ウーバー化のような新たな形態の社会的生産関係、市場のみを媒介とするさまざまな社会関係を生み出している。同時に、グローバルな資本蓄積の重心は、21世紀には北大西洋(ヨーロッパ・アメリカ)から太平洋(アメリカ、特にシリコンバレー、東アジア・東南アジア)へとシフトしている。中国だけでなく、日本や韓国からオーストラリアやインドに至るまで、この地域全体が決定的な存在となっている。
(つづく)

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