池田実さん(前伝送便編集長)へのインタビュー③
福島第一原発(1F)で働いて
補償完備し尊厳ある廃炉労働を
池田さんは解雇を撤回させ復職した。定年後、2013年に福島原発事故の除染作業の仕事についた。仕事の内容やその時の思いを聞いた。
――福島原発事故後、池田さんはその除染作業の仕事につきましたが契機はなんだったのですか。
4・28処分で赤羽郵便局に戻ったのが2007年3月。集配に戻っていろいろ苦労して配達していた。2011年3・11に東日本大地震があった。東京に住んでいて、ずっと福島から電気をもらっているなんて、ついぞ考えていなくて、初めてこんなことになって、本当に申し訳ないなというのが第一印象だった。それで、定年が当時60歳。2013年定年になった。労働運動にずっと関わってきたから、違うことをしてみようという思いが漠然とあった。
3・11福島原発の事故を見て、東京電力の発表があったが、本当はどうなっているのか、福島の残っている住民の話とか、現場で働いている人がどう思って日々仕事をしているのか、新聞とかテレビでは分からない。実際に行って、話を聞くしかないなと思っていた。ちょうど定年になり、職場を辞めるということで、福島に行って現地の住民とか作業員の声を聞くしかない。そうひらめいて、それで行ったわけです。2013年、ハローワークに行って、いろいろ調べた。最初は浪江町の除染作業をやって、その次に第一原発構内でのがれき撤去作業を 1年あまりやった。
被曝労働の実態
――IFの中に、入るような作業はやったのですか。
1号機、2号機、3号機、4号機や高濃度汚染水が地下に溜まっている集中ラド施設という建屋の中に入って作業をしました。線量の高い所で。いわゆる線量計、アラームがピーピーと鳴る。それはリアルですよ。厳しいのは厳しいのだけど、毎日がすごい、ハラハラというか、こんな現場で働かされている。郵政も階級だけれども、東京電力があって、その下に元請・ゼネコン、東芝・日立のメーカーが50何社あって、その下に直接現場に入る会社があった。私が入ったのは三次、東京パワーテクノロジー、東京電力の百パーセント子会社があって、その元受け会社の下の下の下なんです。
――それは一般公募しているのですか。
東京渋谷のハローワークで見た。結構ある。そこに行ったら、もうすぐ明日にも来ていいですよと即採用された。
――どれくらいの人が働いていましたか。どんな仕事をしていましたか。
当時は1日7000人働いていた。何をやっているかは分からない。繋がりや話し合いは全然ない。同じ作業をしても、分からない。上から言われたのをただもう兵隊さんのようではないがやるだけ。口答えはできない。
仕事は主に建屋の中の清掃、地震や津波、その後の爆発で散乱したいろんなものを、紙類、鉄類、ガラス類などに分類してそれぞれビニール袋に入れて集積所に運ぶ作業です。仕事自体はきつくはなかったけど、全面マスクにカバーオールの完全装備だから夏はびっしょり、冬は逆に東電仕様の下着の上にカバーオール2枚だけしか着ないのでスースー寒い、不織布なので風を通すんです。
ショックだったのは2015年1月にあいついで作業員が亡くなったことです。1人は近くのタンクから落ちて、もう一人は2F、第2原発の関連施設で機械に挟まれて。死亡が発表されたのは同じ日で、当日の朝礼で黙とうしました。事故後、原因調査や再発防止の対策のため3週間ほど休工しました。二人ともベテランの作業長でしたが、してはいけないと言われていた「一人作業」をしてまさかの事故に逢いました。死と隣り合わせの仕事をしているんだなあとあらためて自覚しました。
――7000人が働くということは周りに7000人の宿舎があるということですか。
県内の自宅や、いわきのホテルから通う人もいる。ぼくらはいわき湯本で一軒屋に7人で寝泊まりした。
――いわゆるプレハブの宿舎ではなかった。
プレハブもあるけど、プレハブは主にゼネコンが建てて、食事なんかも出す。そちらは上。うちらはそういうんではなくて、三次会社がアパートとか借りて、住まわす。上から福利厚生とか交通費とか会社に出る。全部出るはずだけど、三次会社に入って、ひどいのは年金とか健康保険とか、一人頭いくらと東電から出ている。それも全部取られてしまう。
言い分は手取りが多い方がいいだろう。それはそうだ。本来は半額折版だから。手取りはちょっと多くなる。そういう実態を見て、びっくりした。今まで郵便局では何をやったのか、労働協約だとか勤務時間だとか賃金だとか。なんか細かいことをやってきた。それ以前と言うか。別世界に入った。自分は今まで何をやってきたのかと思った。
――そういう現場だと長く働く人は少ないんですか。
そうでもない。例えば青森の人は50~60歳。リストラされたとか、会社がなくなってしまった。福島に来れば、すぐ宿舎もあるし、賃金はたいしたことはなくても、飯食うにはいいというので、ここが最後。ここを出たらないな、みたいな人は結構いた。だから、おとなしくしていないと。汚いアパートでも文句も言わない。
――除染労働だからいやだとか、病気になったとかそういうことはありましたか。
病気はないけども、除染の方はカネはよかった。危険手当が引かれないでつく。ただ仕事は一日目一杯働かされてきつかった。朝6時に宿舎出て、現場は8時から午後5時。5時終わってまた車で帰って1時間くらいかかった。拘束は結構長い。
青森から来た人は第一原発1Fに行くために来たのだといって、この次は1Fに行きたい。除染は周りの仕事で本丸は福島に来た以上、1Fで働きたいと言っていた。「私は死ぬ気でやります」と面接で言ったらしいが断られた。死ぬ気はだめだろう。いろんな人が居てすごくおもしろかった。違う世界があった。
福島原発被ばく労災損害賠償裁判
――あらかぶさんの裁判は知られていたのですか。
あまり知られていない。この仕事をしていると病気にかかるとは言わない。もちろん、最初からあるとはほとんど言わない。でもみんな漠然と被曝のリスク・不安を抱えている。何とか大丈夫だろうみたいな気がある。上ももちろんそういうことは言わない。たまたま個人で白血病になったと。労災認定されたにもかかわらず、今も東京電力は原因として放射能によるものではないと認めていない。厚生労働省が認めたにもかかわらず、東京電力としては因果関係は否定している。この間の流れです。
そういうのを何とかしなくちゃと、「原発関連労働者ユニオン」を東京に戻ってから作って、私はいま書記長をやっている。東京電力と交渉したり、経産省に言ったり、後は元請けのあらかぶさんが勤めていた竹中工務店に対して、団体交渉を求めている。竹中工務店は10年前にあらかぶさんはいたが、関係ないと言ったが、都労委は10年経ったかもしれないが、労働条件のことは団体交渉に応じる義務があると、団交命令を今年だした。
そういうことを一つ一つ、現場作業員の労働条件、被曝の問題や健康問題、後は賃金。賃金はほとんど上がっていない。ボーナスはゼネコンかその下くらいはあるが、普通に働いている人はない。月一回の給料だけでも日雇いと同じだ。年休もない。あるんだけども、知らないから取っていない。休みたければ、休んでいいけど、自腹だからね。福利厚生問題など。これからずうっと50年、100年続く廃炉作業・被曝労働がある。現場の作業員のことを考えなければということで組合を作っていろいろ各方面に交渉とかをやっている。
――現場の人が組合に入っていますか。
なかなか現場の人はいない。退職してからこの間、加入者は何人もいます。病気になったんだけど、30年前に原発労働やっていた人も来ますよ。なかなか上は認めないけども。アスベストと同じように、白血病・ガンは退職してから何年後、10年後に発症する。元請けとか東電もそうですが話し合いをしなければいけないと思う。
――原発ジプシーと言われ、定期点検をする全国の原発を回る労働者たちがいましたが今はどうなっていますか。
ただ、あの頃とちがって今はあまりいないですよね。あれは、原発は1年半に一度定期点検をしなくてはならないという決まりがあったので各地を回る人がいた。今、再稼働している原発は増えているがそこまでの状況ではない。福島なら福島に固定して働いている人が多い。
――被曝労働の特有の問題は。
放射能管理区域内は治外法権の世界です。建設現場みたいな多重下請けはあるが、多重だけではなくて、原子炉関係の仕事であったり、私らがやっていた補助というか雑用係、プラント関係とか多業種の下請け。上にも文句言えないし、横のつながりもないから、全体で何やってるか見えない。被曝の問題があるし、東京電力がやるべきだが元請け・ゼネコンだとかにまかせっきり。裁判を起こせば、都労委も含めて、元請け・竹中工務店なんかは東電に言ってくださいと。東電にもやったが、私たちは規定はあるが実際やっているのは元請けで、そこに責任がある。みんな責任逃れしている。責任のなすり合いだ。
国が廃炉計画だとか今も進めているが、それも現場では見えない。
被曝労働への医療的支援が必要だ
――特別な要求はありますか。
やっぱり被曝の問題。例えば、私は退職して10年近く経ちますが、そういう人の健康診断、退職してしまえば東京電力も国も関係ないですから。本来ならばそうした制度が必要だ。ロシアのチェルノブイリ原発なんかはリクビタートルと呼ばれ、作業員は出た後も医療だとかいろんな福利とか補償するといういわゆるチェルノブイリ法というのを市民とか現場労働者が作らせた。
日本ではないし、使い捨て、病気になっても知らない、認定も少し10何件しかない。そもそも作業員とか、協力会社とか呼ばれ、体を張って現場で働く労働者へのリスペクトが感じられない。
労災を認めようとしないのは国も東電もカネの問題があると思う。ガンとか基準も100ミリ㏜とか、根拠がない。低線量被曝でも世界的に認められているのに国も東電も認めようとしない。組合員も白血病ではなくて、血液のガンとかに罹っている人もいる。そういうのは認められない。白血病は年間5ミリ㏜。一般のガンは100ミリ㏜、100ミリ㏜以上だといくつか労災認定されている。それ以下だとことごとく基準以下だと却下されている。そういう基準もガンとして認めないのは、これからずっと廃炉作業が続くわけだから、補償したらたいへんだというのだろう。
――こういう労働は誰かがやらなくてはならない。いやだと逃げたら、いつまでも解決しない。ひどい話ですね。
東京にいたころは「廃炉・廃炉」と言っていたが、廃炉する人は誰なんだ。誰かしなくちゃいけない。だったらカネの問題を含めてちゃん補償する。やっぱ、廃炉作業はやりがいがある仕事、意義のある労働であると。福島の地域とか住民のためにも意義のある作業なんだと。国だとか東電はコストばかり頭にあり、「負の作業」と言うけれども、それは新しい自然を再生する、遠い未来かもしれないが、そういう未来への仕事なのだと位置づけしないといけない。
――長い時間ありがとうございました。
(おわり)
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