沖縄報告 戦後80年の6・23慰霊の日を迎えて
沖縄戦の悪夢 今なお継続
6月30日 沖縄 沖本裕司
戦後80年の慰霊の日がやってきた。この日、糸満市摩文仁一帯をはじめ全県が沖縄戦をふり返り犠牲者を追悼する厳粛な空気に包まれた。24万人を越える戦死者の名が刻まれている平和の礎には、朝早くから遺族の方々が各市町村の刻銘版の前で、花・飲み物・線香などを供えて手を合わせた。約3万5千体の遺骨が収容された魂魄の塔、ひめゆりの塔・白梅の塔・師範健児の塔など学徒隊の慰霊碑、南城市のアブチラガマ、石垣市の八重山戦争マラリア犠牲者慰霊之碑、名護市の少年護郷隊之碑、戦時遭難犠牲者をまつる那覇市の海鳴りの像にも追悼の列ができた。糸満市の南北の塔の慰霊祭には、アイヌの人々も参加し葬送の儀式「イチャルパ」を行なった。私たちは早朝、平和の礎を訪れた。
80年前の戦争がもたらした大量の不発弾と収容されない遺骨は森の中や地中・海中に埋まったままだ。戦争の最大の遺産は、陸・海・空・海兵の巨大な米軍基地群の存在である。戦死した米兵の犠牲の上に沖縄基地を獲得したと考える米軍は自主的に沖縄から撤退することはない。軍事基地と戦争の脅威のない社会を求める沖縄県民の意思は明確である。日本政府が県民の声を代弁しさえすれば事態は動きだしうるにも拘らず、日本政府は一貫して怠慢を決め込んでいる。それどころか、自衛隊ミサイル基地の建設と弾薬庫の拡充・新設、司令部の地下化、血液製剤の準備など、あからさまな戦争準備に突入している。
自衛隊は今年も、沖縄戦の牛島司令官や長参謀長をまつる黎明の塔への集団参拝を見合わせた。県民の側に立って沖縄戦を反省したためではない。県民の強い反発をやり過ごすための時間稼ぎに過ぎない。岸田内閣による安保三文書の閣議決定以後、自衛隊の米軍との共同演習の激化、ミサイル基地建設の強行、基地開放イベントや音楽祭、隊員募集、制服での通勤など目に見えて活発になってきた。陸自が掲載した牛島司令官の辞世の句を、防衛相は「平和を求めたもの」だと捻じ曲げて恥じない。
平和祈念公園の広場で行われた沖縄全戦没者追悼式で、玉城デニー知事は「先人達から受け継いできた〝万国津梁”の精神を持って世界の恒久平和の実現に貢献する役割を果たしていく」との平和宣言を日本語、英語、ウチナーグチで訴えた。石破首相のあいさつは、終始うつむいて原稿を読み上げるだけだったが、「平和で豊かな沖縄の実現に向けて力を尽くすことは国家の重要な責務だ」と述べたことを決して忘れるべきではない。
ロシアによるウクライナ侵略と戦争の長期化、イスラエルのガザ攻撃と中東全体の不安定化、アメリカによるイラン攻撃を受けて、世界は急速に軍事化の勢いを強めた。NATO諸国はドイツ・イタリアを含め軍事費GDP比5%を当面の共通目標に掲げた。軍国主義が世界を覆い始めている。トランプはほくそ笑んでいるに違いない。次は日本だ。1%の壁を越えて2年後に2%に到達する日本はさらに飛躍的な軍拡を迫られる。アメリカと同盟を結ぶということがどういうことを意味するのかが明白になる。軍が栄え民が滅ぶ。いつか通った道の悪夢がよみがえる。
トランプに支配されないためには、日米安保条約と地位協定を破棄し日米軍事同盟の足かせを日本が自ら外し、日本に駐留する米軍基地を撤退させる以外にない。敗戦から今日までの長きに渡る米国支配から日本は自立しなければならない。それは国民の多数が決意すれば可能だ。戦後日本国憲法は「国民主権」を明記した。主権者たる国民が自らの意思を明らかにしてこそ「国民主権」と言える。憲法の国民主権を実践し、戦争放棄と戦力不保持を実行する政府をつくりあげることだ。
地図を見ると西太平洋に浮かぶ沖縄・琉球列島の島々は米粒のように小さいが、米軍が「極東の要石」と呼んだように、沖縄はアジアのてんぶす(おへそ)、要衝に位置する。国家にとって「軍事の要」ともなるが、人々にとっては万国津梁、「交流のかけはし」となる。軍国主義に反対して沖縄を非軍事化し非武装の島々としなければならない。戦後80年の慰霊の日にあたって、沖縄がアジアの平和の架け橋となることを願う。

2025.6.23 平和の礎。慰霊の日に向けて毎年ハンガーストを行なう具志堅隆松さんと支援者。

2025.6.23 海軍通信隊により殺された久米島の在沖朝鮮人・谷川昇さん一家7名。
沖縄選挙区は高良さちかさん
全国比例区は山城博治さん
7月参院選―沖縄の声を国会へ
沖縄は人口でも、国会議員の割り当て数でも少数派である。沖縄が抱える基地問題・経済問題の解決のために、沖縄の声をより強く国会へ届けなければならない。沖縄選挙区では、オール沖縄会議の統一候補となっている高良沙哉(さちか)さん、全国比例区では、沖縄の大衆運動の先頭で頑張りぬいてきた山城博治さん(元沖縄平和運動センター議長)を国会へ送り出すために全力をつくそう!
沖縄選挙区は高良さちかさん
高良沙哉(さちか)さんは1979年生まれで今年46才。沖縄大学人文学部教授(憲法学)。現職の高良鉄美さんから引き継いで参院選予定候補となった。「生きる」を政治の真ん中に!をスローガンに、県内各地で後援会支部を組織し演説会・決起集会や懇談会を開催し連日精力的に動いている。政策発表では、「消費税5%への減税」「ガソリン暫定税率の廃止」など生活防衛策や「辺野古新基地反対」「浦添軍港反対」「自衛隊ミサイル基地建設中止」など「軍拡ではなく対話による平和の実現」を掲げた。
八重瀬町演説会には、伊波洋一参院議員、赤嶺政賢衆院議員、山内末子県議も参加し応援のスピーチを行なった。山内さんは、「県民は沖縄戦を決して繰り返させないという総意で、戦争体験を語り戦争の実相を明らかにし平和教育を継続してきた。西田だけではない。参政党も自民党も、こうした県民の努力を無視し歪めている。さらに、消費税はこの間、3%、5%、8%、10%と上昇し庶民の生活を圧迫する反面、企業は利益を拡大してきた。選挙でしか変えられない。大事な選挙だ。支持の輪を広げてほしい」と訴えた。
沖縄選挙区には自民党と参政党が立候補を予定している。琉球新報、沖縄タイムスでは三者の討論会が掲載された。参政党は、自公政権の行き詰まりを批判しながらいっそう反動的な政治へと回帰させていこうとしている。参政党の候補は、「辺野古新基地建設の中止と計画の見直し」「消費税廃止」「子供の貧困が問題。15才以下の子どもに10万円の補助」「政府による選挙前の2万円支給は票を買うようなもの」などと主張しながら、「日本は天皇陛下中心の国」「日本人ファースト」「沖縄は日本を守ってくれた一番の島」と述べ、排外主義をあおり自衛隊の軍拡・ミサイル基地化を容認するのである。
沖縄戦後80年、本土復帰53年を経てなお、沖縄は基地の島として固定され、事件事故、米軍犯罪、環境汚染、騒音、さらには経済困難、子どもの貧困に苦しんでいる。沖縄は、基地のない平和で豊かな発展を遂げるために、日本に復帰したのだ。日本の政治は決して県民を裏切ってはならない。そのためにも、県民の反基地反戦の意思を明確に全国に示すことが必要だ。高良さちかさんに圧倒的な支持を集中しよう!

2025.6.21 八重瀬町中央公民館。高良さちか演説会に50人余。
全国比例区は山城博治さん
今回の参院選の第一の焦点は、昨年の衆院に続き参院でも政権与党の自公をどの程度過半数割れに追い込めるかどうか、にある。さらに第二の焦点は、多党化する政党の中で、どこが躍進しどこが没落するのか、というところだ。
参院で自公が過半数割れになれば、先の国会で見たように、国民民主や立憲民主、維新など野党各党がそれぞれ、「年収103万円の壁の引き上げ」「年金改革」「高校授業料の無償化」など個別の課題で政権与党と合意を結ぶという事態が一層進むことになろう。安倍―菅―岸田時代のような絶対多数を背景としたごり押しはできなくなる。しかしよく見てみると、これら野党の政策は現在の政治・経済・軍事体制の擁護の上にある部分的改良であって、企業優先・軍事優先・米国優先に手を付けようとするものではない。結局、改良の成果は別の改悪にとってかわられる。政治の流動化が進展する。
日本の政治を根本から変えなければならない。そのためには、いま力が小さくとも労働者大衆の側に立った政策を系統的に主張している国会内左派三党(共産、社民、れいわ)を都道府県選挙区・全国比例区ともに強化しなければならない。その上で、今回の全国比例区に限って言えば、沖縄から立候補する山城博治さん(社民党)を国会に送ることが大事だ。国会における沖縄の声はまだまだ小さい。沖縄の平和運動を一貫してねばり強く進めてきた山城さんは、沖縄の声を国会に届けるにあたって適任者である。
全国を回る合間を縫って山城さんは沖縄に戻り、安和の現場に行ったり、高良さちかさんとのゆんたく会を開いたり、各地で演説会を行なった。南風原町で開かれた集まりには、高良鉄美さん、伊波洋一さん、瑞慶覧長敏さんらが応援に駆け付けた。山城さんは次のように主張した。
「私の政策の柱は二つ。生活を守る、平和を守る、だ。過去30年間の企業優先の国家戦略に対し働く者の復権を!失われた30年を取り戻す。消費税減税、年金アップ、サトウキビ買取価格値上げ等々、参院選で勝てば可能だ。トランプがバンカーバスターを使ってイランを攻撃した。こんな危ない国について行っていいのか。日本が軍事国家になることを止める。沖縄戦の〝軍官民共生共死の一体化”を再来させてはならない。翁長知事が言ったように、グスーヨー、今こそ立ち上がろう!」
そして、「沖縄今こそ立ち上がろう」を元気よく歌った。

2025.6.24 南風原町中央公民館。「沖縄の声を国会へ!」山城博治演説会。
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