10.5止めよう改憲!おおさかネットワーク講演会
野党、左派、リベラル派の再結集が必要だ
【大阪】止めよう改憲おおさかネットワークの総会が10月5日、国労大阪会館で開かれ、愛敬浩二さん(早稲田大学教授)の記念講演があった。
壊憲という視座
壊憲は、明文改憲がなされていなくても、条文や理念を想定する国家社会の在り方から系統的・総体的に乖離した現在の政治・社会の状況を表すことばである(森秀樹さんの定義)。だから解釈改憲とはレベルが違う。憲法を意味するConstitutionという言葉には、体質・気質という意味がある。
戦後日本の体質とは、「平和国家」(沖縄問題、ベトナム戦争との関わりを除く)ということ。つまり、専守防衛論・武器輸出〈禁止〉3原則・非核3原則・防衛費GNP1%枠という政策。これらの政策は多くの国民の支持を基盤として、戦後日本の体質・気質になってきた。Constitutional changeとはこれらの転換を意味する。
米国は、射程100
0~1500キロのミサイルをグアムに配備するというが、それは米国民向けのウソ話であって、グアムからでは中国に届かない。中国と戦争する場合には日本に配備することになる。図上演習で、逃げる訓練をし、沖縄にシェルターをつくる。実質改憲はここまできている。
2022年4月岸田首相は米国議会で演説し、「日本は長い年月をかけて変わってきました。第2次世界大戦の荒廃から立ち直った控え目な同盟国から、外の世界に目を向け、強く、コミットした同盟国へと自らを変革してきました・・・2027年度までに防衛予算をGDPの2%に達するように増額し、反撃能力を保有し・・・日本はかつて米国の地域パートナーでしたが、今やグローバルなパートナーとなったのです」と述べた。
この年12月発表の安保3文書により、日本の米国従属は完成したと言える。
格差拡大と政策選択の減少
今の政治状況では、グローバル格差社会がつくられ、日々強化されている。国際NGОが出した「1%のための経済」によると、世界の資産保有額の上位62人の総資産は、世界人口の下位50%36億人の総資産に匹敵する。2015年には、下位50%の総資産は2010年と比較し、1兆ドル、つまり41%減少し、上位62人の総資産は2010年から5年間に44%増加し、1・76兆ドルに達した。
英国で「ポスト・デモクラシー」が論議されている。グローバル格差社会では政策選択の幅が減少する。市民が民主過程に参加する機会は増えているが、民意が国政に反映されていないという不満が高まっている。先進工業国においては、どんな政党が政権につこうが、国の政策には富者の利益になるよう、一定の圧力が継続的にかけられる。企業の方が知識面で政府より優位であるとの考えが、議論の余地ないイデオロギーと化している。日本の例では、財界が菅直人首相の消費税発言を支持し、参院選惨敗後の代表選では菅直人候補を支持した(対抗馬は、国民の生活が第一の小沢一郎だった)。
政策の幅が小さいからこそ、文化戦争に頼る。大規模な不平等が固定化し、プロパガンダが政策に取って代わり、必然性の政治から永遠の政治に移行する。必然の政治は経済発展で民主化をもたらすが、永遠の政治では政府の役割は将来の幸福を約束することではなく、現在の社会を脅威から守ること。永遠の政治家は、危機をでっち上げ、その結果生じる感情を操作する。現在のような複雑な社会では、社会の将来ビジョンを示せず、文化戦争に傾く。典型はトランプ政治だ。文化戦争は、米国では妊娠中絶・LGBT問題・移民問題、韓国では男女平等、日本では外国人や改憲問題、労働党政権の英国は移民政策だ。
自民党は憲法論議に熱心であることを示せば、政策選択の幅が縮小している中で、国家の在り方等大きな問題について大胆に政策論議をしていると主張できる。憲法審査会で緊急事態条項創設が論議されているが、緊急事態条項それ自体に緊急性はない。改憲派がこの問題に固執する本当の理由は、軍事裁判所の設置と政教分離条項の緩和である。この点については、憲法の明文改憲が不可欠だ。
現在の小選挙区制の選挙制度では、自民党中心の政策を抜本的に変更するためには、野党第1党は共産党との連携が不可欠。保守系野党の選択肢としては、改憲に消極的な野党第1党を論難して自らの政治勢力の拡大をめざすか、改憲に積極的な態度を示して政府与党にすり寄る道であろう。
25年参院選結果について
今年の参院選、注目したのは投票率58・51%だ。前回衆議員選より5%ほど高い。有権者がユーチューブで知って選挙に興味を持ち選挙にいった。若者が行かないと若者の利益が実現しないといって、老若の対立構造をつくられ動員された結果投票率が上がった。しかし今回のことだけで右往左往すべきでない。都議選と衆院選の石丸現象に見られるように、日本の政治の体たらくを見てまた行かなくなるかもしれない。
自民総裁選で高市氏が当選し、維新が少し引いたことがニュースになった。高市総裁なら国民民主が引くのではないかとか、維新は駆け引きで高市が維新に譲歩した形で接近したがっているとか、公明は維新とはやばいので、高市氏は維新と国民のどちらを選ぶかとか、さまざまな動きが舞台裏でつくられるだろう。
高市氏の相手がトランプということ、世界の安全保障のことを考えて話をする相手ではないので、彼を相手にするのは大変だろう。もう1つはマイナ健康保険証のマイナ保険紐付けができているのは現在わずか30%弱で、今年の12月期限がくる。このようなときに総裁になるのはハッピーかどうか。楽観はいけないが、関わっていく方法はいろいろあると思う。
安倍元首相が亡くなって旧統一教会の問題がオープンになった。旧統一教会は保守層にとっては耐えがたい存在のはず。大嫌いな韓国の教会から自民党が金をもらっていたのだから。そのため、今回の参院選では安倍を信じていた浮動票的右派が参政党へ流れた。高市氏は裏金問題と切れていない、モリカケ問題も終わっていない。日本の政治を汚したのは誰かという問題が落着していない。
憲法9条のリアリズムの再確認
日本国憲法9条観には、その先進性・理念性を強調する「理想としての9条論」と現実性・歴史性を重視する「リアリズムとしての9条論」とがあるが、在日米軍を勘定に入れれば、戦後日本が非武装であった時期は存在しない。戦後憲法学は「非現実的」という非難に耐えながらその解釈論を維持してきた。その際過少にみてはならないのは、その「非現実的」な解釈論と同じ見地に立つ政治的・社会的勢力があったことで、9条の抑止効果を含めて、現在かくある「現実」が形成されてきたということだ。
例えば自衛隊違憲論の効用をあげることができる。1960年の安保闘争時、岸首相は自衛隊に治安出動を要請したが、赤城宗徳防衛庁長官に反対された、「自衛隊は国家国民の自衛隊であり、1政権の自衛隊に非ず」。中曽根康弘科学技術庁長官は自衛隊出動に反対した、「成長途上の自衛隊は国民の反感を買えば、自衛隊制度自体が崩壊する」。軍隊が自国の治安弾圧のために出動しなかったのは、アジアでは日本だけである。この事実は重い。
「専守防衛なら自衛隊は合憲」という立場は、本来自衛隊は違憲であるという立場から出発している。私(愛敬)は「自衛隊は違憲」の立場だが、この2つの立場の違いは極小さいと思う。
「戦後政治の大きな転換点」と私たちの課題
これは参院選後の朝日新聞の社説のタイトルだが、何が戦後政治か何も書いてないし、本文にもその言葉はない。普通に考えれば、戦後政治とは、9条の下でそれなりに努力をして、他国を侵略しない国をつくってきた政治と解釈できる。安保法制の実装の下で継承されるべき戦後日本の「平和国家」の経験と言説がある。これが転換したというのはおかしい。このような言説は、改憲論議の駆動力になり得るが、事実はそうではなく、政治改革(小選挙区比例代表制と政党助成金制度)の失敗と見るべきだ。
政権交代オブセッション(政権交代に執着)から野党を解放させる必要がある。米国は大統領選があるので2つに分かれるし、英国では労働組合が強く、労働党は一定の支持を維持しているが、日本は1党優位の下での小選挙区比例代表制だから、なかなか選挙区では勝てないし、政党助成金制度によって極少数党でも残存できる。問題は政治改革の総括・失敗であって、戦後政治の問題ではない。安易に戦後政治の清算をすべきでない。
自民党は、東北では選挙区で1議席も取っていない、九州でも2カ所位しか取っていない。かつての自民党はいなくなっているのに、戦後政治はいま終わったというのは、おかしな話だ。
政権後退が見通せない状況の中で、安倍・管政権下で広がった「野党は批判ばかり」という言説に抗して、野党は政策立案型への転換をめざしたが成功していない。野党の政策提案は国会ではほぼ審議の対象にならない。政府・与党は野党の批判には向き合わず、はぐらかし、虚偽答弁もいとわない。このような状況下で野党にも不信の目が向き、伝統的な野党の基盤までも壊されてしまった。「安保で分断繰り返す野党。挙党の原点、今や足かせに」(22年2月16日朝日新聞)。
野党、中でも左派/リベラル派の再結集が必要だ。そのための課題は、社会的連帯を重視する格差社会や貧困社会の改善・克服と持続可能な社会の構築である。利害・価値観の多様性の承認と熟議による民主的合意形成の重視である。直近の課題としては、選挙制度改革の失敗の検証と確認である。 (T・T)

愛敬浩二さん
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