輝け憲法! 平和といのちと人権と
11.3おおさか総がかり行動実行委員会
1200人が参加し団結固める!
【大阪】大阪市立中央公会堂で11月3日、おおさか総がかり行動実行委員会主催の憲法集会が開かれ、1200人の市民が参加した。
開会のあいさつをした近藤さん(大阪平和人権センター事務局長)は、「政治に余り関心を持っていない人、特に若者に何かの気づきになることを期待して企画した」と述べた。
川口真由美さんとカオリンズによるライブでオープニング。子どもの体に書いた名前の遺体を探すガザの母親たち、戦争に行かないでと夫や息子に懇願する妻や母親たちの思いを綴った歌が会場をつつんだ。
続いて、講演は清水雅彦さん(日本体育大学教授・憲法学、九条の会世話人、戦争をさせない1000人委員会事務局長代行/生まれは兵庫県尼崎)と小川たまかさん(フリーライター/和歌山県生まれ)の2人が行った。
清水雅彦さんの講演
「憲法入門~その歴史・意義と改憲論議を考えよう」
憲法とは何か
社会は、近代市民革命前の人の暴力と神話による支配から、近代市民社会革命(日本ではなかったが)を経て憲法に基づく法の支配に移っていく。日本国憲法は統治規定(第1章・天皇、第2章・戦争の放棄、第4章・国会、第5章・内閣、第6章・司法、第7章・財政、第8章・地方自治)と、人権規定(第3章・国民の権利と義務)に分かれている。統治規定は、国家権力制限規範としての戦争・軍隊に対する規定として重みがある。米国合衆国憲法には当初、人権規定はなかった。安倍晋三さんは、「憲法は理想を述べたもの」といったが、憲法には理想を述べたところはどこにもない。
憲法は国家の最高法規として国家権力の行動と規範を定めており、法律の違憲審査制(第81条)をもっていて、ドイツ・ナチの経験から、多数派の暴走を是正する役割をもつが、日本の裁判所はそれを機能させていない。「法治主義」は、法内容に関係なく法は守るべきものという立場、「悪法も法」。「法の支配」は、戦後の多くの国の立場であり、法は正義にかなっていなければならないという立場、「悪法は無効にすべし」。
民主主義と
立憲主義
橋下徹や安倍晋三の民主主義は単純多数決主義、多数派=正義。憲法43条の国会=国民の代表機関だが、憲法上好ましい選挙制度は比例代表制だ。内閣は、政治的評価の分かれる重要問題には自制的姿勢が必要だ。現代立憲主義は多数派(与党など)の暴走を阻止・是正することも目的にしている。
日本国憲法の平和主義の解釈
戦争の放棄・9条1項は、A説:侵略戦争を放棄している。B説:自衛・侵略の区別が無理なので、自衛戦争を含む一切の戦争を放棄、と2説ある。
また戦力不保持・9条2項は、前項の目的を達するため、甲説:目的は国際紛争を解決する手段だから、自衛のための戦力保持は許される。乙説:目的は国際平和と1項全体だから、自衛のための戦力保持も許されない、と2説ある。
学会の多数派はA+乙、戦力全面放棄・「武力なき自衛論」。少数派はA+甲、B+乙だ。1945年国連憲章は自衛戦争の制限論だが、1946年日本国憲法は先の戦争の反省から、「自衛戦争」の放棄の立場だと思う。世界で、軍隊をもっていない国はコスタリカだけではない、26カ国もある。
日本国憲法の前文には、全世界の人々が平和のうちに生存する権利があると言っている。対象は、日本国民だけではない。
政府の9条解釈
制約と形骸化
政府は、自衛隊は「戦力」ではないとし、警察以上軍隊未満の「実力」としてきた。そして、国会論戦と世論によって制約され、自衛隊の海外派兵の禁止(1954年参議院決議)、自衛権行使の3要件(1954年政府見解)、専守防衛(1955年防衛庁長官答弁)、武器輸出(禁止)3原則(1967年首相答弁)、非核3原則(1967に年首相答弁)、集団的自衛権行使の否認(1972、1981年政府見解)、防衛費GNP費1%枠(1997年閣議決定)、となった。
令和6年版防衛白書では、「我が国が憲法上保持できる自衛力は、自衛のための必要最小限度のものでなければならない、と考えられる」とある。「専守防衛とは、相手から攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その様態も自衛のための必要最小限度にとどめる」となっている。
しかしながら、1983年対米武器技術輸出解禁、1991年掃海艇の派遣、2014年集団的自衛権行使容認の閣議決定・防衛装備移転3原則策定、2015年安保法制法制定・国連PKОに自衛隊派遣、2023年「防衛3文書」策定・防衛費世界第3位・先制攻撃としての「反撃能力」の主張、2024年防衛装備移転3原則の運用指針改定・他国との武器共同開発と輸出、というように9条政策は形骸化してきた。
自民党の9条加憲論
2005年「新憲法草案」では第2章を「安全保障」とし、9条に自衛軍を盛り込んでいたが、2012年「日本国憲法改正草案」では国防軍の保持を入れ、軍事裁判所を置くとした。その後、【9条1項を維持し2項を改正】や【9条1、2項を維持し、3項を追加】の案が出て、日本政策研究センターの主張する「普通の国家」をめざし【9条に自衛隊明記】案が出てきた。現在の国民世論の現実を踏まえた苦肉の提案ということになる。
2018年4項目改憲案の自衛隊明記案の内容は、第9条2項「前条の規定は、①我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。②自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する」、となっている。
この案でいう自衛権には、国連憲章が認めている「個別的自衛権」や「集団的自衛権」が含まれている。国民の安全には、自衛隊の活動を国内に限定していない。国会の承認は、事後承認でよいことになる。そして、自衛隊が憲法に明記されると、「自衛隊違憲」が憲法上言えなくなる。当然、9条2項は死文化する。ちなみに、石破首相の改憲論は、2018年の自衛隊明記案ではなく2012年改憲案+α(国防軍設置・徴兵制)であり、日米地位協定改正論である。
防衛費増加ではなく教育・福祉に
自衛隊は「実力」に過ぎず、海外派兵しない、専守防衛に徹するから合憲にしたはずだ。防衛費の大幅増ではなく、そのお金を教育・福祉に回すべきだ。大学授業料無償化1・8兆円、小中給食無償化0・5兆円、健康保険負担をゼロ5・2兆円で実現する。
予算委員会開催中は、憲法審査会は開催されなかったが、2022年2月以降は、与党と維新の会、国民民主党主導で、衆議院ではほぼ毎週開催され、通常国会開会中は16回開催された(参議院は6回)。23年24年は立憲民主党の奮闘により予算審議中は開催されず。審査会の論議では、コロナ対応で緊急事態条項論が出てきた。米国憲法には緊急事態条項はないし、ドイツとフランス憲法にはこの条項はあるがコロナでは発動していない。むしろ、憲法25条がありながら、新自由主義改革を強行し、全国の保健所は1992年に852カ所あったのが、2023年には468カ所に減ったことを問題にすべきだ。大阪市は1カ所になった。
国会法102条の6は「憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査し、憲法改正原案、改正発議または国民投票に関する法律案を審査するため、各議院に憲法審査会を設ける」とある。緊急事態に対応する各種既存の法律の調査・確認や「安保法制法」、「安保3文書関連法」の憲法適合性こそ議論すべきだ。
権利と自由の行使を!
職場でも地域でも、憲法で保障された権利・自由を行使し、学習・宣伝活動、「労組と市民と野党の共闘」をつくろう。自己規制・萎縮・忖度しない、自己満足で終わらない、若者に働きかけること。参院選に向けがんばろう。韓国では、100万人を超えるデモが何度も起きている。
ミソジニーは広く日常の中にある
性暴力やハラスメントの取材をしている。ここ10年ぐらい。大阪地検の元検事正が部下の検事の女性に性暴力を行った事件、沖縄の米軍による性暴力事件などの取材をしてきた。
憲法とは関係なさそうだが、憲法14条(法の下の平等)に関わることだ。日本社会の女性差別は根深いと思う。国連の女性差別撤廃委員会による日本への夫婦別姓の勧告が何度も出ている。議員のジェンダーギャップも大きい。それは女性の問題という人もいるが、そうではない。
小川たまかさんの講演
「“ミソジニーは”家父長制に抗う女性への制裁欲」
ミソジニーは日常の中にあるし、日本社会の全ての男女が内面化している。ミソジニーは一般に女性嫌悪と訳されることが多いが、それだけではない。なぜ、ミソジニーを「家父長制に抗う女性への制裁欲」と捉え直すことが必要なのか。男性優位な家父長制を温存した社会の中では、家父長制に抗うものは排除されていきやすい。ミソジニーの怖いところは、女性同士を分断する。都知事選の時、小池さんと蓮舫さんを女と女の闘いと報道したが、男同士の闘いという場合はない。
例えば「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」(2021年「日本オリンピック委員会森喜朗会長)、「そんなに美しい方とは思わないけど……このおばさん、やるね」(2024年麻生太郎衆院議員)、「常に選挙を考えて政治活動・・・それを実行できる女性はかなり少ないと思う」(2023年維新の会馬場代表)、「女性はいくらでもウソをつく」(2020年杉田水脈参院議員)などなど。ウソをつくなどの例は、典型的なセカンドレイプだ。
性差別は、「女は男より劣る」という考え。ミソジニーは、「男>女の構造に抗議する女に対してぶつけられる。「あの人はいい人なのだから、あなたが腹の中に納めれば、円く収まる」といわれ、被害を訴えられなくする。
まず、自分の中にあるミソジニーに気づくことが必要だ。
来年の参院選に向けて
終わりのあいさつは、丹羽徹さん(大阪憲法会議幹事長)。「1200人の方が参加した。今年は集団的自衛権行使容認の閣議決定からちょうど10年、総がかり行動は安保法制法の廃止を目指してつくられた。今足がかりになるような状況ができたとも思えるが、来年の参議院選に向けがんばろう」と呼びかけた。
集会後、西梅田までデモを行った。 (T・T)
「憲法改悪を許さないぞ」と訴え西梅田に向けてデモ(11.3)
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