強制収用の強行を許さない

シンポ・円卓会議の確約の否定
民法1条違反は明らかだ

空港会社は空港利権グループを動員するまで追い詰められている

 成田国際空港会社は、第三滑走路の用地取得交渉が進まず、C滑走路の用地取得率は88・7%で未買収地が約112ヘクタール、B滑走路延伸部の用地取得率が99・5%で未買収地は約0・43ヘクタールということを明らかにした。必然的に完成時期を2029年3月末と設定していたが運用開始延期を確認せざるをえなかった(3月31日)。
 ところが空港会社は、同時に用地取得のために土地収用法に基づく「強制収用」の手続きを検討していることを明らかにした(4月1日)。しかも先行して空港利権グループの「空港と共存共栄を目指す会」(石井新二会長)が空港会社に「用地取得は限界点に達している」「“事業認定申請”に踏み出す以外にない」(3月25日)という提言を行っている。石毛博道にいたっては、「成田闘争の歴史を踏まえ強制収用をタブー視しすぎては公共事業は完成しない」などと反動発言をする始末だ。
 つまり、空港会社は地元からの要請があることを押し出しながら「強制収用」キャンペーンを演出しようとしている。

なぜシンポ・円卓会議の合意に触れないのだ

 空港会社の「強制収用」手続きへの踏み込みは、明らかに90年代のシンポ・円卓会議で確約した①シンポジウム終結後の1993年6月16日に空港公団は、「収用裁決申請の取り下げ」を千葉県土地収用委員会に行い、これにより事業認定は執行し、収用権限も消滅した。②1994年第12回円卓会議、隅谷調査団最終所見の「平行滑走路のための用地の取得のために、あらゆる意味で強制的手段が用いられてはならず、あくまでも話合いにより解決されなければならない」という歴史的事実の抹殺だ。
 このような居直りと歴史の捏造は、明らかに民法第1条の違反である。あえて民法第1条を確認しておこう。民法第1項の「公共の福祉の原則」は、社会共同生活の全体としての向上発展と調和(公共の福祉)に適合しなければならない。第2項の「信義誠実の原則」(
権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。契約相手の信頼を裏切らない行動が求められる)。第3項の「権利濫用の禁止」(形式的には合法だが、目的や方法が不当な権利行使は、これを許さない)。
 このように空港会社の「強制収用」検討から手続き開始の強行は、ことごとく民法1条に違反している。それにもかかわらず空港会社は、第3滑走路建設を「国家的プロジェクト」と称して用地内地権者に対して「強制収用」という恫喝によって叩きだそうというのだ。シンポ・円卓会議の確約を否定し、空港会社の人権無視と金儲け優先の手法を絶対に許すことはできない。
 4月2日、藤井直樹空港会社社長は、金子恭之国交相に対して「国や関係自治体と一丸となって用地確保の加速化に最大限取り組んだものの、確保に至らない状況にある」「移転補償の内容や事業納得を得られないケースなどについては、他の公共事業に鑑みて土地収用制度の活用が必要との判断に至った」と報告し、関係住民、自治体に説明し、6月にも手続き開始を決定する。
 金子は、「土地収用制度の活用が必要な状況に至っていることは理解する」と支持表明しつつも、露骨なシンポ・円卓会議の確約を抹殺することもできず、「地元の理解を丁寧に得ること、任意の取得に向けた取り組みを継続すること」などを求めざるをえなかった(毎日4・3)。このような態度自身もすでに仕組まれたシナリオで対応していくことは意志一致ずみであろう。
 だが、熊谷俊人千葉県知事は、「まずは話し合いで解決するものだと思っている。地権者へ引き続き説得を続けることが必要だ」(同毎日)と述べ、毎日新聞も「強制収用に慎重な姿勢を示した」とフォローせざるをえなかった。
 空港会社は、4月10日、空港立地3市町村、滑走路新増設推進協議会、四者意見交換会(空港周辺6市町)を行った。ここでも芝山町の麻生孝之町長は、「収用の話しが出るのは理解するが、その前に地権者の不安に真摯に向き合い、解決に向けた提案をしっかりするべきだ」と述べている。朝日新聞も「熊谷俊人知事や成田市長、多古町長らも同じような考えを述べた」と評価せざるをえなかった。現局面では空港会社の「強制収用」方針は、関係者すべてを獲得できておらず、さらにアクセルを踏まなければならない状況まで追い込まれている。
 すでに反対地権者は、「強制収用されるのだろうか……だからといって考えを変えるつもりはない」(同毎日)ことを明らかにしている。さらに東京新聞(4・2)は、「移転対象となる住民は長年住み慣れた土地からの転居を一層迫られることに。地権者の1人は、『まだ交渉中の人もいるのに脅しと捉えられかねない』と苦言を呈した」と紹介している。

「強制収用」強行のシナリオに抗して

 空港会社の暴挙を許さず、「強制収用」手続きを阻止していかなければならない。横堀農業研修センター裁判で三里塚反対同盟と被告は、「新しい成田空港」構想(新旅客ターミナルと新貨物地区)自体が「設計がいまだに流動的であり、緊急性がないのである」と反論してきた。空港会社の「運用開始延期」確認によって「緊急性」がないことが証明されたと言える。さらに空港会社は、「強制収用」方針について一言もシンポ・円卓会議に触れず、否!整合性をもって「言い訳」することができない、それほど無茶苦茶な論理構成であることを自覚しているからだ。答えは鮮明だ。第3滑走路建設を中止し、横堀農業研修センター裁判提訴を取り下げるしかないのだ。
     (遠山裕樹)
 

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