高市内閣の改憲暴走を止めるために
外国・外国人に対し敵意を煽る風潮に注意を
高作正博さん(関西大学法学部教授)が講演
とめよう改憲!おおさかネットワーク主催
【大阪】とめよう改憲!おおさかネットワーク主催の緊急集会が4月3日、大阪PLP会館で開かれた。高作正博さん(関西大学法学部教授)が講演をし、80名の市民が参加した。
プレビシット(信任投票)化した総選挙
高市首相は1月19日、衆議院解散についての記者会見で、国民を2分する重要政策を実行する旨の発言をしたが、いざ総選挙になると具体的には言及せず、高市早苗に国家経営を託してくれるかどうかを国民に問うた。こういう作法をプレビシットというが、それを行った初めての例がフランス革命期のナポレオンである。彼は、自分の人気をバックに1799年第1回目の憲法改正国民投票を行い、1802年2回目の憲法改正国民投票で終身大統領になり、1804年3回目の憲法改正国民投票で共和制は帝制になった。このことを民主主義のゆがみと捉え、フランスではしばらく国民投票は行われなかった。今年初めの衆議院選のおける高市早苗の振る舞いは危険な行動であった。
この前置きに続いて高作さんは2つの柱、①「力の支配」と日本政府の対応 ②憲法をかえるということについて講演をした。
1 「力の支配」と日本政府の対応
「力の支配」の原因と結果
最近のNATOの例では、コソヴォ紛争に対する人道的介入を理由にしたユーゴースラビア空爆(1999年)、コソヴォ国家承認がある。
ロシアの例では、人権保障を理由としたジョージア攻撃、南オセチアとアブハジア占領と独立の承認(2008年)。ウクライナのクリミア半島併合(2014年)、ドネツク・ルガンスクの「人民共和国」承認。2022年2月から現在までのウクライナ侵攻がある。
米国の例では、対テロを理由としたアフガニスタン戦争(2001~2021年)。大量破壊兵器の保有を理由としたイラク戦争(2003~2011年)。化学兵器の拡散防止を理由としたシリア化学兵器施設空爆(2018年)。戦争を止めるという理由によるイラン革命防衛隊司令官殺害。麻薬取締法(米国内法)に基づくベネズエラ武力攻撃と大統領拘束(2026年1月)。米国・イスラエルによる脅威の除去を理由としたイラン戦争(現在)があげられる。攻撃した側の理由に正当性はないが、結果においても成功していない。
日本政府の対応
これら力の支配は国際法に違反している。現在進行中のイラン攻撃について、ドイツ・スペイン・EUは艦艇派遣を拒否、フランスはホルムズ海峡の封鎖解除作戦には参加しないと表明。イタリアは、米国の攻撃は国際法違反とし米国の介入には参加しないと表明。では日本政府は自衛隊をホルムズ海峡に派遣できるのか。関係法令を検討してみる。①存立危機事態について。認定の条件(我が国と密接な関係のある他国に対する武力攻撃・・)の他国を米国とみなすには無理があるから認定できない。②重要影響事態について。戦闘が行われている現場では活動できないから、当てはまらない。③国際平和共同対処事態について。認定するには国連決議と国会承認が必要だから、これも該当せず。④最後に海上警備行動(自衛隊法第82条)について。これは可能だが、対象は民間の日本関係船舶のみであるから、これも該当しない。だから、法令に基づいてホルムズ海峡に自衛隊艦船を派遣することは出来ない。
在日米軍基地からの米兵派遣には事前協議が必要だ。沖縄・佐世保・横須賀の在日米軍基地からの派兵について、フィリピン以北及び日本の周辺地域で武力攻撃が行われた場合という限定があったが、安保法制法が出来てからこの区域的限定はなくなった。しかも、そもそも米国は今まで事前協議をやったことがない。
今年3月日米首脳会談で、トランプはホルムズ海峡への日本艦船の派遣を期待し、高市首相もイランを非難する一方でトランプを応援したい考えであったようだ(高作さんは講演の最後に雑誌「選択」今年4月号の記事に言及、「高市が『退陣』を口にした夜」)。高市首相は会談前には、「法律の範囲内で対応する」と述べ、その後、法律には憲法も含まれると述べ、さらに憲法9条を盾にしたわけではないと語った。しかし、法律の範囲内で対応すると言うためにわざわざ米国に行ったわけではないだろう。今後の情勢次第では、自衛隊派遣を求められ可能性はある。イラン攻撃については国連安保理の決議もないし、米国議会の承認もない。このイラン攻撃について法的評価は差し控えるという曖昧な姿勢のままで今後も対応できるだろうか。
2 憲法を変えるということ
憲法は最高法規である、その根拠は憲法第10章の第97条(この憲法が日本国民に保障する基本的人権は・・侵すことのできない永久の権利として信託されたものである)による。そして憲法前文は、専制と隷従・圧迫と偏狭を除去し、恐怖と欠乏から免れる平和的生存権を謳っている。憲法12条で、この憲法の価値(自由権・基本的人権・平和的生存権)を保持するには国民の不断の努力が必要だと述べている。過日の総選挙の結果、自民党単独で衆院議席の3分の2超を確保し、参議院でも改憲派が3分の2を超える可能性がある。そこで憲法改正手続きについて整理しておきたい。
従来の改憲案
従来の改憲案は、第9条改憲と緊急事態条項改憲、参議院の合区解消のための改憲と教育費無償化のための改憲の4案だ。後者の2案は法律で実現可能であるから、残る2案が焦点になる。第9条改憲案には、自衛隊明記の改憲案(第9条第3項新設・第2項新設の2つ)と第2項削除案がある。自衛隊明記の場合、1項と2項が不整合となるが、後方優位の原則が適用されるだろう。2項削除の場合は、憲法の歯止めがなくなり、自衛隊の軍隊化が進むだろう。緊急事態条項改憲案は、内閣へ権限が集中し、緊急事態宣言発令権濫用の恐れがある。
国会の発議手続き
憲法改正原案の発議は、衆議院では衆院議員100名以上、参議院では参院議員50名以上の賛成で発議し、各議院の憲法審査会に提案される。改正原案は、各審査会議員の半数以上の出席による審議を経て出席議員の過半数の賛成で可決し、各議院の本会議で採決される。改正原案は各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し国民に提案される。国民投票期日は、国会発議後60日以後180日以内。
国民投票での承認手続きとして、両議院議員10名により、国民投票広報協議会が組織される。この協議会は公報原稿(改正案とその要旨、新旧対照表、わかりやすい説明、賛成意見・反対意見)、投票記載所で掲示される要旨の作成、テレビ・ラジオ・新聞等での広報を作成する。国民投票運動(憲法改正案に賛成又は反対の勧誘)は原則自由である。
改正手続きの問題点
内容の関連する事項ごとに区分(国会法第68条の3)するが、一括投票に利用される恐れがあるため、条文ごとの提案とすべきだとの意見がある。
国民投票広報協議会の組織は、各議院における各会派の所属議員数の比率により割り当てるとされているため、賛成・反対の議員の同数化や外部委員の選任が必要ではないか。
公務員・教育者の国民投票運動は原則自由だが、特定の公務員の運動は制限・罰則あり、公務員・教育者の地位利用は禁止・罰則なし。選挙と同時期に実施される場合、国民投票運動と選挙運動の区別が不明確である。
有料意見広告放送は投票14日前までだが、資金力の違いが結果に影響するだろう(例、自民党と電通の関係)。国民投票運動に該当しない行為(例、有名人・アイドルによる「私は賛成です」)は自由だが、影響力が大きい。
メディア規制が必要である(広告費総額規制、CMの放送回数・テレビCM規制)。インターネット、SNSは規制がないが、偽情報や切り取り動画の拡散に対する対策が必要である。投票の白票・無効票の取り扱い方や最低投票率の欠如は再検討の必要がある。
国民を規制・誘導する政治に注意
スパイ防止法、国旗損壊罪の使われ方、内なる敵のあぶり出し、思想取り締まりの横行、監視の日常化、「理想より現実が大事」という刷り込み、外国・外国人に対し敵意を煽る風潮に注意しよう。 (講演後の質疑応答は省略) (T・T)

高作正博さん
週刊かけはし
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社


