鴨志田祐美弁護士(日弁連再審法改正推進室長)特別報告

5・22狭山事件の再審を求める市民集会の発言より
「再審法改正の現在地」
これまでの経緯と、これからすべきこと

浮き彫りになる再審法の不備

 石川一雄さんが生きている間に再審法改正ができなかったことを心からお詫びする。あれから1年たち、状況はものすごく変わった。その道筋と今どうなっているのか、これから私たちはどうすべきかを話したい。
 袴田さんの事件では無実の人が警察のねつ造した証拠によってあわや死刑になっているかもしれない。そういう人を再審請求から救い出すのに、43年もかかった。その内の30年は証拠開示がなかなか実現しなかった。さらに9年は検察官の不服申し立てによってさらに長引いた。
 福井女子中学生殺害事件では第一次再審ではちょびっとしか証拠が出なかった。第二次再審ではどばっと出た。それが無罪の決め手になって、再審無罪になった。しかし、第一次再審でも開始決定が出ていたにもかかわらず、検察官はその証拠を隠したまま、再審決定を取り消させていた。第二次再審でようやく、彼らが隠していた証拠が明らかになって無罪になった。
 さらに日野町事件は第二次再審になって、警察に眠っていたネガが再審の決め手になっていった。検察が持っているものだけではダメだということを、警察にも隠されている証拠があることをこの事件は物語っている。そして、地裁の開始決定、高裁の開始決定、二つの開始決定に検察官は二度も抗告を繰り返しやっと今年の2月24日に、最高裁が再審を確定させた。ここまで7年7カ月かかった。
 そして、私が弁護人を務めている大崎事件では裁判官が代わるごとに、裁判官のやる気次第で、証拠が出たり出なかったりということが繰り返されてきた。なんとか3回も再審開始を勝ちとっているにもかかわらず、その度に不服申し立てをされて、最後最高裁で取り消された。その結果、今でも第五次再審を闘っている。

再審法改正の現在地

 こういうことがずっと続いてきた。やっとこうした理不尽な現実を知ったいろんな人たちが動いて再審法改正の機運が盛り上がってきた。先に動いたのは国会議員だった。一昨年の3月に超党派の議員連盟が出来て、去年の通常国会の時は388人までなった。700人ちょっといる国会議員のゆうに過半数だ。この時点で、議員立法が本当は成立しなければならなかった。
 今は地方からも押し上げてくれている。今全国で881の地方議会が国に対して再審法の改正を求める意見書を採択している。都道府県レベルで言えば、28の都道府県議会で過半数いっている。知事や市町村長も200人を超える首長さんが賛同メッセージを送り、さらに様々な団体、人権団体、労働団体、ジャーナリストの団体など千団体を超えて賛同している。

超党派議連による立法案

 こういう後押しを受けて、昨年の6月に一度提出されていたのが議員立法案だ。議員立法案は今すぐ変えなければいけない4つの項目だけに絞って法案が出来ていた。①証拠開示。請求人が求めたら、裁判所は原則として請求人や弁護人に証拠を開示するように検察官に命令をしなければいけない。②再審決定に対する検察官の不服申し立ては全部禁止。③有罪判決に関わった裁判官はその後の再審裁判に関わらない。裁判官の除斥・忌避。④何の手続き規定もないから、ずっと棚ざらしにされるので、期日を開いて、記録を残す。
 どうして成立しなかったのか。去年の段階で、実は今の法案を国会提出しようと一生懸命やっていたが超党派の議員連盟が議員立法で法案を提出する場合にはそれぞれの所属している政党のOKをもらわないといけない。自民党内では改正に前向きの人と法務大臣経験者などが法制審議会でやれと反対の意見対立があり、議連案を承認しなかった。結果的に6月の通常国会閉会の2日前に、野党6党が共同提案した。審議入り出来ずに継続審議になった。去年の臨時国会でも、法制審議会の議論が始まっていたので、その議論を見守ろうという話になり、継続審議になった。そして、今年の1月に衆議院の解散で廃案になった。
 5月15日に、内閣提出法案も国会に提出された。三党(中道・共産・みらい)が再提出した。これから始まる審議は二つの法案をいっしょに検討していく。議連案の方がすばらしい。ただ今の国会情勢で議連案を単独で成立させますというのは非常に難しい。衆院は与党が三分の二だから。
 だから、内閣が出している方を議連案に近い形に、どんどん修正させる。これを与野党一致でやっていこうよと画策している。ぜひ、ここは理解してほしい。これを二者択一にしたら無理だ。検討して一つの良い法案として作ることでしかない。

法制審の答申~再審法改悪に!?

 法制審というのは、法務省の手元に置かれている法務大臣の諮問機関だ。全部法務省が実権を握っている。幹部はみんな検察官だ。再審法改正はどういう話として出てきたのか。検察官が証拠を隠すから、検察官が再審決定に抗告するから、検察官を縛るためにいい法律にしましょうということ。
 検察がコントロールできるところで、改正法案を審議する。どう考えてもまともなものが出来るわけがない。私は法制審の委員だった。日弁連の選出の委員は10対3ぐらいで極端な少数派だ。法制審にはえん罪被害当事者や有識者もいない。
 答申が2月12日に出された。これが本当にひどい改悪案だ。①ハードルがもう一つついたのが「調査手続」(スクーリング)の導入。再審請求されたら、裁判所はざざと見て、再審の芽がないと思ったら、そこで棄却しなければならない。シャッターを降ろす。その先の証拠開示や調べにいかせない。迅速に棄却しなさいという規定を設ける。②証拠開示についてルールはできた。ともかく範囲を限定する。今までルールはなかったがやる気のある裁判官が一生懸命証拠開示が実現していた。そこがルールができることによって、逆に出来なくなる。③開示証拠の目的外使用禁止既定の導入。違反すると罰則がある。④検察官の不服申し立てはそのまま温存。

研究者、元裁判官たちの抗議の動き

 刑事法の研究者135人がこんなのおかしいと声をあげた。63人もの元裁判官がこんなんじゃだめだと反対声明を出した。市民の声も日に日に盛り上がって4・18渋谷アクションをやった。何が起きたのか。
 普通は法制審での答申が政府案という形で示される。与党である自民党はその案でいいかどうか承認しなければいけない。閣議決定をして、国会に提出される。今回は自民党の部会の議論が大激論になった。超党派議連に参加している議員たちがものすごい勢いで法制審案を批判した。結果として、法務省は三回修正を余儀なくされた。最終的には抗告が刑訴法の本体の部分で、原則禁止となり、ただし例外が盛り込まれた。5月15日に閣議決定された。5月26日から審議が始まる。ぜひ傍聴に行ってほしい。

えん罪被害者のための法改正を
 
 残された問題。証拠開示は法制審のまま変わっていない。目的外使用禁止も変わっていない。じゃあなにをすればよいか。国会の審議で修正を勝ちとっていく。いまものすごく必要になっている。出さなけば良いという意見もあるが、出さなければどうなるか。議連案単体では成立できない。内閣法案が出なかったらどうなるか。また棚ざらしだ。次に再審法改正の議論が国会で巡ってくるのはもしかしたら数十年後かもしれない。袴田、福井事件などこれだけ盛り上がっている中でも、あれだけ抵抗している検察だ。リセットして仕切り直しと言っていたら、もう無理だ。大崎事件原口アヤ子さんは99歳、名張事件の亡くなった奥西さんの妹さんは96歳、狭山事件の早智子さんは79歳だ。そんなに待ってられない。今勝ちとらなかったら意味がない。そのためには与野党を対決構造にしてはダメだ。与野党が挙党一致で共通の敵の法務・検察に立ち向かうような国会審議をさせて、これを外からがんじがらめに囲い込むように応援して、よい法案を勝ちとる。5年後に見直しがやってくる。闘いはまだ続く。
(発言要旨、文責編集部)

鴨志田祐実弁護士

法務・検察の再審法改悪を許さない!(5.22)

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