控訴理由書の要旨

控訴審資料:横堀農業研修センター(旧労農合宿所)裁判を支える会

第1(略)
 
第2 原判決は、シンポ・円卓会議合意への成田空港会社の信義則違反に関する判断を間違っている。
 1.「あらゆる意味での強制的手段」が含む範囲
 (1)土地収用法に基づく強制執行問題は、第6回シンポ会議(時点で)既に決着がついていた。15回のシンポ終了後に土地収用法による収用裁決を取り下げた。
 (2)続く成田空港問題円卓会議は、収用裁決の取下げを踏まえて、3市町、地域住民代表が新たに加わって開催された。この会議の結果として、隅谷調査団の所見が発表され、参加者全員が合意した。合意事項のひとつとして、「平行滑走路のための用地の取得のために、あらゆる意味で強制的手段が用いられてはならず、あくまでも話合いにより解決されなければならない」と明記された。
 (3)原判決では、「あらゆる意味で」という歴史的文言を末梢して「強制的手段」のみの文言で表記し続けて、その想定範囲を狭く判示している。関係者が3年間かけて積み上げてきた成果を無視、矮小化するものであり、特に円卓会議の歴史的意義を改竄するものである。
 (4)原判決は「あらゆる意味での強制的手段はとらない」の合意内容について「民事訴訟手続き」による土地取り上げは含まれないなどという、成田空港会社のシンポ・円卓会議の経過を無視した不当な解釈を追認している。
 これらは、最高裁判決の「共有者間の実質的公平を害」している。

 2.成田空港会社の拡張計画を、事前の協議もなく控訴人らに一方的に押し付ける正当性はない。
 成田空港会社は拡張計画段階からの住民との話し合いを約束していた。しかし、空港拡張計画は、円卓会議合意に反して住民不在の密室で不当に決定された。
 空港拡張計画を決定した成田空港に関する四者協議会は、その会議は非公開とされ、地元住民の参加・傍聴を認めず、議事録の開示さえも拒否されている。
 なにゆえ誘導路をわざわざくの字に曲げて、本件係争地を通らなくてはならないのか、なんら合理的な理由の説明は一切されていない。
 千葉県は当該議事録の非開示の理由として、「成田空港の機能強化に係る協議(審議、検討)に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれがあるため。」「国が行う成田空港の機能強化の検討に関する事業情報であり、公にすることにより、当該事業の性質上、国の航空行政の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため」をあげている。
千葉県の不開示理由は、情報開示請求制度が設けられた社会的・歴史的要請に対して全く背を向けるものである。控訴人は、上記の点に関して、熊谷千葉県知事を証人申請する。

第3 共有者間の協議の余地は未だ残っており、原審の判断は拙速である。

第4 本件係争地の取得には緊急性がない
 1.誘導路の設計位置は、未だ流動的である。
 2.第3滑走路建設に必要な用地の取得時期が、未だ不明である。
成田空港会社は、木の根プールに存在する一般社団法人三里塚大地共有運動の会の土地財産に対しても、なんらアプローチをしていない。
 木の根ペンションとプール、横堀鉄塔と案山子亭があるかぎり、「ワンターミナル構想」や「新旅客ターミナルと新貨物地区」構想は進まない。
 つまり、成田空港会社は、拡張計画に必要とする用地の取得のめどが立ってないのにかかわらず、今、強引に建設工事を進めている。

第5 横堀農業研修センターの破壊は、憲法第13条(個人の尊重と幸福追求権)、第29条(財産権)違反である。
 1.全面的価格賠償の分割共有の強制は、横堀農業研修センターを軸にして長年にわたって積み上げてきた利用者たちの共同施設の破壊である。横堀農業研修センターは、集会、イベントなどの取り組みを行ってきた歴史が刻まれている。
 2.原判決は「現在、居住や生計を営むといった恒常的な利用がされていることを認める的確な証拠はない」と判示しているが、占有移転禁止と現状変更禁止の仮処分がかけられ、建物の改築・修繕もできない状態が続いているからである。

第6 原判決の「別件1 物件目録5(本件各建物等)」には誤認がある。
 納屋(風呂場、旧台所、食堂)を「種類 焼損建物」「構造 軽量鉄骨造平家建」、図書館(現女たちのフリースペース)を「構造 軽量鉄骨造平家建」と誤認。
構造物を特定できず、杜撰な書類で建物を収去することを認めようとしている。

第7 結論

 本件成田空港会社の訴えには、控訴人らに対する著しい信義則違反があり、また、本件係争地を取得する必要性・緊急性もない。そして、原判決は憲法第13条、第29条違反であり、拙速である。よって、原判決は取り消され、成田空港株式会社の請求はいずれも棄却されるべきである。

証人申請(略)
準備書面(1)
 成田空港の滑走路の新設・延伸に必要な面積は1099haであるが、民有地74・3haの確保率は、2025年7月末時点で、86・2パーセントに止まっている。このことは、単に本件訴訟による解決を急ぐ必要のないことを示しているだけでなく、これから先も、更に何年かかるか見込めない状態にあることは確実である。 そうだとすれば、被控訴人国際空港株式会社は、まずは話し合いの申出から始め直すべきではないか。
 用地の確保状況から、本訴においても裁判の進行を特に急ぐ必要はない。
準備書面(2)
 被控訴人成田国際空港会社は、成田空港の第3滑走路の2029年3月の供用開始を延期した。本件事件に係わる土地(共有持分)もその対象とするのであれば、本件訴訟の進行を急ぐ理由は全くない。

裁判経過(略)

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