寄稿 新潟県知事 柏崎刈羽原発再稼働容認許すな

県民の「信を問う」県民投票を行え

中山均(柏崎刈羽原発再稼働是非を考える   
新潟県民ネットワーク事務局・新潟市議)

※複数の機関紙等に似たような内容を寄稿しますがご容赦ください

はじめに

 去る11月21日、花角英世・新潟県知事は柏崎刈羽原発(以下「KK原発」)再稼働容認の「判断」を下し、その判断を「県議会に諮る」と言明しました。ここに至る経過とこれからを報告します。

県民投票直接請求運動の高まりとその後の動き

 現在2期目花角知事は、2018年10月の初当選の際には「(原発再稼働の是非は)県民に信を問う」を事実上の公約に掲げていました。しかしそれ以来何ら具体化させようとせず、この公約が事実上棚上げされる一方、今年春以降には7号機の特重施設の設置期限(10月)、技術委員会による安全性報告、原子力防災避難計画の見直し、7号機の使用済み燃料の移送や燃料棒装荷など、いくつかの動きが進む中にありました。
 そのような状況を踏まえ、昨年夏、関係者の幅広い議論を経て、県民投票直接請求運動が始まりました。紙面の関係で詳細は報告できませんが、請求署名は14万3196筆(有権者比8%弱)が集まり、これまで取り組まれた他県の同様の直接請求署名と比べても、実数・有権者比とも大きく上回りました。4月臨時会で最終的には否決されましたが、若い世代を含む請求代表者8名がしっかりと陳述し、曖昧で不誠実な答弁を繰り返す知事には多くの県民から批判の声が寄せられました。
 2013年に同様に県民投票を求めて取り組まれた時と比較して、県議会内の賛成議員・会派も増えています。これらの運動の高まりは、間違いなく世論の高まりを背景にした変化で、採決翌日の新聞各紙も、知事や議会多数派に厳しい論調が目立ちました。
 県民投票運動は、条例そのものは否決されたものの、県民世論に大きな変化と高まりをもたらしたことが明らかとなりました

条例案否決後も高まる運動と知事判断をめぐる動向

 その後の報道機関の世論調査などでは、県民の多くが再稼働に不安を持ち、投票条例否決後も「信を問う」方法として多くが「県民投票」を選択するという結果が明らかになりました。私たちは、「県民意思の確認には県民投票がもっとも適切」と訴え続けて活動を継続し、「県民投票で決める会」を引き継ぎ、より広い枠組みで「再稼働の是非を考える新潟県民ネットワーク」を結成し、現在、さまざまな取り組みを重ねています。
 一方、一連の県民投票を巡る議論の中で、知事は公約の具体化を迫られました。しかし、いずれもアリバイ的で、「公聴会」や「県民意識調査」は極めて不公正かつ歪んだ形で進められました。これらが進められるのと並行し、「12月議会で決着を図りそうだ」という観測も高まり、9月議会では自民党などから「知事が判断した場合には議会として真摯に議論し結論を出す」などという意味不明な決議が提案され、議決され、「議会へ諮る」動きが一気に進められました。

知事の「再稼働容認」判断

 そして11月21日、知事は再稼働容認の「判断」を下し、その判断を「県議会に諮る」としました。この判断は「再稼働の是非は県民に信を問う」とした自らの公約(写真)に反し、最も安易で姑息な手法で、その見解も、強弁と見苦しい言い逃れに終始しました。県議会は自民党だけで過半数を占めており、否決されることなどほぼあり得ません。
 そもそも知事は二元代表制の下、議会ではなく県民から選ばれており、自らの進退をかけて重要政策決定を行なうならば、その信は直接県民に問うべきで、議会の信任に代えられるものではありません。21日に示された知事の見解については、「県民ネットワーク」でも反論集としてまとめています。
(https://x.gd/zBDb1) 
 知事の判断に対し、県民からも多くの批判の声が上がっています。私たちも25日、怒りの県庁包囲「人間の鎖」行動に取り組みました。包囲するのに1000名以上が必要との試算で、不安を抱えながらの取り組みでしたが、県内外から1200名以上もの市民が集まり、怒りの声を上げました。県政史上初の行動で、マスコミも大きく報道しました。多くの仲間たちと同じ想いで空間を共有できたことは、私たち自身のエネルギーと自信にもつながっています。

県議会で決着へ

 知事側は、再稼働を前提とした国の交付金を財源にした原発の安全対策の広報費3100万円を補正予算全体から切り離して独立した議案として提案し、この議案の賛否で「信を問う」としました。茶番そのものです。県議会では、この原稿を書いている時点でも、複数の会派や議員が厳しく知事を追及していますが、全く意に介せず、不誠実な態度に終始しています。
 会期末は22日で、この原稿がお手元に届く頃には残念ながら知事判断は容認され、自民党などから「信任」の付帯決議が提出される見込みです。翌23日、正式に「地元了解」を国に回答する見通しで、その場合、最短で1月中旬にも再稼働される可能性があります。「地元同意」の枠組みでは、この手続きを経た後はその後歯止めをかける手段は残念ながら限定的とならざるを得ません。

泉田前知事・米山元知事の置き土産―地下式フィルタベント問題

 しかし私たちは、意気消沈してはいません。「地元了解」とは別に、今後も含めていくつかの課題があると認識しています。
 まず、泉田元知事が2013年、東電との間で地下式フィルタベント(FV)に関する文書を交わしています。詳細を説明する余裕はありませんが、その後、米山前知事時代にこの約束の修正と再確認がおこなわれ(2017年)、FVは「事前了解が得られない限り供用できない施設」であることが明記されています。
 地下式FVは、新規制基準下では「特重施設」の関連施設として位置づけられており、その限りでは6号機の本体工事認可から5年の猶予が与えられており、その期限は2029年夏です。
 一方、泉田・米山両氏と東電の約束では、書面では明言されていないものの、再稼働時に機能することを前提として位置づけられていることは明らかです。したがって、仮に花角知事が「再稼働容認」を国に返答したとしても、来年の1月時点では再稼働の条件は満たしていない、と考えるべきです。
 ところが、知事は12月議会での自民党の代表質問に対し、「事前了解を出したいと思う」旨答弁しました。しかし、本年4月には完成見込みとされていた7号基のFVを含む特重施設の完成を大幅先送りし、6号機の同施設も目途が立っていない状態で、姿も見えない施設と、当時の文書で条件とされていた「住民の安全」「避難計画との整合性」を担保できるわけがありません。
 また、仮に1月に再稼働が強行されたとしても、FVが完成する(はずの)2029年夏時点こそが、当時の文書で言う「事前了解」にふさわしい本来のタイミングとなるべきです。
 少なくとも、その新たな条件下での稼働が、地元自治体の関与無しに続けられていいはずがありません。そして、新潟県はこの「2029年」を、来年5月の知事選で選ばれる知事の県政下で迎えることになります。

今後に向けてー安全協定などを介した自治体首長の姿勢

 さて、以上も踏まえながら、今後のことを見通すために、逆に少し時間を遡ります。
 2007年、中越沖地震の際、KK原発の変圧器の火災や地震の規模が想定を超えていたことを踏まえ、県と地元自治体は、安全協定の第14条「運転停止を含む適切な措置の要求」をもとに、「徹底的な耐震対策や断層の調査」「再稼働の際の事前了解」を求め、実行されました。
 この14条は、東電の度重なる不祥事、2002年のトラブル隠し等を踏まえて、自治体側の要求により新設された条項です。これは、市民の安全に責任を持つ自治体首長が、さまざまな手段を取りうることを明確に示しています。そしてKK原発の2~4号炉は、15年以上前の地震の際に発動されたこの「14条要求」がいまだに活きており、再稼働の見通しは技術的にも手続き的にもほぼ不可能な状態です。
 また、この中越沖地震の際、当時の柏崎市長は、消防法に基づいて発電所内の全基の危険物施設の緊急使用停止を命じました。消防法では原子炉停止を直接命じることはできませんが、この命令により、一定期間、事実上の運転禁止と同等の措置となったのです。
 何らかのトラブルや不祥事があった場合に、県・立地自治体首長の判断はきわめて重要な意味を持つという意味で、今後の取り組みに重要な示唆を与えてくれるエピソードです。

 最後の二つの項で示した課題や歴史を考えると、来年の知事選でどういう知事が就任することになるかが、当面、民主主義にとっても、KK原発への対応を巡っても、きわめて重要になる、ということをあらためて認識することができると思います。
 引き続き、皆様のご支援を心よりお願いいたします。

新潟県知事は柏崎刈羽原発再稼働容認を撤回せよ

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