総選挙で問われているものは何か

オルタナティブな社会をめざす闘い

大森敏三

 9月27日の自民党総裁選挙において、決選投票で石破元幹事長が新総裁となり、臨時国会で首相としての指名を受けた。石破新首相はその後衆議院を解散し、第50回総選挙が行われることになった。この小論は、今回の総選挙をめぐる政治情勢を概観したうえで、われわれをも含む左派にとって何が問われているのかを現段階で整理したものである。
 今回の総選挙でまず特筆すべきことは、維新を除く主要国政政党がそれぞれ新しいトップのもとで総選挙を戦うという点である。自民党はいうまでもなく、公明党も党大会で15年間にわたって代表を務め、自公与党体制を作り上げてきた山口前代表が退任し、石井幹事長が代表を引き継いだ。そして、野党第一党の立憲民主党の代表選挙では、決選投票の結果、野田元首相が新代表となった。共産党もすでに今年1月の党大会で、23年間ぶりに委員長が交代し、田村政策委員長が新委員長に就任した。これらの党人事は、ある意味では今日の政治情勢の表現でもあり、ここではまずこの点から見ていきたい。

自民党総裁選挙が示したもの

 自民党総裁選挙には9人が立候補した。これは前例のない多数の立候補だという。この背景には、いわゆる「裏金」問題によって多くの派閥が解散したことがあると言われているが、9人の基本政策に大きな相違点があるわけではなかった。どの候補も自民党の党是である憲法改正を重要課題として挙げていた。確かに「選択的夫婦別姓」をめぐる違いはあったが、その違いは財界・資本家の意向に沿っている(経団連はグローバル・ビジネス推進の立場から、再三「選択的夫婦別姓」の制度化を政府に要請していた)か、それとも家父長的秩序を防衛しようとする伝統的保守派を基礎にしているか、という違いにすぎない。
 しかし、その中で安倍路線の継承発展をめざした高市の右翼的主張は「総理として靖国神社参拝」を公言するなど際立つものだった。高市は第1回投票では最も多くの党員・党友票を獲得した。彼女に対しては日本会議、宗教右派、旧統一教会などの右翼勢力が全面的に支援していたと言われ、そのことが大きく影響していると考えられる。結果、石破・高市の両候補が決選投票に進み、最終的には石破元幹事長が新総裁となり、臨時国会で首班指名を受けた。確固たる憲法9条2項の改正論者であり、日本独自の軍事力増強を通じた集団的自衛権の行使を持論とする国防族の石破は、ある意味、中道右派的スタンスをとって、この9人の中でもっとも「リベラル」な装いをまとっていた。「選択的夫婦別姓制度の導入」をはじめ、微妙にスタンスを変えながらも「再生可能エネルギーの最大限の活用による原発依存度の軽減」を主張し、物価値上げを上回る賃上げ、「2020年代に全国平均1500円の最低賃金」などを掲げていたためである。このことは、石破の自民党内での立ち位置が「リベラル」的に見えるほど、長期にわたる安倍政権下で自民党内部に右翼勢力が浸透していたことを示すものだった。しかし、そうした右翼勢力は、今回は自民党内で多数派を形成することはできなかった。
 また、石破は、本来は支持層であっても不思議ではない、いわゆるネット右翼や保守論壇からは蛇蝎のように嫌われていると言われる(古谷経衡「石破茂氏はなぜ『保守』に嫌われるのか?」yahooニュース、9月12日)。古谷によれば、その契機は、慰安婦問題をめぐる2015年の日韓合意についての石破のインタビュー記事に遡るのだという。2017年5月23日、韓国の東亜日報が「(韓国で)納得を得るまで(日本は)謝罪するしかない」と述べたとするインタビュー記事を掲載し、翌日に産経新聞の取材に石破は「『謝罪』という言葉は一切使っていない。『お互いが納得するまで努力を続けるべきだ』と話した」と報じられた。これが韓国に対して弱腰であると非難を受けたのだ。少なくとも石破は、歴史認識問題では、高市のような安倍直系とは違って、村山談話以降の政府の公式見解を受け継いできている。
 石破は自らの党内基盤の脆弱さもあって、いわゆる「裏金議員」の公認問題、臨時国会での予算委開催、原発問題などでは、自民党内の圧力に屈して、総裁選開始時の主張をずるずると後退させた。石破のこの姿勢もあって、本来は焦点となるべきだった「裏金問題」や「旧統一教会問題」が事実上隠蔽される中で選挙戦が進行することとなった。一方で、安全保障政策においては、「アジア版NATOの創設」「アメリカ本国での軍事基地の自衛隊使用を可能とする日米地位協定の改定」など軍拡と集団安保を主張しているのである。いずれにしても、自民党の基本政策は変わりようがなく、多少のニュアンスの違いはあっても、石破自らが「岸田の経済政策を継承する」というように、岸田政治を引き継ぎながら、軍拡、改憲路線を強化することになるだろう。自民党のさらに「右」には、参政党や日本保守党などの極右政党が一定の存在感を増しており、それが自民党内の右翼勢力と呼応して、自民党をさらに右傾化させ、石破政権を短命に終わらせる可能性もある。

代表選挙に表現された立憲民主党の政治的立ち位置

 一方、立憲民主党の代表選挙には4人が立候補したが、決選投票に野田元首相と枝野元代表が進み、野田元首相が代表に選出された。党内リベラル派グループの「サンクチュアリ」が支援していた枝野元代表も含めて、4人の候補者の政策は全体としては自民党の政策により近づいたものだった。こうした党内状況については、『夕刊フジ電子版』「なぜ立民に?野田佳彦氏は『保守政治家』なのか 自民政策と大きく変わるところなく 本人にズバリ聞いてみたところ…やはり」(3月28日)がよく表現している。この記事では、「野田氏の主張は、自民党の中でも真ん中よりやや右くらいの立ち位置ではないかと思い、『自分を保守政治家だと思うか』と聞いてみた。野田氏は『民主党の頃は右の方にいたが、最近は立憲でも私より右寄りな人が増えている。立憲の中では真ん中のあたりにいる』という意外な答えが返ってきた」と書かれていて、野田元首相から見ても立憲民主党の右傾化が進んでいると言うのである。
 野田代表は野党共闘について、「野党勢力の議席の最大化を目指して、その上で自公の過半数割れに追い込むという基本戦略に立つべき」(『東京新聞』電子版、9月12日)と述べているが、この「野党勢力」には日本維新の会が含まれている。つまり、国民民主党はもちろんのこと、維新との選挙協力も視野に入れているのである。そのことは必然的に共産党を排除した野党協力に行き着く。こうした野党協力についての考え方は4人の立候補者に共通していた。
 したがって、これまでの国政選挙とは違って、いわゆる立憲野党による統一候補擁立や選挙協力がきわめて困難な状況が生まれている。2017年の総選挙では、安保法制反対の大衆的な動員を原動力として野党共闘が実現したが、いまはそういう状況にはない。立憲民主党からの「共産党との選挙協力はしない」とのシグナルを受けて、共産党は「安保法制の廃止を前提とする野党協力の前提が失われた」として小選挙区での候補者擁立を積極的に加速している。このように、立憲民主党の政治的立ち位置が全体として中道左派から中道右派へと大きくシフトしたため、選挙区でいわゆる立憲野党と市民の統一候補が実現するのは、前回の総選挙以降も地域で地道な共同行動を積み上げてきた地域に限定されることになるだろう。こうした地域では、共同行動をさらに加速させる意味でも、野党統一候補の勝利をかちとっていかなければならない。

大阪における維新の退潮

 維新の動向も見ていこう。総選挙に先行する地方選挙では、とりわけ本拠地の大阪において維新の退潮が目立っている。今年に入って、大東市長選での敗北、河内長野市長選での不戦敗、河内長野府議補選での敗北、箕面市長選における現職の維新公認候補の惨敗(維新の現職首長が落選したのは初めて)、箕面市議選では議席は増えたが、得票数はかなりの減少、摂津市長選での不戦敗(維新を離党した元府議が立候補したが大敗)、摂津市府議補選での落選(2010年の維新結成以来維持してきた議席を失う)など、敗北・後退が続いている。維新が最近独自におこなった府民アンケートでは、大阪維新の会を「現在支持している」との回答は28・5%、一方「最近まで支持」(7・4%)、「半年前まで支持」(4・9%)、「1年以上前まで支持」(12・6%)で、ここ1年で合わせて約25%が維新支持から離れている(「最初から支持していない」は46・6%)という結果が出たと報じられている(朝日新聞デジタル、9月27日)。その要因としては、万博の強行開催で「身を切る改革」の正体が暴露されたことや、パワハラ・セクハラ体質の露呈(斎藤兵庫県知事を擁護し続けた)などが挙げられよう。選挙結果以外でも、衆院選予定候補者のスタッフが他陣営に入り込んだことで候補者が立候補辞退に追い込まれる(京都4区)、市民からの陳情書捏造に加担する(千葉市議会)など不祥事が続発するとともに、選挙活動を支える地方議員の離党も相次いでいる。
 こうした危機的な状況を受け、さらに維新との連携に積極的な野田元首相が立憲民主党代表になったことをもふまえて、9月25日の日本維新の会両院議員総会では、「党勢の低迷を背景に、立憲民主党との候補者調整を求める声が相次いだ」「若手議員らが『立憲と選挙区調整をすべきだ』と訴え、『自民党候補を落とすためだったら私は立候補を辞退してもいい』との声まで出た。」(朝日新聞)と報じられている。しかし、注意しておかなければならないのは、東京都知事選で比較的維新との親和性を持つ石丸候補が第2位を占めたことでも示されるように、維新的な右派ポピュリスト政治勢力を求める状況自体に大きな変化はないため、たとえ維新が勢力を減じてもそれに代わる維新的な政治勢力が台頭してくる可能性は高いと言わざるを得ないことである。

国際的政治情勢の中での総選挙の占める位置

 それでは、今回の総選挙は国際的な政治情勢の中でどのように位置付けられるものなのだろうか? 今年に入って、ヨーロッパ、アメリカ、南アジアなどにおいて、大きな政治情勢の変化を経験した。
 ヨーロッパではまず6月の欧州議会選挙において、フランスで極右・国民連合が大勝し、ドイツでも極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)が保守のキリスト教民主同盟(CDU)に次ぐ第2党に躍進した。フランス総選挙では、第1回投票で国民連合が得票率第1位となった。その一方で、若者を中心とした反極右の大衆動員を受けて新人民戦線(NFP)が結成され、第1回投票では与党連合を抑えて第2位に入り、決選投票で第1党を確保した。イギリス総選挙では、保守党の自滅に助けられて労働党が過半数の議席を獲得し政権に返り咲いたが、得票数はジェレミー・コービンが率いていた前回総選挙よりも減らした。また、ドイツでも、旧東ドイツ地域3州の州議会選挙がおこなわれ、AfDがテューリンゲン州で第1党となり、他の2州でも大きく議席を伸ばした。他方、左翼党(リンケ)から分裂した左派政党、ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)が左翼党を大きく上回る支持を得て、議席を獲得した。
 こうした動きに共通しているのは、従来の中道リベラル政党が「極中道」と言われる立ち位置(イギリスの労働党、ドイツの社会民主党、フランスのマクロンなど)へと移行し、新自由主義的な緊縮政策を保守政権以上に推進する中で、反EU・反移民を掲げる極右が躍進し、その一方で若者や女性などの動員を背景にして左派がかろうじて踏みとどまっているという状況である。欧州議会選挙後のフランスにおける左翼の危機感を反極右大衆動員が後押しし、新人民戦線を生み出したことがその典型である。イギリスでも、総選挙で労働党の左に位置する候補者がパレスチナとの連帯を公然と掲げて当選を果たした。労働党から排除されたコービン前党首も議席を守った。
 アメリカ大統領選挙で民主党のバイデン大統領を立候補辞退に追い込んだのも、民主党左派や若者による反乱の結果であり、その大きな要素の一つが学生だけでなく、ユダヤ人社会の分裂を背景にしたユダヤ人青年をも含みこんだパレスチナ連帯運動の高揚だったことは言うまでもない。代わって登場したハリス副大統領に対しても、若者らが明確な政策転換を求めて圧力をかけ続け、それがない場合には支持できないことを拡散させている。
 ヨーロッパやアメリカでは、若者たちが気候危機への対処、住宅の確保、学費値上げと学生ローンの負担に対する抜本的な対策など、自らの要求を掲げながら、大衆的な動員にとりくんできた。その端緒は、グレタ・トゥンベリによる「たった一人の反乱」を出発点として、若者たちが街頭に出て気候危機の解決を求めたことにあった。そうした若者たちが自らの未来をかけて、さまざまな要求を掲げて政治舞台に登場してきたのである。
 南アジアにおいても同様の動きが見られる。インド総選挙では予測に反して、ヒンディー至上主義を掲げるインド人民党(BJP)が単独過半数を失う敗北を喫した。その背景には、貧困や格差と闘ってきた農民運動の持続的な高揚がある。バングラデシュでは、衣料産業を軸にした経済成長にともなう労働者の急増と労働組合運動の発展を背景としつつ、学生を中心とした大衆反乱が大きな犠牲を払いながらもシェイク・ハシナ首相を退陣・国外亡命に追い込んだ。スリランカでも、2022年にラージャパクサ政権を崩壊に導いた反政府運動(アラガラヤ)を経て、かつての毛沢東主義者・人民解放戦線(JVP)の候補者を大統領へと押し上げることになった。ミャンマーにおいては、軍事クーデターに対する若者を中心とした行動が抑圧されてきた少数民族勢力と結びついて、軍事独裁政権を窮地に追い込みつつある。このように、グローバリゼーションの結果として貧困と格差が集中する南アジアにおいて、敗北を知らない若者たちが政治的に登場していることはきわめて重要である。
 こうした国際的な政治情勢の激変とも言える状況の中で、日本の総選挙はわれわれを含む左派にとってどのように位置づけられるだろうか。日本においては、若者の政治的舞台への登場は直線的には進まず、さまざまな回路を通じて顕在化しつつあるものの、ヨーロッパ・アメリカ・南アジアなどと比べると、依然として大きなものにはなっていない。しかし、いずれは同様の動きが出てくるだろう。そうした局面で、左派の側が不意を撃たれないように準備をしていく必要がある。そのためには、立憲民主党のように総選挙での「政権交代」を短絡的に叫ぶのではなく、どのようにして民主主義を取り戻すのか、どういう未来をつくるのかを一緒に考えていこうという姿勢が重要となってくる。
 もう一つの問題は、ヨーロッパで顕在化する「極中道」への動きが日本でも起きるのかどうかということである。そういう視点から見るとき、岸田政権のもとですでにその兆候が現れていたと見ることもできよう。岸田政権は、アメリカや財界・官僚・宗教右派などの意向に沿う形で、国会を無視して、ある意味淡々と軍拡路線を実行してきたからである。石破新政権は党内に強固な基盤を持たないがゆえに、党内外からの圧力に弱く、その「ヌエ」的政治性格もあって、自らの政治主張を貫き通すことは難しく、左右にぶれながらも岸田政権の路線を継承することになるだろう。日本においても、ヨーロッパにおけるのと同じ経済・社会的状況(労働者階級の苦境と社会の二極化、移民労働者の急増など)が時間差を持ちながらも醸成されつつあることを考えれば、石破政権と自民党が「極中道」化(遠藤乾・東京大教授によれば「過激化」、『毎日新聞』9月26日。遠藤教授はこのインタビュー記事の中で「穏健な保守層、中道層に属してきた人々が、排外主義を声高に唱える人々に寄り添ってしまう」危険性を指摘する)する可能性は決して低くない。また、その際には、石破と野田の中道右派的親和性と立憲・維新の接近を考えれば、われわれがかつて提起した「自公立維」による大連立(「『自公維立』4党体制の可能性と左派の目指すべきもの」2745・2746合併号)が形成される可能性をも考える必要がある。

われわれが総選挙を通じて訴えるべきものは何か?

 こうした政治情勢の中で、われわれをも含む左派は周縁化・孤立を余儀なくされている。左派政治勢力の再建に向けて、われわれは何を訴え、何をすべきか、また何から始めるべきかが問われている。これまでわれわれは、2020年参院選、2021年総選挙、2022年参院選、昨年の統一自治体選挙とそれぞれの選挙の中で問われている課題、およびわれわれの考え方を『かけはし』紙上で明らかにしてきた。前回の国政選挙である2022年参院選では、4つの分野での課題―「気候危機と真正面から闘い脱炭素・脱原発社会を本気で実現する政治潮流と運動を!」(『週刊かけはし』2713号)「労働者・市民の生活と権利を守り発展させるために何が必要か」(2714号)「軍拡と9条改憲を阻止しよう ロシア軍のウクライナからの無条件全面撤退と停戦を!」(2716号)「ジェンダー、人種、国籍、移民などを理由とした差別に反対し、多様性で自由に生きられる社会を実現しよう」(2717号)―に焦点を当てて、課題を提起した。
 また、昨年の統一自治体選挙に当たっては、「草の根からの民主主義の復権」をめざす選挙戦と位置付け、「岸田政権のすすめる軍拡、沖縄・南西諸島への基地建設、原発推進、増税、医療・福祉・教育切り捨てに反対する候補者に投票を集中すること」、「草の根からの民主主義の復権と地域に根ざした『地域主権』をめざす住民参加型の選挙にしていくこと」を掲げた。そして、政策の柱として、①地球温暖化を地域から食い止めるために、エネルギー・食料の地産地消・循環型地域社会をめざす、②公共サービスの民営化反対。医療・水道・子育て・コロナ対策・高齢者・公共交通・教育など公共サービスを住民の手に取り戻す、③自治体職員の非正規化をやめる。自治体が委託する事業(保育園など)を含め、自治体職員の非正規職員を正規雇用に転換する、④地域から多様な生き方を尊重し、差別を許さない社会をつくる、の4点を提起した(『週刊かけはし』2755号)。
 今回の総選挙において、われわれが提起すべき課題はこの2回の選挙で主張したことと大きくは変わらない。その上で、まず何よりも石破新首相のもとでの改憲発議を阻止するとともに、軍事費増額、沖縄・南西諸島をはじめとした軍事基地の強化、米軍主導下での日米軍事一体化などに反対していくことが一番の課題である。総選挙を通じて、軍拡・改憲反対の主張を大きく拡げ、運動を強化していかなければならない。石破新首相の提唱する「日米地位協定の改定」は、現在の米軍に従属した日米安保条約体制を「双務条約」型の二国間軍事同盟へと転換しようとすることを意味する。その試みに対して明確にNO!を突きつけなければならない。
 また、世界的に頻発する「異常気象の日常化」が端的に表現している気候危機はいまや待ったなしの状況にある。地球温暖化の主因であるCO2排出をただちに削減しなければならないが、そのためにはエネルギー消費と不要・有害な生産活動を抑制する方向へ社会のあり方を変える必要がある。石炭火力発電の廃止、工業的農業からの転換、公共交通システムの抜本的整備などが緊急に求められている。一方で、「クリーン・エネルギー」としての原発の新増設・再稼働が進められていることに対して、石炭火力も原発もない社会を掲げながら、原発反対の戦いを強めていかなければならない。
 労働者民衆の生活と権利を防衛することもきわめて大きな課題である。非正規労働者の正規化(労働者派遣法の廃止も視野に入れて)、大幅賃上げ、最低賃金の全国一律での抜本的引き上げ、消費税廃止などの実現が必要である。また、医療・水道・子育て・コロナ対策・高齢者・公共交通・教育などの公共サービスを市場メカニズムに委ねるのではなく、民営化されたものを再公営化するなど地域住民の手に取り戻し、住民自身の管理と統制のもとにおくことが求められている。さらに、労働者が自らの生活と権利を守るためには、正規・非正規を問わず、とりわけ非正規労働者の労働組合への組織化のためにとりくむことが決定的に重要である。地震と水害で大きな被害を出し、いまだに避難生活を強いられている能登の人々の日常生活を取り戻すために、政府の総力を上げるよう要求しなければならない。
 さらに、多様な生き方を尊重し、被差別の立場に置かれている人々とともに、女性、LBGTQ、外国人などに対する差別と闘い、一切の差別を許さない社会を作り出すための施策の要求とそれを実現させていく運動を強めていかなければならない。
 そして、現在の政治・経済・社会システムの根本的な転換=オルタナティブな社会をめざす闘い(エコロジー的で社会主義的なプロジェクトの再構築)は、全く新たな、資本主義とは決別した社会のイメージを提示することができ、そこに至る要求と闘争の道筋を示し、現にそうした闘いや運動の先頭に立つことのできる、労働者・民衆から信頼を受ける左翼の再生が不可欠である。それは直線的に進むものではなく、いままでの枠組みを超えた広がりと内容を持って、多様な形で追求されるべきものである。総選挙を通じて問われている核心的な点は、まさにそのことなのである。

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