非常戒厳宣布以降の政局の性格と労働者階級の課題について(2)
ヤン・ジュンソク
この暗闘によって、状況は尹錫悦にますます不利になった。それは何よりも韓東勲との葛藤のためだった。韓東勲は尹錫悦の最側近だったが、政治の世界に飛び込んだ後、金建希疑惑の解決策を巡って、尹錫悦との意見の違いが生じた。その後、尹錫悦と韓東勲との関係は極めて悪化し、国民の力内の韓東勲勢力が金建希特検法の再議決に参加する可能性がますます高まっていた。
もう一つの要因は、尹錫悦の大統領選挙に深く関与した政治ブローカー・明太均氏に関連した出来事だった。10月31日、尹錫悦の違法な政治介入を示唆する録音ファイルが公開された。12月2日には、拘束された明太均が自分の携帯電話を民主党に提供するとして、尹錫悦と金建希に対して強い圧力をかけた。
これらの出来事は、戒厳令を宣言した12月3日に至るまで、尹錫悦の政治的危機がいかに深刻化していたかを示している。しかし、尹錫悦の政治的危機が45年ぶりの非常戒厳令に直結したのではない。その間にも、多くの出来事があった。尹錫悦個人の傾向と気質も考慮すべき重要な要素だ。しかし、より重要なのは、尹錫悦が自らの危機を打開するために非常戒厳令という選択をする上で影響を与えた社会的・政治的変化だろう。
2) ファシズムの残骸の上で極右勢力の再成長
1980年の光州民衆抗争から始まり、1987年6月の民衆抗争で頂点に達した労働者・民衆の民主主義闘争は、軍事政権と癒着したブルジョア保守野党の裏切りに阻まれ、完全な勝利には至らなかった。表面上の民主主義のみ獲得され、軍事ファシズムの完全な清算はされなかった。日本統治時代には親日勢力の主流をなし、軍事政権時代には朴正煕・全斗煥を支えた極右勢力は、1987年の形式的な民主化後も、軍隊・警察・行政・司法など国家機構の各所で強力な基盤を維持していた。ファシズムの残滓は「1987年体制」という限られたブルジョア民主主義の中に浸透し、持続した。
1990年の全斗煥・盧泰愚の民主正義党、金鍾泌の民主共和党、および金泳三の統一民主党間の妥協をつうじて、つまり、軍事政権の主役と保守野党の穏健派の結合をつうじて、(今日の国民の力の源流の)民主自由党が発足した。当初は軍事政権の後継者らが民主自由党の主流だったが、1993年に金泳三政権によって軍部内のハナ会勢力が排除され、1995年に全斗煥・盧泰愚が5・17クーデターにおいて内乱罪で処罰され、主導権は保守野党出身の共和主義保守派に移った。指導部を失い、核心が崩壊した軍事政権の残留勢力は、政治的生存のために共和主義保守派へと変貌を遂げた。
1997年のIMF経済危機に前後して金大中が率いていた保守野党の急進派が新自由主義中道右派に再編する際、(軍事政権残留勢力を包括した)共和主義保守派は新自由主義右派となった。その後、それぞれの勢力は1998年の金大中政権から2024年の尹錫悦政権まで、資本家政党という根本的な本質だけでなく、新自由主義攻勢を推進する核心政策においても類似する支配勢力となった。
しかし、二つの勢力は完全に同じではなかった。新自由主義右派が政権を握るたびに、その中に内在する極右的性質が露わになり、労働者・民衆をさらに激しく攻撃することが繰り返された。2009年の双竜車ストライキに対する殺人的な鎮圧、2010~12年の金属産業民主労組に対する攻撃、李明博・朴槿恵政権の際に継続したKBS―MBC放送支配、朴槿恵政権時代の文化界の拒否リスト、2015~2016年の朴槿恵政権の労働改悪攻勢、2022~2024年の尹錫悦政権の貨物連帯・建設労組などに対する無慈悲な弾圧はその代表的な例だった。
政府による極右的攻撃は、労働者・民衆から激しい反発を招いた。2016~2017年に朴槿恵退陣闘争が行われ、最終的に弾劾に至ったのは、李明博・朴槿恵政権の極右的攻撃に立ち向かった労働者・民衆の反撃が蓄積され、それが結集した結果だった。
しかし朴槿恵の弾劾は、再び極右勢力が新たに成長する反作用を生み出した。2017年3月、憲法裁判所で朴槿恵の弾劾が最終的に決定される頃、極右勢力が結集した勢力が街頭の主導権を握った。1997年以降、20年間、新自由主義右派という外見に封印されていた極右勢力の声が、軍部によるクーデターを主張し始めた。極右勢力の再成長は全光焄に代表されるキリスト教福音主義右派が主導し、それに予備役軍将校など軍事政権の末裔が結集した。極右勢力の勢いは文在寅政権を通じて持続し、極右勢力の大衆的基盤を維持・拡大する上で、極右ユーチューバーと不正選挙陰謀論が中心的な役割を果たした。
極右勢力は2020年の総選挙などで独自の政治勢力化を試みたが、たった一人の国会議員も生み出すことができなかった。しかし加入戦術をつうじて、国民の力内での影響力の強化にある一定の成果を納めた。国民の力に対する極右勢力の影響力強化は、しばらくの間、李俊錫らに代表される共和主義保守派の影響力拡散と並行して行われた。検察という核心的な官僚組織を率いた尹錫悦は、国民の力の大統領候補となり、極右勢力の中心に浮上し、共和主義保守派の外皮を被って大統領選挙を行った。尹錫悦は執権直後に李俊錫を追い出し、極右勢力の本性を露呈した。それ以降、国民の力の主導権は尹錫悦を中心とした極右勢力に確実に移った。
その後、尹錫悦は露骨に国民の力の代表選挙に介入し、代表に辞任を強要するなど、違法で反共和主義的な党務介入を続けた。しかし、親尹系という名のもと、国民の力の多数の政治家は尹錫悦を支持し続けた。2023~2024年、尹錫悦が公式の席上で「反国家勢力撲滅」を繰り返し叫び、極右勢力の声をますます露骨に代弁する一方で、親尹系も共和主義保守派の外皮を脱ぎ捨て、極右勢力の本性を露骨に現していった。
このように、尹錫悦の12月3日親衛隊クーデターは、個人的な動機を超え、社会構造という大きな枠組みで見れば、軍事ファシズムの残骸を背景として、2017年以降に極右勢力が再び成長してきた社会・政治的変化を反映する事件であった。12月3日のクーデターは、軍事ファシズムの復活という極右勢力の潜在的な願望がそのまま実行に移された事件といえる。
3) 世界的な極右勢力の台頭との関連性
尹錫悦の12月3日親衛隊クーデター、そしてその社会的基盤となった2017年以降の極右勢力の再成長は、過去10年間に米国をはじめとする国々で極右勢力が台頭してきた世界的な傾向とどのような関連性があるのだろうか。
まず指摘できるのは、米国と同様に韓国でも、キリスト教原理主義、すなわち福音主義右派が最近の極右勢力の成長に主導的な役割を果たしてきたという点だ。韓国の福音主義右派は、集会において太極旗や星条旗とともにイスラエルの国旗を掲げ、差別禁止法反対運動を激しく展開してきた。これは米国において福音主義右派が強力なシオニズム支持勢力であり、性的少数者嫌悪勢力として機能していることと一致する。
不正選挙陰謀論が極右勢力の論理で重要な部分を占めている点も、米国やブラジルで現れた現象と一致する。尹錫悦の12月3日親衛隊クーデターは、「不正選挙の真相究明」を主な名目の一つとして掲げたという点で、不正選挙を主張した2021年の米国議事堂暴動、2023年のブラジル議会・大法院・大統領府暴動と似た性質を持つ。
しかし、そこには重要な違いもある。世界的な極右勢力は、おおむね資本主義危機の深刻化に伴う労働者・民衆の経済的貧困化を背景として、逆説的に最も大きな原動力を得てきた。トランプの再登板が示すように、多くの国で極右勢力が幅広い社会的基盤を獲得している。極右勢力の執権は、労働者・民衆に対する極端な社会経済的攻撃を意味するが、ブルジョア民主主義自体を全面的に否定するファシズムには進化していない。
これとは対照的に、韓国における極右勢力の台頭は、未だファシズムの残滓と結びついた政治意識の要素が最も重要な役割を果たしている。その社会的基盤は、過去の軍事ファシズムを懐かしむ60代以上の世代だ。軍事ファシズムの歴史と残滓を背景に、極右勢力の成長が中間過程を省略したまま、12月3日親衛隊クーデターのようなファシズム復活の試みへと急激に発展していった。
12月27日
(「社会主義に向けた前進」より)
【次号へつづく】
朝鮮半島通信
▲朝鮮のミサイル総局は1月6日、新型の極超音速中距離弾道ミサイル(IRBM)の発射実験を金正恩総書記の参観のもと行った。
▲金正恩総書記は1月7日、黄海南道載寧郡で行われた工場の竣工式に出席した。
▲高位公職者犯罪捜査庁などの合同捜査本部は1月7日、ソウル西部地裁に再請求した尹錫悦大統領の逮捕状が同日に発付されたと発表した。
▲収賄罪や政党法や政治資金法違反の罪で起訴された共に民主党前代表の宋永吉氏の判決公判で、ソウル中央地裁は1月8日、懲役2年を言い渡した。
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