尾澤孝司さん 獄中生活を語る
韓国サンケン労組支援を
裁判闘争にも勝利する!
全員解雇を
絶対許すな
3月19日、東京・葛飾区の堀切地区センターで、昨年5月のサンケン電気への要請行動で不当逮捕された尾澤孝司さんの報告を聞く集会が開かれた。主催は「尾澤孝司さんを支える会」。3階のホールに支援者ら約70人が集まった。
埼玉県新座市に本社を置く「サンケン電気㈱」は東証1部上場。主に半導体を製造する電気機器メーカーである。1973年、韓国に100%出資の子会社「韓国サンケン」を設立し、安い労働力と税制優遇を受けて成長してきた。サンケンは労働組合つぶしを狙い、2016年に組合員を全員解雇。しかし遠征闘争など国境を超えた労働者の力で解雇を撤回させ、組合員は職場復帰を果たした。そして2020年7月、サンケン資本は一方的に韓国サンケンの会社解散・廃業を発表した。「コロナ感染防止」の名目で現地の労働者が日本に来られないことを狙った手口だった。
面会を求めた
行動で逮捕!
2021年5月6日。韓国の公的機関である慶南道地労委が、労使双方で話し合い解決をするよう和解勧告を出した。支援者らはサンケン本社の責任ある部署に伝えようと、現地に赴いた。面会を求め会社側と応酬をするうちに、「警備員に身体が触れた」と「暴行罪」をでっち上げられ、パトカーに乗せられた。
5月21日には埼玉県警捜査員13人が尾澤さんの自宅へ押し入り、6時間に及ぶ家宅捜索を強行した。妻の邦子さんは抗がん剤治療中で、体調が悪いにもかかわらず放置された。
集会は午後2時ちょうどに開会した。まず司会者が発言した。
「昨年の8月10日に支える会が結成され、尾澤さんの釈放を求めて各地に申し入れてきた。多くのカンパが集まり多くの人が集まった。今日配布した埼玉地裁金子大作裁判長あてのハガキと署名への協力をお願いします」。
尾澤孝司さんが登場した。「実は私はサンケンの闘いについては、地域であまり宣伝しなかった。逮捕されてから葛飾の皆さんが動き始めてくれた」。尾澤さんはレジメを用意して読みながら、7カ月半の獄中生活について穏やかに語り始めた。(発言要旨別掲)
この日プログラムで予定されていた浅野史生弁護士の発言は、事務所の都合で急きょ中止となった。
KBS制作
記録ビデオ
ビデオ上映が始まった。韓国KBSテレビが制作した『日本へ走れ』は、サンケン電気の不当労働行為を許さず、国境を超えて連帯する労働者の日々を追ったドキュメンタリー作品だ。作中では人々の一糸乱れぬ闘いの様子が押し出される一方で、終わりの見えない運動に苦悩する争議当事者の姿も映し出している。「韓国では公共放送が労働争議を取りあげている。日本のメディアも取材してほしい」と孝司さんの妻邦子さんは話している。
連帯のアピールが出された。「韓国サンケン労組を支援する会」の東風徹さんは、「尾澤さんは毎週木曜日の抗議行動に必ず参加していた。事件の当日は、もしかすると逮捕かとも思った。もしあの時、現場にいた人全員で抗議したら全員が逮捕されそうな雰囲気があった。尾澤さん一人を逮捕させてしまったことを悔やんでいる」。
「毎週木曜日の要請行動にぜひ駆けつけてほしい。朝7時からサンケンの本社前で、9時から志木駅南口で、12時から豊島区南池袋のサンケン電気東京事務所前で行っています」。東風さんは支援を訴えた。
「2022葛飾憲法集会実行委」の吉沼紀子さんは、「尾澤さんが逮捕された時、私はたいした罪ではなく、すぐ無罪になり釈放されるだろうと軽く考えていた。ところが7カ月半も拘束された。これはひどい。これからの裁判で皆さんと共に無罪を勝ち取りたい」と怒りを露わにした。
人々に届く
言葉探して
会場からの発言を受けた。ある男性は「昔はスト権ストなどで警察と取っ組み合いをやっても逮捕されなかった。尾澤さんのケースは、まず逮捕ありきだったのではないか」と話した。
質疑応答が始まると、会場の女性が今回の報告に触れ、「弁護士はご自分で呼んだのですか。取り調べではどのレベルで黙秘をしていたのか。獄中で会った若い人は労働争議を知らなかったというが、ならば私たちは、これからどう活動していけばいいか」などと素朴な疑問を口にした。
これに対し尾澤さんは「弁護士は救援連絡センターを指定して刑事に電話をさせた。有名な語呂合わせの電話番号で、昔から市民運動の救援を続けている」。「警察は雑談を仕掛けてくるが、一切応じない。ただ勾留理由開示請求の時だけは住所と名前を告げた。それ以外は黙秘した」。「人々にどう訴えるかは、難しい問題です。自分たちの姿勢として、常に相手に届く言葉で訴えていくこと。言葉は街頭で見つけていく以外にない」。「自公はキャッチコピーがうまい。電通など大手広告代理店と
日々研究している。言葉は闘いの中で生まれてくるものだ。心に響く言葉は、私たちが実践の中で作り出していくしかない」。
巨大資本の見
せしめ弾圧だ
「支える会」の仲間から行動提起があった。「釈放に向けた私たちの署名活動の中で、裁判所の対応が変わり、釈放への実感がつかめた。全国から寄せられたカンパで保釈金が賄われた。裁判費用カンパを今日手渡した」。
サンケン電気は世界各国に工場や支店を持つグローバル企業である。今回の事件は、そうした大企業に楯突く者には容赦をしないという、資本と公安警察が一体となった見せしめ的な弾圧であり、韓国での粘り強い闘いや本社前の闘争に対する報復攻撃でもあると、尾澤さんは見ている。起訴された罪名は虚構のものであり、一連の行動は労働争議の手順を踏んだ正当かつ合法的なものである。
尾澤さんは「裁判と現場の闘いは車の両輪だ」として、今後の闘いを展望する。6月のサンケン株主総会へ向けて、さらにメインバンクである「りそな銀行」や大口株主へも、働きかけを強めていく。社長や会長宅への訪問行動も続ける決意だ。
日韓連帯運動の象徴的な存在である尾澤孝司さんへの、圧倒的な支援と連帯を。
(桐丘進)
尾澤孝司さんの報告
長期拘留にどう立ち向かうか?
署員総出の
お出迎えも
5月10日に「暴行罪」で逮捕された。同月31日に「威力業務妨害」が追加され起訴された。新座署に護送されたら50人位の人がいてびっくりした。逮捕者の管轄への受け入れは署員総出で迎えるらしい。取り調べは新座署のベテラン刑事がした。昼飯は吉野家の牛丼だった。その日のうちに弁護士接見ができた。私は逮捕日も防衛省行動などやらなければならない予定があって、それが中断されて仲間に迷惑をかけ、申し訳ない気持ちになった。
獄中医療と
健康の維持
新座署に10月11日までいた。食事はパン、仕出し風の弁当など炭水化物ばかり。運動をしないので太り過ぎが気になり、食事を残すこともあった。就寝時の点呼は大声で行う。支配と被支配の絶対的関係性を再確認する態度で強いる。風呂は5日に1回。新聞は回覧で産経、本は警察で用意した官本。先日他界した西村京太郎を読んだ。
自分は血圧が高く降圧剤を飲んでいたが、黙秘していたので要求しなかった。起訴後にすぐに薬を要求した。これまでと同薬だったが身体を動かさないから薬が効きすぎて、立ちくらみを起こした。医者に言って徐々に薬を減らし血圧を調整した。看守とは時おり雑談もするが、一度でも文句を言うと懲罰となる。
10月11日から12月27日の釈放まで、浦和にある「川越少年刑務所さいたま拘置支所」で過ごした。医療については申し出るが、医師の診察の前に医務係が横やりを入れ妨害する。入所時に一通りの検査と簡単な問診がある。しかし検査結果も知らされず、手続きとしてやっているだけ。食事は警察署より良くなった。ラジオも聴け、クリスマスにはケーキも出た。しかし抜き打ちの持ち物検査などもあり、基本的には暴力を背景にした抑圧支配と懲罰・支配従属体制を貫き、抗弁・反抗は絶対に許さないという体制だ。
若者との交流
から考える
留置場では24歳の若者と出会った。覚せい剤の売買で収監され、3カ月間私と一緒にいた。家が貧しく親も服役経験があった。房内でお互い自分のことを話した。私は30ページに及ぶ解説文を書いた。「人にわかる言葉で話す」こととはどういうことなのかと考えた。労働争議をまったく知らない若者だったが、出所したら支援をしてくれると言った。新座署での5カ月間は長いとは感じず、むしろ有意義だった。
獄中では、家族や支援する会、友人のことを考えた。獄外からの激励行動は、かすかだが房内に聞こえてきた。毎日掃除をし、身体を動かすことを心掛けた。公判準備、読書計画、学習計画を立てること。手紙や原稿書きをすること。できることとできないことをちゃんと区別する。仲間を信頼する。そういう力を持つこと。自分を焦らず、獄外と獄中を通じて自分を変えないこと。精神的肉体的にそれを実践すること。
(発言要旨、文責編集部)

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