女川原発の9月再稼働反対!
7.7現地での講演会に550人、町内パレードで訴える
【宮城】女川原発2号機の再稼働が9月にせまっている。7月7日、女川町内で「再稼働を考える講演集会」が開催された。実行委員会が主催、「さようなら原発みやぎ実行委員会」が共催した。
当日、多くのスタッフが会場の内外で設営や誘導にあたった。JR石巻線やチャーターバスなどを利用して参加者が各地からかけつけた。町内外から550人が参加した。開会を待つ人たちで会場ロビーはあふれ、開場予定時刻が繰り上げられるほどだった。
黙っているわけにはいかない!
司会は長らく女川町議会議員として活躍してきた阿部美紀子さん。阿部さんは「原発のまち/50年のかお」と題する写真集を編集、刊行。朝日新聞が大きく報道した(「女川闘争伝える写真集に脚光」4月9日)。「今こそ、招かれざる原発だったという歴史を知ってほしい」「地元で今も再稼働に反対している人が大勢いることを知ってほしい」など、阿部さんの声が紹介されている。貴重な写真データは壊滅的な津波被害から「偶然の重なりで生き延びた」ものだった。
実行委員長の開会あいさつは同じく元町議会議員の高野博さん。「避難したくてもできない、巨大地震がいつ起きるかもわからない」「能登半島地震が突きつけた現実を無視して9月再稼働が進められている。黙って認めるわけにはいかない」。
「核のゴミ」の最終処分地問題では玄海町議会と町長が調査受け入れを決めた。「原発立地自治体の責務」を問題提起したという。一部の女川町議にも呼応する動きが出始めていると報じられた。高野さんは再稼働が「核のゴミ」の受け入れへとつながっていく危険性を指摘し、受け入れられないと強調した。
原発を抱える町での暮らしには言いたいことも言えない重圧がある。「町内パレードでは住民たちを励ましてほしい」。その訴えには地元住民としての感慨が込められていた。
気鋭のジャーナリストに
場内から連帯の拍手
講演はジャーナリストの青木美希さん。前日、仙台の書店に立ち寄った際、新書『なぜ日本は原発を止められないのか?』が平積みされていたことを紹介、関心の高さを感じたという話から始まった。
テーマの前半は大震災の女川と福島、そして能登半島地震と志賀原発。青木さんはまず、地震当時、福島からきて女川原発で働いていた労働者とのインタビュー動画を紹介した。そこで語られていたこと、そして当時の資料が示したのは〈地獄絵図のような被災状況〉であり、女川原発が奇跡的に大事故に至らなかったことをはじめ、何が起きたかを再認識させるものだった。原発建屋への住民避難にしても、地震と津波によって海岸線や半島の道路は寸断され、脱出は不可能であり、そこに駆け込むしかなかった。
大震災後の混乱のなかで、破綻した福島原発と対比させて〈大震災を乗り越えた女川原発〉というストーリーを語る人たちがいた。〈被災住民の避難場所となった女川原発〉を美談として語った人たちもいた。インタビューによる証言は女川原発をめぐる当時の争点にせまるものだった。
地震後の能登半島の現状と志賀原発については青木さんが撮影した映像も使いながら説明、規制委員会の対応の変化も指摘された。
「原発ゼロで生きる方法」
後半部分は「原発の新増設と電気代」「余剰電力と再エネの無駄」「核兵器と原発」など項目の紹介にとどまった。講演会の表題になっている「原発ゼロで生きる方法」に関しては、宮城県内の再生可能エネルギーの状況についても時間の都合で大半を省略せざるをえなかった。特にこの間、風力や太陽光発電など企業の一方的な姿勢や環境破壊に対する住民の抗議が県内各地で起きて社会問題になっているだけに、時間が足りずに講演終了となったことが惜しまれる。
青木さんは講演会当日も資料の追加作成を続けていたという。その取材活動と熱弁に対して参加者たちは感謝と連帯の拍手を送った。
集会決議を採択
町内パレードへ
講演を受けて女川原発再稼働差止訴訟原告団の原伸雄団長があいさつ。能登半島地震は差止訴訟の中心テーマである〈避難できないという現実〉をリアルに示した。原発への不安がふたたび広がっている。自分がこの本を読むだけではなく、周りの人たちに紹介しよう。粘り強く訴え、世論を大きく変えていこうと呼びかけた。
9月再稼働に反対して女川町内をはじめ県内各地で取り組みがつづく。実行委員会から今後の予定について説明があり、最後に集会決議が採択された(注)。
決議文の最後は次のように記されている。「主権者は私たちです。私たちが多数派になれば、原発ゼロの社会を実現することが可能です。希望をもって頑張りましょう。ご一緒に声を上げましょう」。
講演会の後、参加者たちは整然と炎天下の町内パレードに出発した。
会場が併設されていた町役場庁舎は海(女川漁港)が見下ろせる高台に位置し、JR女川駅、公立小中学校と隣接している。女川は「海が見えない防潮堤で町を守る」のではなく、高台移転による新しいまちづくりを選択した。様々な復興プロジェクトが模索され「公民連携」とも称された。海へとつづく坂道は中心街のにぎわいを象徴する景色としてメディアで多く紹介されてきた。しかし、そのような番組が「招かれざる原発」によって分断され苦しむ女川を取り上げることはあっただろうか。
(注)決議文に掲げられた五項目の要求(一部簡略)
①女川原発2号機は被災原発であり、老朽原発です。事故を起こした福島原発と同じ沸騰水型で、危険のリスクは大きく、再稼働などとんでもありません。東北電力に廃炉を求めます。
②宮城県と立地自治体には「地元同意」の取り消しを求めます。原子力規制委員会には、能登半島地震の新しい知見に基づき、さらなる海底活断層の調査を行うこと、耐震安全性の再審査を求めます。
③県に、専門家による安全性検討委員会を再度設置し、海底活断層の連動性や地盤の隆起・沈降を含めた知見に基づき、安全性の検証を求めます。
④原発災害を含めた複合災害時に、本当にバスが配置されるのか、退域時検査場所が開設できるのか、県や関係自治体に避難計画の抜本的見直しを求めます。
⑤女川をなし崩し的に「核のゴミ」捨て場にすべきではありません。
宮城県は、乾式貯蔵施設の説明会を開催し、県民の声を聞くべきです。
東北電力に、乾式貯蔵施設をつくる前に、使用済み核燃料を次々と増やす、女川原発2号機の再稼働の中止を求めます。
(付記)6月下旬、東北電力の株主総会があった。9月再稼働という重大局面がせまるなかでの総会だった。東北電力は能登半島地震による「新しい知見は報告されていない」などと主張、再稼働中止を求める「脱原発」の株主たちに向き合うことはなかった。一方、7月に東北電力が開催した地元住民への説明会では「避難」の不安や漁業への温排水の影響を懸念する声があがったという。
(仙台/U・J)
再稼働中止を訴えるパレード(7.7女川)
女川を「核のゴミ」捨て場にするなとアピール(7.7女川)
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