「関心領域」を観た
投書 映画紹介 監督:ジョナサン・グレイザー
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「関心領域」(監督:ジョナサン・グレイザー、原作:マーティン・エイミス「関心領域」早川書房刊、原題:THE ZONE OF INTEREST、2023年、アメリカ・イギリス・ポーランド映画)を観た。
アウシュヴィッツ収容所の司令官ルドルフ・ヘス(クリスティアン・フリーデル)とその妻ヘートヴィヒ・ヘス(ザンドラ・ヒュラー)らは、収容所の壁が見える「庭付きの家」で暮らしている。ルドルフは、ユダヤ人の焼却に「かかわっている」。ヘートヴィヒは、ユダヤ人から略奪した品物を手にしてうれしそうだ。家には銃声やゴーンという音が聞こえてくる。
だが、ルドルフやヘートヴィヒらは、ユダヤ人の苦しみには「無関心」だ。彼らにとっては、収容所の壁が見える「庭付きの家」は「楽園」なのだ。映画の最後の方で、アウシュヴィッツ収容所の現在の映像がうつしだされる。清掃の場面だ。そして映画は終わる。
ここで描かれていることは、現代の私たちには無関係だといえるのか。パレスチナ人虐殺や朝鮮人差別などに「無関心」な日本人は、ルドルフやヘートヴィヒらとどこが違うのか。西側はこれでいいのか。世界はこれでいいのか。無関心は犯罪だ。この映画は、ユダヤ人虐殺と同時にそれらのことを批判しているのではないか。私はそう思った。
【追伸】私は、ナチス・ドイツの犯罪を相対化しようとする目的でユダヤ人虐殺と「他の犯罪」の類似性を指摘することには反対だが、「他の犯罪」にも光を当てる目的でユダヤ人虐殺と「他の犯罪」の類似性を指摘することは支持する。パレスチナ人虐殺を正当化するためにユダヤ人虐殺を口にすることに反対する。
(2024年7月27日)
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