鹿児島県警内部告発逮捕事件
7.13「最近の警察はどうなっているのか」
寺澤有さん(ジャーナリスト)が語る
【東京】7月13日午後2時から、雑司ヶ谷地域文化創造館で、「最近の警察はどうなっているのか」~鹿児島県警・内部告発逮捕事件、茨についてジャーナリストの寺澤有さんによる講演が草の実の主催で行われた。 (М)
呼びかけより
~鹿児島県警の本田尚志生活安全部長が、「鹿児島県警職員の犯罪行為を野川明輝本部長が隠蔽しようとしたことが、一警察官としてどうしても許せなかった」と告発。
ところが逆に国家公務員法違反(守秘義務違反)として県警に逮捕された。内部告発者つぶしであり、しかも関連メディアに捜査が入ったという。
大問題だが、発覚しただけ少しはマシと言えるかもしれない。
また茨城県警でも事件が起きた。筑波大学の国際政治学者・東野篤子教授に対し、「見た目からしてバケモノ」「ヒステリーババア」などと中傷するツイートをしていた県警管理職がいる。東野教授は今年4月に侮辱の疑いで刑事告訴し、受理されている。
そうかと思えば、警視庁代々木警察署地域課の警部補が、事情を聞いていた20代女性を床に押し付けるなどの暴行を加え逮捕された。
また、同居する自分の父親を数十発なぐって逮捕された警官・・・・。
警視庁公安部が事件をでっちあげた大川原化工機(株)の問題も残されたままだ。
いったい警察はどうなっているのか。
警察問題といえばジャーナリストの寺澤有氏。彼に最近の警察について語ってもらう。
寺澤有さんの分析提起から
寺澤さんは事件を報道した「読売新聞オンライン」を読み上げた。 「内部文書漏えいで鹿児島県警・前生活安全部長を逮捕」、「事件処理簿の流出調査で発覚」。
警察の内部文書を外部に漏えいしたとして、鹿児島県警は31日、県警前生活安全部長の本田尚志容疑者(60)を国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで逮捕した。本田容疑者は3月に定年退職し、在職時の階級は警視正だった。県警では5月にも、捜査情報を外部に漏らした地方公務員法(守秘義務)違反で巡査長が起訴されており、県警は「抜本的な対策を進める」と謝罪した。
本田はノンキャリアも警視正になると国家公務員になる。情報を漏らしても、国家公務員違反になる。巡査長は地方公務員なので、同じように情報漏らしても地方行員法違反になる。鹿児島県警の組織について説明しておく。五つの部がある。生活安全部は何をやるか。交番業務、ネット犯罪、パチンコ・性風俗・警備会社の許可。これは警察の利権・天下り先になっている。鹿児島県警に採用された人はノンキャリアは、鹿児島県警本部長にはなれない。部長クラスまで。キャリアという警察庁に採用された総合職試験に受かった人がトップになる。今回逮捕され・起訴された本田は地元採用の警察官としてはトップまでいった。警察官は全国に約30万人いる。毎年採用されるキャリアの25人が牛耳っている。ナンバー2の西畑知明・警務部長は国土交通省からきた人で、「チーム霞が関」の利益のために動いている。
守秘義務違反なのか
続いて、「読売新聞オンライン」を読み上げて、事件を紹介した。
内部文書は部長だった同月から24年3月までに入手したとみられ、一般人と警察官各1人分の氏名や年齢などの個人情報が含まれていたという。…県警は3月、100件を超える事件の個人情報が流出した可能性があると発表。…捜査情報を福岡市の会社役員男性(60歳代)に漏らしたとして、県警の巡査長、藤井光樹被告(懲戒免職)を4月に地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで逮捕し、その後起訴された。…容疑者の氏名や事件の対応状況を記載した「告訴・告発事件処理簿一覧表」などが流出しており、藤井被告が95事件304人分の個人情報を流出させたことが判明した。
…本田容疑者は内部文書を郵送した際、自身ではなく、別の警察関係者の連絡先などが記載されていた文書を同封していたという。今回の事件について、県警は本田容疑者は藤井被告とは共犯関係にないとみている。県警は、本田容疑者が内部文書を郵送した第三者と福岡市の会社役員が同一かどうかは「捜査に支障がある」として明らかにしていない。
このニュースを見ても、何で逮捕されたのか分からない。何が守秘義務違反なのかその中身について明らかにしていない。些細な情報漏えいで前生安部長を逮捕するなど絶対にありえない。内部情報を外に漏らすなんてことは警察は日常茶飯事で行っている。企業でもどういう人なのか、警察のルートを使って調べる。天下りはそうした情報を得るために行われている。
裏にとても大きなことがあるだろうなと一報を知った時に思った。
ニュースサイトがターゲット
5日後に、6月6日、本田前部長の拘留理由開示裁判が開かれた。この時に、明らかになってきたことがある。本田容疑者は県警を退職した直後の3月28日頃に、札幌市在住のライターに、県警が捜査したストーカー容疑事案を郵送し、職務上知りえた情報を漏らした疑いがあると説明した。これは小笠原淳さんしかいないと思った。北方ジャーナルで北海道警察の不祥事を追及しているライターだ。HUNTERという福岡にあるニュースサイト。ここも警察の不祥事を良く書いているニュースサイトだ。そこに小笠原さんは寄稿している。
福岡市の会社役員はHUNTERの経営者なんだなとだんだん事件が分かってきた。北方ジャーナル事件。1986年に、最高裁大法廷で、名誉棄損だと書かれた人が裁判所に訴え出て、裁判官が名誉棄損だと思うと判断したら、出版差し止めができる、という判決が出された。読者が読む前に裁判官が判断して名誉棄損だと判断したら、出版差し止めできるとした驚くべき判決だ。これが未だに有効だ。その判決の当事者が北方ジャーナル。
何日かしたら、小笠原さんの名前が出るようになった。北方ジャーナルの7月号に、小笠原さんが経緯を書いている。本田さんは鹿児島県警の不祥事に関する情報を匿名で小笠原さんに送った。小笠原さんは福岡市の会社役員はHUNTERの経営者にPDFファイルを送って、情報を伝えた。HUNTERは鹿児島県警の不祥事をずっと記事にしていた。HUNTERのネタ元が先に逮捕された警察官の藤井さんだ。HUNTERも同時に家宅捜査された。むちゃくちゃひどい話だ。こんなことが許される時代になったのか驚くべきことだ。相変わらず、厳しくテレビや新聞が批判しない。
家宅捜索をした時に、小笠原さんがHUNTERの経営者に提供した本田さんからの匿名の手紙を押収していった。それによって本田さんが情報提供しているとの証拠になって、本田さんは逮捕された。これおかしな話だ。本田さんは匿名で送っていた。小笠原さんは誰からきたか分からなかった。県警が本田さんとどうして分かったのか。こういう所の本当の話が出ていない。
匿名情報はたいへんで、そこまでで終わってしまう。匿名で送ってくる情報の扱い、小笠原さんもそれが本当の情報かどうか分からないし困っただろう。
もみ消しに動く監察
この事件について最新のことを言えば、7月11日、HUNTERに情報を流していた警察官の藤井光樹さんの初公判が開かれた。本人があっさり認めて1回で結審した。本人は鹿児島県警のあり方を正したかったと言ってはいる。罪を認めて執行猶予付きの判決を求める。本田さんの前に捕まってずいぶん弱気、本当だったら公益通報にあたり無罪だ、不祥事を隠蔽した鹿児島県警は悪いと、無罪主張してがんばるべきだ。
本田さんも同じように、鹿児島県警の不祥事を小笠原さんや HUNTERに提供したことで起訴されて今後裁判になるが、今のところ本田さんの弁護士は無罪を主張すると表明している。どうなっちゃうのか。警察は非常に強大な組織。本田さんはトップにいたから、それを分かっているから、無罪を主張して、自分は内部告発した。それをもみ消した県警は悪いんだと主張した場合、今後どうなるのだろうか。本田さんも自分が在職中にやってきた悪いこと見つけ出されて、そっちで追起訴されてしまう。そういうことも考えてはいるんでしょう。最後まで闘えるか懐疑的にはみている。
本田さんに関する報道を見ていると、本田さんに関するネガティブな情報がどんどん出てきている。地方公務員法違反で逮捕しながら、自分たちは堂々と地方公務員法違反をやっている。これは絶対おかしいと小笠原さんは話していた。警察は自分たちに都合の悪い情報を報道機関に報道されると家宅捜索までして、内部告発した人間を逮捕する。一方警察に都合のよい情報は情報漏えいさせて書かせる。今までのえん罪事件でもすべてそうだった。
鹿児島県警の本田さんが逮捕されたり、藤井さんが逮捕されたりとか、鹿児島県警は他にもずっと不祥事が続いている。本田さんの逮捕で、本田さんはよい人ではないかと盛り上がっているので、警察庁はまずいと、警察庁から鹿児島県警を特別監察するということで、警察庁の主席監察官という人たちが鹿児島県警に行った。
監察に関してもすごく誤解がある。警察内部の不祥事を取り締まるという監察という部署がある。取り締まるというのは嘘っぱちで、監察がすべてもみ消している。日本の警察は国家警察で、監察官も警察庁にお伺いをたててやっている。これは鹿児島県警の犯罪隠蔽ではなくて警察庁ぐるみだ。こうした観点がマスコミにはまったくない。
(発言要旨、文責編集部)
警察の犯罪を暴く寺澤さん(7.13)
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