9.23老朽原発動かすな!高浜全国集会
複合災害対策が急務だ
【大阪】老朽原発の稼働に反対する全国集会が9月23日、福井県高浜町の高浜町文化会館で開かれ、350人の市民が参加した。集会に先立ち、約200人で高浜原発前抗議行動が取り組まれ、老朽原発高浜1・2号機と美浜3号機の停止、また近々運転開始後40年越えの老朽原発となるトラブル続出の高浜3・4号機の稼働断念、既存の使用済み核燃料の処理・処分・保管に関して広範な議論の開始などを求める申し入れ書を手渡した。
福島第一原発事故の現地は、未だ「原子力緊急事態宣言」下に置かれている。もし珠洲原発がつくられていたら想像を絶する事態になっていただろうと、本年初めの能登半島地震は、改めて地震と原発の複合事故に対する認識を喚起させた。このような場合避難はほとんど困難である。
新ロードマップ提示できぬなら、老朽原発停止?
関電は本年5月原子力規制委員会から高浜3・4号機の40年越え運転の認可を得ているが、МОX燃料を使用する原発の40年越え運転は全国で初めてだ。老朽原発では交換不可能な圧力容器の脆化が進み、点検や交換が難しい配管、送電ケーブルの損傷も進んでいる。さらに、原発を動かせば、行き場のない使用済み核燃料がさらに増えることになる。関電は2021年、福井県と「使用済み核燃料の中間貯蔵施設を2023年末までに県外に探し、探せない場合は老朽原発を停止する」と約束していたが、未だに施設候補地は見出せなかった。関電は23年10月10日に、再処理工場の活用・新たな中間貯蔵施設の確保を盛り込んだロードマップを発表し、これを福井県知事は3日後に容認した。これが出来レースであることは言を待たないだろう。一方、日本原燃は8月23日、青森県の六ヶ所再処理工場の27回目の完成延期を発表した。これを受けて関電は、昨年発表したロードマップを「24年度末までに見直す。実効性ある見直しができない場合は、老朽原発1・2号機、美浜3号機は運転しない」ことを表明した。関電社長と面談した福井県知事はロードマップ見直しの提案を受けて9月6日、「期限内の実効性あるロードマップが示されない場合には、使用済み核燃料を原発構内に一時保管する〈乾式貯蔵〉を認めない」と述べ、県議会、立地町、県の原子力安全専門委員会などを経て県が了承しなければ、老朽原発3機は止まるとの認識を示した。この福井県知事の認識をストレートに信用することはできないが、県民の圧力を受けていることは確かだろう。
電力大量消費地は老朽原発廃炉を!
主催者団体代表の中嶌哲演さんは、「関電が新たなロードマップの見直しが示せないときは老朽原発を停止すると表明した背後には、皆さんの現地でのビラ入れ、度重なる立地自治体議会への陳情・請願行動などあったと思う。使用済み核燃料の増加がどういう事態を招くかはフクシマが教えてくれている」と述べ、50億円と引き換えに老朽炉の稼働を認めた福井県知事・議会を批判し、「今度こそ老朽原発の稼働を止めなければいけない、電力の大量消費地関西でも、水瓶の琵琶湖が汚染される前に原発依存からの脱却を目指してほしい」と述べた。
続いて、北野進さん(志賀原発を廃炉に!訴訟原告団長、珠洲市住民)、樋口英明さん(2014年大飯原発3・4号機の運転差止、2015年高浜原発3、4号機運転差止仮処分決定の元福井地裁裁判官)の2人の講演があった。
複合災害に備えよ
北野さん:(珠洲市はかつて関西電力・中部電力・北陸電力が原発をつくろうとしたところ)今年の地震の名称は能登半島だが、地震域は新潟までを含む北陸地震と言ってもいい。(珠洲市の原発立地予定地の写真を示しながら)この場所はこの度の地震で最大5m、周辺の海岸も2mの隆起があった。能登半島地震の被害の実態はまだきちんと調査されていない。(80万年前の地形図を示しながら)そもそも能登半島は、地震と隆起を繰り返して形成されてきた。実は志賀原発の所も隆起が繰り返されてきている。北陸電力は心配ないと言っているが、能登半島全体が緩やかに隆起していて、北に行くほど高くなっている。
志賀原発敷地下の断層の問題について北陸電力はいずれも活断層ではないと言っている。規制委員会は、この断層がこの度の地震で動いたかどうかを調査し、動いていないという結論を出したが、断層が動かない断層かどうかは地震のたびに調査する必要がある。
能登半島地震では、断層のずれによる大きな揺れ、津波、火災と3つが同時に発生した大規模な複合災害が発生し、広範囲の停電・断水も起き、防災無線も使えず、防災計画も実施されていなかった。地震災害と原発災害が重なる場合を危ぐしているが、さらに水害や土砂災害などが重なる場合を想定して対策を考えなければいけないことを改めて痛感した。私達の想定は、まだまだ甘いのではないか。
脱原発の妨げは我々の心の中に
樋口さん:珠洲原発がなくて本当に良かった、一番感謝すべきは電力会社と国だ。電力会社は倒産し、国は国土を失っていた。3・11の時、1号機と3号機が水蒸気爆発の様子を見て、日本の原発はこれで終わりだと思った。その前から反原発を訴えていた人たちは、自分たちの主張が正しかったと思っただろう。だけど日本の原発は終わっていない。
なぜ終わらないか。一番大きな原因は私達の心の中にあると思う。安倍さんが、世界一安全な原発といったことをそのまま信じた人は少ないだろうが、原子力規制委員会は3・11の事故をふまえてつくられたのだから、それなりに立派な先生たちがそれなりに立派な判断をし、それなりの責任感とそれなりの賢さがあるだろうと考えた。このことが脱原発の妨げになっている。原発推進であろうが、反対であろうが原発問題は難しいという考えが広く存在する。それは間違いだ。
原発は人間が管理できなければ暴走する
原発問題は、極めてシンプルだ。人が管理し続けないと暴走する。福島事故では何があったのか。
原子炉が壊れたわけではない。地震で外部電源を喪失したが、非常用電源も停電した。原発は止めた後、燃料棒を水と電気で冷やし続けなければいけない。それだけの話だ。3・11で原子力行政トップの3人が3人とも覚悟した。だが東日本壊滅の寸前まで行きながら、幸運に幸運が重なって危機が回避された。
この経験をもとに、今の原子力政策が正しいかどうかを判断することが肝要だ。老朽原発について、老朽化した家電とか、老朽化した自動車を思い浮かべてもダメ。これらは、ダメなら運転を止めればそれでいい。しかし原発はそうではない。原発は管理しないと暴走する。この部分さえ理解しておけば判断できる。
原発コストは桁違い
電気代が上がったから原発を動かす、再稼働が言われ出したのはウクライナ戦争からだ。でもコストの問題ではないはず。東京電力の年間売上は5兆円、利益率5%で、年収益2500億円だが、福島事故での損害は100兆円、東海原発が同程度の事故を起こせば、首都圏中心に665兆円の損害見込みだ。これでは国は破綻する。福島原発の吉田所長が、日本は終わりだと思ったのはこのような意味だ。原発問題は、単なるエネルギー問題でないのは明らかだ。
ウクライナ戦争でザポリージャ原発が標的にされそうになったとき、職員は逃げ出さなかった。逃げれば原発は暴走するからだ。戦争でも最も危ないのは原発だ。我が国の原発は、我が国に向けられた核兵器と同じだ。難しい外交交渉は要らない。これを回避する気さえあればいいと思う。
福島原発の損害賠償訴訟で東京地裁判決は、原発の過酷事故は我が国の崩壊につながりかねないと損害賠償を認めたが、認めなかった最高裁は原発の本質がわかっていない。国も東電も津波の予想を知りながら考慮しなかった。日本で原発をなくすのは非常に難しいと思われている。それが成功するまでは不可能に思えるが、珠洲市の人々がわれわれを救ってくれたように、われわれもそうしたい。
全国から若狭からの声
講演の後、使用済み核燃料問題で、青森からのビデオメッセージ(核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会事務局長・中道雅史さん)、福井からの発言(原子力発電に反対する福井県民会議事務局長・石地優さん)があった。また、全国からのビデオメッセージ(さよなら原発みやぎ実行委員会・多々良哲さん、規制庁・規制委員会を監視する新潟の会・桑原三恵さん、島根原発3号機訴訟の会・芦原康江さん)があった。
特別報告として、原発住民運動福井嶺南センター事務局長・山本雅彦さん「敦賀原発2号機の廃炉を求める」、ふるさとを守る高浜おおいの会・宮崎宗真さん「若狭の現状報告」、40年廃炉訴訟市民の会・草地妙子さん「東海地方のたたかい」の発言があった。
最後に、地元若狭湾岸から東山幸弘さん、舞鶴市市会議員の小西洋一さん、京都地方労働組合総評議会の梶川憲さんからアピールがあった。全国から23団体のメッセージが紹介された。
集会後、高浜町内を約1時間デモ行進して、老朽原発うごかすな!を訴えた。デモに好意的な市民の姿があった。
(T・T)

「原発は廃炉するしかない!」(9.23)

高浜町で「老朽原発うごかすな!」のシュプレヒコールが響く(9.23)
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