投稿 9条が世界に輝くとき ①

平和を共に作り出す努力を

たじまよしお

 8月4日の東京新聞一面に「平和」世論調査のまとめが掲載されていました。「専守防衛『厳守を』68%」が大見出しとなっていました。そして次のページの下の方に「『平和』世論調査の詳報1面参照」があります。自衛隊についての設問が第「問4」となっています。

問4 自衛隊1954
年7月1日に創設され、今年で70年です。日本は第二次世界大戦で敗戦国となったため、軍隊は廃止され、その後、自衛隊ができました。あなたは今後、自衛隊はどうあるべきだと思いますか。

 憲法の平和主義の原則を踏まえ「専守防衛」を厳守すべきだ。
 68%
憲法を改正して「軍」として明記すべきだ        20%
憲法違反なので、戦力を放棄し、災害派遣に特化した組織にすべきだ         
9%
憲法違反なので自衛隊は解体すべきだ          0%
 その他             2%
 無回答      
     1%

となっています。これを見て私はとても驚きました。というのは1995年1月17日早朝に起きた阪神淡路大震災の時、当時「世界革命」の編集者であった右島一朗さんがこの三番目の、自衛隊は「戦力を放棄し、災害派遣に特化した組織にすべきだ」と同じ内容の論文を発表していたからです。
 あの震災の時は瓦礫の下になった被災者をいち早く救助したのは隣組の人たちで「○○△▽のおばあちゃんはあの辺にいるはずだ!」と素早く見当をつけて迅速に救助したのです。
 それに比べて、上からの指令がなくては動くことのできない自衛隊の皆さんはどうして良いかわからずウロウロするばかりで「この役立たずめが!」と罵られていました。そのような情勢のなかで右島さんはあのような主張をすることは大変だろうなと思いました。それで本棚の「右島一朗著作集」を開いて調べているのですが「第一章p31~第十一章p825」まではそれらしい文章は見当たりません。
 しかし最後の「右島一朗全論文総目次」の中に「災害救援に軍隊はいらない2月20日 高島義一」というのがありますので、多分これかなと思いますが、本文はありませんのでなんとも言えません。
 ところであの「2011・3・11東日本大震災」の後の自衛隊による救助活動の時、隊員の皆さんは数人でチームを組みスコップやツルハシなどを手にすることなく素手で遺体を探していました。生存確率などほとんどゼロに近いにも関わらずだったのです。
 これを見た外国のメディアは「さすが仏の国だ!」と驚愕したのでした。私もいいしれぬ感動を覚えました。あの時ジャーナリストの前田哲男さんも「自衛隊は武装解除して災害救助の組織に衣替えすべきだ」という意味のことを主張していました。
 ところで先の「問4」の中の「憲法違反なので、戦力を放棄し、災害派遣に特化した組織にすべきだ 9%」の意味は大きいと思います。
 しかし自衛隊員の皆さんはこうした状況下で何を考えておられるのか私はそれを知りたいのです。このところ自衛隊内部での性暴力のことが問題になっています。これは防衛大臣ともども責任をとって辞職すべき大問題であると私は考えます。
 その一方で、隊員の皆さんの心を荒れさせる土壌について考えることも大切であると思います。彼らの日々はたとえ専守防衛であっても「人殺しの訓練」以外のなにものでもないのです。
 しかし性暴力に遭った女性隊員の自衛隊への応募の動機は、「2011・3・11東日本大震災」の時の災害救助への隊員の献身的な姿に触れたことであったことが彼女らの証言で明らかになっています。「仏の自衛隊員が時として性暴力をふるう」この状態をどう考えたら良いのでしょうか。

暴力装置・軍隊が及ぼす精神の荒廃

 私は23年ほど前に「軍隊をすてたコスタリカ」というドキュメンタリー映画を観ました。学校での子供達の授業風景がありましたが、その騒々しいこと騒々しいこと大変な情景でしたが、子供達の表情は開放感にあふれていました。軍隊という暴力装置の存在しないことが一般市民から子供達まで人々の心をこれほどに開放するものかと思いました。
 もう一つどうしても申し述べたいことがあります。2014年から2015年にかけての新安保法(集団的自衛権行使容認)反対運動が全国的に盛り上がった頃、私は長野県の最南端の郷里にいました。その頃は地域の「9条の会」で活動していて、東京の総がかり行動や千人委員会から送られてくる署名用紙で山間僻地の一軒一軒を訪問して署名の要請をして歩いていました。
 しかし、2016年9月には安全保障関連法(安保法)の改正PKO協力法が成立し、「駆けつけ警護」や「宿営地の共同防護」などの新たな任務を政府から付与された自衛隊が、南スーダンに派遣されました。
 これに対し、同年11月に現職自衛隊員の母親が原告となり、全国初の自衛隊・南スーダンPKO派遣差止訴訟がおこされたのです。その裁判は北海道合同法律事務所の佐藤博文さんを中心に弁護団が組織されていました。そこから依頼された署名用紙で、署名版を抱えながらの相変わらずの署名活動の毎日でした。人々と顔を合わせると私は必ず次のような訴えをしました。
 「専守防衛の枠を取り払って自衛隊を海外に派兵することは、自衛隊員の皆さんにとっては労働条件のコペルニクス的転換である。したがって自衛隊員全員に然るべき退職金を支払っていったん雇用関係をゼロにして、改めて海外派兵もありという条件で自衛隊に残ってもらえる人たちとは新たに雇用契約を結び直すべきである」と、訪問先の玄関先で演説をして歩いたのです。
 この主張は幅広い人々の共感を得て「その退職金の額はその世界の相場の倍は支払わなくては」という意見や「契約を一方的に破棄する場合は3倍というのが相場だ」などと意見続出という有様でした。
 どうしてこのような展開になったのか。それは、自衛隊・南スーダンPKO派遣差止訴訟の原告の平和子さんの主張がとてもリアルであったからです。
 平和子さんは自衛隊の「駆けつけ警護」で隊員が誤って現地の人を射殺してしまったら、現地の裁判所で裁くのか、帰国してから日本の裁判所で裁くのかを問題にしています。

徴兵制導入・軍法裁判所創設にみちを開く石破政権

 10月6日の新聞「赤旗」日曜版によれば、こんど首相になった石破茂さんは「自民党が野党時代の2012年に作った『日本国憲法改正草案』の起草委員の一人です」「石破氏が携わった9条部分は、戦力不保持と交戦権を否認した憲法9条2項を削除し自衛隊を『国防軍』と書き換え、裁判所(軍法会議)の創設などを明記しています。
 石破氏は、徴兵制導入に賛成の立場で、『徴兵制が憲法違反、意に反した奴隷的な苦役だとは思わない』(02年、憲法調査会)とまで言い放っています。
 国の出動命令に従わなければ『死刑』『懲役300年』との考えも示しています。石破政権は、これまでの歴代政権を上回る軍事突出の危険を孕んでいます」。
 私はこんなときであるからこそ、自衛隊は「憲法違反なので、戦力を放棄し、災害派遣に特化した組織にすべきだ」との主張を高々と掲げるべきであると考えます。 
2024・10・9 
(つづく)

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